とりあえずはこれでブルワーズ編はおしまいになります。
いよいよアガレスのパイロットも登場です!
イサリビとハンマーヘッドでは新たに現れたエイハブウェーブの反応に驚きを隠せなかった。
「固有周波数を特定、機体名ガンダムフレームアガレスです」
フミタン・アドモスがそう告げると、それを聞いていた名瀬・タービンが体を乗り出してその機体を確認する。
「アガレスだと!?なんで死神がこんなところに?」
「し、死神?」
オルガ達鉄華団のメンバーは現れた機体の呼び名に軽く疑問を覚えつつ、問い直す。
「なんですか?死神って」
「この辺りでは有名な宇宙海賊のMSにつけられたあだ名だ。その姿を見たものは死ぬと噂されている凄腕のMSだ。しかし、死神がここに現れたということは………。この近くに母艦があるはずだ」
そういうとイサリビとハンマーヘッドは周囲の索敵に入ると、その姿は予想外のところで確認された。
「戦艦クラスのエイハブウェーブを確認、場所はデブリ帯の奥です」
映像に映る遠くのデブリ帯の中にそれはひっそりと隠れていた。
「あんなところに……」
ビスケットは遠くに隠れるように停泊している船を見るとそうつぶやく。
「あの距離じゃ、うちでは手が出せないな」
名瀬・タービンがどうするか考えていると新たな機影を確認した。
「新たな機影を確認、機体名はガンダムフレームパイモン」
「巨兵まで!?」
映像には青い大きなMSが確認された。
宇宙海賊フォートレスはデブリ帯の中をゆっくりと移動していた。しかし、その中多数のエイハブウェーブの反応を発見する。
「こんなデブリ帯のど真ん中で戦闘しているっていうのか?」
副リーダーの男は少しだけ驚きながら画面に注目していた。
後ろに控えていた首領のマーズと呼ばれている男は機体の中にグシオンが存在していることにいち早く気が付いた。
「うまく事が運べばグシオンを手に入れられるか……」
「まさか、ボス?」
「そのまさかだ、うまくいけばグシオンが手に入る。まあ、あくまでもうまくいけばだ、無理なら深追いをしない。サブレに出撃させろ!」
「待ってくれボス!それならあそこにいるバルバトスっていう白い奴でもいいでしょ?」
「いや、見たところバルバトスとサブレの実力は互角とみていいだろ。最悪の展開を考えておいたほうがいい。それにグシオンのパイロットの事だ、自分が狙われていないとみると、サブレのほうを攻撃してきかねん」
「だったらあなたが行けばいいでしょ」
「俺とあいつらでは実力が違いすぎる。ああも実力が違うと手加減が難しい。それならサブレにやらせたほうがいい」
副リーダーは反論するのをやめて艦長席に背を任せる。
「俺も出る」
そういいながらマーズもブリッジを後にした。
戦場に割り込んできた機体に三日月は少しだけ驚いたのち、すぐに行動に移す。三日月はグシオンめがけて太刀を振り下ろす。グシオンはその攻撃をかろうじてよけると再びデブリの陰に隠れる。
「昭弘は弟を連れて離脱して」
「すまない、三日月」
そういうと昭弘は昌弘を連れて戦場を後にした。
アガレスのパイロットであるサブレ・グリフォンは舌打ちをしながらバルバトスを蹴り飛ばし、その反動で一気にグシオンに近づいた。
「邪魔をするな」
三日月は少しだけイラつくと回り込んでグシオンのもとに急ぐが、アガレスはそのままグシオンにレンチメイスを振り落とし、グシオンはそれをハンマーで受け止める。後ろからバルバトスの太刀攻撃をグシオンはアガレスをぶつける形で回避する。
「邪魔するなよ」
「こっちのセリフだよ」
三日月のセリフにサブレが応じるが、その声に三日月は……
(ビスケットの声に似てる?)
