お正月企画三題噺シリーズ   作:ルシエド

4 / 10
お題:『犬』『課金』『希望』
原作:仮面ライダー鎧武

 弱者が虐げられない世界を目指す戒斗、弱者を守るべく立ち上がった紘汰、二人の最終決戦が、今始まる……


第四回:DJサガラ「一番課金したやつが、黄金の果実を手に入れるのさ」

 世界の命運を決める戦い。

 どこにある? 多くの者が探した果実。

 どうつかう? 多くの者が探した果実。

 金はどこにある、金はどう使う、運命(うんえい)果実(かちく)の力。

 

 果実(かきん)を齧れば家畜(インベス)となると知りながらも、多くの者がその誘惑に耐えられず、預金の限界をオーバーロードした課金を行った。

 

「やはり最後まで俺の邪魔をするのはお前だったか……葛葉紘汰。

 運営の従順な犬が。いつの世も、お前のような善良な者が世界を守る。

 善良な者は世界のいい部分を見て、それを必死に守ろうとする。体のいい人柱だ」

 

 世界の命運は、二人の男の手に託された。

 葛葉紘汰と、駆紋戒斗。

 運営を基本的に肯定する運営の犬と、何やっても叩き噛み付く恐るべき狂犬。

 二人の男は世界の未来、一人の女の存在をかけ、街中でインベスの軍団を連れ対峙する。

 

「戒斗……お前は一体何がしたいんだ?」

 

「今の運営では決して実現できないソシャゲを、俺が……この手で創り上げる」

 

 戒斗は力強く虚空を握り、握り潰し、力強く未来を語った。

 

「何だよそれは…!」

 

「弱者が踏み躙られない世界だ!

 誰かを虐げる為だけの力を求めない。

 そんな新しい命で……この星を満たす。舞と一緒に、知恵の実を使って!」

 

 そう言う戒斗の背後には、課金の果てにインベスとなった哀れな課金弱者達が居た。

 そう誓う戒斗のポケットの中には、使用済みのGooglePlayカードが何十枚も入っていた。

 戒斗の背後に、彼の真の姿……オーバーロード・ロードバクシの姿がゆらめく。

 

「今の世界でそれは無理だって言うのか!」

 

「それが俺の生きてきた時代だ。誰もが強くなるほど……優しさを忘れていった!」

 

 自分より課金した者。

 自分よりちょっとだけ運が良かった者。

 狙ったものをさっさと当てた者。

 そんな者達が、弱者であった頃の駆紋戒斗や課金弱者達を蹂躙していった。

 ボーダー? ランキング? 対人対戦? そんなもの、踏み躙られる弱者からすれば、勝者と強者だけが笑う上位者の傲慢と殺戮でしかない。

 欲しかったものに手を伸ばしても、何も手に入らない。

 その苦痛を、戒斗はよく知っている。

 

「強くて優しい奴だって大勢いた。皆そのソシャゲを守ろうとして必死だった!」

 

 そんな戒斗に、紘汰は心強き弱者だった者として反論した。

 その反論に、戒斗は更に反論する。

 

「そんな奴から先に死んでいった!

 優しさが仇になって、本当の強さに至れなかった!

 無課金の分まで課金し、運営を支えようとし……

 課金虚しく、サービス終了という形で裏切られていった! 貴様もそうだ、葛葉紘汰」

 

 フリーターのくせに"終わって欲しくないから"と、ソシャゲに課金し続けた。

 その挙句、そのソシャゲは終わってしまった。その悲しみは、筆舌に尽くし難い。

 だが、紘汰は諦めなかった。心折れなかった。

 手元に何も残らなくたって、ソシャゲに課金し続けた。

 何も返って来ないと知りながら、人を助け続けた。

 その瞬間の自分の心が求めるままに、報いなど無い地獄を駆け抜けた。

 

 彼の名は鎧武(ガイム)。課金は他者に迷惑をかけない自己満足―――ゆえに、害無(ガイム)

 課金ライダー害無だ。

 

「いいや」

 

 ゆえに、戒斗の主張に対する紘汰の返答は、『ノー』である。

 

