機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別   作:グランクラン

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ゼパル再びです!そして、彼の本性がほんの少しですが現れます。


友よ

 開戦と共にマクギリスの操るモビルスーツは次々とアーブラウ側のモビルスーツを迎撃していく。

「ここは片付いたか」

「准将お見事です」

「世辞はいい、もう少し敵の戦力を削るぞ、急造のアーブラウ防衛軍だ。モビルスーツが無限にあるわけではない。すぐに底をつく。これ以上混乱を長引かせては、月の蛇を笑わせることになる」

 マクギリス達を遠くからガラン達がジッと見つめていた。

「あれか、偵察隊の言っていた指揮官機」

「あいつをやればこの訳の分からない戦いは終わる……」

「そうだ。ここでの勝利を死んでいった連中への手向けにするぞ」

「あいつをやれば……」

 タカキの意識がマクギリスに向くなか、アストンがそんなタカキを落ち着かせる。

「タカキ、いつもどおりで平気だ。俺が前でお前が後ろ。いつもどおりやればきっとうまくいく。一緒にフウカのところに帰るんだろ?」

「そうだねアストン。一緒に帰ろう」

「ああ、約束だ」

 タカキとアストンが約束をする中、実はその会話をサブレたちは傍受しつつ、後ろからこっそりとガランの隙を伺っていた。

 

「この先にアーブラウ防衛軍の前線の拠点があるんだったな、そこを叩けば見えない戦局もだいぶ分かりやすくなるだろう」

 しかし、そんなマクギリスの前にガランが機体を走らせる。まっすぐにマクギリスを捉えると、そのまま武器を振り下ろそうとするが、マクギリスの部下がそれを邪魔する。

「大将がのこのこと出てくるとは戦法の基本がなっておらんぞ!」

「敵影五!准将はお下がりください!」

「私の心配はいい!本部に救援を要請しろ!作戦本部……」

「聞こえるか!敵の強襲を受けた。至急応援を!」

 しかし、一歩先を読んでいたガランによって救援は抑えられていた。

「救援なんぞ期待しても無駄。そっちは別動隊をやっているからな!ガキどもこっちは押さえる!お前たちは肩付きをやれ!」

 そういうとガランは部下のモビルスーツを押さえ、その隙に孤立したマクギリスにアストンたちが攻撃を加えた。しかし、攻撃の仕方からすぐにマクギリスには鉄華団だと判断できた。

「阿頼耶識の動き……鉄華団か。防衛軍のようにはいかないか………鉄華団のパイロット。これは団長からの指示なのか?オルガ・イツカの指示なのかを聞かせてもらいたい。君達は誰の指示で戦っている」

 そんなマクギリスの言葉にタカキが動揺を隠せずにいる。

「誰のって……」

「敵の言葉だ。耳を貸すなタカキ。こいつをやれば戦いは終わるんだ」

 そんなアストンの言葉に意識を切り替えるタカキ。

「そうだ……あんたをやればアストンと一緒に帰れるんだ!」

「タカキ!」

「いつもどおりやればうまくいく。分かってるよアストン!」

 しかし、そんな言葉とは裏腹にタカキが前へと走っていく。

「いつもは俺が前だろ……!一度下がれタカキ!そいつは一人じゃ無理だ!」

 しかし、そんな言葉に耳も貸さないタカキは完全に冷静さを失い、そのまま攻撃を加えようとするが、それをマクギリスは剣でうまくさばく。

「離れろタカキ!くそっこれじゃ狙いが……」

 マクギリスの機体の拳がタカキのモビルスーツに直撃し、その隙に武器を持ち替える。

「命懸けだよ……私もな!」

 マクギリスが剣を振り下ろそうとする中、アストンが間に割って張ろうとするが、それよりも素早くサブレの獅電が間に割って入る。タカキのモビルスーツを突き飛ばし、アストンのモビルスーツを左手で止めつつ、マクギリスの攻撃を右手で受け止めて見せた。

