無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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09 リバイバル

 中はあの爆発が嘘のようにそれなりに綺麗だった。ソファーや机は勿論、電子機器も多少の被害はあったようだが、それでも大半の物が生きてるままだった。

 

「私は攻撃とかの魔法はシューター3~5発同時に作るのが限界でね~。むしろ結界とバインド、強化魔法に特化した肉弾戦型なんだ~」

 

「それってつまり、結界魔導師……ってやつっすか?」

 

 弾がそう聞き返すと、正解と笑って答える。

 

「でも結界魔導師って言えば数が少ないうえに基本的に後衛職ですよね?それがなんで肉弾戦を?」

 

「う~ん、正確には束さんの結界は諸々特殊でね?広範囲結界は勿論出来るんだけど、得意なのは自分の身体に膜を張るような、そういう小規模結界なんだよ」

 

「……つまり?」

 

 数馬の質問に対しての、束さんの答えに要領を得なかった俺が聞き返すと、洞窟の中にあった少し大きめの岩の前に束さんは立った。

 

「普通、身体強化の魔法は身体全体にかけるものなんだけど……」

 

 そういって束さんは躊躇いもなく岩にパンチをぶつける。当然割れるわけではなかったが、寧ろ束さんが割れなかった事に疑問が残った。

 

「これが普通のパンチね。で、この束さんの場合だと……」

 

 再び束さんが右手を構えると、今度は右手首からミッド式の灰色の魔方陣が何重にも展開され、拳の色も灰色に染められて……

 

「セリャ!!」

 

 再び岩に拳がぶつかる。すると今度はなんの抵抗も無く、ただ陥没するような音ともに岩は崩れ落ちた。

 

「「んな!?」」

 

「そんな!?いくら身体強化でも素手でこんな風に簡単に……」

 

 俺たち三人は揃ってあり得ないというように驚く。

 

「原理は単純なんだけどね。手首だけに結界を何重にも展開させて、その一つ一つに物理保護と強化の魔法を付与する。さらに束さんにはレアスキルもあるからその恩恵もあるし」

 

「「「レアスキル?」」」

 

「そ、特殊技能系レアスキル『増幅』って言って、結界及び結界に被われてるものに付与されてる自分及び対象の発動した魔法の効果を倍化させる。つまりゲームとかで毎ターン100ダメージ相手に与えるとしたら、その数値が二倍の200になるってわけ」

 

 その説明を聞いて俺は嫌な予感がした。

 

「てことはさっきのパンチって……身体強化少なくとも何百倍の効力を付与されてた訳ですか?」

 

「察しが良いねいっくん、けど桁が違うんだな~これが。さっきのは四重に掛けたから、最低でも千倍の強化されてるかな?常人ならまず負荷に耐えられなくてポッキリ逝っちゃうだろうね」

 

「せ、千倍……」

 

 桁がおかしすぎるが、それが束さんクオリティなのだから仕方がない。

 

「ちなみにミッドとかの格闘競技だとこの技術はある意味、徒手空拳の上級者なら殆んど使いこなせるそれだと考えていいよ。もっとも、束さんのが結界で固めるに対して、そっち方面だと魔力を拳に覆うイメージなんだけどね」

 

「あれ?それってどっちも変わらないような」

 

「ところがどっこいなんだな~だーくん。格闘選手の場合掴み技とか投げ技とかで指先全体を魔力をコーティングするから、掴んで電撃ビリビリ~!!って応用も出来るんだけど、そこまで高い攻撃力は無い。束さんのタイプの場合は殴る、蹴る、ついでにガードぐらいにか使えないけど、一発一発が致命傷になってもおかしくない攻撃力があるんだよ」

 

「つまりテクニックを取るかパワーを取るかで結界を使うか直接纏わせるか別れる……と?」

 

 数馬の物言いに、そんな感じかな、とあっけらかんという束さんは慣れた手つきで紅茶を淹れ、置かれているテーブルに乗せる。

 

「まぁそれは別に良いとして、用件なんだけど……」

 

「「「……」」」

 

「アイツ……あの変態馬鹿マッドは元気にしてやがるのかって事かな」

 

「「「変態馬鹿マッド?」」」

 

 誰だそりゃと思ったが、次の瞬間に、あっちで自前のロボットを合体、巨大化させるシステムを考えてる、我らが頭目の事を思い浮かべた。

 

「それって、スカさんっすか?」

 

「そ、ジェイル・スカリエッティ。私にとっての師であり、ISコアの開発者の一人であり…………私の初恋の相手だよ」

 

「「「ちょっと待て!?」」」

 

 束さんの聞き捨てならない発言に俺たちは揃って声を荒らげる。

 

「スカさんが束さんの師匠!?」

 

