無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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ホントは水着回も行きたかったんですが、文字数的な問題で次回に回したいと思います。微シリアスです


33 海に着いたら十一時(オーシャンズ・イレブン) 前編

「……スゥ……スゥ……」

 

 揺れるバスの中、一夏は音楽を聞きながら睡眠をしていた。かくいう俺もデバイスを愛用のタオルで磨き、数馬は数馬で本を読んでいる。

 

(予言か……)

 

 一夏から聞かされた管理局の予言、恐らくそれがこの数日以内であると、そして束さんがこれから起こすことを聞かされたとき、俺は言い様のない怒りを覚えた。

 

 何故ならそれは過去の厄災を掘り返す事になりかねない。もしかすれば、今度こそ管理局に目を付けられる……最悪此方が死ぬ可能性もある。

 

「心配しすぎだよ、弾」

 

「うっせ、そういう数馬はなんとも思わなかったのかよ、アレについて」

 

「束さんが決めたことだからね、それに渋々とは言え一夏も納得してる。だとすれば僕らが何を言うにもいかないでしょ」

 

 そりゃそうなんだが……それでも何となくいい気分はしない。するわけがない。

 

『それに束さんだって無駄な殺生はしないでしょ、()()だってちゃんとした()()()()()を使うんだ、人殺しとは違う』

 

『良く言うよ、最悪地球滅亡一歩手前になるかもしれねぇんだぞ』

 

 俺の念話での言葉に、数馬も苦笑いで答える。

 

『別に良いんじゃない、オータムさんとか千冬さんとかの一部除いて、女尊男卑激しいこの世界なんて、いっぺんリセットされちゃえば』

 

『……数馬、お前』

 

『それにもうすぐミッドへ行くんだ、だとしたら此方の生態系とか環境とか壊れても、多少しか気にしないよ』

 

 一夏とは別の意味で狂ってる数馬……いや、アレが元々の数馬だったと思えば元に戻ったと考えるべきだ。

 

 昔の数馬は他人嫌いで、それは母親の狂った学力主義が原因だった。槍の道場に通ったのは半分母親の事を忘れるためだって、小学校時代に偶々聞いたことがあった。

 

 ISが出てから暫くするとさらに母親は狂い、育児放棄同然の扱いを受け、小学校高学年の頃には数馬と数馬の父親を捨てて出ていった。父親は父親で借金苦に自殺未遂、未だに意識は戻らないらしい。

 

 残された数馬は広い家に一人で、ストレスからか学校ではかなり荒れていて、俺や鈴、一夏がいたからこそ今みたいに落ち着いてるが、それでも一夏と同じく女尊男卑の煽りを受けていたとも言えるだろう。

 

(それに比べて俺は……)

 

 一夏は千冬さんとの比較、鈴が狂った母親の妄執、数馬が女尊男卑による一家離散、それぞれ辛い目に合ってるというのに、俺は何もなかった。

 

 両親やじいちゃんの営む定食屋で、大事な妹と一緒に幸せに暮らしてる。いわば真逆の存在である自分が、一夏達の側に居て良いのか……最近良く悩むようになった。

 

『……何悩んでるんだよ弾』

 

『一夏?』

 

『何時だってお前が引っ張ってくれたから、俺達はこうやって居られるんだ。お前のお節介が、俺達を救ってくれたんじゃねぇか』

 

『確かにね、多分弾が居たからこそ、僕らはこうやって馬鹿やれるんだし』

 

 それにな、と一夏は続ける。

 

『弾、お前は俺達のムードメーカーだ。俺達がどんなに落ち込んでたり、辛くて八つ当たりしたくなっても、お前のお節介が、俺達を自然と明るくさせてくれたんだ』

 

『弾は周りの辛さや悲しさを背負って立てる人間だ。確かに僕らがやることは間違ってるのかもしれない。けど、弾はそれでも僕らを支えてくれる。違うか?』

 

 過度な期待だった。理屈も何もない、ただただ期待されてる。けど、それは今までの信頼からくるものだった。

 

『たく、俺は尻拭い担当じゃねぇんだぞ』

 

『分かってるさ。けど、万が一は頼りにしてるよ』

 

『頼んだぜ、弾』

 

 念話でそんな会話をしてると、不意にバスが停車する。目的地に着いたようだ。

 

「それじゃ、行くとするか」

 

 

 

 

 楯無視点

 

