マクギリスと石動とジュリエッタはようやく戦いの場にたどり着く、バルバトスとアガレスがハシュマルを挟み込むような形で立ちふさがる。バルバトスは目を赤く、アガレスは目を青くする。石動とマクギリスは援護するために前に出ようとする。
「援護する。石動お前は左から……」
「いらない。邪魔」
マクギリスの援護を邪魔と一蹴すると、バルバトスとアガレスはとてつもない動きで一気にハシュマルとの距離を詰める、アガレスはテイルブレードの攻撃を紙一重で回避し、レンチメイス改で腕にたたきつけ、いったん距離を取る。バルバトスはソードメイスで攻撃を仕掛け、石動を盾にするように攻撃を回避する。ジュリエッタたちは二人の動きについていくことすらできないバルバトスはハシュマルの上に乗り攻撃を仕掛けるのをハシュマルはテイルブレードで吹き飛ばす。その姿を見たビスケットは負荷に苦しみながら叫ぶ。
「み、三日月!」
「大丈夫。それよりそっちはまだ動ける?」
「ああ、行ける。このまま仕留めるぞ」
「うん」
しかし、アガレスとバルバトスが動きを一瞬止めていた隙にハシュマルは近くのモビルアーマーの武装をあさりそのまま自分の武装に装備する。背中には巨大なタンクのようなものが装備されていた。
『ハシュマル、二人の武器を先に潰せ』
バルバトスとアガレスは壁に埋まった自分の武器を引き抜こうとするのをハシュマルはビームでソードメイスを壊し、背中から高速で出てきた弾で破壊された。その攻撃にマクギリスは驚く。
「あ、あれは……ダインスレイブ!!」
バルバトスは四つん這いで動きながらもハシュマルのパーツをもぎ取る。アガレスは近くにあった大型ランスを取り出し、突き刺そうとするが、ハシュマルはそれをテイルブレードでガードする。腕でバルバトスを殴りつける。ジュリエッタを含め、三人は唖然としていた。
「何なんだこれは……」
「動きが……見えない」
三日月はこれでも足りないと叫ぶ。
「使ってやるからもっとよこせ……こんなもんかよお前の力は」
マクギリスでさえ驚愕していた。
「これが……厄祭戦を終わらせた力……か」
背中に乗っていたバルバトスをハシュマルはテイルブレードで吹き飛ばしアガレスを足で蹴り飛ばした。バルバトスのコックピットの近くにテイルブレードの攻撃がやって来た。
「あっ………あっぶねぇ……なぁ!」
バルバトスを殴りつけるハシュマルはそのままテイルブレードをジュリエッタの方に向けた。ジュリエッタのコックピットにあたろうとした攻撃をサブレはアガレスを使って庇う。アガレスの左腕をもぎ取るように突き刺さる。
「ど……どうして?なんで私を……」
「しるかよ……体が勝手に動いたんだ」
そういうとアガレスは再びランスを取り、突き進むような体勢になる。三日月は石動が持っていた大剣を奪う。
「俺達がテイルブレードをひきつける、三日月はそのままあいつをやれ!」
「分かったそっちは任せる」
両機はほぼ同時に走り出し、サブレは三日月に向けられたテイルブレードの攻撃をランスで受け止め、そのまま三日月はかける。しかし、テイルブレードの攻撃はアガレスの右腕をもぎ取り、そのまま三日月の方に向く。
「さ、させるか!!」
両腕を失ったアガレスは機体を走らせ、テイルブレードの攻撃をそらし、その隙にバルバトスはハシュマルの頭部に攻撃を決める。そらされた攻撃は辛うじてコックピット直撃だけは阻止した。しかし、両機とも戦えるような状態ではなく、バルバトスも、アガレスも崩れ落ちたハシュマルに寄りかかるように倒れた。
ヴィダールは機体が壊れて動けなくなったジュリエッタ回収の為その場を後にした。動けないイオクの前にイラクが姿を現した。イオクを見下ろす形で立っていたゼパルにイオクはさすがに驚く。
「貴様!誰だ!私を誰だと思っている!!」
「このままでいいのかい?」
イラクは自分の名前をあえて語らずイオクをたぶらかす。
「このままでいいのかい?このまま引き下がっても」
「そ、それは……しかし……どうすれば……!!教えてくれ!私はどうすればいい!」
イラクは不敵に笑い、方法を告げる。