「もらったわよ!」
グシオンは両機共々同時に攻撃を仕掛け、バルバトスとアガレスはそれを何とか受け止めようとするが、両機はイサリビとハンマーヘッドにぶつかってしまう。
時を同じくして、巨兵のパイモンがタービンズのMSに攻撃を仕掛けていた。
「少しの間俺と遊んでもらうぞ」
「私たちをなめないほうがいいよ」
「ほう、女か……」
パイモンは小型のハンマーを二つ取り出すと、そのまま戦闘に入った。
アガレスはイサリビに激突し、小さく舌打ちをする。
「ほんとに邪魔だな」
その声は接触していたイサリビにも聞こえており、その声にほとんど全員が反応した。
「この声……」
オルガがそっとビスケットのほうを見ると、ビスケットは小さな声で「そんな…」とつぶやいたのちに必死になってさけぶ。
「サブレ!!」
「兄貴?」
イサリビの正面に現れた画面にはビスケットに瓜二つの少年が現れた。
「どうしてサブレが!?」
しかし、サブレはその問いに答えることはなく、小さな舌打ちをしたのち、再びグシオンを追う。
それを見ていたバルバトスも同じように追撃した。
「サブレ!サブレ!」
ビスケットの声はサブレには届かなかった。
グシオンに対してレンチメイスを振り下ろそうとするが、それをバルバトスが妨害する。
「おまえら楽しんでるだろ!人殺しをよ!」
「はぁ?」
「なわけないだろ」
バルバトスが離れていくグシオンに追撃すると、アガレスも同じように追いかけようとするが、それを戻ってきたグレイズ改が妨害する。
「三日月!こいつは俺が引き受ける!先に行け!」
「ごめん」
そういうとそのままグシオンを追撃する。
(俺が楽しんでる?まぁいっか)
三日月はグシオンの上をとると、そのまま太刀を突き刺す。
「こいつは死んでいい奴だから」
サブレはそれを確認すると、青い信号弾をあげた。
「失敗か」
サブレからの合図を確認すると、閃光弾をはなち、MSを足止めする。
そのままイサリビとハンマーヘッドにワイヤーで通信をしてきた。
「そちらの組織名と代表の名を聞いておこうか」
「タービンズの名瀬・タービン」
「鉄華団のオルガ・イツカだ」
「覚えておこう。サブレ!引くぞ!」
アガレスとパイモンはそのまま前線から引いて行った。
タービンズの舟に乗り込むと今回の戦闘から得た戦利品のチェックが始まっていた。
「じゃあ、とりあえずは全部売却でいいのか?」
「はい、あとヒューマンデブリたちはこっちで引き取らせてください」
話をしていると部屋のドアが突然開き昭弘が部屋に入ってきた。
「団長話があるんだ。俺にグシオンをくれねぇか?ビスケットの弟を助けるんだろ?直接戦ったからわかるんだ。正直に言うとあいつは強い、まるで俺の事なんか興味もないって顔をしていやがった。だから俺を殺さなかったんだろ。でもよ、俺はあいつを仲間に引き入れてやりたいんだ。あいつは昌弘を助けてくれた。だから……」
「わかった」
オルガは昭弘の話を聞くと、名瀬に話を通す。
「すいません兄貴。コロコロと話を変えちまって」
「別いいさ。それより本気なんだな?フォートレスと戦うっていうのは」
「はい。もちろん会う機会があればの話ですが……」
「しかし、本当なのかい?死神がビスケット君の弟というのは」
アミダが改めて問い直すとオルガは黙ってうなずく。
「ビスケットの話を聞く限りだと、双子の弟だと……」
「そのビスケット君は?」
「部屋にこもっています。相当ショックだったみたいで……」
ビスケットは本来こういう会合には必ず出席していたが、弟との再会が予想以上にショックだったらしく、熱を出してしまった。
「しかし、フォートレスの行き先がわからない以上こちらも手が出せない」
「はい、だからあくまでこちらの仕事を優先します」
「なら本来の仕事通りドルトに直行でいいな」
話がまとまりだしたころ、メリビット・ステープルトンと呼ばれている女性が唐突に話を切り出した。
「そうだ、葬式をしてみませんか?私が生まれたコロニーでは死者はお葬式で送り出すの。魂がきちんとあるべき場所へ戻れるように。そして無事に生まれ変われるように」
と説明していると一人納得できていないオルガが反抗する。
「なんすかそれ。うさんくさっ」
「いいじゃねぇか。葬式ってのは昔は割と重要なもんだったらしいぜ。葬式をあげることで死者の魂が生きていたころの苦痛を忘れる……なんて話もある」
しかし、どこか納得のいかないオルガに対し、ノルバ・シノはやりたいと同意した。
「俺……だったらやりてぇ。少しでもあいつらが痛みを忘れられんなら」
そうして葬式の話は正式に決まるが、どこか気に入らないオルガは一人船の中を歩いていた。するとメリビットがそこですれ違う。
「気に入らないみたいですね」
「正直ピンときませんね。魂が生まれ変わるって云々とか。先に逝った仲間にゃどうせ死んだら会えるんだ。葬式なんてする暇があったらこれからどう生きるかを考えるために時間を使ったほうがいい」
そんなオルガのセリフにメリビットははっきりと反論する。
「それはあなたがそう思っているだけよね?ここにいる誰もが仲間の死に納得できているわけじゃない。葬式ってね生きている人の為にもあるの。大切な人の死ほどちゃんと受け入れるためにもね」
そういいその場を後にするメリビットに対しオルガは小さな声で文句を言う。
