お正月企画三題噺シリーズ   作:ルシエド

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お題:『筋肉』『百合』『錬金術』
原作:エスカ&ロジーのアトリエ

 カオスなお題から割と無難な着地点が発生する……!




第二回:エスカ・メーリエとロジックス・フィクサリオのつまらない一幕

 ウィルベル・フォル=エルスリートと、ニオ・アルトゥール。きゃっきゃと絡んでいる二人を見ながら、マリオン・クィンは懐かしそうに、微笑ましそうに、けれどこどこか危機感を漂わせてぼそっと呟いた。

 

「……女錬金術師って、女同士の付き合いで妙に満足しちゃうフシがあるのよね」

 

「えっ?」

 

 突然そんなことを隣の人が言うものだから、エスカ・メーリエは戸惑ってしまう。

 

「いやね、本人達は満足してると思うの。

 話に聞く異性関係とかってとても面倒そうだし。

 だから気楽な友達関係だけして過ごしてれば、それはそれで楽しいと思うんだけど……」

 

「はぁ」

 

「いや実際、私がその楽しさに浸ってるからそう感じるんだけど」

 

「あ、私知ってます! 恋愛まで行かない、けれど普通の友情より親しい関係。

 女性限定でそういう関係のことを、『百合』って言うんですよね?」

 

「……最近はそういうの、女性同士の同性愛も含むらしいわね……んもう……」

 

 二人は並んで座っていたが、いつも通りに元気に満ちているエスカとは対照的に、仕事で疲れているマリオンは極めてダウナーだった。

 普段"ちょっと気にしている"程度の事柄が、ぐでっとテーブルに寄っかからざるを得ないくらいの負担に変化してしまっている。

 

「周りの目とか時々聞こえる噂話とか……加齢と共に増えて……辛くない? 分からない?」

 

「そ、そうなんですか」

 

「いやね、気にしなければいいんだけどね……今は今で気楽だし……」

 

 女の子同士の絡みは目に優しい。

 実際同年代の少女だけでイチャイチャし、楽しく日々を過ごすことはとてもよいことだろう。

 だが忘れてはならない。アトリエシリーズの世界は残酷なのだ。

 この世界では作品を跨ぐたび、容赦なくキャラが歳を取っていく。

 14歳だったロリが33歳になっても頑張っていたりするのであった。

 

「いい、エスカ。ロジーとはちゃんと仲良くしておきなさい」

 

「え、なんでですか?」

 

「この話の流れで分かるでしょ」

 

「………………い、いやいやいや! いやいや! いや! 何言ってるんですか!」

 

「へん、その胸の時限爆弾を解放すれば一発でしょ」

 

「な、ななな……あ、お酒臭い! 仕事終わったからって、飲んでたんですか!?」

 

 どうやら変な酒を飲んでいたらしい。絡む内容が女性特有のそれで、絡み方が酔った親父のそれだ。よく見るとほんのり頬も赤い。

 楽しそうに絡んでいるウィルベルとニオと比べれば、こちらの絡みはまるで錬金釜の中のようにごちゃっと煮えた雰囲気がある。

 

「エスティ・エアハルトという人を知ってる? その人はね……」

 

(折を見て逃げた方がいいかも)

 

 恋愛系の話でいじられるのが、エスカはどうにも苦手だった。

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 エスカをいじるネタに使われていたロジーことロジックス・フィクサリオは、デューク・ベリエルが経営する酒場酒場「竜の拳」のカウンターに突っ伏していた。

 

 ロジーはこの地方にやって来た時点では剣術素人。体力もさしてない。そういう人物だったわけで、それを隠しているわけでもなかった。

 なのだが、それを筋肉の鎧を身に纏った元討伐者の酒場のマスターに聞かれたのが運の尽き。

 鍛えてやるよ、という善意の言葉から、否応無しのトレーニングに巻き込まれてしまったのである。

 

「お前が細いから鍛えてやろうと思ったんだが……」

 

「ぜはっ、ぜはっ、ぜはっ……」

 

「意外と体力あったのは驚いたが、体格相応だったな」

 

「……俺が……研究職の人間だって……忘れてないか……」

 

 細身のイケメンが台無しだ。

 全身の筋肉は気怠い倦怠感に包まれており、明日は筋肉痛で動けないことが予想される。

 ぜはーぜはーと荒れていた息を整えて、ロジーは差し出されたコップの水を一気飲みする。

 これだけで筋肉が付くか? 付くわけがない。ちょっとは付くだろうが、こういうのに大切なのは日々の積み重ねなのだ。

 