「技術者というだけならそうだよ。魔法戦の技術はジェイルの猫ちゃん仕込みのものだけど」

 

「ISの開発者の一人!?」

 

「元々デバイスコアを地球の素材だけで作れないか、私とジェイルとで試行錯誤した結果なんだけどね~ちなみに女性にしか動かせないのは生態データにジェイルの遺伝子データを組み込めなかったせいなんだけどね」

 

「は、初恋って……いったいどんな年の差あると?」

 

「いやぁ~IS発表した頃で理解してくれるのがジェイルだけで……彼からしたら良くても娘止まりなんだろうけどさ。妻と娘も居たらしいし」

 

 スカさんに妻と娘……もう何を言ってるのかさっぱりだった。

 

「……ちなみにだけど、妻と娘さんの名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?プレシア・テスタロッサとアリシアちゃんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「マジ……すか?」」」

 

 テスタロッサ姓……これが示すのはつまり……

 

(((擬似的な親子喧嘩かよ……)))

 

 スカさんを捕まえようとする金色の死神ことフェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンとジェイルさんが実の(?)親子……そう考えると強ちそう判断するのが適切だった。

 

「あれ?なんか束さん地雷踏み抜いた感じ?」

 

「……その答えは自分で確かめてください。イモータル、頼む」

 

『了解しました。すぐにジェイルに繋ぎます』

 

「へ!?ちょ!?」

 

 なんか束さんが慌ててるがそんなのお構いなしに回線を開く。すると三秒くらいしただろうか、

 

『やぁそちらから通話してくるとは珍し……い……ね』

 

 珍しく回線に表立って出たスカさんの挨拶が尻すぼみするように小さくなっていく。

 

「お、お久しぶりです……先生」

 

(((束さんが敬語を使った!?しかも先生!?)))

 

『お、おうそうだな……ちょっと待て一夏君!?いったい何がどうなってそうなる!?』

 

「えっとじつはかくかくしかじか四角いム○ブというわけでして……」

 

 とりあえず事のあらましを喋ると、天を仰ぐようにスカさんが顔を手で隠した。

 

『はぁ、彼女の言うことはホントだよ。確かに彼女に技術や魔法の術を教えたのは私とリニスだし、ISのコアも、ハード面を作ったのは私だよ』

 

「まさかスカさんがIS誕生に関わってるとは思ってもみませんでしたよ……でもどうして束さんに魔法を?」

 

「あ、それは簡単に言うと先生がプレシアさんと喧嘩して偶々来たら無一文で倒れてたことろを助けてあげたんだよ」

 

「「「なにやってるんですかスカさん」」」

 

 まさかの残念さに、俺たち三人のジトリとした睨みがスカさんを襲う。

 

『いやね、研究にどっちも行き詰まってピリピリしてただけだからね!?研究者夫婦なんてこんなこと日常茶飯事だからね!?』

 

「そんな事言ってるから、プレシアさんに娘共々捨てられたんじゃ無いですか?」

 

『少し黙ってようかこの駄兎!!』

 

 わーわーぎゃーぎゃーと喧嘩する二人の姿が、どこか仲の良い親友のような感じがしてならない。

 

「で、結局先生は奥さんと仲直り出来たんですか?」

 

『…………すまない、それはもう出来ないんだ……したくてもね』

 

「……何があったんです?」

 

 そこから語られたスカさんの言葉は、衝撃というには足りないほどのそれがあった。

 

 プレシアさんと別れてすぐに娘さんであったアリシアは、プレシアさんの勤めていた研究所での安全を度外視した無理矢理な実験のせいで事故死、プレシアさんも責任を無理矢理取らされて研究所を追われた。

 

 プレシアさんは娘の死を受け入れられず、失意の果てに藁にもすがる思いでジェイルを頼り、結果、スカさん自身の過去の研究成果、プロジェクトFと呼ばれる実験を伝え行ったが、結果といえば瓜二つの少女は生まれたものの、完全には同じにならず、そこから紆余曲折を経て、プレシアさんは娘のアリシアの肉体と共に次元の空間に落ちていったらしい。そしてその過程で生まれたのが……

 

「フェイト・テスタロッサ……ですか」

 

『そうだ。もっとも、彼女に私との記憶の繋がりは殆んど無いだろうがね……』

 

「……ねぇいっくん、そのフェイト・テスタロッサ……って人は今は?」

 

「管理局の執務官をしてるそうで、ここ最近ではスカさんの事を独自に追っているらしいです」

 

 それを聞いた瞬間に束さんはグラッとふらついてしまう。まぁいきなりこんな重苦しいことを話されたら仕方ないといえばそうだ。

 

「先生、今度は何をしたんですか……」

 

