無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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セイレムとSAOIFをやってたら遅くなりました……まぁどっちにしろ難産だったというか、なんというか……

人外の化物との戦いって難しい……

あと近々UA100000人突破したので、番外編をやろうと思います。内容はまだ考えてませんがw
こんな話が読みたい的な番外編のネタをメッセージで送ってもらっても良いですよ……なんてムシが良すぎますよねwスミマセンw

ということで本編をどうぞ


39 闇を超えて

「……予想よりだいぶ小さいな」

 

 起動した闇の書の闇は、話に聞いていたそれと比べて一回りも二回りも小さいものだった。

 

 全体的に四足の獣にその中心に、翼の生えた青白い女性のようなものが取りついて奇妙な生物なのだが、さらにその肢体の全てに銀の鎧が張り付いてる珍妙な生物だった。

 

 さらにおまけと言うように、蛇のような触手までついてるのだから、過去にどんなのを吸収していたのかが分かる代物だ。

 

「けど多分攻撃力だけなら、ISを取り込んだことで本来のものより高くなってるし、防御も格段だと思うよ」

 

「その分超再生能力は持ってない……ならやりようはあるな」

 

 弾が軽口を叩きながら再び狙撃銃を握っていて、本気であるのは目に見えて分かる。

 

「なら一番槍は文字通り僕がやろうか、弾も簪も誤射しないでよ」

 

 数馬は持ち前の槍を構え、その眼光を目の前の獣に据える。

 

「……それはこっちの台詞、射線に入ってきたら容赦なく撃ち抜くから」

 

 ホロキーボードを展開し、何時でも弾幕を張れるとでも言うように胸を張る簪。

 

「だったらこの束さんは指揮を取っちゃおうかな、勿論サポートは任せて貰って大丈夫だよ」

 

 束さんは束さんで、手に持ったステッキ片手に何時ものマイペースぶりだが、今はそれがどうにも頼り甲斐があるように見えた。

 

 四者四様の雰囲気に俺もフッと笑い、今まで持っていたブレードを構えるだけでなく、拡張領域に容れていたそれを鞘から取り出す。

 

 それは白磁の鍔に透き通るような白鋼の刀身、光を受けては鏡のように跳ね返す業物……千冬姉から受け取った名刀、その名を『雪華』と言った。

 

 俺はそれに魔力を纏わせ、白黄の雷電がその刀身に帯びる様は、まるで雷を纏う一輪の華のような煌めきがあった。

 

「……なら、一気に行くぞ!!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

 

 

「さて、まずは一番槍を受けてもらおうか!!」

 

 数馬は槍に備えられたカートリッジを三つ発火させると、その機体に氷の翼と盾が出現した。そしてその翼をはためかせて一気に加速し、闇の書の闇へと向かって突撃を敢行する。

 

 無論奴もその触手と翼から黒いレーザーとビットを飛ばしてくるが、その全てを弾き、防ぎ、また自身の魔力で凍結させていく。

 

「我が氷は斬るものを凍らせ、永遠に溶けない地獄を与える……」

 

 言葉に呼応するように穂先が凍り始め、その大きさは倍ほどにも大きくなった。

 

「これが今の僕の最大……『氷獄・摩訶鉢特摩(まかはどま)』だぁ!!」

 

 振り切り、切り裂いた一層目の防護壁が壊れるのと同時に、刃筋の入った奴の体の一部が、まるで絶対零度にでもあったかのように凍り、そして一瞬で砕けた。

 

「この一撃を受けたら、例えどんな生物、無機物であっても、その冷気によって崩壊する

 

 闇に落ちたその身には、この大紅蓮地獄ですら生温いかもしれないけどね」

 

 暴れまわる奴は怒りに達したのか、今度は体全体からビットを展開し、物量で攻めてきた。

 

「……山嵐だけじゃ捌ききれない……なら」

 

「そういうこったな」

 

 そういいながら簪と弾はそれぞれ互いの武器を構える。

 

「あのビットは私が何とかさせる。だから」

 

「俺が奴のシールドをぶち抜けばいいわけだな!!上等だ!!」

 

 そう言ってカートリッジを三発ロードすると同時に、弾の銃口の先に緋色のシューターが回りに散った魔力を奪い、圧縮される。

 

 さらに簪もミサイルだけでなく、手持ちの薙刀に魔力を纏わせ、斬撃を飛ばすことで弾幕を破壊し尽くす。

 

