Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

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prologue.4

“召喚の陣は血液で描け。別物でも代用は利くが、こっちの方が一般的且つ低コストだ”

 

サーヴァント召喚にあたって、注意すべき点は特に無い。それに伴って、召喚自体にさして大掛かりな儀式は必要ない。サーヴァントの召喚は殆どが聖杯の仕事。聖杯が勝手に用意してくれて、私はそれを固定化するための魔力を供給するのみ。鴉夜家が代々得意とする降霊術の一端にすぎない。

 

消去の内に退去。

退去の印を四つ記し召喚の義を成す。

 

「始めましょう―――」

 

聖遺物。三種の神器、その一つが聖剣。この触媒より召喚に応じる英霊はただ一人。彼の大英雄以外に有り得ないだろう。

 

天叢雲(あまのむらくも)。―――別名、草薙剣(くさなぎのつるぎ)とも呼ばれる聖剣。

その一振りは、天を貫き雲の叢りを焼き払う一撃。そう称された神造兵器の一つ。日本の史実では色々な意見と見解が飛び交っているが、“消失”した。と言う話が最も有名な一説である。現存する三種の神器など、本物かどうか定かではない。

事実、我が家にも一つ、三種の神器と呼ばれる代物が代々継承されているのだから。

後の後世に、誰かが作り上げたレプリカ。本物かどうか確認出来ない以上、何とでも言える話である。

しかし、この剣からは確かに魔力を感じ取れる。長い間、海の底で眠っていた剣とその鞘。この鞘が、剣となる本体の神秘性を、現在まで守り抜いた証拠だろう。

本物か贋作か、結果を見るまで判り知れない事ではある。だが、少なくともこの剣は何故か信用に足りる。故に、私は至って冷静。きっと成功する。そして、私は私の目的のため、先生はミスターノーンブランクの野望を阻止するために、この戦争に臨むのだから。

 

では、本当に始めよう。

 

「素に銀と鉄・・・、礎に石と契約の大公―――」

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

中央地区教会領。その中の一際でかい建物の一つ、サンタモリヤ大聖堂。

今回の監督役を請け負った俺、リーパー。

団長と副団長が休暇?で不在の今、次に俺への権力がある部隊長のレインちゃん。悲しいなぁ、明らかに面倒くさそうなこの仕事、全部俺に押し付けたんだもん。

まぁいいよ、俺も男だ。一度請け負った仕事は途中で投げ出さねぇよ。

ただね、俺1人なら気ままにやっていけたわけよ?誰だよ、こんな面子を今回のマスターとして派遣したやつ。うるせえのが増えただけじゃねえか。

 

「師匠ー。本当に英霊なんて呼べるんですか?」

 

「うん?私に出来ない事なんてある訳無いだろう?」

 

上下お揃いのジャージ。それにスカート履いただけのよくわからんファッションセンスの小娘。それの問に、陣を描きながら当然の如く自慢げに豪語する顔見知りの代行者。

 

「お前らどうでもいいけどよ。なんで教会(ここ)で召喚しようとしてるんだよ」

 

聖杯戦争において、マスターとなる人間と監督役となる人間は基本的に不可侵関係でないとならない。監督役となる人間が一つの勢力に加担するとなると、聖杯戦争それそのものを掌握すると同意になる程に有利に立ててしまうのだ。

だってそうだろう。聖杯戦争の監督役とは監視役にして進行役。また、観察役のそれに他ならない。だとしたら、全てのマスターとそのサーヴァントの情報を最も把握している人間がいるとしたら監督役が適切なのだ。

 

「大丈夫だって。私達は教会の命令で参加しているんだ。君だって、監督役としての仕事より本職を優先するだろう?」

 

「いや、そりゃそうだが。一応形だけでも作っとこうや・・・。こう、露骨に接触するのはマズイっつーか・・・。

ん?―――え、ちょっと待って?これさ、俺が一番危ないポジションじゃね?」

 

「そうだよ。君は協会にバレないように教会の支持を仰ぎ私達に協力。ここで協会にバレた場合協会と教会の関係が危うくなるので教会からもお怒りを喰らう事になるから、君の立ち位置は最悪だね」

 

おいおい最悪じゃねえか。真面目に仕事してなきゃ両方から叩かれる事になるぞこりゃ。

いや、問題はそこじゃなくて。この適当人間がボロをこぼしても俺の責任になるという事だ。・・・おのれレインちゃん、この借りはデカいからな。

 

「なぁ、お前さんのお師匠様どうにかなんねぇ?」

 

「え、無理ですね」

 

即答かよ・・・。まぁそうだよなぁ。完全にハズレくじ引かされたわけだ、俺。

 

「無駄話はその辺りで済ませて下さいな、セイジ君。時間は有限なのですから、有効的に活用しましょう」

 

カソックの上に白いローブを羽織った女。セイジのパートナーと呼ばれる人間だ。

うちの団長もそうだが、この女もたいがい。いや、摂理に反した人間が多すぎだぜ。聖堂教会。

 

「うん、わかってるよ。陣は描き終えたから、あとは聖遺物の配置と召喚するのみだね」

 

