機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別   作:グランクラン

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ついに二期の話に入ります。


新しい血

 丘の上に建てられた慰霊碑の前でオルガとビスケットが立ち尽くしており、慰霊碑には今までの鉄華団の犠牲者が名を連ねていた。

「いよいよ歳星へ出発だ。そこでテイワズと盃を交わしゃあ俺らはいよいよ名瀬の兄貴と肩を並べることになる。テイワズの直系団体だ。この規模の農場だけじゃまだまだ金は足りねぇ。鉄華団に入りてぇって居場所のねぇ奴らもわんさと集まってくる。お前は止めると思ったんだがな」

「文句は言ったよ。いつものことでオルガが聞いていないだけだ。まあ、オルガが焦って進もうとしない限り俺は本気で止めないよ。それにオルガには感謝してるんだよ、こうしておばあちゃんの農場を経営しようって言ってくれてうれしかった。おかげでクッキーとクラッカの学費代に専念できた」

「さて………朝だ」

「そろそろ行こうか。サブレと三日月が暇そうにしている」

「だな。行くか」

 

 蒔苗がアーブラウ代表となりギャラルホルンの腐敗が暴かれたことで世界は少しづつ変わり始めていた。鉄華団は代表指名選挙を巡る戦いで一躍名を上げ、彼らはハーフメタル権利を手土産についにテイワズ直系団体となった。そしてギャラルホルン頼みだったアーブラウの防衛力強化のため正規軍の軍事顧問に任命され、地球支部を開設した。

 混乱する情勢の中でその実績を買われるも、ビスケットの判断で組織はゆっくりと成長を続けていた。

 クーデリアはテイワズと協力し、アーブラウ植民地域のハーフメタルの採掘一次加工輸送業務を行う『バーンスタイン商会』を設立し、鉄華団と提携して桜農場の敷地内に孤児院を設立。社会的弱者への能動的支援と火星全土の経済的独立のため日々奔走していた。

 その反面でギャラルホルンは社会的信用を失い世界の治安はより悪化する結果となった。鉄華団の活躍によって少年兵の有効性が示された結果子供達は戦場へ大量に投入されヒューマンデブリも増加、また戦力としてのモビルスーツの重要性も再確認され、各地で大戦期のモビルスーツの復元と改修が進みモビルスーツの総数は爆発的に伸びている。

 力なき子供達が搾取される世の中はいまだ続く。

 

「失礼しま~す」

 ハッシュ・ミディと呼ばれている若者が暗い部屋に入ると、そのまま部屋の中を見回す。

「予備隊のハッシュ・ミディですけど、獅電の動作テストが始まるって……んだよ。誰もいねぇじゃんか……ったく……」

 部屋の中へまた一歩踏み出すと、足元にいた三日月に驚く。

「うわっ!……なんだこの人か」

 三日月はジャケットを布団代わりにして眠っており、ハッシュの事にも気が付いていないようだった。

「ま~た寝てる。なんだろうなほんと。他の人は鬼神とか悪魔とか言ってるけど、こんなのただの産廃だろ……」

 三日月に対して失礼なことを言うとそれに反応するように上から声が聞こえた。

「そういうのは俺に聞こえないところで言ってねこれからは」

 上を見つめると今度は後ろからも声が聞こえてきた。

「俺の前でもやめてほしいね。俺の隊員なわけだし……」

「す、すんませんでした!」

 ハッシュは三番隊隊長であるサブレに思いっきり頭を下げる。

「まあ、仕方ないか。バルバトスもグシオンもアガレスも今はテイワズで改修中。入ってきたばかりの君はまだ本当の三日月を見てないからね」

「それより、新人は訓練の時間じゃなかったか?シノに怒鳴られるぞ」

「そ、そうでした!」

 そういうとハッシュはそのまま走り去っていった。

 