「俺はお前だけには負けない」

 

 紘汰が構える。

 自分が課金だけの力でランカーになったのではないということを証明するために。

 "使った時間もプレイヤースキルも高くねえと取れねえんだよ"という絶対の正義がこの世にあることを、その正義の味方が居ることを、戒斗に知らしめるために。

 

「お前を倒し、証明してみせる。ただの課金だけじゃない……本当の強さを!」

 

「それでいい。貴様こそ俺の運命を決めるに相応しい」

 

 二人は、自身の全身全霊でぶつかった。

 

「葛葉ァッ―――――!!」

 

「戒斗ォッ―――――!!」

 

 刃が振るわれる。

 戒斗は爆死者、敗北者、負け犬、妬む無課金の強烈な負の感情を背負い。

 紘汰は成功者、重課金、幸運者、普通に楽しんでいる者達の思いを背負い。

 無限に刃をぶつけ合う。

 

 全てを下に置き、引き連れるのが君主(ロード)

 全てを上に置き、全てを積み重ねるのがフルーツバスケット。

 二人は対象的だった。

 

「戒斗!

 悲しみや絶望の他に手に入れたものはなかったのか!?

 その怒りが……お前の全てだったのか!?」

 

「そうだ! 弱さに痛みしか与えない世界……強くなるしか他になかった世界を俺は憎んだ!」

 

 だが、無課金の負の感情が、のうのうとソシャゲを楽しむ者達の喜びを許さない。

 

 経済的弱者に痛みしか与えないソシャゲ。

 強くなる以外に道を与えられないソシャゲ。

 その全てを戒斗は憎んだ。

 その全てを滅ぼすことを、戒斗は望んだ。

 

「今、その全てを滅ぼす力に手が届く! 貴様を越えた先に!」

 

 課金量の差を埋める戒斗の執念。妄念。意志。紘汰はずっと、彼が持つこの強さに憧れていた。

 

「超えさせない、超えちゃならない! 戒斗! それがお前にとっての俺だ!」

 

 無課金が課金勢を超えてはならない。それは絶対の法則だ。

 

 それが破られてしまえば、壊されてしまえば……ソシャゲという世界は、滅びてしまう。

 

「だから……それでも、俺はっ!」

 

 限界を越えた先にある限界、それさえ越えた先の限界。

 極みを目指して限界を越え続けても、その先にまた限界がある。

 成長という形で、無限にエスカレートしていく二人の極み。

 それすらも越えた時……紘汰の手にした刃が、戒斗の腹を貫いた。

 

「―――か、はっ」

 

 決着。刃をもって世界を変えようとした男の末路は、刃にて終わる。

 

「何故だ……葛葉。何がお前を……そこまで……強くした?」

 

「ソシャゲとフレンドを守りたいという祈り……

 無課金もログイン低いギルメンも見捨てないという誓い……それが俺の全てだ」

 

 戒斗が求めた本当の廃課金、廃ランカーの姿を体現する紘汰の目から、涙が溢れる。

 

「何故……泣く?」

 

「泣いていいんだ。

 爆死した時も。

 知り合いが引退した時も。

 乱数でポロッとボスに負けた時も、報酬取り損ねた時も。

 それが俺の弱さだとしても……拒まない。俺は泣きながら進む!」

 

 "お前も泣いていいんだ"とでも言うかのように、紘汰は泣きながら、戒斗に言葉をかける。

 

「お前は……本当に強い」

 

 そう言い残し、戒斗は死んだ。死因、年始ガチャの回し過ぎという遠因による爆死。

 彼に心残りはあるまい。

 後は紘汰とヘルヘイムの森(消費者センター)の力が世界を良い形にしてくれるだろうと、信じられたからだ。

 

 敗者の絶望。皆の希望。その戦いは……希望が絶望を打ち破ることで、決着した。

 

 

 




『犬』→運営の犬が……
『課金』→運営の犬が……
『希望』→だけど! 希望を持っている方が勝つんだ!

ミチザネ「それが課金……僕の求めていた力!」

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