「……私にはまだ魔法はそこまで上手じゃない、けど!!」

 

 そう言って今度は腰の電磁加速砲……いや、魔力エネルギー集束砲を展開すると、二つの砲身の先に藍色の魔力光の弾丸がスパークしながら大きな砲弾を形成する。

 

「シフト、集束破砕砲撃(ブレイクバスター)!!」

 

「宵闇を喰らい、原罪を滅しろ!!」

 

「一閃消滅!!オルタバースト・ストライカー!!」

 

「一斉掃射!!カタストロフィー・ドライブ!!」

 

 緋と藍色の光、そして放たれた無数の弾幕は怪物の弾幕や触手を撃ち抜き、破壊し、そして覆っていたバリアを尽く破壊した。

 

 それでもというべきか、それとも中に居る掃除用具の性根が受け継がれてるのか、奴はボロボロの肉体を翼で浮かせると、なんと無数の障壁で自身を守りだした。

 

「けど、そんな事はさせないんだよね!!」

 

 束さんはそう言うとステッキを一振りし、奴を上下左右で封じ込めるかのように魔方陣を展開する。

 

「結界魔法はね、普通なら攻撃性能もなにもないけど……」

 

 そう言って魔方陣の間からそれぞれ二本ずつ板のような魔力の壁を貫通するように出現させると、なんとそれによって怪物の体が文字通り一刀両断される。

 

「束さんのは、やろうと思えばカッターみたいにサックり切れるんだよね~!!まぁ面倒だから何時もはやらなけど」

 

 流石は結界魔導師というべきか、なんと言うことなく障壁を切り裂き達磨にしてしまう。

 

「じゃ、あとはいっくんが仕上げをして終わりだよ」

 

「分かってますよ。それに、もう準備は終えてますしね!!」

 

 俺は上空で待機させていた大型魔方陣から発した雷撃を『雪華』の刀身に飛来させ、そして

 

「魔力結合……雷刀雪華!!」

 

 使用は最低限にとクアットロに言われた、魔力と物体の結合という俺自身のレアスキルを刀に刻み、刀身はスパークをまとった白雷の光を纏う。

 

「ぐ……ガァ!!」

 

 勿論デメリットが無いわけがない。今まで神経に癒着させることで痛覚を遮断してきた魔力を、強引に別の物体に纏わせるのだ。常人なら血反吐を吐いても安いくらいだ。

 

 だが、

 

「まだ……まだだ!!」

 

 自分の魔力の全てを、雪華と雪片の二つに集約させる。痛みなど、今まで受けてきた暴力から守ってくれた事を考えてくれば安い代物、例えその反動で()()()()()()()()()()()()()()としても、今は関係がなかった。

 

「逝くぞ化物畜生……俺は……お前を殺すんだ……」

 

 今まで人であった事をかなぐり捨てろ、目的のためなら幾らでも殺そう、彼女のためならば地獄へと墜ちても、彼女が目覚めるのならば、命だってくれてやる。

 

「俺は情を捨てる……例え機械だの悪魔だの言われようと……鈴を救う……その為なら!!」

 

 二つの刀身が輝きを強め、そして同時に目の前の世界が変わった。

 

 そこは水面のような、ただ蒼穹が広がるだけの景色だった。

 

 目の前には白い服の少女……そして騎士のような鎧を纏った何かが立っていた。

 

「ここは……」

 

『……ここは私の世界、貴方と私を繋ぐ、たった一つの世界』

 

「…………」

 

 少女の声はエコーが掛かっていたが、不思議と聞こえづらくは無かった。

 

『ねぇ、貴方はどうして戦うの?』

 

「俺が戦う理由?」

 

 少女の言葉に、俺は軽く目を閉じる。

 

「……俺は、ただアイツが……鈴が笑顔を見せてくれる為に戦う」

 

『……彼女は貴方が傷つくことを望んでないよ』

 

「そうだろうな、アイツは何時も正しくて、人の目を、心を見てくれる。自分が弱いところを見せたくないくせに、俺が傷つくことを放っておけない奴だ。こんなことをしてるって分かったら、軽蔑されるだろうな。最悪絶交だろ」

 

 苦笑しながらそう言いつつ、俺は果てしない蒼穹を見上げた。

 

「……けど、それでもいい。アイツに嫌われようとも、フラれて二度と会えなくなろうとも、ただ俺は彼女の笑顔の為に戦う。その為ならなんだってするさ……それに、男が惚れた女を守る理由なんざ、それだけで充分だろ?」

