2017年の福袋ガチャで玉藻の前を引いた記念の短編です。

私が把握している中では、絶対に無かったであろう天草×玉藻という完全異色のCPになっております。故に以下の方は閲覧をお控え下さい。

1、天草はセミ様とじゃないとダメ!って人
2、玉藻はextra主人公とじゃないとダメ!って人
3、Fate設定に拘りのある方。だいぶ、妄想で書いてますので、設定と違う可能性もあります


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あらすじにも書いた通り、この短編は天草×玉藻も完全異色CPのものです。因みにイチャイチャはしない模様……してないよね?
その異色CPの為、以下の方は閲覧をお控え下さい。だいぶ不快になると思います。

1、天草はセミ様とじゃないとダメって方
2、玉藻はextra主人公とじゃないとダメって方
3、Fate設定に拘りのある方

息抜きがてらに妄想に身を任せ、書いたものなので、設営とかは凄い曖昧です。不快だと思った瞬間にブラウザバック推奨です。ホント無理してまで読まないことをオススメしておきます











全を望む者、一を望む者

 

 

 

 

「いやぁー、風が気持ち良いねー」

 

 場所はウルクの地に在るエビフ山。

 随分と清々しそうにいう少女───名を桜崎 春香。この少女こそ、人理修復に絶大なる献身を行なった魔術師(紛いの一般人)である。……なんでそんな大事を春香がやらざるを得ない状況になったのかの説明は別の機会に。そんな尺はないのだ。

 

「おい、マスター……そんな呑気なこと言ってる場合かよ」

 

 突如、春香に声をかけて来たのは、肩から紅蓮の外套を掛けている魔術師(キャスター)少年(サーヴァント)。名前を諸葛孔明。

 

 因みに人理修復にあたり、戦力増強がてらにサーヴァントと呼ばれる使い魔を複数体召喚している。…………と言っても、この孔明は間違っても春香のサーヴァントでは無い。他の所から派遣されてきた、というのが妥当な表現か。

 

 そして、他に此処に連れてきたサーヴァント2人は───

 

「…………」

「…………」

 

 互いに目線は疎か、顔すら合わせようとしない。

 

 何故こうなったか……それを説明するにあたり、数時間の時を追想してみるとしよう。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

「え……英霊召喚システムが誤作動して、新しいサーヴァントが召喚された⁉︎ それって本当⁉︎」

 

 一通り日課をこなし、自室(マイルーム)で寛いでいた春香に届いた通信は驚きを隠せないものだった。

 精密精巧に組み上げられた魔術である召喚術が誤作動を起こし、無断で英霊……サーヴァントを召喚した。それが強過ぎたり、敵対する者なら一大事だ。誤作動召喚なのだから、そう言った事例になってもおかしくない。

 故に春香は己の一番の相棒であるサーヴァント。赤色の法衣を黒い服の上から羽織っている裁定者(ルーラー)の天草四郎時貞を連れて、現場に訪れたのだが────

 

 

「御用とあらば即参上! 貴方の頼れる巫女狐、キャスター降臨っ! です!」

 

 

 ───そこにいたのはハイテンションな自称巫女狐の呪術師(キャスター)。……正直、あんな服装で巫女と言って良いのか。巫女というのはもっとお淑やかなものなのでは? と思ったりしたが、記憶の何処かに引っかかる彼女の姿が鮮明に思い出していくにあたり、その辺りは割とどうでもよくなった。

 

「貴女は……玉藻の前⁉︎」

 

 遠い昔……と言っても数ヶ月前、霧の都ことロンドンにおいて、歪な形で召喚された2人のサーヴァント。その片割れがこの眼前にいる玉藻の前だったのだ。

 

 何故今になって現れた? 何が原因で? ───と思案する中、春香は天草に視線で問い掛ける。

 いつも春香に分からぬことは、天草に尋ねてきた。それが春香と天草においての普通。

 だけど、その時……今の一回だけは春香は視線でも尋ねた事に後悔した。何故なら……天草が玉藻を険しい顔で見ていたからだ。

 そして、その原因も知っている。

 玉藻と初めてロンドンで出会った……というか見えただけに近かったのだが、その時も天草は決して良い表情を浮かべてはいなかった。

 故に状況が落ち着いてから尋ねると───

 

 

『彼女のあの在り方(・・・・・)が苦手なのですよ』

 