「ほんと上から目線だよな……おばさん」
「聞こえてますよ。ガ・キ」
互いにすれ違いその場を後にする。
自分の部屋のベットに一人眠っていたビスケットはいまだに弟サブレの事を割り切れずにいた。
「どうして……なんで…」
そんなことをずっと考えていると部屋のドアを唐突に開き、そとから炊事係のアトラと護衛対象のクーデリア・藍那・バーンスタインが入ってきた。
「ビスケット、大丈夫?ごはん食べれそう?」
「うん。ありがと。そうだ、これからのことはどうなったの?」
「それが、これから葬式をするそうです」
「オルガが言い出したの?」
「いいえ言い出したのはメリビットさんだそうです」
「そっか。なんかオルガらしくないなって思って」
ビスケットの食事の手はあまり進まなかった。
イサリビの甲板で葬式の準備に入ろうとしていた。
「よし。みんな祈ってくれ、死んだ仲間の魂があるべき場所へ行ってそんでもってきっちり生まれ変われるようにな」
メリビットの言葉を受けオルガなりの答えを放つ。すると、後ろからビスケットがブリッジに入ってくる。
「大丈夫なのか?ビスケット」
「うん。今はここにいさせて」
全員が黙とうしているとオルガはビスケットにアイコンタクトを飛ばす。
「弔砲用意。撃て!」
そういうと周囲に見えたのは氷の華だった。甲板にいた子供たちが無邪気にはしゃぎ、今回の案を提案したヤマギは少しだけ照れる。花火が消えると、どこか寂しさが周囲にさまよう。
「泣けよ。葬式ってのはな、生きている奴らに思いっきり泣くことを許してくれる場でもあるんだ。だからよ今日ぐらいは……」
「嫌です。かっこよかった仲間を見送るって時に自分らがだせぇのは嫌です」
「馬鹿な子たちだよ」
それでも昭弘の隣に昌弘はいた。
食堂でアトラとクーデリアとフミタンが片付けの作業をしているとライドが一人の子供を連れてやってきた。
「こいつ泣き止まなくて。他の奴らが寝れねぇからさぁ」
「母ちゃん……ううっ…ううっ…」
そんな姿を見ていたアトラは両手を広げる。
「……おいで。抱っこしてあげる」
「いい。アトラおっぱいないし」
「なっ!」
「どうせならフミタンがいい!」
そういうとフミタンの胸に飛び込んでいく。
「こっ、こら!」
「お気になさらず」
フミタンは優しく抱きしめた。
オルガたちは先ほどの戦闘で得た鹵獲品の売却の手続きが済んだと最後の確認をしていた。
「じゃあ、アミダ」
そういうと名瀬は突然オルガたちの目の前でキスをし始める。
「ちょっ……何いきなりイチャついてんすか!」
ユージンは顔をそらし、ビスケットは少しだけ顔を赤らめ、三日月は興味があるのかないのかわからないような顔をしていた。
「ん?知ってるか?人死にが多い年には出産率も上がるんだぜ。子孫を残そうって判断するんだろ。そうすっと隣にいる女がめちゃくちゃかわいく見えてくる」
そういうと再びキスをしていた。
『お前ら楽しんでるだろ!人殺しをよ!』
三日月はクダルの言葉が忘れられずにいた。
クーデリアとフミタンは廊下の片隅で話あっていた。
「不思議ね、いつもあんなに明るくてお葬式の時も氷の花にあんなにはしゃいでいたのに……」
「無理もありません。彼らはまだ子供……、無意識のうちに多くの葛藤を胸に押し込めている。そのひずみが時に現れるのでしょう」
クーデリアはすこしだけ顔を沈ませ考え込む。
「お嬢様そろそろお休みにならないと」
「私は……もう少しだけ」
フミタンは頭を下げると奥の部屋に消えていった。
一人考え事をしていると三日月がやってきた。
「いる?」
そう言いながら火星ヤシをクーデリアに差し出す。
「えっ?ああ…では……」
それを受取ろうとするとクーデリアは三日月の手が震えていることに気が付いた。
「三日月……震えているのですか?」
「えっ?ほんとだ。なんでだろう……今日はちょっと変だな」
(三日月にも有るのかもしれない。無意識のうちに押し込めている強い気持ちが)
そう考えているとクーデリアはそっと三日月を抱いた。
「はっ?」
三日月がそういうとクーデリアはようやく自分がしていることに気が付いた。
「あっあの……先ほどフミタンが小さな子たちをこうしていて……それでちょっと落ち着いたので……」
クーデリアは少し離れると三日月は突然……
「その……ごめんなさい」
キスをした。
クーデリアは少しの間自分に何が起きたのかわからないという顔をしたが、そののち、自分がキスされていることに気が付き、大きく飛びのいた。
「なっ………何!?何!?何!?」
「かわいいと思ったから。ごめん嫌だったか?」
「い…嫌とか、そういう問題ではなくそれ以前にこういうことは……」
顔を赤らめ、どこか顔をそらす。
「ギャラルホルンに虐げられている民衆たちは美しき革命家の登場を待ち焦がれている。うむ……決めた。クーデリア・藍那・バーンスタインの死を飾る場所はコロニーだ」
ノブリス・ゴルドンは静かにそう決めた。
鉄華団はドルトコロニーへ向かい、そしてフォートレスもまたドルトに向かっていた。
どうだったでしょうか。今回は少し長くなってしまいましたが、どうにか投稿することができました。
次回からドルト編です。
次回のタイトルは『希望を運ぶ船』になります!
お楽しみに!!