『いや私も本意じゃないんだがね!?私の発表した論文やらプロジェクトを他人に勝手に使われて、その結果私に全部の責任押し付けられてるだけだからね!?』

 

「でもガジェットとか自作してるよなスカさん」

 

『あれも元々介護、救助用に作ったのを管理局の馬鹿共が質量兵器に転用できてしまう……なんてふざけた事を抜かしやがるだけだ!!確かに洞窟遭難者の救助のためにパワーアームは取り付けてるがね!!』

 

「なら飛行型とか大型は?」

 

『無人探査装置目的と……大型はあれだ、水中探査用だ』

 

「無理に説明しなくても大丈夫ですよ、見苦しい」

 

『手厳し過ぎないかね一夏くん!?理解してくれるのは嬉しいがもう少し何か言ってくれても!?』

 

 実際にそうなんだから仕方がない。

 

『グヌヌ……まぁそれはいい、それよりも何で彼女がここに居るんだ』

 

「俺達もこの人に呼び出されただけで……まさか束さん、スカさんと話したいから俺達を?」

 

「そんなわけ無いよ!?ちゃんと用事あるよ!!」

 

 そう言って束さんは置いてある机に向かうと、そこから何やら……って!?

 

「そ、それ、ISの待機アクセサリーじゃ?」

 

 持ってきたのは白いリストバンドに、紅いドックタグ、そして十字架を付けた翠のネックレスと、前に千冬姉が付けてた様な少し大きめのアクセサリーだった。

 

「お、流石いっくん。その通り、確かにこれはISだよ。ただしちょっと試験的な目的があるんだけどね」

 

『ふむ……三人とも、少し彼女の話を聞こうじゃないか』

 

 俺が断る前にスカさんが防ぐ。まぁ話だけなら別に構わないけど。

 

「さっきもチラッと話したけど、ISが女性にしか動かせないのは束さんの遺伝子情報しか存在しないから。つまりコアに男性という存在が登録されてないからだよ」

 

「つまり、逆に登録さえしてしまえば逆に男性でも操れる……と?」

 

「そういうこと。まぁそうなったら私の目的の宇宙開発なんてもっと離れていくんだけど、流石にここまで酷い停滞を見るとは思わなかった。なら男性のデータを積み込めば今度こそ……って事だよ」

 

『つまり、君の言うことは彼らをモルモットにする……そういうことかね?』

 

 スカさんの指摘に束さんはニヤリと嗤う。

 

「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ先生、私としては真逆、女尊男卑なんてくそ食らえ、今までの仕打ちに堪えてきたいっくんに力を与えようという……それだけですよ」

 

『事は言い様だね。だが、一夏君にはすでにデバイスがある。そこら辺の塵芥共には引けを取るはずがない』

 

「けどここは管理外世界……しかも先生のいるミッドチルダからはかなり遠いうえに外様の管理局じゃあ警察権限なんて無い。さらに魔法はおろかデバイスなんか使えばそれこそ管理局が戦艦連れてやってくるに決まってるじゃないですか」

 

 束さんの言葉にスカさんはぐうの音も出ないが、確かにこの人の言う通りだ。そんなことになればスカさんが捕まり……それと同時に鈴を助けられる方法も無くなる。

 

『…………だがISを動かすと言うことは、詰まる所女尊男卑の巣窟である……IS学園とやらに強制入学させられるのだろう?』

 

「そこのところは無問題!!あそこにはちーちゃんも居るし、何より私が信頼する子が入学する予定だからね!!」

 

『……何故だろうな、君が信用すると言う言葉に一切の信憑性が感じられないのは』

 

「「「同感です」」」

 

「揃って酷い!!」

 

 仕方ない、束さんの今までの行動を考えれば至極当然の事だ。

 

「本当に大丈夫だって!!口と態度は少し悪いけど、非女尊男卑だし、何より面倒見の良いイタリアの子だから!!」

 

「…………イタリア……っねぇ?」

 

「日本じゃ無いのがまたなんとも……」

 

「それだね、うん」

 

 まぁ俺達も日本政府が苦手と言うのは何となく分かるから何とも言わないが、そこまで信用度低いか?

 

「まぁそう言うわけだから、少なくともいっくんの彼女が助かるまでの三年間、よろしくね」

 

「「「いったいどこまで知ってるんだあんたは!?」」」

 

 翌日、新聞とニュースに『IS男性操縦者が三人あらわる』という文字が大々的に報じられ、暫く千冬姉によって食卓にウサギ料理が登場したのは、言うまでもない。

 




次回「10 IS学園」
千冬「リリカルまじかる……こんなもの言えるかぁ!!」
作者「ギャァァァァァァ!?」
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