無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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 とあるビルの屋上、目的の部隊の施設が見渡せるそこで私は望遠鏡片手に模擬戦をしている彼女たちの姿を見ていた。

 

「……」

 

 特にオレンジの髪……ティアナ・ランスターと呼ばれた少女の動きを見ていてやはりというか、どこか固さのような何かが取りついたような動きをしていた。

 

「フフ、悩んでる悩んでる」

 

 あの時レアスキルで少しだけ聞いた彼女の本心、それが動きの鈍さや固さに直結してることが手に取るように分かる。

 

「……やっぱりままならないの?かんちゃん」

 

「……そうだね」

 

 隣で何時ものようにお菓子を食べながらのんびり聞いてくる親友に、私はコクリと頷きながらニヤリと嗤う。

 

「ままならないかな……同類が必死にもがく姿を見るのは」

 

 

 

 夜、六課内にある森林でティアナ・ランスターは悩んでいた。今さらながら自分がなぜこの部隊に選ばれたのかと。

 

 学校での成績は確かに良かったかもしれない、けど他の三人と比べたらただそれだけで、他の人と変わっても別にたいしたことないほどに平凡だ。

 

 あるのはシューターを大量に作ってもバテない程の魔力と精々程度の幻術ただそれだけ……いや、兄と比べたら幻術を使えるだけまだマシなのだろう。

 

「……私は」

 

 兄は凄かった。両親が既に他界して、まだ幼かった私を育てながら二十歳で一尉まで登り詰め、航空部隊のエリートとして登り詰めていた。

 

 捜査官としては一流で、周りからも信頼されて、自慢の兄だった。あの日までは……

 

「……もっと」

 

 捜査中に兄は逮捕するべき相手に射たれて亡くなった。殉職だった。

 

 その日は偶々兄と珍しく喧嘩して、帰ってきたら謝ろうと思った矢先のことだった。嘘だと、幼い私はそれを受け入れることができなかった。

 

 兄の葬儀の時、兄の同僚の人達は死を悲しんでくれていた。けど、全員がそうじゃなかった。

 

「……強くならなきゃ」

 

 兄の上司だった男は言ったのだ。「犯人を追い詰めながらも逃すなんて、首都航空隊の魔道師としてあるまじき失態で、たとえ死んでも取り押さえるべきだった」、と。

 

 悔しかった。あの兄の事をバカにした言葉が許せなかった私はその男に幼いながらにも食って掛かった。なぜ兄がそのように貶められなければならないのか、と。

 

 男は嘲笑と共に続けた。「この程度の任務を失敗するような役立たずを役立たずと言って何が悪い。どのみち遅かれ早かれ死んでいたのだろうからな」、と。

 

「……兄さんの魔法は役立たずなんかじゃないって」

 

 その男は言葉を聞いた兄の同僚にその場で殴られ、遺族に対して直接言う言葉ではないと非難を受けて懲戒解雇されたらしいが、そんなことはどうでも良かった。

 

 私は兄の遺品だったデバイスで魔法の練習をした。見返すため、力をつけるため、なによりも

 

「ランスターの弾丸は無意味なんかじゃないって証明してみせる」

 

 ただそれだけを目標にして、頑張ってきたのだから。

 

「……決心はついた?」

 

 と、いきなり聞こえてきた声に私はビクリと体を震わせる。振り返って確認してみれば、そこにはフード付きのマントを被った眼鏡の女性が笑いながらもたれ掛かってきた。

 

「……アンタ」

 

「なんでここにいるかなんて野暮な話は要らない。私の魔法はそれぐらい簡単に無視できるから」

 

 それで、と聞いてくる彼女に私はデバイスを向ける。

 

「あの時……ホテル・アグスタでのことは嘘じゃないのよね」

 

 

 

 数日前 ホテル・アグスタ警備の夜

 

「!?」 

 

 突如声を掛けられ意識をそちらに向けると、そこには見覚えのある水色の髪の姿があった。

 

「……更識簪」

 

「……更識は付けなくていい。それにしても不用心。相手に私がいるのに堂々と念話なんかして」

 

「ッ!?」

 

 背筋に嫌な寒気が通り一歩後ろに下がる。

 

「……ま、別にいいけど。今日も敵対するつもりはないし」

 

「……どういうつもり、私が念話をして応援を呼ぶって考えは無いの?」

 

「残念だけど、私の仲間が特殊な結界を張らせて貰ってるから、今ここで念話は通じない」

 

 試してみて、そういう相手にいぶかしみながらも試みるが、言うとおり全く通じない。完璧に封じられてる。

 

「……それで、私になんの用?敵対するつもりがないなら、任務の邪魔を」

 

「強くなりたくない?」

 

 端的に放たれた言葉に、私は言おうとした言葉を途中で止めてしまった。

 

「才能なんて必要ない、ただ強くなる技術を、貴女は知りたいと思わない?」

 

「……勧誘のつもりなら、貴女を捕まえて取調室で聞くけど?」

 

「私に隠し事はできない。私は相手の心を読める。そういう特異技能を持ってるから」

 

 つまりこの人は読心術を使えるということか。結局は才能……

 

「一つ訂正しておく、私に才能なんて全く無い。レアスキルも昔の私にはただの苦痛でしかなかったから」

 

「なにを……?」

 

「読心能力って便利そうに見えて結構理不尽。相手の思ってることが全て声として聞こえるから、能力が芽生えた頃は何十人も同時に聞こえてきて頭が割れるくらいに酷かった。人間不信にまでなったし」

 

 少しだけ体験させてあげる、そう言って彼女はデバイスであろう本を取りだし此方に向けてみる、すると

 

「がっ!?」

 

 スバル、キャロ、エリオ、なのはさんやフェイトさん、それだけじゃない、会場にいる全員の心の声や念話がひっきりなしに聞こえてきて頭が割れそうなほどに悲鳴をあげた。

 

「どう、こんな理不尽なレアスキルでも欲しいと思う?」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ちなみに私がこの能力で初めて聞いたのは、姉から全く必要とされてないっていうことだったけど、そんなこと聞いてる余裕はないか」

 

 圧倒的だった。レアスキルの中にはデメリットがあるものもあるとは聞いてはいたが、ここまで酷いデメリットは聞いたことがなかった。

 

「こんな技能(レアスキル)に頼らなくても強くなれる技術(テクニック)……正直貴女と私は似た者同士だからすぐに強くなれる」

 

「……なんで、私を?」

 

 根本的な事を聞いてみれば、彼女はただ嗤って

 

「強さへの渇望、誰かを認めさせたい願望、それに自分が誰かに比べて劣ってる劣等感……貴女にあるそれは私と同じだから」

 

「……ッ!!」

 

「答えは今は聞かない、けど貴女の決心が決まったときに、その時には答えを聞かせて」

 

 

 

 

 現在 機動六課森林

 

 あの後、私は自らの焦りのあまり馴れてないシューターの超過弾幕の一部をスバルに……パートナーに当てそうになった。

 

 そしてヴィータ副隊長に下がらされ、また自分の無力さを噛み締めた。

 

「それは強くなりたいってこと?」

 

「技能じゃない技術、貴女のいうそれを覚えれば強くなれるの?」

 

 多分今の私の目は飢えた獣のそれだったのだろう、ただ強くなりたいという思いだけで。

 

「あくまで私が教えるのは技術、それを貴女がどう組み込んで強くなるかは自分次第……それでもいい?」

 

「上等よ……私はもう、誰も傷つけたくない、失いたくないから!!」

 

 たとえそれが悪魔の選択だとしても、私はもうあの日の弱い自分を見たくない。弱さは捨てると、そう決めたのだ。

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