「さ、サブレさん?」

「て、鉄華団?どうしてここに……」

「本隊か!?どうしてここにいる」

 サブレはマクギリスの武器をそっと離す。

「いろいろ聞きたいことがあるでしょうが、マクギリスさん……できれば今回の紛争、俺たちに任せてもらえませんか?念のためにアーブラウとSAUの両方から承認を団長代行がとっています。できれば引いてほしい。ここであなた達と三つ巴になればさらに悲劇が起きる」

 マクギリスが考え込むと、ガランがサブレに攻撃を加えようとする。しかし、それを今度は三日月が割って入った。その姿を確認したマクギリスは黙ってうなずく。

「分かった。君たちに任せよう。どうやら、君たちはこの紛争の全体が見えているようだ」

 不利だと判断したガランは素早く撤退を始める。

「逃がすわけないだろ……」

「待て三日月!追わなくていい!一度引こう……タカキ達の状況を聞く必要があるし、タカキ達は状況が理解出来てない」

 三日月はどこか面白くなさそうな顔をするが、黙ってうなずくと、機体を翻す。

「分かった。タカキ、無事?」

「あ、はい」

「アストンは無事か?間に合ったと判断したが」

「……だいじょうぶです」

「そうか……よかった。ハッシュ!引くぞ!」

 そういうとマクギリスとサブレたちは互いに引き始める。

 

「ガラン・モッサと連絡が取れないとはどういう状況ですか!?一刻も早く調べてください。火星の連中に関する情報を最優先で……」

 ラディーチェは焦るように通信でガランの行方を聞こうとする中、ユージンはとなりから話しかけてきた。

「俺らがどうかしたのか?」

「アーブラウのシャトル発着場への着陸許可は?」

「ああ。おかげでSAU経由で遠回りするはめになった」

 ラディーチェは少しづつ後ろに下がると、今度は昭弘にぶつかってしまう。

「火星からの通信にも一切答えねぇってのはどういうことだ?お前にはいろいろと聞きたいことがある」

「まあ、サブレたちが先にこっちに降りてきててな、前線の状況は大体把握してるんだ。だからしらを切れるなんておもうなよ」

「ち、違うんです。全部ガラン・モッサの差し金で。わ……私ただ奴に言われたとおりにしていただけで!」

「言い訳ならあいつにしな……今回の一件、あいつはだいぶ怒っているみたいだけどな」

 そういうとユージンの見つめる方向をラディーチェも確認すると、いつもより厳しい表情をしたビスケットが部屋の中に入って来た。ゆっくりラディーチェの前に立ちふさがる。

「ビ、ビスケット・グリフォン団長代行!そ、そうだ!ガラン・モッサの居場所になら心当たりがあります!」

「あなたはガラン・モッサと共謀し今回の紛争を仕掛けましたね。あなたの身柄はアーブラウとSAUが引き取るということで双方が合意してくれました。両陣営は今回の事件に決着をつけるつもりです」

 すると、ザックが部屋に入ってくる。

「団長代行!副団長!ラフタさんから通信です」

「つなげ」

 ザックはすぐに通信をつないで見せた。

「つながりました!」

「一旦戦闘の方は収まったよ。まあ、ほとんどサブレと三日月が何とかしたけど」

「そりゃよかった」

「それがあんまりよくもないんだよね。この一か月で鉄華団にもだいぶ犠牲者が出てる」

「そうか、分かった一度引いてくれ」

 昭弘が襟首を締め上げ、ラディーチェを問いただす。

「そのガランって野郎はどこにいる?」

「もし戦場にいないのであれば国境を越えたSAU領内にいくつか身を隠すための場所が……」

「なんでてめぇが知ってんだ?俺たちをはめようってんじゃねぇだろうな?」

「ガランは平気で人を欺く男です。対等な交渉をするために色々調べておいて私のデスクに……」

 昌弘がデスクの中からその情報が入ったデータを見つけた。

「分かりました。ですが、だからと言ってあなたの処遇が良くなるわけではありません。あなたにはきっちりと罪を償ってもらいます」

「そ、そんな!」

「あと、マクマードさんからの伝言です。「お前を切る」だそうです。テイワズからの援助も見込めないと思っていてください。ユージン」

「おう!ほら!行くぞ!」

 ユージンがほかの団員と共にラディーチェを引きずって連れていく。

「ビスケットさん。どうしますか?」

「俺も出るよ……昭弘、出撃準備だ」

 

