あべこべマスターシンデレラガールズ   作:田所総司

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週一投稿を目標に頑張りたいと思います


一般人編
第1話


「ええ!?僕がアイドルにですか!?」

 

 この奇妙な世界に来て5年目、私、逢坂 悠貴 16歳は人生の大きな節目を迎えました。

 

 4年前、気がついたら僕は知らない部屋のソファに横になっていた。慌てて飛び起きるとなんと、小学生探偵よろしく背が縮んでいた!

 

「どうなってるんだこれ……」

 

 自分はたしか、リビングのソファで深夜アニメを見ながら寝落ちしたはずだ。あまりにも非現実的過ぎる事態に困惑しながらも、自分の寝る直前の行動を思い返していた。途中で誰かに運ばれた記憶もないし、仮にそうだとしても背が縮んでいるのはおかしい。理解が追いつかず、思考が止まりかけるが途方に暮れていても仕方ないと自分を奮い立たせ、部屋を調べることにした。

 

 逢坂 悠貴 12歳、今年の春から中学生、身長は157cm、体重は47kg、住んでいる家の間取りは1LDK、食器や歯ブラシなどの洗面用具の数からおそらく一人暮らしであると推測される。これらのことが調べてわかったことである。

 

 これはいわゆる時間逆行か異世界憑依、あるいはその両方ではないだろうか。僕は集めた情報からそう推理した。名前は元の身体の時と同じ、顔も小学生の時の自分で間違いない。しかし、自分には家族がいたし、住んでいた家と間取りが違う。そこから推測されるのは並行世界のようなものに住む自分に憑依したという可能性である。そして、本来の自分よりも若いので時間も逆行しているかもしれない。そう思い、納得することにした。原因は分からないが落ち着くことが最優先だった。ある程度考えがまとまって落ち着いたところで、今度は別の問題が浮かんできた。

 

「お金はどうなってるんだ……?」

 

 そう、生活費である。一人暮らしなんかは別にいい。外見は12歳だが、中身は十分に大人だ、慌てることじゃない。しかし、お金という先立つ物がなければ人は暮らしていけないのだ。財布が見つかっても中身は良くて数日分の生活費しか入っていないだろう。子どもだからキャッシュカードなんていう物騒なものも持ってないだろう。だから、親から生活費が振り込まれてくるであろう通帳を探さなければならない。お金を引きおろす方法がなければ自分は餓死してしまう。憑依なんていう不思議体験は万歳だが、通帳が見つからずに餓死なんていう情けない死に方はごめんだ。そんな思いで僕は慌てて通帳を探し始めた。

 幸い、お財布と自分名義の通帳はすぐに見つかった。最近お金をおろしたばかりだったのか、かばんの中に通帳と印鑑と財布と携帯電話が入っていた。通帳には8桁にもおよぶ金額が記載されていた。あまりの額に驚きつつも、生活の目処が立ち安心した。しかし、よくよく考えたらこの歳で一人暮らしというのはありえない。漫画やアニメのように親が小学校を卒業したばかりの子どもを置いて長期の海外出張でいないなどということはありえないのだ。でも、どう見ても一人暮らしだ。嫌な予感がして通帳をもう一度確認するとその8桁の金額は同程度の金額が差し引かれた後のものだった。この世界の僕の家族はもう、おそらくこの世にはいない、通帳に記載された死亡保険の4文字がそのことを僕に知らせていた。

 

 

 市役所に行き両親と自分の戸籍を取り寄せたり、インターネットや新聞で死亡事故や殺人事件について調べていたら1週間が経った。やはり、1年ほど前に両親は交通事故で死亡しており、自分は親の友人の弁護士の人に後見人になってもらい、一人暮らしをしていたようだ。数日前まで毎日突き合わせていた顔が死人扱いになっている事実に困惑しながらも、元の世界に帰る方法がわかるまでは一人暮らしを満喫することにした。前向きにならなきゃ正直やっていけなさそうだったから。

 

 

 