「君はジャスレイとつながっているじゃないか……鉄華団を叩くなら彼らを孤立させればいい。その為の方法をジャスレイは知っているぞ」
「そ、そうか!!その方法があったか!!」
イラクはそのままイオクの前から姿を消し、去りながら戦いの場へと視線を移す。
「今回はこちらの負けとしよう……次の相手は彼らだ……」
ギャラルホルン本部ではセブンスターズによる会議が開かれていた。マクギリスによる報告が行われていた。
「報告書にある通り私が火星に向かった目的はあくまでもモビルアーマーの視察でした。ですがそれを邪推したクジャン公の介入がモビルアーマーを目覚めさせてしまった。我がファリド家が現地の組織と協力しモビルアーマーを撃破したことで事なきをえましたが、一歩間違えれば市街地は蹂躙され火星は大惨事となっていたことでしょう」
そんなマクギリスの言葉にイオクが喰ってかかる。
「黙れ!全て貴公が仕組んだことではないか!!」
「私が?なんのために?」
「七星勲章!!」
「そんなものに興味はない」
「しらを切っても無駄だ!そうですよね?エリオン公……えっ?」
しかし、ラスタルはそんなイオクの言動に賛成せず、出てきた言葉はマクギリスを称賛する言葉だった。
「モビルアーマーの鎮圧お見事であったファリド公」
「そんな!ラスタル様何を……」
会議が無事終わり、ラスタルはジュリエッタと共に歩いていると、後ろからイオクが分からないような顔で近づいてきた。
「なぜですか!?マクギリスに野心ありとなぜあの場で糾弾しない……」
「落ち着けイオク」
ラスタルは足を止め、イオクを諭す。
「野心の正体をつかめぬというのにいくら糾弾したところでただの遠吠えにしかならん」
「で……ですが……」
あくまでもだだをこねようとするイオクに対し、ラスタルはそれでも諭そうとする。そんな話をジュリエッタは聞きながらも頭の中はサブレの事でいっぱいだった。
「我々ギャラルホルンは秩序の番人。物事の順序を乱せば必ずや足元をすくわれるだろう」
「それは……!ひっ!」
それでも言い訳しようとするイオクに対し、ラスタルは睨みつける。
「ギャラルホルンのあるべき姿を忘れ、目的を見誤る。そのような家門と手を組むことはセブンスターズの一角を預かる者として一考せねばなるまいな。頭を冷やせ、イオク・クジャン」
そのまま過ぎ去るラスタルをイオクは遠くから見つめるしかなかった。しかし、そんな姿をマーズ・マセは遠くから見つからないように見つめていた。ジュリエッタはラスタルのもとに駆け寄ると、進言した。
「ラスタル様。先日技術部からの要請のあった新型のテストパイロットの件……」
「ああ聞いている。お前が引き受ける必要は……」
「いえ。是非やらせていただきたいと」
「イオクへの話を聞いていなかったのか?最近のお前は少し変だぞ。何かほかに目的があるのか?」
ラスタルの言及にジュリエッタは黙るが、ラスタルは小さくため息を吐き、告げる。
「好きにしろ。しかし、お前は十分に強い。俺がそれを望んでいないことだけは理解しておけ」
去っていく。ラスタルの前にジュリエッタは立ち尽くしていたが、一人の気配を感じ取る。そちらをじっと見、体を向ける。そして、反対の方からガルス・ボードウィンが姿を現す。
「どうしたんだね?」
「……侵入者です」
ジュリエッタはガルスとは反対方向に視線を向けると、ガルスは微笑む。
「いいんだよ。彼はギャラルホルンの人間なんだ。私はこの日の為に用意してきたんだ。そうだろう?マハラジャ」
マハラジャと呼ばれた男はマーズ・マセだった。マーズ・マセの存在に警戒するジュリエッタなど放っておき、目の前に立ち頭を撫でる。
「……大きくなったな」
「え?」
全く意味が分からないという顔になるが、しかしジュリエッタは頭を撫でられながら懐かしさに襲われた。そして、全てを理解できた。
「お、お父さん」
「マハラジャよ……彼女の事はすまなかった。しかし、お前がここに来たということは……」