 

 と、ただ一言で返してくれた。そして、それ以上は聞かないでおいたのだ。聞いてしまうと天草は多分良い気持ちにならない。そんな事は絶対に嫌なのだ。

 春香において、天草は普段から慕ってくれている後輩(マシュ)と同じ位に好いている存在で、その人に悪い気持ちをさせることを何よりも嫌う。

 故に天草には玉藻に関する事を聞かないで───そして、あまつさえ会わせようなんて絶対に思わなかったのに。神の悪戯か何かが働き、こうも鉢合わせしてしまった。

 完全に誤算だった。もっとちゃんと報告を聞いておくべきだった。

 

「え、えっと……そのー……」

「──良いです、マスター。気にしないで下さい」

 

 至って、普段通りに取り繕う天草だが、客観的に見てだいぶ雰囲気が違う。殺気とか色々漏れている。

 だが、それでも笑顔で玉藻に手を差し出し───

 

「よろしくお願いします、キャスター」

 

 挨拶。

 だが、玉藻も決して察しの悪い女では無い。その笑顔に含んだ“裏”を察し、

 

「ええ、こちらこそ。よろしくお願いしますね、ルーラーさん」

 

 笑顔で返す。

 

 この時に感じた恐怖はある意味凄かった。下手すれば死ぬんじゃないかと思った程に。

 

 まぁ、それはそれ。これはこれの理論で一応、玉藻をお迎えはした。

 天草第一主義の春香でも、有能なサーヴァントを自ら手放す様な真似はしない。マスターとしては当然だ。

 ただ、このままでは色々と不味い。

 天草も玉藻も両方ともに強力なサーヴァントだ。だから、足して上手く運用出来れば、もっと強力になる。単純な足し算式では測れないにしろ、間違っているとは言えない。……逆に悪影響な場合も無くは無い。

 

 

 

 ───というわけで、天草と玉藻の仲を少しでも良くする為にちょっと計画し────

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 結局、神代のウルクにあるエビフ山に素材調達を兼ねて、春香に天草、玉藻、そして外部から派遣されてきた孔明で訪れることになったのだ。

 だが、こんな所に来た所で、何も進展はしない。現にしてない。互いにそっぽ向いてるし。

 

「ねぇ、孔明……なんか案ないの? 軍師なんでしょ?」

「あのなぁ……ボクだって、呼ばれて来ただけなんだから、案なんて無いっての」

 

 完全に呆れ口調で言われ、春香はガックリ肩を落とす。

 

「──にしても、何でここなんだよ。まだ実戦訓練もしてない玉藻の前を連れてくるなんて、無計画にも程があるだろ」

「玉藻だって十分に育てましたし、私の天草は最強ですよーだ」

「あーあーそうですか。……でも、ホントに何でここなんだよ。相性悪いサーヴァント同士を連れてきても良いとは言えないだろ。安全性的に」

 

 孔明の言葉は一理ある。

 このエビフ山に発生する魔獣……魔猪は何の関係があるのか知らないが、全個体が狂化スキルを付与されている。故に理性吹っ飛び、攻撃力上昇。少し当たるだけでも相当のダメージに成りかねない。

 しかも、最奥にいる巨大魔猪ともなれば─────想像するだけで恐ろしい。

 

「んー勿論分かってはいるんだよ? でも……やっぱり私の頭じゃ、この解決法だけしか思い付かなかったの。中々危険だけど。……まぁ、孔明が補助に回ってくれるなら少しはマシだよ。最悪の事態は避けられる……よね?」

「呼ばれた以上、やれるだけはやるけど……あんまり期待するなよ? ───って、敵影確認! 全員構えろ!」

 

 会話の途中で現れた魔猪数体。しかも、前方ということで───孔明と春香が矢面に立たされている状態だ。孔明はサーヴァントでも、春香はただの人間。魔猪の一撃を喰らうだけでも危ないのだが───

 

「はっ!」

 

 後方にいた天草が法衣の内から取り出した複数の黒鍵を投擲し、魔猪の頭に突き刺さる。加え───

 

「───告げる(セット)

 

 自身の魔力回路を稼働させ、遠隔爆撃。跡形も無く吹き飛ばす。

 そんな中──

 

「はいやっ!」

 

 玉藻は玉藻で呪符を飛ばし、爆炎やら氷槍などが無数に飛び交い、魔猪を範囲爆撃していた。

 