 僕がこの世界に違和感を覚えたのはそれから2週間程経った時だった。中学校が始まるまでまだ時間があり、特にすることもなかったので、本の虫だった僕は本屋に出向いては本を買い漁り、家で読みふけるという日々を過ごしていた。本を買うときに女性の店員さんに珍しいものを見る目で見られたが、純文学や時代小説なんかをたくさん買う12歳児なんかはそうはいないし仕方のないことだろう、普通は漫画やファンタジーにハマる年頃だし。

 

 さて、今日も今日とて本を読んでいると、家庭裁判所から電話が入った。なんでも、本人の希望で一人暮らしをさせているが、男の子の一人暮らしなど危険が多すぎるし、まだまだ子どもだから自分でちゃんと生活できるかも分からない。そのため二ヶ月に一度家庭訪問を行い、自活できていないようであれば、数度にわたって指導をし、半年後に改善が見られなければ家庭裁判所の預かりの身になるといる取り決めがあるらしい。そして、その家庭訪問の日が近づいたので連絡したのとこと。さらに、次の訪問で改善が見られなければ家庭裁判所送りになるとのこと。男の子の一人暮らしに存在する数多の危険の意味がわからなかったが、僕は後半の部分を聞いて焦った。見た目は子どもだが頭脳は大人なのだ、いまさら里子になって幼児プレイなどしたくない。ましてや、はたから見れば両親を失って傷心の身、どんだけ甘やかされるかわかったものじゃない。この歳になって甘やかされるのはあまりにもキツすぎる。どのくらいキツイかというと、27歳の女性が17歳の現役JKを名乗るのと同じくらいキツイ。

 このままではまずい、そう思った僕は部屋の片付けを始めた。憑依してからの3週間は気が向けば料理を作っていた。しかし、憑依以前のぐうたらだったであろう僕の貯金、いや借金があまりにも大き過ぎた。まずは衣類である。中学に入ってしまえば制服になるし、まだ子どもだから二着くらい部屋着を洗って着回せばいいだろうと洗濯物を入れるかごの中に溜まっていた冬服を放置していた。弁明があるとすれば、ウールとかは洗濯に手間がかかり、物によっては手洗いしたり他の洗濯物と分けたりしなければならず、後回しにしていた。あとはぶっちゃけ衣替えがめんどくさかったのだ、防虫剤を用意したりするのとか。食器に関してはおそらく頻繁に出前を取っていたのか、割り箸だけがたくさん台所のゴミ箱に捨ててある。2クラス分の席替えのくじ引きのくじが作れそうなほどだ。これが見つかるとどうなってしまうのかは想像に難くない、間違いなく料理ができない、店屋物頼りの不摂生な食生活が行われていると判断されるに違いない。しかし、ゴミを出そうにもいつが可燃ゴミの日なのかわからない。もしかしたらゴミ出しの日は家庭訪問の後かもしれない、とりあえず、一階にある掲示板にゴミ出しの日を確認しに行くと、幸いなことに家庭訪問の日までに間に合うようだ。安心して部屋に戻り、僕は掃除を始めた。

 

 

 

 遂に家庭訪問の日が訪れた。

 

「テーブルよし、お茶請けよし、寝癖なし、服装よし」

 

 最終チェックも終わりどこからどうみても健康で文化的な生活が行われている部屋だと自信が持てたところで一息つく。これなら里子に出されたりすることはないだろう。そんなことを考えながらお茶を沸かしているとインターホンが鳴った。カメラで姿を確認してドアを開ける。するとそこには怒った顔をした眼鏡にスーツ姿で美人な女性と強面の警察官の服装をした男性が立っていた。

 

「ど、どうも〜逢坂です」

 

 何を怒っているのかわからないが、とりあえず愛想笑いを浮かべて誤魔化す。保護されないように点を稼がなくては。

 

「こんにちは、今回から担当になった家庭裁判所から派遣された調査官の市原です」

「少年課の握野です」

「立ち話もなんですので、どうぞお上がりください」

 