(マクギリスの首は取れなかったが……まっあとはラスタルがうまくやるだろう。こっちはマハラジャを調べなければな……あいつが生きているのならすこしばかり厄介だからな)

「ここでの仕事はもう終わりだ。傭兵は傭兵らしく次の戦場へ向かうとしよう」

 しかし、そんな中傭兵の一人が襲撃が来たと連絡を入れてきた。

「どこの部隊だ!?」

「詮索はあとだ!戦闘用意!ここは放棄する。持ちきれない物資は破棄してかまわん!」

(こんな所で……さすがに笑えんぞ)

 ガランが投げたコップがつぶれると、ガランはそんなコップには目もくれずモビルスーツに飛び乗った。

「数が多いな……囲まれる前にバラけるぞ!合流地点で会おう!」

 ガランが去るとき、三日月とハッシュは二人で敵のモビルスーツと会敵していた。

「来ました」

「俺が先行するから適当についてきて。無理はしなくていいから」

(俺だって……)

 バルバトスが走り、そのまま次々とモビルスーツをせん滅していく中、ラフタやアジーや昭弘たちもまた同じように怒りを抱えながら淡々とせん滅を続けていく。

 先にガランだけが目的の場所にたどり着く。

「まだ俺だけか?ったく……また兵隊を集めなきゃならんか。すまんなラスタル。次の仕事を始めるのは少し先になりそうだ。しかし、なんで居場所が……まさかマハラジャが生きて……」

 そんなとき、木々の奥からアガレスが単身姿を現した。

「そうかラディーチェか……少し小物と侮りすぎたか」

 鉄華団のモビルスーツが現れたところでようやくガランも事態を把握した。

 そのころ、ハッシュはモビルスーツに慣れておらず、苦戦を強いられていた。

(こんなはずじゃ……怖ぇ……怖ぇ……怖ぇ!)

 武器を弾かれ、戦うことのできないハッシュは恐怖のあまり目をつぶってしまう。しかし、そんな中バルバトスはハッシュの乗るモビルスーツを吹き飛ばす。

「邪魔」

 そういいつつそのまま前線に去っていく姿にハッシュはかつての兄貴分の姿を重ねた。

「俺は!」

 このままでは終われないハッシュはまた立ち上がろうとしていた。

 そのころサブレとガランも戦いを始めていた。サブレのレンチメイス改をガランのゲイレールに叩き込むと、ガランはそれを何とか受け止めて見せたが、サブレはゲイレールの足元を蹴りで払って見せる。ゲイレールは一度体制を崩し、そのままレンチメイスで後ろに軽く吹き飛ばされる。

「この戦い方……どこかで」

「ここで終わるような男じゃないんだろ?立ち上がって見せてくれよ」

「小童め!よくほざく」

 ゲイレールが武器を振り下ろすが、サブレはそれを後ろに軽く下がることで回避する。サブレはそのまま右こぶしをたたき込み、そのまま連撃を加えていく。レンチメイス改で左腕をつかみ、隠しパイルバンカーを打ち込む。

「この戦い方!思い出したぞ!!マハラジャ!!」

 サブレの戦い方にガランはマハラジャの姿を重ねた。しかし、一瞬の隙をつきサブレはゲイレールを押し倒しレンチメイスを振り上げる。

「マハラジャ………やはり……お前は……」

 ガランは勝利を完全に諦め、自爆装置を起動した。

(ラスタル……マハラジャは……)