 

『…………そう』

 

 少女はそう言うと、俺の手元へ歩いてくる。隣にいた騎士も同様だった。

 

『……なら私の……いえ、()()の力を貸してあげる』

 

「え……?」

 

『貴方は自己犠牲が過ぎる……だから、私と彼女……そして、あの子が支えてあげる』

 

 そう言って少女が振り向いた先には、黒髪にピンクのリボンを付けたツインテールに低い背丈、見覚えのある指輪を着けた少女……いや、

 

「……イモータル・チャイムか」

 

『そうですマスター、ここはデバイスである私と、ISである彼女達の複合たる世界、格好がこんなちんちくりんなのでそこまで威張れませんが』

 

 そう言って彼女は俺の目の前に立つ。そして隣に立った少女の腕に触れると、三人の姿が徐々に消え始める。

 

「……お前ら」

 

『勘違いしないでくださいマスター、私というデバイス人格は消えるかもしれませんが、それは失うことじゃありません。寧ろ彼女達と一つになって進化する……それだけです』

 

『ISコアとインテリジェントデバイス……二つの意思が混在してると、この先貴方をちゃんと守ることが出来なくなる』

 

『だから私達は融合し、新たな人格、そしてデバイスとして生まれ変わる事で貴方をサポートする……そう決めたのです』

 

 やがて三人の姿が朧気まで霞んでいく。

 

『『だから、貴方は呼んで。私達が私達であるという……そんな名前を』』

 

「……あぁ、そうだな」

 

 そう呟き、意識が現実へと復帰する。そして……自分の意思でISを一度解除した。

 

『な!?』

 

 周りにいた全員が驚愕した。もしや魔力が尽きてしまったのか、魔力結合の反動に耐えられなかったのか。否、断じて否だ。

 

「いくぞ……白鈴(しらすず)、セットアップ!!」

 

 その掛け声と共に産み出された姿は、バリアジャケットとも、ISとも違う異形だった。

 

 腕と肩を覆う機械の籠手と鎧、白いマントとその内側から展開される機械と魔力による翼、そして大太刀のような形状でさらに魔力の刃を纏った『銘刀 雪華』。

 

 まさしく異形であり、同時に進化した存在というにふさわしい姿へと変貌していた。

 

「成層の彼方より来たりし無限の雷光」

 

 足元にミッドとベルカ両方の魔方陣を展開、

 

「零落の夜を越えて、晩鐘を鳴らせ!!」

 

 腰に着けた鞘に刀をしまい、目を閉じる。

 

 怪物は身の危険を感じたのか、慌ててその場から離れようとするが、束さんによって封じられた動きをもとに戻すのは不可能だった。

 

「一閃突破、全てを貫け!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷豪ノ覇刃(らいごうのはじん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鞘から抜かれ走った雷撃の一閃は刹那を超え、静寂を生み出し……振り抜いたそれを鞘へ納める。

 

 パチン、その音と共に目の前の巨大な怪物の体から血潮が吹き出し断末魔と共にその巨体の各所を魔力の塵へと変貌させていく。

 

 かつて世界を壊し、様々な世界を渡り歩いた最悪の怪物の成れの果て、ただ何も残らず、何も残さない。

 

 そして、かつて篠ノ之箒と呼ばれた少女が着けていたリボンが燃えながらも海へとはためき、掴んだそれもやがて塵と炭になって消えていく。

 

 例外はない、闇の書と呼ばれたそれの怪物に食われたものは二度と帰ることはない……いや、それとも自分が殺したという事を見せつけるのか……どちらにしろ、何故か心が痛んだ。不思議と涙が出てきた。

 

 確かに篠ノ之箒は自己中心的で、幼稚的で、すぐに暴力を振るう嫌いな人間だった。それでも、一時的とはいえ、()()()()()()()()()()()()()という事実は変わらないものだった。

 

「…………」

 

「一夏……」

 

「一夏……」

 

「一夏……」

 

「いっくん……」

 

 周りに集まっていた皆の言葉に、俺は罪悪感を捨て、涙は袖で拭いた。

 

「……束さん、転移お願いします」

 

「うん……でも」

 

「ええ、少しだけ黙祷してから……行きましょう」

 

 時に俺達が地球で過ごす最後の日は、こうして過ぎ去っていく。後悔はするだろう、それでも、前を向くと、そう決めたのだから。




次回「40 残された者達」
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