俺は基本的には平穏主義者だ。争いなんて面倒なことは、避けられない場合を除いて受けないやらないということにしてきた。
だが、時には逃げたくても逃げられない時もある。
「来い一夏!!剣道を辞めたなどとのたまいおって!!」
この馬鹿、掃除用具に無理矢理連れてこられたかと思いきや、俺の方に木刀を投げてきてこう言われたのだ。はっきりいって……馬鹿じゃないのかとあきれてしまう。
「なぁ、なんの権利があってお前が俺の行動にいちゃもんつけられるんだ?俺は刃物恐怖症だって言ったよな」
「ふん!!一夏、貴様の目は節穴か?木刀は刃物ではないぞ!!それに男ならその程度のことさっさと克服すれば良いだけの話だろ!!」
「そんな簡単に治らないから恐怖症だっていうんだよ。それに今日は約束があるんだ、用がそれだけなら帰らせてもらう」
「な!!貴様それでも男か!!目の前の勝負を逃げ出すなど!!」
なんともはた迷惑このうえないというか、ああ言えばこう言うというか、ともかくこの手の人間は邪魔しかしないよなホント。
「勝手にそっちから仕掛けてきただけだろ。こんな無駄な時間を過ごすくらいなら、自分に特になる事をした方がマシなんだよ、あぁ、
そう言って俺は足早に立ち去ろうと彼女に背を向ける。
「き、貴様ァ!!」
鶏冠に来たのか、回りの剣道部員の視線も省みず、怒りのままに木刀で斬りかかってくる。なるほど、確かに剣道で優勝できるだけの実力はあるというだけの動きはあった。けど
「……温い」
「な!?」
「その程度で実力で俺に何か言うなんてな……」
そして少しだけ魔力を使い、握ってた部分に力を入れ、
「舐めるのも大概にしておけよ、無能が」
バキリ!!その音と共に破裂して飛び散った。まるで炸裂するような勢いで木片は飛び散り、周りで見ていた女子達が悲鳴をあげている。
「そんな!?」
掃除用具も掃除用具で、まるであり得ないという声を出してるが、俺からしたら千冬姉や束さんとかオータムさんなら簡単にぶっ壊せるからな。
「そういうことだ、今後一才、俺に関わってくんじゃねぇ、
俺はそれだけ言うとなにも言わずに立ち去る。さて、ダリルさん達がなんというのやら……
???side
「ふーん……あれが噂の織斑一夏君……かぁ」
とある片隅、一人の少女がそんな呟きをしながら先程の光景を思い出す。
(見たところダリルさんやフォルテちゃんと関係あり、しかもかのイタリアの三銃士の一対とも。これは少し厳しいかしらね)
「まったく、あこぎな商売よね……ホント」
恐らく自分より強いであろう彼とその親友二人、調べれば調べる程に厄介というかなんというか……むしろ異常過ぎた。
(親友二人は兎も角織斑君の場合、彼に対する周りの暴行、町ぐるみでのほぼ村八分状態、果てには彼女をその彼女の母親が殺しかける……幾らなんでもやり過ぎね)
「これは私一人じゃ手にあまりそうね……」
そう思い私はスマホを取りだし、とある連絡先を開いてそこに掛ける。
『……君がこちらに通話してくるなんて、だいぶ珍しいじゃないか』
「……今はそんなことはどうでもいいわ、可及的速やかに彼と……
『……何か訳がありそうだね』
「そうね、
私がそう言うと、通話相手は呆れるようにため息をつく。
『そうか、ならば少しだけ時間をくれないかな、流石に今すぐとはいかないしね』
「充分よ。けど、出来るだけ早めにしてちょうだい」
それだけ言うと私は通話を閉じる。そして……
「はぁ、仕事したくない……」
待ち受けてるだろう大量の書類の山を思い浮かべ、一人ため息をつくのだった。
一夏side
「お、遅かったじゃねぇか一夏!!」
あの馬鹿の一件から数十分後、俺は学園に併設されたスタジアムの一つにやって来ていた。もちろんISスーツに着替えてだが。