 しかも、討ち漏らしは孔明が魔力弾で片付けていた。

 

 やはり──凄い。

 誰が、では無く、全員が。

 各々の力であれだけの力を持つ魔猪をほんの僅かな時間で制圧出来ることが凄い。凄い……のだが…………違う。こんな戦いを望んでいるのでは無い。

 これではただの各個撃破の掃討戦とさして変わらない。折角の小隊なのだから、必要なのは連携による戦闘の最適化だ。

 このままではいずれ、事故が起きる。黒鍵が誰かに刺さったり、呪術で味方に被害を及ぼしたり……割としそうで怖い。しかも、事故でしたって言い張りそうでもある。

 

 必要な点も分かる。欠けている点もある。だが、掛ける言葉が分からない。

 話し合ってみて? そんな対話云々で片付く程度の嫌悪感なら苦労しない。

 戦ってみて? 2人ともそんなに戦闘狂とは言い難いだろう。というか、被害考えて無理。死んでしまう。

 他に……何かあるか? あっても無理だろう。そうしか思えない。

 

 故に出てきた解決方は単純で明快で最大に下衆なのだが……そうなる機会(タイミング)がまだ訪れない。

 

「そのタイミングさえ訪れれば、何とか成りそうなんだけどなぁ……」

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 結果、山頂にもうすぐという地点にいる今現在まで、魔猪は姿を現さなかった。普段なら、もう少しは湧いていた気がするのだが、何かあったのだろう。

 

「どうしよ、孔明……ここまで出ないと色々マズい」

「知らないよ……普通はここまで出ないことないだろ」

「山頂に達したら、例の巨大魔猪だよね? もう距離ないよ?」

 

 焦り始め、あわわ、あわわわみたいな状態に陥る春香と孔明。

 故に─────気付かなかった。この周りに尋常じゃない数の魔猪が集まってきていたことに。

 

「これは……不味いですね」

 

 徐に呟く天草。

 確かに周囲を囲まれている。ジリジリ詰められて、結果潰されるのは目に見えている。

 だが、打開策はある。そう………………玉藻の九尾開放だ。

 普段は封印している残り八尾。その全てを開放すれば、真なる神霊と化し、こんな窮地は楽々勝々で切り抜けられるに違いない。

 

 そして、同時に思う。

 玉藻自身、その力は死んでも奮いたくない物の類い、だと。

 強過ぎる力は他から見れば『憧れ』になるとしても、己にとっては『呪い』なのかもしれない。

 

 だから、ここで春香が出すマスターとしての指令はただ一つ。

 

「各自、出せるだけ振り絞って戦って! 無理はしなくて良いから!」

 

 さっきの理想論はそっちのけ。こういう場合は生き残る事を優先させるべきだ。

 

 孔明は逸話通りの名指揮で同士討ちや落石を利用しながら、数を減らす。

 

 天草は自前の日本刀と黒鍵で斬り、刺し穿ち、蹴散らしていく。

 

 玉藻はお得意の呪術で暴風を、爆炎を引き起こし、さながら絨毯爆撃を行う。

 

 このまま押し切れば、何とかなる。

 そう思った中───視界の端に見えてしまった。

 玉藻の背後から迫る魔猪の姿を。

 

「玉藻ッ!」

 

 叫んでも間に合わないのは本能的に理解出来ていた。

 反応するよりも早く、魔猪の牙が刺さるのが想起される。

 ダメだ、ダメだ………ダメだ、ダメだ、ダメだ!

 これ以上、目の前から仲間が消える姿を目にするなんて耐えられない。

 心の中で苦渋の重圧を浴びる中、春香は見た。この場に駆ける一陣の赤色の風を。

 

「───はぁッ!」

 

 本来のステータスでは絶対に有り得ない速度で飛んできた天草が玉藻に刺さるすんでの牙を日本刀で弾き返し、そのまま脇腹を一閃。

 玉藻が助かったことによる安堵よりも湧き上がる疑問の方が春香の頭を占領する。

 

「天草………今の何なの」

「ちょっと使わずに置いておいた魔力源(・・・)を切り崩して、身体強化したんですよ。今の今まで申告しないですみませんでした」

 

 魔力源? 今の上昇率、確実に並の量の魔力では成せないはずなのだが────と、思い当たる節があり、春香は堪らずに叫んだ。

 