「おらぁ~!ペース落ちてんぞ!走れ走れ新入りども!」

 多くの新人が訓練の為に敷地内をひたすら走っており、その中にハッシュもいた。シノの後ろからユージンが話しかけてくる。

「おいシノ、あんま厳しくすっと一軍のじじい共と変わらねぇぞ」

「分かってるけどよぉ、適当に甘くしてそれで死なれたら目覚めわりぃしよ。嫌われんのは俺だけで十分だからよ。副団長さん!……あっちはもう模擬戦かよ」

 シノたちの目の前ではラフタ達が獅電での模擬戦で直接訓練していた。

「ダンテ!反応遅い!」

「んなこと言われても……」

「ったくダンテの野郎……」

「獅電のイオフレームは百里・百錬をベースにしたテイワズが開発したマスプロダクトタイプですからね」

「さすがに練度が違うか。まあサブレの奴は阿頼耶識なしであの二人に勝っちまうんだから、さすがというしかねぇな」

 ダンテはラフタの武器に気を取られて、ラフタからの攻撃をまともに受けてしまう。

「もう~勘弁してよね!あんたらが使い物にならないと……」

「うちらが名瀬のところに帰れないんだからね!」

「なんかすまねぇな………今度サブレに定期的な訓練をさせておく」

「いえ………その場合だと、サブレ君が暴れだしそうで……、この間も獅電を壊しかけるほどに暴れてたし」

 その模擬戦を遠くから見つめていた新人たちは感心し、戦いに夢中になっていた。

「はぁ~すっげぇな。あれ初めて乗ってんだろ?」

「あれが阿頼耶識の力か」

「獅電に阿頼耶識はついてねぇよ。あれは厄祭戦時代のシステムで今じゃよく分かんねぇことが多すぎてテイワズの新しいシステムには載せられねぇんだと」

「でも、それモビルスーツ以外でも使えるんでしょ?」

「ちょっと手術するだけでそんな力が手に入るんだもんなぁ」

「な~んで団長と団長補佐は俺らにはしてくれねぇんだろう?」

「お前ら……」

「俺らは何もすき好んで手術を受けたわけじゃねぇ。こんな博打みてぇな手術に頼んなくてもいい、そういう世界をこれからお前らと作っていくんだよ。それにうちの団長補佐は猛烈に反対するからな。手術をするってわかったら何時間説教がくるかわからねぇよ」

「さすがいいこと言うね副団長」

「オルガとビスケットがよぉ……似合わねぇ真似やってんだ。俺もちったぁ役に立たねぇとよ。じゃねぇと、ビスケットから副団長を指名してもらった身としては、情けねぇからな」

「だな」

 

「なぁビスケット、ここ数字違わねぇか?」

「うん?えっと……だね」

 ビスケットが端末を使って直していると、メリビットさんがそばまで寄ってくる。

「団長さん。名瀬さんからQCCSで連絡が入ってま……」

「兄貴が!?あっ……」

 オルガはやってしまったという表情になるとそっと横を向く。隣ではビスケットがクスクスと笑っていた。オルガすこし顔を赤らめると席を離れた。

「ああ分かった。行くぞビスケット」

 ビスケットは返事しつつ一緒に部屋から出ていった。

「頑張ってますね団長。最初は机に座ってるのも辛そうだったのに。ビスケット君が良く説教してましたっけ」

「ええ、本当に」

 オルガとビスケットが団長室に行くと名瀬からの連絡が入った。

「どうだ調子は?オルガ」

「まあぼちぼちです」

「何言ってんだ。お前はハーフメタルってシノギをテイワズにもたらした英雄だぜ。まあそれを疎ましく思うやつもいるだろうが……まあそりゃ俺も同じだ。お互いぽっと出は疎まれるもんさ」

「まあ気を付けますよ。ビスケットに説教されたくありませんからね」

「まあビスケット、お前がちゃんと手綱を握っとけよ。お前がいねぇとすぐに暴走するからな」

「はい。そこはちゃんとしてます」

「まあ、気をつけろよ。バルバトスとグシオンとアガレスが大幅改修してるってテイワズ内でちょっとした噂だ」

「ええ、気を付けておきます」

 通信を切ると、オルガは時計にふと目がいく。

「そろそろ出発の時間じゃねぇか?」

「え?あ、そうだね。そろそろ行ってくるよ」

「気をつけろよ」

 ビスケットは部屋から出ていった。

 