見るとこちらも準備運動の最中だったのか、それぞれが軽く伸ばしてたり跳んでたりしている。
「お疲れさまですダリル先輩、まだ始まってなかったんですか?」
「なぁに、弾から事情は聞いたからな。ついでにフォルテのクラスのHRがだいぶ伸びたってこともあるが」
なるほどと頷き、とりあえず俺も軽く筋肉やアキレス腱を伸ばす運動を始める。そして五分ぐらい経つと、全員がその場に集まる事になった。
「さて、ヒルダは兎も角として、お前ら男三人は稼働時間どれくらいだ?」
「一応30時間ぐらいはしてます。何せあの兎の特別訓練がありましたから」
ちなみにこれが代表候補生となると3桁は当たり前、5桁行けば熟練者という部類らしいとは千冬姉やスコールさんの話だ。
「そうかい、とりあえずデータ見せてくれ。性能見ておかない事には練習内容をどうするか決められねぇからな」
「良いですけど……コピーとかしないでくださいよ」
「ハ、
全くもってその通りなんだが……いやまぁ体質的な問題だし仕方ないけどさ。
「さてと……基本はリミッターモードで、瞬間的に加速して間合いに入るタイプか……」
「そうですね、基本は相手に視認させないで間合いに入ってふるぼっこって感じです」
「だろうな、籠手の部分にSEに対する衝撃貫通能力……一定以上の速度で振るわれた拳の衝撃でダメージ判定与える感じだな」
その通りなので何も言わずにこくりと頷く。
「しかしなんというか容量の残りが少ないな……拡張領域に何を詰め込んでやがる」
「うーん、ちょっと色々と(魔法の予備演算装置として使ってるなんて言えねぇしな)」
流石に魔法の事は喋れないし、喋ればいろんな意味で大変なことになりかねないしな。
「……まぁ深くは聞かねぇよ。さて、とりあえず全員でやるのは……昼寝だ」
昼寝という言葉に俺達三人とヒルダが疑問に首を傾げる。
「昼寝って、あぁ、あれっすね」
フォルテ先輩は逆に馴染みがあるのか頷いていた。
「昼寝って、一体何をするつもりなんだ?」
「まぁ見せてやるから安心しろ、フォルテ、頼んだ」
そう言うとフォルテ先輩はISを展開させて俺達の前に出る。
「簡単に言うと、姿勢制御と出力調整の会わせ技っす」
見ててくださいと言うと、フォルテ先輩は体を少しだけ宙に浮かすとそのまま90度体を反転させて、地面と水平になるように機体と体を動かす。
「これがその昼寝ッス。これを体勢を維持したまま10分間、このまま動かないようにするッス」
「……見たところ簡単そうな気がするが」
弾はそう言って自分の機体を展開させて同じようにしてみるが、
「あり、おわ!?」
30秒と持たずに地面に背中からぶつけてしまった。
「スラスターは場所によって若干出力が違うッス。それを体を横にして水平にしちゃうと、重力圏では出力の違いで体勢を崩しちゃうッス。なんで、肉体で微妙にコントロールしつつ、かつスラスターの出力も同時にコントロールしなきゃならないッス」
「なるほど、水平移動の訓練の基礎ってわけだな」
俺がそう言うと、ダリル先輩は正解と答える。
「IS戦闘で水平移動なんてするのはざらだし、何よりこれをマスターしちまえば着地制御や
特に一夏の機体には武器自体が存在しない、だがこれをマスターしちまえば空中で地面を蹴るような機動を再現することさえできるしな」
他にも例えスタジアムがメンテナンス中でも、武器を使わないということで例外的に使える練習なため、機体を二次移行させられる事も多いという、IS乗りならお薦めする練習法らしい。
「さて、というわけで今回はその試合までにノルマ五分をクリアするようにするから、ビシバシコーチしてやるから覚悟しろ!!後輩供!!」
『オッス!!』
次回『15 闇と闇』