「〜〜〜〜ッ! 天草だったの⁉︎ 時々、私の令呪が一角消えてる時があったから、不思議に思ってたけど、まさかストックしてた⁉︎」

「………まぁ、そうなりますね」

「結果オーライだから今回は許すけど、令呪借りるんなら、ちゃんと断ってよね。理由あったら貸したげるから」

 

 腑に落ちた春香を尻目に天草は玉藻の方に向かう。咄嗟の事でバランスを崩していて、天草はそれに手を差し伸ばす。

 

 

「私は………貴女が苦手です」

「“嫌い”ではないのですか? 貴方、聖人にとっては反英霊は斃すべき相手では無いのですか?」

「生憎、私を聖人とは言い難いですよ。使えるものなら何でも使うし、不要なものなら切り捨てる。そんな人間みたいな事をする人を聖人とは言えませんよ。それに今の私はマスターに身を捧げています。マスターが嫌うのなら、一緒に嫌うでしょうし、好きになったのなら、好きにはなれますよ。───でも、苦手だ」

 

 天草は吐露し始める。己が玉藻を嫌う理由を。

 

「貴女は凄い力を持っている。それこそ、世界を壊し、創り直せるだけの力を。それを上手く使うことが出来たのなら、きっと大抵の事は叶うはずだ」

「………貴方は力を持つことに妬んでいるのですか?」

「違います。───その力を使うことをしない(・・・・・・・・)ことが苦手なのです」

 

 その告白に春香は合点が行く。

 天草の聖杯にかける願いは『全人類の救済』。そんな人離れした事を行うには、力が必要だった。結果、それが聖杯にかける願いになったのは、生前に叶わなかった願いの証明で。叶える為なら、頼るものが聖杯で無くとも良い。

 だから、玉藻が苦手。何でも成せるであろう力を持ちながら、振るう事をせずに封印した玉藻の考えが理解出来ないのだ。

 

「今だって、ほんの片鱗を開放するだけで終わったはずです。それすら怠った。私には理解出来無さすぎる」

「あーあーなるほどなるほど。貴方が露骨に嫌オーラを出していた理由はそういうことでしたか。物分り良いタマモちゃん理解出来ました。その上で言葉を返させて頂きましょう。………強過ぎる力は融通が利かないんですよ。貴方の言う理想なんてものではない。文字通り、“破滅”しか呼びません。貴方の理想が何であれ、叶えるに必要な力ではないと言っておきましょう」

 

 差し出された手を握り、体勢を立て直す玉藻は山頂向けて歩き始める。

 その後、二人の間に流れた会話は無かった………

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 山頂に着く。いつも通り、そこにいたのは巨大魔猪。

 

「普段とはメンバー違うけど、天草ファイト! あと、さっき令呪を勝手に拝借してたのはちょっと怒ってるから、サポートしないよ私は」

「マスター、本当ですか? 割とそれは不味い………」

 

 天草の抗議なんて、なんのその。春香さん完全放任モードです。

 そして、困ってる天草を気にせずに巨大魔猪は巨体を活かした突進を咬ましてくる。全を粉砕し、防御を穿つそれの対処法は回避だけ。身をこなし、ギリギリの所で避け、反撃を叩き込むが巨大魔猪は意に介さない。膨大な体力の前には無力同然なんだろう。

 

「(このままでは………ジリ貧確定ですね。とりあえず───)孔明! 支援頼みます!」

「了解! こういうのは如何だ?」

 

 洗練された指揮による攻撃、防御力の上昇。

 これなら───と思い、天草は日本刀で攻めたてる。指揮による強化が入るのは一定時間だけだ。その間に斃し切るのが吉だが………いかんせん、天草四郎時貞というサーヴァントは純粋に火力が足りない部類にある。故に───

 

「削り………切れない!」

 

 あと少し………もう少しだけ継続してくれれば、致命傷を与えられるのに。僅かに足りない………そんな中───

 

「───さっきの御礼分くらいは働きますよ!」

 

 玉藻の支援。類い稀なる領域にまで至った呪術による強化となれば、歴戦の孔明の指揮に劣るとも言えない。

 

 嗚呼、分かる。これなら───斃し切れる!