「いや~私も鼻が高い。あの『ノアキスの七月会議』にまだ無名だったあなたを登壇させた甲斐があったというものです。革命の乙女クーデリア・藍那・バーンスタイン」

「その節はお世話になりましたギョウジャンさん」

 バーンスタイン商会のもとにギョウジャンという男が訪ねてきていた。

「来月クリュセで再びこのアリウム・ギョウジャンが主催する大きな集会を開くのですが、ぜひそこで再び一言……」

「申し訳ありませんが、今は公式の場での発言は控えたいと考えています」

「ふむ……なるほど。『今は』ですか。そういえば月末にアーブラウ以外の植民地の方々を招いてハーフメタル採掘現場の視察を行うそうですねぇ」

 ギョウジャンの言葉にクーデリアと隣で話を聞いていたフミタンが反応した。

「その話どこで……」

「その視察私もクリュセの思想家の代表としてお手伝いしましょう」

「はい?」

「あなたの思想は元々私の影響を強く受けていた。その私が隣に立てば必ずお力になれるでしょう」

 クーデリアを勧誘しようとする中、秘書の女性がドアを開ける。

「失礼します。社長そろそろ次の予定の時間ですが」

「失礼だな。まだ私が……」

「ありがとうククビータさん。ギョウジャンさん。今のお話はお断りします。私の今の活動に特定の思想は必要ありません。今は口だけで動ける時代ではないのです」

 ギョウジャンは黙ってバーンスタイン商会から出ていった。

「あの男の率いる活動家団体テラ・リベリオニスは今や風前の灯ですからねぇ。有名人の社長の名前を使ってもう一度いい思いをしたいんでしょう。全くなんて小さな男だ」

「ですがお嬢様」

「ええ、彼は視察の件を知っていました。侮っていい相手ではありません」

 そして、車に乗っていたギョウジャンは運転手と話をしていた。

「どうでした?反応は」

「話にならん」

「では………」

「あの男に連絡を取れ」

 そしてクーデリアもある人物たちに連絡を取ろうとしていた。

「鉄華団に連絡を取ってください」

 

 クリュセ自治区の区立幼年寄宿学校ではクッキーとクラッカがビスケットとサブレの到着を今か今かと待っていた。

「ええ~!本当に鉄華団が迎えに来るの~?」

「多分ね」

「きっとね」

「決まってんだろ。だってこいつらの兄ちゃんの一人は鉄華団のモビルスーツ隊総隊長なんだぜ。しかももう一人は死神っていう凄腕のパイロットだ」

「かっこいい!」

 クッキーは表情を暗くさせたが、クラッカが手を握ってあげる。クッキーにとって兄が知らないところで死神なんて呼び方をされたことが何よりもショックだった。すると下の方から声が聞こえてくる。

「あっ!鉄華団だ!」

 クッキーとクラッカが下を見るとビスケットが手を振っているのが見えた。

「おにい!」

「おにいちゃん!」

 クッキーとクラッカは駆け足で学校から出ていき外で待っていたビスケットの体に思いっきり飛びついた。

「おにいちゃん!」

「おにい!」

「クッキー!クラッカ!」

 全員が車に乗るとそのまま学校を後にした。

「どう?寄宿舎の生活は慣れた?お金持ちの子ばっかりなんでしょ?いじめられてない?」

「大丈夫だよ~」

「うん!お兄ちゃん達が入れてくれた学校だもん!ねぇ」

 クッキーとクラッカは両サイドからビスケットの体に抱き着いており、サブレは助手席に座っていた

「おにい達は休めるの?」

「うん、サブレと二人で三日ほど休みをもらったから」

「じゃあおばあちゃんのお手伝いできるね!」

「お兄ちゃん、宿題を見てくれる?」

「いいよ。もちろん」

 二人が喜んでいると、車が突然爆発するとアトラは車を止めた。

「ば……爆発!?」

「アトラはエンジンを止めてそのままでベルトを外しておいて、兄さんはクッキーとクラッカをちゃんと抱きしめておいて。三日月出るよ」

 クッキーとクラッカは不安そうにビスケットのスーツのシャツをつかむと、ビスケットは二人の表情から気持ちを感じ取った。

「大丈夫じゃないかな?車が爆発しただけみたいだし……」

 三日月とサブレが後ろを振り向くと、すべての事情を理解し、銃を懐に戻した。

 

「……こっちは任せろ。お前は休みが終わり次第こっちに合流してくれ」

「分かった」

「で?オルガ何?」

 三日月が部屋に入ると、オルガはビスケットと会話をしていた。

「ミカには悪いが明日一番でおやっさんとバルバトスを受取りに行ってもらう」

「分かった」

「普通「なんで?」とか……」

「仕事でしょ?」

 通信機の奥でビスケットの「クスクス」という笑い声が聞こえてくる。

「二週間後お嬢さんの案件だ。少しきな臭くてな。まあそれでも間に合うかは微妙だが……」

「間に合わせるよ。それがオルガの命令ならね」

「ああ、頼むぜミカ、ビスケット」

「了解」

「お嬢さんの護衛が俺たちの次の仕事ってわけだ」

「うわっ!お姫様と一緒!?」

「いいか?これがお前らの初陣になる。とりあえずモビルワーカー隊として昭弘の二番隊に入ってもらう」

「ああ。いいか……」

 昭弘が声かけをしようとするとそれをライドが横からかっさらった。

「いいか!訓練じゃねぇんだぞ。しっかり気ぃ入れろよ!俺ら二番隊は甘くねぇぞ!」

 

