無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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第二章 入学編
10 IS学園


 no side

 

 

 インフィニット・ストラトス……通称IS、世界の認識でそれは一人の天才科学者『篠ノ之束』が開発、提唱した宇宙開拓用マルチパワードスーツ。

 

 通常兵器の銃や剣は愚か、戦車の砲撃やミサイルですら破壊するにはかなりの労力が必要となり、かつ小型でその重量からは考えられない大気圏飛行能力と、宇宙開発が難航してる今、それは正しく『最強の兵器』と呼ぶに相応しい代物であり、それと同時に『最弱の兵器』でもあった。

 

 というのもIS、それを動かせるのは女性だけであり、篠ノ之束が開発したISのエネルギー源、通称『ISコア』はたったの467個だけしか存在しない故だった。

 

 元来軍隊というのは男性の職というイメージが日本の自衛隊含め諸外国でも浸透しており、ただでさえ少ない女性軍人にパイロットを無理強いさせなければならなくなった。

 

 さらに個数が500以下という事も含め、主要各国に2機、開発国の日本やアメリカなどの大国ですら、二桁あれば上々、さらに酷いのがISコアの数=国の最大戦力と数える戦争評論家のせいで各国は発表当初冷戦のような雰囲気だった。

 

 そこで世界政府はISを軍事転用するのではなく、あくまでスポーツ競技として扱うという決断を下したのだが、それは時すでに遅く、各国に『ISを動かせる女性が偉い』と、女尊男卑という新たな世界基準が生まれ、さらにISに戦闘機などが通じないということで軍縮の並みに乗ってしまい、一時期各国の失業者……特に元男性軍人がスラムを作るように溢れたぐらいだった。

 

 さて、そんな中に作られたIS学園、それはつまり『高校生ぐらいの年齢からISの国家代表ないし国家整備士』を育成する、または『新型ISのテスト場』という意味合いが強いが、それと同時にもうひとつ押さえておかなければならないことがある。

 

 それはつまり、『ISは女性が動かすのだから女子だけの学校である』……そう言うことだ。

 

 

 Ichika side

 

「「「はぁ、やりづらい」」」

 

 はい、皆さんおはようございました、織斑一夏です。え?それは中の人的にスカさんの台詞だろって?気にするな、俺は気にしない(オイ

 

 さて、今俺が居るのは紛うことなき少女たちの園であり、個人的にはあんまりかかわり合いになりたくない部類の専門高校、IS学園だ。

 

 あの衝撃ニュースから早4ヶ月、俺達三人は無理矢理にこの学園に入学することが決まり、なし崩し的にここに通うことになった(幸いなのは状況を見かねた千冬姉と、ニュースを見て飛んできたオータムさんのおかげで、マスゴミ達の排除と基礎知識をなんとか覚えることができた事ぐらいなものだ)。

 

「なぁ一夏、この先すぐに面倒事に巻き込まれるって思うのに、俺はうちの定食屋の大盛り無料券三枚賭けてもいいな」

 

「奇遇だね弾、僕もそれにこの学園の学食券を賭けてもバチは当たらないと思う」

 

「まったくだ、何でこんなことになったことやら……」

 

 揃って原因の天災ウサギがサムズアップしてる姿を幻視した俺達は、ため息をつきながらそれぞれの待機状態のISに触れる。

 

 ちなみにIS関連のことは束さん自ら千冬姉に理由なりを(半分嘘の半分真実だが)きちんと説明したことにより、なんとかアイアンクローと腕ひしぎ逆十字と(ISのブレードを使った)ケツバットと、束さんが大好きなウサギを目の前で調理して(束さん以外の俺ら三人プラス千冬姉で)食べることで、肉体的にも精神的にも許してもらえたらしい。

 

「皆さん全員そろってますね?ではSHRを始めま~す」

 

 と、そんなこんなをしていたら何やら眼鏡をかけたほんわかとした女性が目の前のドアからやって来た。

 

「それでは今日から一年間、皆さん宜しくお願いします」

 

「「「「「………」」」」」シーン

 

(((誰か挨拶しろよ……)))

 

 目の前の教師の挨拶に、皆が凍ったように何も喋らない。

 

「え、えっと……な、何かリアクションして欲しいんですが~」

 

 そう教師は言うが、それでもなお誰も彼も喋らず直立不動、無言の一言に尽きた。そのとき、突然何かが千切れる音が聞こえた。

 

「あはは~皆さん聞こえてますよね~?私、皆さんに挨拶したんですよ?それなのにまるで人っ子一人居ないように静かになって……挨拶もできねぇのか高校生にもなってよ!!アァ!?」

 

「「「!?は、はい!!すみませんでした!!マム!!」」」

 