「ああ、我々ファントム・エイジはボードウィン家とバクラサン家、ファルス家の意向に従い……逆賊ラスタル・エリオンを討つ。ジュリエッタ……私に協力してくれるな?好きなのだろう?サブレの事が」
「!?……そ、それは」
照れるジュリエッタに対し、マハラジャは微笑む。
「好きにすればいい。あいつは私が認めた男だ」
マハラジャの手を取り、ジュリエッタはラスタルを裏切った。ギャラルホルンの中の動きもあわただしくなる中、静かに……しかし、激しく動き出そうとしていた。
ビスケットが団長室に入ってくると、後悔に襲われたオルガは机に顔をぶつけ、そのまま悩んでいた。ビスケットはそばまで寄る。
「三日月……右半身が動かなくなったんだって?後悔してる。あれはオルガの所為じゃ……」
「わぁってる。でも……俺があいつを追い詰めてるんじゃねぇかって思ってしまうんだ。だってそうだろ?ミカはいつだって俺の為に進んできた……」
ビスケットはオルガに尋ねる。
「なら、オルガは三日月にどうなってほしいの?」
「俺は……あいつに家族を作ってほしいって思うんだ。俺たちは家族なんて知らなかった。だからほしかった。あいつも家族を作れば……きっと。そうだ、サブレはどうだ?」
「怪我は無いよ。でも、サブレ今悩んでいるんだよね」
そんなビスケットの言葉にオルガは軽く驚く。
「なんだよ。重要な悩みなのか?」
「まあね。なんせ恋の悩みだからさ」
「こ、恋?誰かの事が好きになったということか?」
「うん。相手のことが好きになったらしくて……でも、俺には相談してくれないんだよね。でも、家族ってそういうことなんじゃないかなって思うんだ。家族のカタチは人それぞれで、三日月だってそうだよ。きっと大丈夫だよ」
オルガはビスケットと共に微笑む。
「そうだな」
「お見舞い遅くなってしまってごめんなさい」
クーデリアからのお見舞いのお菓子をアトラからもらう三日月。
「三日月全然じっとしてくれなくてハッシュ君に運ばせてずっとどこか行っちゃうんです」
「だからバルバトスの近くに置いといてよ。あれに繋いでくれたら動けるから。桜ちゃんとこはどう?」
三日月はクーデリアにそう問う。
「順調ですよ。来月にはまた次の収穫です」
「そっか。でもこれじゃあもう手伝えないな」
三日月がどこか残念そうにしているとそれを励まそうとする。
「そんなことありません!畑仕事なら私も手伝いますし!」
しかし、三日月はそんなクーデリアの言葉を否定する。
「駄目でしょ。クーデリアにはクーデリアの仕事があるでしょ」
「はい……そう……ですよね……」
クーデリアとアトラは部屋を出ると、クーデリアは自分の気持ちを吐き出す。
「私は卑怯者です。三日月に会うのが怖かった。不安だったんです。だからずっと会いに来ることができなかった」
そんなクーデリアの言葉にアトラは同じ気持ちを抱きながらも答える。
「で……でも三日月何も変わらなかったでしょ?」
「はい。変わりませんでした。それをずっと恐れていたんです。こんなことになっても変わらなかったら……またどこかへ行ってしまったら……」
アトラは同じような不安を抱く。
「私同じようなこと考えてた……。三日月変わらなくて体……腕がなくてもバルバトスがあれば大丈夫とか言って……「団長が言ったらいつでも動ける」って……それ変わらないのうれしいはずなのに……次にどこかに行ったらもう三日月戻ってこないような気がして……私クーデリアさんにお願いしたいことがあるんです!私がビスケットと子供作るから、クーデリアさんは三日月と子供作ってほしいんです!」
そんなアトラの突拍子の無い言葉にクーデリアは驚く。
「えっ!?」
「ジュリエッタ……お前はいつも通りにラスタルのそばに居ろ……いいな」
「……お父様はどうしてラスタル様と敵対なさるのですか?」
ジュリエッタはガルスの目の前でマハラジャに尋ねた。
「……人には役目などないと私は思っている。好きな人を好きになり、好きなモノになる。夢を追うことも、好きな職業に就くことも……ラスタルは人には役目があると思っている。ゆえに奴はセブンスターズの座に就いた。あの愚かな友をいい加減救ってやりたいと願っているんだ。たとえそれがあいつを殺すことになるとしても……」
