Fate /Divinely Warriors 作:なんばノア
暗闇の中、一人の少年がほくそ笑む。その顔は希望に満ちておりながら、同時に悪を孕ませていた。
「待ちわびた、待ちわびたぞ。サンタモリヤ聖杯戦争・・・」
少年もそう。此度の闘争を担う愚者の一人。同時に、此度の闘争の
「七騎。全てのサーヴァントが揃った」
「えぇ。全てのピースが揃いましたね、コネット様」
少年のふんぞり返った椅子の背後に佇む女性。生気は凡そ感じられず、その声はまるで人間性に欠けていた。いや、欠けているのは感情や熱と呼ばれる人間を示す要素のそれ。まさに“人間の如き人形”。形容するならこれが最適だった。
「あぁ。あとは
そう。聖杯戦争において魔術師の闘争と言う行為そのものは、さして重要ではない。
聖杯がサーヴァントを呼び寄せ、マスターが競わせる。そして、頂点に立ったマスターとサーヴァントにはそれぞれの願いを叶えることを許す聖杯が渡される。と言う通説だが、実は、これは参加マスターを獲得するための宣伝に過ぎない。
聖杯とは言わば超抜級の魔術炉心だ。何十年と年月をかけ魔力を蓄積、霊脈からサーヴァント七騎の召喚に必要なだけの魔力を吸い上げるのだ。
七騎のサーヴァントはそれぞれ、敗退後に聖杯へと還る。溜め込んだ七騎分の魔力を以ってして、聖杯は初めて真に魔術礼装としての意味を成すのだから。
聖杯戦争とは魔術師の儀式。その最終的な目標は、勿論のこと“根源”である。
サーヴァントが敗退した場合魔力は聖杯へと還る。その際、一時的にではあるが、サーヴァントの魂とも言える器が聖杯に留められる状態となる。全てのサーヴァントが敗退したその時、聖杯は七騎分のサーヴァントの魂と魔力を蓄積した儀式礼装と化す。英霊の魂が座へと還る際に生じる穴。その穴を固定化して、根源への道を確立させる事こそ、聖杯の真の役割なのだから。
故に、聖杯戦争において、殺し合いと言う行為にはさほど意味が無い。聖杯の所有権を決めるに当たって、殺し合いが最も簡単で効率的だっただけだ。サーヴァントと言う超越的存在による殺し合いなど、
「■■■■■■」
少年が、自身が召喚した使い魔の
「―――何用だ」
しゃらん、と言う音と共に、暗闇から現れたのは戦士。いいや、大凡戦士には似つかぬ程の美しさを宿した女のサーヴァント。しかし、背格好のそれは性別や顔立ちとまるで反比例する。歴史の古さを彷彿とさせる戦場の常装備。美しい顔立ちにそぐわぬ重ただしい重圧的な空気。装備や雰囲気や発言は、最早か弱き女のそれでは無い。まさに・・・いや、真実そのサーヴァントは英雄に他ならないのだから。真にして誠なる最優の英傑。それ以下でなく、それ以上を極めようとせん一人の戦士の姿、真英雄のそれだ。
「我に用があったのだろう。要件を述べよ、マスター」
「あぁ。全てのサーヴァントが出揃ったようだからね。お前にも告げておこうと思ってさ」
「―――必要ない。我は貴様の命令に従って戦場を蹂躙するのみ。これと言って、この闘争には望みも興味も持ち合わせてはいない故な」
再び闇と同化する女。姿を消し、外界からの視覚情報から完全に脱却する、サーヴァントの霊体化。物質的干渉はおろか、目視による確認が不可能になってしまう。
これは、彼らサーヴァントが、霊体である故に成せる所業である。
サーヴァントとは霊体。座に登録された英雄の魂、つまり、第三要素を
「はは、まぁいいさ。僕の命令通りに動けば文句は言わない。なんたって、この戦争の勝利者は
そう。この闘争は予め全てが決定された闘争。故に勝利者は必然でありその人物は必勝。この事実は変えられぬ真実。少年はその全てを知っている。自身が、聖杯を手にして人類を救済する。この仕組まれた戦争の黒幕の一人にして、この絡繰だらけの戦争の、勝者となる筈の人物なのだ。
しかし、所詮この少年は役者に落ち着く。絡繰仕掛けの聖杯戦争。その、台本役者の一人に過ぎない。少年は、まだそれを知らない―――。