 

「せいっ!」

 

 日本刀の斬撃と黒鍵による投擲刺突。いつも以上に力を振り絞っているように思える天草は無性にカッコ良く見える。

 そして、締めは───

 

 

「───『天の杯(ヘブンズフィール)』起動。万物に終焉を……双腕(ツインアーム)零次収束(ビッグクランチ)!」

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

「疲れた…………」

 

 グデーと自室のベッドに倒れ込む春香。身体の疲労というか、精神的な疲労が襲っているように思える。

 

「……まぁ、でも…………疲れた分だけの成果はあったっぽいしね。天草、玉藻とは仲良く出来そう?」

「だから、無理ですって。先の戦いの支援は、私が彼女を一度救った分のお返しでしょう。互いの貸しは無くなったんです。ただでさえ、好きになれない部類の相手なのに、仲良くなれなんて拷問の類いでしょう」

「そうかなぁ……天草がそう思ってても、多分、玉藻は天草の事を嫌いでも苦手でもないと思うよ」

「そう思う理由は?」

「最後の戦闘、あの時の天草はいつも以上に凄かった。普段以上に凄絶な戦い方だった。あれは間違いなく、玉藻の呪術による支援の賜物でしょ。あそこまで戦術的に噛み合って、性格が合わない……そんなこと無いと思う。互いに意地を張り合ってるだけなんだよ」

 

 春香はそう言い切れる。それは二人其々の願いを聴いていたから。

 天草は『全人類の救済』を願い、玉藻は『己の魂に呼応する者と寄り添うことによる幸せな暮らし』を願う。

 世界規模と個人規模。全と一。

 そんな対極の位置に在る願いを抱いている二人だからこそ、自身と反対側を認めれない。認めてしまえば、少なからず其方に傾きかけてしまうから。

 そうしたならば、抱く願いは揺らいでしまい、本来の願いを見失うかもしれない。そんなこと……聖杯を望む英霊にとっては耐えられるものなのだろうか?

 確かめる方法は無い。だって、春香はただの人間だ。英霊なんて謂れる崇高なものでも無いし、思考を隅々まで理解出来ている訳では無いのだから。

 

 そうやって理解した上で、春香は続ける。

 

「でも、多分、対極の二人の仲が少しくらい近くなっても、願いが揺らぐことって無いと思うんだ。だって、その程度で揺らぐのが後の世まで語られる英雄な訳無いし。二人は英霊である以前に人間───って、玉藻は神霊だから神様か。まぁ、神でも何でも良いけど、意思はある。対話は出来る。なら、少しは丸くなっても良いんじゃない?」

「……そう、ですか。言いたいことは分かりました。その理屈を鑑みれば、確かに少しは考えを改めても良いかもしれませんね。あの力……有効に利用出来れば良いですしね」

 

 うわー……最大に下衆いなぁと春香は呆れる中、自室の扉が開かれる。

 そこにいたのは───玉藻の前。しかも、手には重箱。

 

「失礼します、マスター。……で、その…………そこの」

 

 玉藻は随分と失礼な呼び名で天草を呼び、指差す。

 

「えっと……何と言いますか…………さっきは! ……助けていただきありがとうございました。その、御礼というか何と言いますか、少し私の手料理を食べてほしいなぁーなんて思ったり思わなかったり……そ、そうです! 毒味です! ええ、決して他意は無いんですよ、ええ!」

 

 無理矢理な言い訳がましいのに加え、顔が存外赤い。玉藻にしては随分と珍しいのでは?

 春香はそんな玉藻から視線を外し、チラッと天草の方を見ると、彼は彼で呆気に取られていた。だが、状況の整理が追い付いたのだろう。一度、クスッと微笑み───

 

 

「分かりました。では、いただかせてもらいますよ」

 

 

 

 

 






ここまで辿り着いたということは、読み切ってくれたという事なんでしょう、多分。

正直な話、天草と玉藻。この二人のFGOにおける戦術上の噛み合い方はハマれば凄いです。スキルターン短縮、NP上昇の宝具とArtsUPの嫁入りに加え、天草の洗礼詠唱でのNPチャージとかが噛み合えば、宝具回転率の高さが凄いです。相手にバフが付いても、バリバリ剥がせますよ。オススメはしませんが

もう色々言いたいですが、ここいらで筆を置きます。飯が待っています。
とりあえず続きは書きたいけど、続かないと思うので書きません。故に短編ですしね

次回は「闇影の軌跡 −黎明−」の新話でお会いしましょー!(宣伝)

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