「さて、授業をと言いたいところなのだが……その前にクラス代表を決めようと思う」
(この)世界最強の姉の言葉に、クラスのほぼ全員の視線が姉にぶつかる。
「先生、クラス代表ってなんですか?」
「単純に言えば、クラス委員長みたいなものだと考えてくれればいい。もっとも普通の学校と違って、クラス代表は基本的に学級ごとのISイベントの際に代表として扱われる。よってアピールの場も多くなると考えてくれ」
軍隊式かと思いきやまともに説明することに驚くものの、とりあえず口にしたら何が起こるか分からないのでやめておこう。
「自薦他薦は問わん、誰が良いのか言ってみろ」
その瞬間、やれ俺がいい、やれ弾だの、やれ数馬だのと、分かっていたが圧倒的に推薦されてしまう。マジかよ……
「織斑先生、降りることってできます?」
「ふむ……済まないがお前たち、御手洗と五反田は兎も角、織斑は諦めろ」
流石に俺の恐怖症を知ってるだけに、姉は少しだけ悩むが難なく受け入れた。が、周りは不平不満が満載らしく、ブーイングの嵐になっていた。
「あー、推薦してくれたのはありがたいんだけどさ、俺ってちょっと昔に色々あって、刃物恐怖症なんだよ。ISとなれば銃とかは勿論、剣なんて使う人も居るから、対戦中に呼吸困難とか最悪発作とか起こしたらみっともないからさ」
ええ~、という女子のブーイング染みた発言と共に、何人かはそういうことならと割りきってくれる人達がいた。
「そういうわけだ。では代表は御手洗と五反田の……」
「――納得いきませんわ!!」
と、千冬姉の言葉に被せるように、後ろから金髪ドリルロールの女……多分イギリスの少女がヒステリックに言ってきた。
「ただでさえ劣る男にISを動かせただけでさえ穢らわしいのに、あまつさえ野蛮な男をクラス代表にする?冗談事も大概にしてくださいな!!」
「……あー、済まない、名前は?」
何となく俺が毛嫌いするタイプの……典型的な女尊男卑な人間だということが分かってはいるものの、一応礼儀は尽くして――
「知らない!?イギリス代表候補生のこの私、セシリア・オルコットを知らないというんですの!?」
「……悪いが俺は日本人だからな、日本の代表候補生ならまだしもヨーロッパ圏の代表候補生の情報なんて伝わるわけが無いだろ、貴族さんよ」
最も、日本の代表候補生のほうも全くといって興味がないと言っていいが、面倒なことになるかもしれないため黙っておこう。
「黙りなさい!!野蛮で後退的な極東の猿の分際で!!」
「……おい、それは日本人を馬鹿にしたってことで良いか?」
「それがどうしたというのです!!先進的な我がイギリスの前にアジアの外れの島国の、それも女に劣る男なんて猿も同然ですわよ!!」
なるほどな、大体言いたい事は分かった。それゆえに俺は今さっきまで抑えていた理性の軛を解き放つ。殺気が漏れ、あまりの重圧にクラスの大半が倒れようが関係ない。
「な!?(なんですのあの殺気は!?普通の一般人のそれが出すものでは無いですわよ!?)」
「……セシリア・オルコット、お前は今重大な間違いを三つ犯した。
一つ……日本を後退的と言ったが、お前が耳につけてる
二つ……ここのクラスの……いや、この学園の大半は日本人が占めている。それを知って尚日本を馬鹿にしたことは、代表候補生のお前の言葉によって戦争さえ引き起こせる程の侮辱行為だ。
そして三つ……男が女に劣ると言ったが、それはISを動かせるからであって、生身では森羅万象、有史以前から男のほうが筋力的には上だ。それに俺達が何のためにここにいるのか忘れてるようだな」
「ぐ……どういうことですの?」
「俺達三人は、
あえて煽るようにそう言うと、さらに顔を真っ赤にして怒り狂っている表情が手にとって分かる。
「没落ですって!?私の事を言うなら兎も角として、家の事を言うのは許しませんわよ!!」
「へぇ、じゃあ俺が言った意味、どういうことか分かるよな?」
「男が動かせるISの……コアを……!?」
「そ、つまり俺達のデータを元にあの天災がコアネットワークを通じて全てにインストールしたら、もうISは女性だけが動かせるおもちゃじゃなくなる。そうなったらお前の発言は人種差別と性差別の両方だ。俺達の国よりも先進的なイギリスがそんなことを言ったらどうなるんだろうな~」
少なくともこのセシリアは代表候補生、つまり国の看板を背負ってるのと同義だ。つまり、この発言を俺が政府に告げれば、戦争が始まってもおかしくない事になる。
「……決闘ですわ!!」
「は?」
「私の事を侮辱し、あまつさえ家まで……!!絶対に許しませんわ!!」
どうやら怒りで周りが見えていないようだ。しかし
「「「やるわけねぇだろ没落貴族様」」」
俺達三人にはとても対処のしやすい人間だった。
「な!?ふざけてるんですの!?」
「ふざけるもなにも、俺はいたって真面目だ。大方、自分を侮辱した相手を負かして奴隷みたいにしようって腹積もりなんだろうが、言っちゃ悪いが時間の無駄、そんなことするなら自分達の時間に充てた方が随分と効率的だ」
「逃げるんですの!?男の癖に!!」
「逃げる?僕達は一言も戦うなんて言ってないし、事実しか言ってない。それを勝手に怒って自分の言う通りにさせようって言う君のほうが筋違いだろ」
俺の言葉を代弁するように弾と数馬が言い募る。周りを見ると、ある程度の女子たちも同じ意見なのかコクコクと頷いてる。
「それとだ、スナイパーが冷静じゃなきゃ当たる的も当たらなくなるぜ」
「な!?なぜ私が狙撃手だと!?」
おうおう、弾のハッタリにこうも簡単に肯定するなんてアホだろ、チョロすぎだろあのドリルロール。
「んなの、ニュース見てれば大抵予想がつくだろ。それとも何か?最新鋭機を与えられて誉めてもらいたいのか、寂しがり屋め」
「ぐ……」
「そういうわけだ、織斑先生。クラス代表はあの縦ロールが率先してやりたいって言ってるんだ、それで決めちまえば良いだろ」
「五反田、お前は少しは教師に敬語を使え。……だが、どうやら他の女子達は不満のようだぞ?」
確かにあの没落貴族様の発言のせいで、辺りからはブーイングの雨霰が降り頻ってる。と、その時だった。
「……織斑先生、自薦させて貰っても?」
突如として席の前のほうにいた赤い髪の少女が手を挙げた。
「……良いだろう、名前は?」
「イタリア代表候補生、ヒルデガルト・シュリーフォークト。あの痛姫様をぶっ飛ばしてやりたくてね」
イタリア、その言葉に束さんが言っていた人物がこの人だと納得する。
「……それは私怨か?」
「まさか、ヨーロッパの落とし前はヨーロッパがつける。それが筋ってもんだ。それに、ああいう女尊男卑は大っ嫌いなんでね。たく、なんでうちのリーダーはこんなところに来させたのやら……」
「そうか、それでは四人による対戦を組むことになるので、後日その事は連絡する。さて、授業に入るぞ」
次回「13 盾と剣と」
ヒルデガルト「リリカルマジカル頑張るぜ……ってどっかで言ったような台詞だなこれ……気のせいか?」