無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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「そういや最近ティアナのやつ、どこかおかしくねぇか?」

 

 とある昼休み、偶々一緒にお昼を取ることになったヴィータちゃんのその言葉に私は少し悩む。

 

「やっぱりヴィータちゃんにも分かる?」

 

「まぁ、あそこまで自主練習してりゃ嫌でも気付くだろ」

 

 この前の休日以来、ティアナはまるで取りつかれるように魔力を使いきるがごとく毎日自主練を行っていた。

 

「まぁでもちゃんと休む時間は休んでるから、あんまり強く言えないんだよね」

 

 なまじ自分があれ以上のことを、それもティアナより幼かった10歳ぐらいやってた身としては止めたい気持ちなんだけど、けどしっかり休むときは休んでるせいでどうにも。

 

「けど、なんか不自然なんだよな」

 

「うん、なんでシューターから幻術なんだろ」

 

 別段幻術を侮るつもりはないけど、今までシューターの制御ばかり練習していたはずなのに、急に変わったとヴァイスくんから聞いたとき見間違いを疑ったほどだ。

 

「しかもやってる内容が幻術で産み出した自分を森の中で走り続けるだけ……幻術じゃ基本の技術じゃなかったか?」

 

「ううん、ヴァイスくん曰くどうやらティアナ目を瞑ってやってるらしいよ」

 

「はぁ!?」

 

「ヴィータちゃん」

 

 明らかに呆れてるような言葉に私は口に指を立てて回りを見る。どうやらまだティアナ達は戻ってきてないみたいだった。

 

「わりぃ……けどよ、なんだってそんなことを」

 

「多分私が教導でやってるシューターコントロールの応用なんだと思うけど……正直難しさはそれ以上だよ」

 

 シューターなら空中で自由自在に動かせるけど、幻術なら人の動きを完全に真似しなきゃいけないから1体だけでもかなりの集中力を必要とするからね。

 

「それを練習してるってこたぁ……ティアナのやつ忍者でもやるつもりか?」

 

「いやナ○トじゃないんだから、影分身でもやるつもり?」

 

 ニンニン、と印を結ぶポーズをやって見せるとヴィータちゃんに冷たい目で見られた。解せぬ。

 

「となるとホントに何やってんのかさっぱりわかんねぇよ」

 

「まぁ近いうち試験やるつもりだし、そこら辺で見極める他ないかな」

 

「だな」

 

 そう言いつつ、私は訓練内容を確認

 

「食事の時くらい仕事すんな、行儀悪い」

 

「む……ならヴィータちゃんはアイスをお昼にするのをやめた方がいいよ」

 

「なのは達と違って栄養とかは関係ないから大丈夫なんだよ。太る心配もねぇからどっかの誰かみたいにダイエットする必要もないからな」

 

「む……まぁその代わり成長もしないからお子様体型のままなんだろけどね」

 

 売り言葉に買い言葉、バチバチと火花を視線でぶつけ合う。

 

「……ヴィータちゃん、午後の教導の前に少し手合わせ……ううん、O☆HA☆NA☆SHIしようか」

 

「面白え、アイゼンの錆にしてやるから覚悟しとけよ」

 

 その後訓練スペースの一部が抉れたり粉々になったりと散々なことになって、揃ってはやてちゃんからお小言を頂いたのはまた別の話。

 

 

 

 フェイト・T・ハラオウンは現在、色んな意味でため息しかでなかった。隣には同じ心境なのか、シスター刀奈とシグナムもうんざりと言った表情だった。

 

「それで、あのクローン爆弾について何か分かったのかしら?」

 

 刀奈の言葉に目の前に立っているシャーリーが死んだ目……というよりかなりの徹夜だったのか目に隈が酷いせいで本当に死にそうな表情で頷いた。

 

「調べた結果から言うと、これを生み出した奴は本当に鬼畜というか外道というか、正しく量産が効く死兵みたいな感じだった」

 

「なのはちゃんが彼……織斑一夏から聞いたようにリンカーコアで動いてるうえに、内臓のパーツがランダムで爆弾……しかも火力は一メートル四方厚さ50センチのコンクリート壁を軽く破壊できるほど、ねぇ」

 

 刀奈はまるで呆れるように言ってるが、正直今の管理局で対処するのはまず難しい。

 

「私やシグナム、ヴィータみたいな近距離戦闘主体は攻撃と同時に自爆してくる可能性もあるし、元がクローンのせいで非殺傷設定の影響を受ける」

 

「テスタロッサの言う通りだな。バインドしても自爆して抜けるのであれば魔力を無駄に使うだけだ」

 

 勿論なのはの砲撃やリインフォースさんのような大規模魔法で一気に吹き飛ばすという方法もあるけど、そういった魔導師はそもそもの絶対数が少ないから攻略法にはならない。

 

「そういえばシスター刀奈、なのはは織斑一夏とやらが戦ってる所を見てるのだろう?」

 

