Fate /Divinely Warriors 作:なんばノア
サンタモリヤ中央地区。通称、教会領と呼ばれるいる。
ここは
その中心、このサンタモリヤにおいて最も信徒が訪れる大聖堂。サンタモリヤ大聖堂が存在する。
美しいステンドグラスに照らされた日光により神秘的な神々しさを醸し出す内部。
アンティークな長椅子が並び、その再奥に設置された講壇。ここに、なんとも罰当たりな男が存在していた。
「まさかアンタ達が参加するとはねぇ。―――正直な感想、何が目的?」
講壇に尻をつき、背を丸めながら何やら作業に勤しむ男。口には煙草、手には到底場違いと言えるでありう拳銃が握られている。拳銃の手入れか、講壇の上には布巾や銃弾等が散乱している。
場違い且つ罰当たりなこの男。しかしながら、それが着こなすは紛れもなくカソック。聖職者、教会の神父が着用する司祭平装に他ならないのだ。
「うーん、そこの所はよく知らないんだよねぇ。今回は私が直接命を受けた訳じゃ無いからさ」
一方コチラもカソック衣装を身に纏った男。
アンティークの椅子に腰掛け読書を嗜んでいる。
「え?何、教会からの命令で参加すんの?それって色々とやばくないか?ほら、名目上俺達って不可侵が絶対じゃん」
聖杯戦争。
それは万能の願望器、聖杯を求め争う魔術師たちの闘争である。
聖杯を求める魔術師、7人のマスターとそのサーヴァントが、万能の願望器たる聖杯の覇権を競い合う闘いだ。
最後の1組にまで勝ち残ったマスターには、聖杯を手にし願いを叶える権利が与えられる。
と、言うのが聖杯戦争における
本来はまた違った意図と思惑により、この戦争は意義を成している。―――が、その話はまた後日。今はまた違った別の問題だ。
聖杯戦争を担う役割の一つとして、“監督役”たる存在が必要とされる。
聖杯戦争と言う儀式の管轄は、魔術協会と聖堂教会、名目上こういった形となっている。
そして、その儀式を効率的且つ円滑的に進行させるために用意するのが監督役だ。
神秘の秘匿を第一とする魔術師達。しかし、サーヴァントと言う規格外の超存在による戦闘が、人目に付かない筈がない。その為の監督役であり、彼らには戦争で起きた被害や事件の隠蔽等が求められるのだ。
そして、この監督役は戦争内のどの勢力にも属さず、不可侵且つ中立でなければならない。
しかし、今回は異例。
なにせ、同業者の人間がマスターの資格を得てしまったのだから。
「えっとねー、どうだろ?スズネに聞いてみないとわからないんだよねぇ。私はただ“手伝って”って頼まれただけだからさ。
あ、でもね、今回と同じような例ならあるよ。冬木で行われた4回目も、監督役の息子が教会側の人間でありながらの参加も記録されてるし。まぁ、ぶっちゃけ問題ないでしょ」
「そーかい。そんで、そのスズネさんは何処よ?」
拳銃の手入れを止め、キョロキョロと辺りを見回す無精ひげの男。事実、この大聖堂にはカソック姿の男2人の他人間は存在しない。
「この土地の散策。全く、暇なんだかマメなんだか」
「アンタが一番暇だろうに、セイジ」
セイジ、と呼ばれる男。本名を
聖堂教会の代行者であり、今回の聖杯戦争のマスターの1人を担う男。
教会の中でも随一の実力派代行者であり、同時に、
「まぁ、どうでもいいけど。召喚する英霊はどうすんの?触媒は?」
「ん?あ、そうだこれこれ!いやぁびっくりしたよ。まさか
子供のようにはしゃぐセイジが取り出したのは一振りの槍。いや、もはや阿呆としか思えない程の頭の悪さだ。コイツ、本当にとんでもない事をしでかしたな。
「いやさ、それは流石にマズくない?俺でもここまでの悪さはした事ねぇよ。本気で大目玉だぞ。それ」
チッチッチ、と人差し指を左右に震わせそれ以上は何も言うなと催促するセイジ。何やら言い分があるそうで、
「お友達にちょっと頼み混んでね。そのお友達の先輩がちょっとした司祭様でさ、許しはちゃーんと取ってあるんだよね、これが。ていうか、お友達の彼も教会じゃかなりの顔役だし。詰まるところ、君んとこの騎士団の団長さんなんだよね」
「あ、そう言えばアンタ団長と知り合いだったね。なんだ、そういう事か。え、じゃああの人も来んの?埋葬機関直々に?」
吸いかけの煙草をポロリと落としてしまった監督役の男。しまった、これ最後の1本なのに。
「いや、来ないよ?あの人相変わらず日本をぶらぶらしてるみたいだからね。まぁ、教会からの命令が下れば来ることにはなるかもだけど」
吸うか?とセイジは懐から真っ赤なパッケージの煙草を取り出し、男に向ける。
「要らねぇよ。アンタのそれ、人間が吸うもんじゃねぇ。
―――いやさ、団長は適当だからいいけど副団長来られるとマズイんだよな。俺真面目に仕事したくねぇし」
「あ、わかるー。私もフウヤちゃん少しだけ苦手なんだー。あの真面目さはいつか馬鹿を見るよ絶対」
同業者の陰口を言い合う2人。そして、呼ばれざる来訪者が1人―――
「おいおい、お前達ホントに聖職者か?」
「!?」
2人が驚くのは当然。音もなく、気配すら立てずに、男はこの聖堂内に侵入してきたのだから。
「いやいや、肩の力抜こうや。今日は争いに来た訳じゃ無いんだ。今回の監督役さんに挨拶をしに参上つかまつった次第なんだがね」
ニコリと笑顔を晒す好青年。この男もまた、今回の戦争のマスターの1人である。
「あぁ、誰かと思えば、セトくんじゃあないか。久しぶりだね」
セイジが手をヒラヒラと振るう。
青年の名前は
日本の寺院、比叡山延暦寺の僧侶だ。
セイジとの関係は学生時代の友人と言った物。あまり交友は無いが、2人はそれぞれの実力を高く評価している。
「久しぶりだな。今回の監督役はお前じゃなくて彼の方だな?」
「何故バレたし」
どんな理由からか、2人居る教会の人間の中から正確に監督役を見抜いたタカオミ。それにはちゃんとした理由があった。
「まぁいいや。アンタ挨拶って言ったけど、令呪は宿ってるよな?ならいいよ。ちゃんと記録しとくから帰ってくれて」
「おいおい、ほんとに適当だなぁ。―――でもまぁ、ぶっちゃけると今日は冷やかしのつもりで来たんだけどな」
「ほう、と言うと?」
セイジが尋ねる。
「お前だよセイジ。お前がこの闘いに参加すると聞いてな。それなら昔からの決着、この場を借りて白黒付けよつかと思ってな」
「ゲ、君ストーカーかい?情報掴むの早すぎ」
半分冗談混じり、半分本気で引いていた。
「ハハハっよく言われるよ。それじゃ俺は御暇するけど、妹によろしく言っといてくれや」