 とりあえず、中へと案内する。ちらっと市原さんを見ると靴箱の上を指で撫でて埃がつかないかチェックしていた。その様はまるで、嫁をいびり倒そうとする姑の様だった。どうやら敵は本気で僕を捕獲するつもりらしい。しかし、僕は絶対に保護されたくないという鉄の意思のもとに必死で掃除したのだ、埃など出てくるははずがない。怒り顔であることに緊張しながらも、その点に関しては焦ることなく居間へ案内する。

 

 そんなこんなでリビングに入り、テーブルに着く。

「逢坂くん、貴方は自分がどういう立場かわかっているの?」

 市原さんは席に着くなり、強めの口調でそう質問してきた。これは一体何を問われているのか。やはり、既にどこかでミスを犯したのか!?逡巡しているとあることに思い当たった、インターホンで警察官の服が見えたからろくに疑うこともせずにドアを開けてしまっていた!!これはまずい、大きな減点対象だ。JK仲間でカラオケに行って一人だけ昭和のアイドルソングを歌うのと同じくらい大きな失態だ。内心戦々恐々としながらも答える。

「はい、わかってます。まだ、幼い子どもの一人暮らしです」

 とりあえず、自分が幼い子どもであることを知っているアピールをすることでそこらへんの大人扱いを望むおませな縦笛を吹いている子どもよりもさらに一歩進んだ大人な子どもを演出する作戦で行くことにする。

「その割には警戒心が足りないと思うの、さっきだってインターホンでろくに確認もしないでドアを開けたし」

 やはり、痛いところを突かれてしまった。市原さんはさらに言葉を続ける。

「握野くんの顔を見てどう思う?」

 うーん、見事にイケメンな悪人面だ。それこそ最近のイケメン俳優を利用して子どもだけでなく母親まで取り込もうとする覆面系特撮ヒーローモノの悪の司令官が務まりそうなくらいに。名前もあくのっていう、本当は27歳なのに10歳くらいサバ読んでいるのがバレないのと同じくらいの奇跡レベルで似合っている。本人も気にしているのだろう、市原さんをなんとも言えない表情で見ている。ここは警戒心を持っていることを示すために怖い顔というのが正解なのだろう。

「普通にかっこいいと思います」

 味方を作るためにゴマをすることにした。

「そうね、悪人面でしょ?戦隊モノの悪役がハマリ役になりそうなくらいの」

「市原さん、俺だって気にしてるんですからあんましそういうこと言わないでくださいよ」

 やっぱり気にしてたんだ。

「ええ、ごめんなさい。主人公のライバルのダークヒーローっぽい感じの怖い顔してるでしょ?」

 結局、属性が悪で怖い顔であることは変わってないが、話を進めるためにか握野さんも黙っている。

「怖い顔の大人がいたら子どもは普通警戒するの、それなのにあなたは誰なのかを確認することもなくドアを開けたわ。いくらなんでも無用心過ぎよ。男児の誘拐はよくある事件なの、いくら警戒してもいいくらいに」

「でも、人を見た目で判断してはいけないって習ったので……」

 ダメだとわかっていても正論で反論してみる。

「そうね、それ自体はいい心がけだわ。でもね、それは友人を作るときの話で、さっきみたいな知らない人が訪ねてきたときはしっかり警戒しなきゃダメよ、男の子なんだから」

「さっきから男の子であることを強調されますけど、そんなに重要なことなんですか?たしかに今の時代は変な人がたくさんいるって聞きますけど……」

「そんなことも知らないで一人暮らししたいって言ってたの!?」

 市原さんは声を大にして驚く。握野さんもびっくりした顔をしている。

「そんなに驚くことなんですか?」

「あなたの場合、しっかりとした説明を受けてないのはしょうがないとはいえ、いくらなんでも無防備過ぎよ!自分の立場をわかっているって言ってたのは嘘じゃない!いまから説明するわね………」

 

 そう言ってこの世界での驚くべき事実の説明が始まった。

 

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