「……今ごろ一年生は旅館に着いた頃ね」

 

 生徒会室、私にとって仕事という名の牢獄であり、私が管理局と表向きに通信ができる部屋でもあるここで、私は何時ものように書類整理に終われていた。

 

「はぁ、簪ちゃんも海にいるから抜け出す口実もないし、かといって用もなく抜け出したら虚ちゃんからお小言貰うし……」

 

 やっつけ仕事この上ない書類の山を見つつ、辟易としながら判子を押す。

 

『今大丈夫かしら刀奈』

 

 と、何の因果か顔見知り……聖王教会騎士のカリムがなんとも言えぬ笑顔で通話してきた。

 

「これが大丈夫に見えるならよっぽどよ」

 

『あー……貴女も書類に追われてたのね』

 

「生徒会に職員のやるような書類仕事をさせるんじゃないって言いたいけどね」

 

 それに、

 

「通信で私のこと、本名で呼ぶのやめてって言ってるでしょ。どこに盗聴器の類いがあるか分からないのに」

 

『そういえばそうでしたね……失礼楯無』

 

「もう何度目かしらそれ。で、カリムが直接連絡してくるなんて何事?」

 

 カリムは聖王教会騎士団の幹部に位置する人間、管理局の少将でもあるため、かなり忙しい毎日のはずだ。

 

『つい先日、予言が更新されまして……それがかなり不穏なもので協力を』

 

「予言が?いったいなんて?」

 

……遥か遠き地にて

 闇より封じられた獣に堕ちた白銀の歌響くとき

 闇に堕ちた白き雷は

 緋の撃鉄 凍風の守護者

 孤独の復讐者 清純なる闇

 かの者達と、何時の日か訪れる救いを求め羽ばたかん』

 

 カリムが話したそれは、確かに前回聞いた内容とはかなり変わっていた。

 

「けど、すぐにこれが起こるとは限らないわよ」

 

『いえ、これはあくまで私の直感ですが……数日以内にこれが起きる気がしてなりません』

 

「……何か訳アリね、話してもらえる」

 

 今思えば、これを聞かなければと思う私は間違っていたのかもしれない。

 

『……騎士はやての事は楯無もご存知ですね』

 

「ええ、一応同い年で、管理局の方でも良く話をしますから」

 

『そのはやての事で思い出したの。この封じられた獣っていうのがもしかしたら……』

 

 はやてが関係している。その言葉に私は冷や汗が止まらなかった。けど、それは

 

「で、でもアレは……()()()は完全に封印されてた筈よね」

 

『確かにその通りです。ですが、封印から一年ほど後、一度だけ闇の書……今は夜天の書ですが、その封印が解かれたことがあるのはご存知のはずです』

 

「……マテリアル事件」

 

 それは確かはやての友人の一人の両親が建造した遊園地で起きた事件であり、同時に闇の書事件と並ぶ大事件だ。

 

『ええ、ですが問題なのはマテリアルでも、マテリアルの盟主でもない……封印が解かれた、それが重要なのです』

 

「……良く分からないんだけど」

 

『はやての話では、闇の書は1体の古代ベルカの融合機と共に封印されたそうです』

 

 そこまで言われ、漸く私の背筋に悪寒のようなものが奔った。

 

「まさか……」

 

『まだ私も何時起こるかは分かりません……ですが、この数日に必ずそれは起こる……()()()()()が再動することが』

 

「!!……すぐに此方でも調べてみるわ、一応そっちからはやてとヴォルケンリッターに連絡して!!此方でクロノやユーノ君に話してみるから!!」

 

『分かりました。此方もなんとかしてみます』

 

 通信が途切れ、私は邪魔な書類の束を隣の事務机に乗せる。

 

「失礼しますお嬢様……」

 

「ナイスタイミングよ虚ちゃん!!今すぐ調べて欲しいことがあるの!!」

 

「お、お嬢様?いったい」

 

「時間がない、この数日以内で起きる『白銀の歌』に関する事を今すぐ調べて!!最悪、管理局がアルカンシェルも辞さない事になる前に」

 

「!?分かりました、お嬢様は?」

 

「私はなのはちゃんやクロノ君に連絡して、あと管理局の臨時地球支部に向かうわ、もしかしたらリンディ元提督の力も必要になるかもしれないし」

 

 そう言って私は部屋を後にする。出来ることなら杞憂で終わってほしい……そんなことを思いながら。

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