「サブレ!下がって!!」

 アガレスは後ろに大きく飛び下がると、目の前で大きな爆発が起こると昭弘たちの目はそっちに向く。

「どうやら終わったみたいだね」

 ラフタのそんな言葉に昭弘はそれでも素直に喜べなかった。

「あんたは頑張ったよ……」

「ああ……」

 全員が安堵の息を吐く中、ビスケットも少し落ち着くが、サブレだけは何か違和感を感じていた。

(なんだ?この感覚……何かがおかしい)

「どうしたのサブレ……」

「ラディーチェはどうやってあの居場所を調べたんだ?」

「どうやってって……それは……」

 ビスケットが答えに悩んでいると、三日月が姿を現した。しかし、その時サブレの脳裏に傭兵という言葉で一人の男が浮かんだ。その時、サブレと三日月はすぐに反応し攻撃を武器で打ち落とす。彼らの前にあの赤いガンダムフレームであるゼパルが姿を現した。

「あの時の!」

「ここで会ったが……!!」

「この際だからはっきり聞こう。お前は誰だ?サルガという人物は知っているが、お前じゃない。確かに、お前は性格も戦い方もサルガと全く同じだが、サルガはお前のような若い人間じゃない!」

「………勘の良いガキは嫌いだな」

 ゼパルの目が赤く光りとたん動きが素早く、かつ予想不能な変則的な動き方に変わる。三日月のソードメイスを回避し、三日月を土台にして後ろのアガレスに大剣を振り下ろした。三日月はソードメイスを下から振り上げようとするが、それはゼパルが受け止める。

「ようやく本性を出したな?あんた何者だ?」

「何者か……か。そうだな、俺は……イラク・イシューと名乗っておこうか」

「イシュー?イシューってセブンスターズの?」

「くくく……どうかな」

「どうでもいいよ。あんたが俺たちの敵であることは変わらないだろ」

「その通りだ」

 そんな中、ギャラルホルンのモビルスーツの反応を感知すると、イラクは後ろに大きく下がった。

「さすがにギャラルホルンに見つかるのは面倒だ。だが……確信ができたよ………バルバトス」

 バルバトスを軽くにらむと、ゼパルはそのまま夜の闇のなかに消えていった。

 

 ハッシュは一人で落ち込んでいた。

「クソみてぇな気分だ。自分がなんの力もねぇただのガキだって思い知らされんのは。あの人達は俺とは全然違う。阿頼耶識の手術なんて関係ねぇ、そもそもの物が違う」

 すると突然後ろから話しかけてくる人物がいた。

「自分の置かれた状況を正しく判断できるっていうのはきっとパイロットの素質の一つだ」

 ハッシュは黙りこくってしまう。

「なんだ?」

「お前がそんなにしゃべるからびっくりしてんだよ」

 

 アストンと共にタカキは最低限の事情を聴かされたのち、いったん帰宅することになり、タカキとアストンはフウカの待つ家へと帰って来た。フウカはタカキとアストンが無事なことを確認すると軽く涙を浮かべ二人に抱き着く。

「お帰り!」

 

「ヒゲのおじ様が?そんな……どうして?おじ様は誰よりも強くて優しくて……」

 動揺を隠せないジュリエッタにラスタルは諭す。

「ジュリエッタ!彼の死を嘆くのはやめろ」

「ラスタル様……?」

 ジュリエッタは大粒の涙を流し、嘆いていた。

「彼はどこにも存在しない。私の活動に裏で協力するため彼は家も所属も本当の名前すら捨て戦いの中で生き、そして死んだ。存在しない男の死を悲しめばそこまで尽くしてくれた彼の思いを踏みにじることになる」

「……はい」

 ジュリエッタは涙を拭き前を向く。

 そのころ、フォートレスの旗艦のブリッジではマーズ・マセが一人遠く輝く地球を眺め、たたずんでいた。そして、ラスタルとマーズは同時に言葉を放つ。

「友よ……」

「友よ……」

 しかし、その言葉に込めた思いは全くの別の感情であった。




どうだったでしょうか?ゼパルがまた少しだけ姿を現しましたが、彼はこれからもちょくちょく登場する予定です。
次回のタイトルは『帽子の行方』です!
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