聖槍(、、)を祭壇に配置する。

聖遺物、聖槍。比喩でも何でもなく、それは正真正銘の聖槍。彼のゴルゴダにおいて、愛すべき我らが主(、、、、、、、、)の脇腹を一刺し、御血を浴びた聖なる槍。

これより召喚される英霊はただの一人。

ローマ帝国が盲目の槍兵。主の御血を浴び、その視力を取り戻したが故に改心、洗礼を受けた主を誠に愛す信徒。それその人以外に有り得ないだろう。

 

「英霊というモノが本当に召喚されるなら、必然的に、彼の盲目の槍兵(、、、、、)が予想されるんですが・・・。どうなんですか、実際?」

 

「うん?そうだねぇ。普通に考えれば彼が来ることには違いないんだろうけど・・・。もしかしたら、本物の救世主(、、、、、、)が召喚に応じてくれるかもだ!」

 

「それはねえな」

 

いや絶対に有り得ねぇ。そんな事態になれば聖杯戦争なんてやってる場合じゃ無くなるからな。教会も協会も死にものぐるいで彼を奪い合うだろうに。なんてこと言うんだこの阿呆は。

 

「即答は酷いなぁ。でも、100%無い。って訳じゃないでしょ?数値的な確率を上げてみれば、それは確かに1%にも満たないとおもうよ。けどさ、確率なんて飾りみたいな物だし、それこそ、可能性にロマンを見出さないと」

 

いや、なんていうかコイツ、稀に名言めいた事を言うから困る。お巫山戯(ふざけ)モードと真面目モードの違いを見抜けないのは俺が未熟だからか?

 

「さあて、ともかく先ずは召喚から済ませてしまおう。あぁ、君たちは下がっていたまえ」

 

弟子と相棒の女に下がるよう促す。あ、俺もなのね。りょーかいりょーかい。

 

「ゴホン、ではでは・・・―――。素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を―――」

 

 

 

□□□

 

 

 

「四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ―――」

 

舞い散るエーテルの乱舞。膨大な魔力の渦を抑えつけ、自身の身体を軸に一つの世界を築く。

召喚の陣が赤く燃え滾る。光り輝く血の召喚陣、それは、高揚とした私の魂を容易に魅了した。これより私は魔術師ではない、聖杯戦争のマスターなのだ。

そう実感させたのが、心臓の高鳴り、召喚陣の輝きに呼応するかの様に疼く令呪。

赤く輝き光り瞬く令呪。超存在たるサーヴァント、それ律する事が叶う三つの絶対命令権。サーヴァントであれば、マスターの行使するこの権利に逆らうことは出来ず、絶対たる命令権に相応しい呪いだ。だが、意図が曖昧な命令、長期間に渡る命令等は例外。そう言った令呪は効果が薄い。故に、一般的な例はサーヴァントの瞬間強化、またサーヴァントの瞬間転移等で使用されるのが常だ。

 

閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ(満たせ。満たせ。満たせ。満たせ。満たせ)―――。

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

身体を失う。感覚であり、感情である。足の指先から頭まで、身体、神経すら、全ての感覚を失い、溶けていく。飴のように(とろ)けた自身の感覚。自身を他人のように錯覚させる神経の麻痺。全ての感覚が溶け合い、同時に、全てが満たされていく。

 

「――――――っ・・・!」

 

身体を満たすは取り込んだ魔力(マナ)の濃密さ。それがあまりにも濃いものだから、肉体の感覚が塗り潰されるのだ。

故に、満たされるとは、同時に破却すると言う事だ。

 

「―――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に、従うならば応えよ」

 

私と言う世界に光が満ちる。包む殻が肉体なら、中身のそれは隔てなく魔力(マナ)魔力(オド)。別性質の魔力が入り混じり、完全なる渾沌(カオス)と化す。

視界が眩しい。当然だろう、眼前には肉眼では視認できぬ第五要素。眩しさを装った虚無。なんて嫌らしい、道化か。

 

「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

誓うは剣、そしてそれを担う聖剣の使用者。

これより、最終段階に至る。取り込んだマナを固定化する為の魔力へと変換する。

胸の鼓動、感覚の高鳴り、令呪の疼き、世界の煌めきが最高点へと至る。人間の限界を超えよ、自身の世界を破却するのだ。

 

「汝三大の言霊を纏う七天。

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

満ち満ちていたマナは1箇所へと収束する。耐えきれなくなったエネルギーは膨張。第五要素よろしくの粉塵と共に、周囲を煙が覆った。

 

「―――どうだ・・・?」

 

後方に控えていたロードエルメロイⅡ。そして執事の2人。この3名には召喚の儀式の是非は計り知れなかった。それ故、周囲の状況が掴めぬ今、その結果を知ることが出来たのはヒナノただ一人なのである。

そして、ヒナノは確信していた。何故なら同調、繋がり、サーヴァントとのパスをはっきりと自覚できるのだから。

 

煙が晴れ、周囲の状況が鮮明な物となっていく。

聖剣を配置した召喚陣の中心部。そこに、常軌を逸した超存在、並々ならぬ魔力を帯びた()が立っていた。

 

「我が霊体を現世に止め、セイバーのクラスで現界せしめたそこな女よ、其方に問う。」

 

波乱はこれより生まれ落ちた。全てが戯言。全てが仕組まれた、全てを見透かされた、闘争の幕開け。―――さぁ、始めよう。

 

「其方が、私のマスターか」

 

過去最大の聖杯戦争を―――。

 

 

 

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