 まさかいきなりぶちギレるとは思ってなく、あまりの苛烈な勢いに思わず俺達三人は軍隊のように立ち上がり敬礼と挨拶をしてしまった。他の女子生徒の何人かも、まさかの事に驚いて同じようにしている。

 

「あ、ちゃんと人間居ましたね、でも、これからはちゃんと挨拶されたら挨拶をかえしましょうね?これ、社会としての常識ですよ」

 

「「「す、すみません!!マム!!(((雰囲気と性格合ってないんだけど!?)))」」」

 

 とにかく謝りながら、俺達三人はそんな風に内心恐怖していた。同時に、この先生には間違っても二回無視するのは危険と心得た。

 

「はい、良い挨拶です。立ってる人達は座って良いですよ~。あ、でもその前に言っても挨拶しない家畜を放り捨てないといけませんね、ここ、家畜小屋じゃないので言葉を話せない家畜以下が居たらいけませんしね」

 

 そう先生が脅すように言うと、挨拶しなかった生徒たちがガクガクと震え始めた。今更ながらこうなるとは思ってなかったのか、後悔なんとやらとはこういうことなのだろう。

 

「まぁ今日は入学初日なので特別に見逃してあげます。けど、次に教師の話を無視したら、体が嫌だってのたうち回る程のお勉強をさせてあげますから、そのつもりでいてくださいね?あ、基本的に私の沸点はそこまで低くないので、談笑での弄りとかは別にこんな風にキレませんから安心してください。一応この学園一の良心なので」

 

(((この先生が一番まともなのかよ……)))

 

 まさかの宣言に戦々恐々としている俺達や生徒を他所に、先生はにこりと教壇に立つ。

 

「さて、改めまして入学おめでとうございます。私はこのクラスの副担任の山田真耶です。これから一年、改めてよろしくお願いします」

 

『よろしくお願いします』

 

「はい、皆さんよい返事です。やればちゃんと出来るじゃないですか。さて、担任の先生は少し会議で遅れていますので、今のうちに自己紹介でもしましょう。特に、女子の皆さんは男子の彼らに興味津々でしょうしね」

 

 そう言われて、全員の視線がこちらに集中する。特に俺達は中心に陣取って配置されていたため、全体から刺さるように視線を感じる。

 

 と、決意したように弾と数馬が立ち上がる。

 

「そんじゃまず俺から、名前は五反田弾だ。趣味特技はベースと料理、実家は定食屋してます。基本的に交遊関係にあれこれ言うつもりは無いけど、女尊男卑主義だけは大嫌いなんで、よろしくお願いするぜ」

 

「続けて僕は御手洗数馬です。趣味は読書とドラム、特技は槍の段を持ってます。弾達とは親友なので、揃って仲良くして貰えると嬉しいです」

 

 と、なんとも満点回答な自己紹介をし、数馬と弾は揃って俺の肩に手を置くので、仕方なく、だがニヤリと笑いながら立ち上がる。

 

「じゃあ最後に、俺は織斑一夏、趣味はギターと中国茶集め、特技は菓子作りと武術だな。一応言っておくけど、俺はちふ……織斑千冬の弟だが、俺に織斑千冬を求めないでほしい。以上」

 

 そう纏めると、回りが一気にまた静かになった。何事かと思った次の瞬間、

 

『キャァァァァァァァァァァァ!!』

 

 突然女子の黄色い悲鳴という名のソニックウェーブが、多重奏で襲いかかってきた。なんともうるさい。

 

「ワイルド系、知的系、スポーツ系!!こんなイケメン三人が入学してくるなんて!!」

 

「私を産んでくれたお母さんに感謝しないと!!」

 

「今度の母の日にはカーネーションを送るから!!」

 

「私、今まで母の日を母からお金を貰う日だと思っててごめんなさい!!」

 

 何やら色々言ってるが、とりあえず最後のやつはもう少し母親のことを大事に思ってやれよ。……俺、両親居ないけど……。っと、そうだ忘れてた。

 

「あ、それと俺彼女居るんで、色仕掛けとかしても無駄だからな」

 

『そ、そんな~!!』

 

 俺の宣言にショックを受けたのか、女子たちからどんよりとしたオーラが見てとれた。

 

「すまない、遅れてしまっ……た……な?」

 

 と、担任の教師がやって来たと思いきや、まさかの聞き覚えのある張りのある声にまさかと目を見開いてしまう。

 

 そこに居たのは、真っ黒なスーツをピシッと着こなし、黒く艶めく髪と、鋭いつり目、つまるところ……

 

「……いったい何がどうなっているんだ、これは?」

 

 我が姉にして、ISにおいて世界最強の女傑、ブリュンヒルデの二つ名を持つ肉体的にも人外な御仁、織斑千冬その人であった。




次回『11 お前は……』
真耶「はぁい、リリカルまじかるがんばります!!」
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