「悪い……ちょっと……店の裏で休ませてくれ……」

 

「はいよ」

 

 店の裏にふらふらと移動していくロジー。

 このままだと無理に鍛えさせられたことに対し、愚痴ってしまいそうだったからだ。デュークの善意に対し、そういうものを返したくないと、堅物のロジーは考えている様子。

 愚痴ックス・フィクサリオになる前に、彼は店から消え、その一分ほど後にエスカが現れる。

 

「こんにちわー。ロジーさん居ますかー?」

 

「ああ、さっきまで居たな。すぐ追えばすぐ会えるぞ」

 

「よかったぁ、やっぱりここに居たんですね」

 

 デュークはまず何か飲んでけ、と水入りのコップを差し出す。

 飲んだくれから走って逃げ、その後も走ってロジーを探していたエスカは、喉が渇いていたために、ありがとうございますと微笑んで、それを飲む。

 

「あ、悪い。洗ったコップと洗ってないコップ間違えた。それロジーが使ってたコップだな」

 

「ぶっ」

 

 そして、吹き出した。

 

「な、なななななななんてことしてくれるんですか!」

 

「おいおい、褒めてくれよ」

 

「褒めませんよ! なんで褒めてもらえると思ったんですか!」

 

 そう言われると、エスカは自分が口を付けたところだけが少しだけ他の場所より暖かかった気がしてきて、慌てふためいてしまう。

 ちなみにコップの件は本当だが、マスターはちゃんとコップを水洗いしていたので、コップが暖かいとかそういうことはありえない。気のせいだ。処女特有の反応である。

 

「もう! 失礼します!」

 

 エスカはプンスカ怒って、酒場の外に出ていってしまう。

 エスカが酒場から出て行った一分ほど後、店の裏からまだちゃんと休めていないロジーがふらふらと彷徨い出て来る。

 どうやらまだ水が足りなかったようだ。

 

「うぅ……誰か来てたのか」

 

「ああ、客がな。もう帰っちまったが」

 

「悪いけど、水もう一杯くれないか?」

 

「へいへい」

 

 再度差し出されるコップ。

 さっき自分が使ったコップと同じコップであることから、ロジーは何の疑いもなくコップに口をつけ、一気飲みした。

 

「あ、悪い。洗ったコップと洗ってないコップ間違えた。それエスカが使ってたコップだな」

 

「ぶっ」

 

 吹き出すロジー。むせる。盛大にむせる。

 

「な、なんてことを!」

 

「おいおい、褒めてくれよ」

 

「褒めるか! なんで褒めてもらえると思ったんだ!」

 

 そう言われると、ロジーは自分が口を付けたところだけが少しだけ他の場所より暖かかった気がしてきて、慌てふためいてしまう。

 ちなみにコップの件は本当だが、マスターはちゃんとコップを水洗いしていたので、コップが暖かいとかそういうことはありえない。気のせいだ。童貞特有の反応である。

 

「畜生! しばらくこの店来ないからな!」

 

「そういや、エスカちゃんが探してたぞ」

 

「~~~っ、そんな、俺がエスカ探さないといけない直前であんたはこんなことを……!」

 

 ロジーは逃げ出すように店から出て行った。

 だが、エスカとロジーが店から出たタイミングは一分と少ししか違わない。

 外に出て走り出すルート次第では、エスカよりロジーの足の方が早いために、店の近くでばったり会ってしまうことになる。

 

「あ、ロジーさん!?」

 

「え、エスカ!?」

 

「……」

「……」

 

 店に声が聞こえる位置で、エスカとロジーが出会った声が聞こえる。

 そして、微妙な感じの空気が流れた雰囲気まで伝わって来る。

 これでも決定的な感じにはならず、少し距離が近付いただけでなんやかんや終わるのだろう。

 エスカとロジーの関係は、基本的にそういうものだった。

 

「お前ら小学生か何かか……」

 

 筋肉を付けてやれば少しは自身が付いて何か変わるか? と思っていたデュークであったが、この分だとロジーが大量の筋肉を付けたとしても、そんなに変わることはなさそうであった。

 

 

 




『百合』→アトリエやな!
『錬金術』→アトリエやな!
『筋肉』→ 不 協 和 音

 ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングちゃんが好きです

 強制的に軌道修正された感。トトリとミミでヤマもオチもない話を書こうとした場合、筋肉をどうしても混ぜられなかったので、便利なカップルに助力を願いました
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