「らしいけど、その方法も変換資質の『電撃』で爆弾そのものをショートさせて無効化してただけ、それ以外は殺傷設定で殴り殺してたみたい」

 

「……少なくとも、今の管理局じゃ同じ対処はできない」

 

 空と地上の確執もあるだろうが、そもそも非殺傷設定を解除するなんてことはまず無理に近い。

 

「主はやてに、クローンとの戦いでは非殺傷設定を外すように上層部へ打診して貰う他あるまい」

 

「やっぱりそれが一番じゃない、執務官のフェイトちゃんはどう思う?」

 

「私もそれに異存は無いです」

 

 それで負傷者が出なくなるなら何としてもそうするべきだと思う。

 

「あ、それと気になった事がもう一つあるんです」

 

「む?」

 

「そうなの、シャーリー?」

 

 私がそう聞くと、シャーリーは頷きながら、

 

「これはまだ確証がないんですけど……多分これ、()()()()()()()()()、もしくは()()()なんだと思います」

 

「……ごめんシャーリーちゃん、どういうこと?」

 

 刀奈がうまく飲み込めないように聞く。正直私も何を言ってるのかさっぱり分からない。

 

「私も言ってて変だとは思うんですけど、クローン爆弾の素体のリンカーコアが異常に弱々しいんで調べた結果、これテロメアっていう老化を決める遺伝子が極端に短いというか、普通の人の四分の一から半分もないんです」

 

「つまり、成功作が何かしらの形で存在する……ってことね、頭が痛いことこの上ないわね」

 

 刀奈の言う通りだ。ただでさえ対応が難しいのにさらに上があるなんて考えただけで頭が痛い。

 

「これは……一波乱じゃ済まない事になりそう」

 

 

 

 

「視察……ですか」

 

 通信に映し出された人物から放たれたその言葉に私は思わず苦々しい思いを浮かべた。

 

『ふん、本部直属の機動六課とはいえあるのはこのミッド地上、どのような運用をされてるか視察をするのは当然だろ? 八神はやて部隊長』

 

「それについては納得できます。せやけど、中将自ら出向かれるのはどういった風の吹き回しです?」

 

 相手は本部を目の敵にしてると名高いレジアス・ゲイズ中将。本人は魔力適正こそないが、知略や計略に優れる切れ者、正直干渉してくるとは思ってたがここまで早いとは思っても見なかった。

 

『ふん、作戦がイレギュラー続きなうえに貴様が回収すると掲げたレリックとやらも何者かに奪われ続き、正直なところ風当たりが悪かろう?』

 

「……風当たりが悪いんわ最初からです」

 

『まぁそれはいい、だがかのエース・オブ・エースを拝してまでこれでは反論はできん。故に形だけでも視察を受けたという体にすれば、若干ではあろうがなんとか持ち直せよう』

 

 その言葉に私は思わず顔を呆けさせた。

 

「形だけでも……ですか?」

 

『その通りだ。実際は俺の腹心が元部下の娘とやらの動きを見たいと言ってな、丁度良い機会に話でもさせてやろうとな』

 

「腹心……ゼスト・グランガイツ三等空佐のことですか?」

 

 最近復帰……というか帰還したという陸のエース。確か十年近く前はレジアス直属の部隊の隊長をしていてメンバーは……

 

「そういうことですか……なら教導に参加も」

 

『まぁそちらが可能ならばな。言っておくが技量だけならエース・オブ・エースと同等だ、模擬戦相手には困るまい』

 

「……随分とこちらを贔屓しますね、何を考えてるんですか?」

 

 正直ここまでこちらを優遇されては疑うなという方が無理な話や。

 

『ふ、今回に関しては何も企んではいない。というよりワシからすれば高町なのは一等空尉と貴様には巻き込んだという責任もある』

 

「巻き込んだ……ですか」

 

『当然だ、二人ともこちらの手違いや事件によって、本来ならば管理外世界で暮らしていたのを無理矢理引きずり込んだようなものだ。年端のいかない少年少女を、それも命の危険がある戦場に立たせるなど、普通ならば考えないだろ?』

 

「……私達が自分で選んだ道です、それを他人にどうこう言われるのはお門違いやと思います」

 

 それにもし巻き込まれていなかったとしたら、私はヴィータやシグナム達と出会うこともなく、ただ一人孤独な家でずっと過ごしていた。その方が多分耐えられへんやったと思う。

 

『ふん、それを後悔してないというなら何も言わん、が、これだけは言わせてもらおう。管理世界のことは管理世界の人間が解決するべきだ、私からすれば管理外世界は文字通り()()()()()()()()()()()()()なのだからな』

 

「自由な世界ですか」

 

 何をもってかの御仁が自由というかまでは分からない。分からないが、少なくともその目には哀れみなどの感情は全くなかった。

 

『兎も角要件は伝えた。精々がんばりたまえ』

 

 そう言って切られた通信は正しく嵐のように消え去ったのだった。

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