 護衛任務は何も起こらないまま一週間が過ぎようとしていた。すると、昭弘がすぐにモビルワーカーで駆け寄ってくる。

「お前ら!早く持ち場につけ!団長から連絡が来た!来るんだよ敵が!」

 オルガはクーデリアと話をしていた。

「ビスケットからの連絡だ。『夜明けの地平線団』が三日前に火星に降り立ったって情報だ。そいつがあんたの言っていたテラ・リベリオニスの依頼を受けたらしい。くそっ……もうきやがった」

「あの……三日月は?」

「ちょっと出張中でな。こっちに向かってるはずだが。何心配いらねぇさ。俺たちは……鉄華団だ」

 

 前線では新人たちがモビルワーカーで応戦していた。

「ザック!俺たちも前にでるぞ!こんなところにいたんじゃ手柄もたてらんねぇ!」

 しかし、そんなモビルワーカー隊の前にモビルスーツが立ちふさがった。

「モビルスーツ……モビルスーツだ!」

「モビルワーカー隊は後退!モビルスーツ隊はこのまま突撃!」

「出て来いよ悪魔とやら。虚名を暴きお頭への土産にしてやるよ」

 モビルワーカーの一機がやられていく。

「くそっ!俺はこんなところで……」

 すると、鉄華団もモビルスーツを出撃させる。

「待たせたなてめぇら!」

「遅ぇんだよ!とっとと働け!」

「ったりめぇだ!鉄華団実働一番隊!いや、流星隊!いっくぜ~!」

 シノの流星号が攻撃を仕掛けるなか、後ろからサブレとビスケットの獅電が姿を現す。

「流星隊って……」

「俺らの事か?」

 一番隊は軽く引いていた。

「おせぇぞ!先に始めてるぜ!さっさと戦えよお菓子隊!」

「!?なんだお菓子隊って!」

 シノの発言にサブレが食いついた。サブレはソードを振り下ろしモビルスーツを倒す。

「え?だってサブレってお菓子の名前だろ?だからお菓子隊!いい名前だろ?」

「頑固として拒否する!もっとまともな名前があるだろ!」

「いいから戦いなよ!!」

 ビスケットの叫び声と共に二人は黙って戦闘に入った。

「おい!何やってんだ!」

「今のうちに補給だ」

「えっ……でもうちらが押してんじゃないっすか。そんなに慌てなくても……」

「何呑気なことを言ってんだ!」

「おい。お前んとこの悪魔ってのはどうしたんだよ?」

 シノが攻撃を受け止めると、敵のパイロットから接触通信が入った。

「ああっ!?てめぇらなんぞ俺らだけで十分だっつぅの!」

「なんだよ。それじゃせっかくのおもてなしが無駄になっちまうじゃねぇか」

「別動隊!?」

「シノ!そっちは任せる!行くよ兄さん」

「任せたよ!シノ!」

「一分で片づけて応援に行く!」

「ほざけ!」

「こいつ硬ぇ!」

 モビルワーカー隊はサブレたちの援護に向かおうとしていた。

「まじかよ……モビルワーカーでモビルスーツの援護を?」

「おらぁ!とっとと出るぞ!」

「で……でもモビルスーツの相手なんて……」

「やるしかねぇだろ!俺たちには他に行く場所なんてねぇんだぞ!」

「なんなんだよこの人たち……」

「ユージンは引いてて!俺たちで何とかする!」

「兄さんごめんそっちに二機行った!」

「何とかするよ!」

 サブレはたった一機で四機ものモビルスーツを相手にしていた。残った二機がビスケットの獅電に襲い掛かってくる。ライフルの攻撃を回避し、隙間をかいくぐってくる。

 オルガのもとにクーデリアがやってくる。

「団長。視察団の避難終わりました」

「あんたも避難しろよ」

「その言葉そのままお返しします」

「……まああんたならそういうだろうとビスケットが予想してたがな。安心しな、俺たちの居場所は俺たちで守っていく」

 三日月はバルバトスを起動させると、目の前に戦場が見えてくる。

「これ以上降りるとシャトルが的になっちまう。本当にいいんだな!?」

「うん。大丈夫」

 シャトルから飛び降りると、そのまま降りていく。戦場のど真ん中に降り立ったバルバトスはそのまま立ち上がる。

「慣性制御システム。スラスター全開」

 バルバトスが走りビスケットの援護に入った。

「お待たせ、ビスケット。遅れてごめん」

「お帰り三日月」

「お帰りミカ」

「ただいま、オルガ、ビスケット」

 バルバトスが戻ってきた。




どうだってでしょうか?クッキーとクラッカと一緒にビスケットがいると思うだけで、思うところがありました。
次回は「嫉心の渦中で」です!お楽しみに!
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