そういうとガルスとマハラジャはその場から移動する。マハラジャは誰もいないことを確認すると、改めて本来の話に戻す。
「ガルス……本当にいいのだな?改めて確認するぞ。お前の息子を裁くことにもなるのだぞ?今、お前の息子はラスタルのもとにいる」
ガルスは目を閉じ、覚悟を決め言葉を発する。
「いい、お前がそれを気にすることはない。それより……ゼパルの事だが……本当なのか?報告書を見た今でもにわかには信じがたい」
「まず間違いないだろう……だとすると奴の目的は……」
「ここの最下層に封印されているモビルアーマー『ラファエル』の開封だろうな。それと『バエル』の奪取」
「ほぼ間違いないだろう……ラファエルの奪取にはセブンスターズの血筋が必要だ。だとしたら……」
イラクに警戒するマハラジャとガルスはそのまま施設から出ていく。
マクギリスの興味はガエリオより三日月の方に向いていた。マクギリスは石動に尋ねる。
「石動……お前はあれをどう見た?」
「あれ……といいますと?」
「バルバトスとアガレスの戦いだ」
「バルバトスは理性なくひたすら破滅へと突き進む己の身までも食いつぶすかのような。方やアガレスは逆に己の身を傷つけながらも他人を守ろうと必死になっているように思えました」
「しかし、あの強さは本物だ……あの男が生きていたとして、ラスタルがそれを飼っていたとして、それを純粋で正当なカードとして強さを保有するのは腐った理想が蔓延する曖昧な世界でだけ。バルバトスが……三日月・オーガスが再認識させてくれたよ。真の革命とは腐臭を一掃する強烈な風だ。本物の強さだけが世の理を正しい方向へと導く」
ヴィダールは一人の女性と話をしていた。
「ざ~んねん。全然データが取れてないじゃない。何しに火星くんだりまで行ってきたの?」
「それでも収穫はあったさ」
「あらジュリー」
ジュリエッタはその女性の前に姿を現した。
「技術部長。あの機体のテスト私がお引き受けします」
「あら本当に!?かなりピーキーな機体だから任せられる子がなかなかいなかったのよ」
二人が話しているとヴィダールが口をはさむ。
「ラスタルの許可は?」
「もちろん取りました。私を疑うのですか?」
「いや、ラスタルがそれを指示したとは思えないだけだ」
「余計なお世話です」
「そうか?」
ジュリエッタは自らの胸に手を当てる。
(あの人の強さに少しでも近づきたい。あの人のそばで歩いていけるような力を……)
「イオク様!クジャン家の当主ともあろうお方がこれ以上怪しげな輩と接触を持つのは……」
イオクの部下はジャスレイと接触するのを止めようとするが、それでもイオクは繋ぐように告げる。
「いいから繋げ!私の命を輝かすためだ。部下の尊い犠牲により繋がれたわが命。この命がラスタル様に侮蔑されるようなことがあれば部下達に顔向けができないではないか!だから早く繋ぐのだ。ジャスレイ・ドノミコルスに」
(あの時の男が言っていた通りに鉄華団に復讐を!)
ビスケットが廊下を歩いていると、後ろからアトラが歩いてきていることに気が付く。
「あ、アトラ。少し待っててね……あと少しで終わるから」
「ね、ねえ!ビスケット……私と子供作ろう!!」
アトラの言葉にビスケットの思考が追いつくのに数秒かかると、ビスケットはとてつもなく驚く。
「え、ええ~!?どうしたの!?アトラ!」
「私、本気だよ!」
ビスケットはまっすぐアトラの目を見つめると、決してその言葉が嘘ではないとわかる。ビスケットも優しく微笑む。
「……分かった。作ろうか……」
「うん!」
クーデリアは再び三日月の部屋を尋ねると、三日月はクーデリアが現れたことに気が付いた。
「どうしたの?なにか忘れ物?」
「いえ……三日月は子供は好きですか?」
クーデリアのそんな突拍子の無い言葉に一瞬驚くと、逆に三日月が訪ねる。
「クーデリアは子供がほしいの?」
「え?そ、そうですね」
三日月はふと考えると、突拍子の無い言葉を放つ。
「じゃあ、俺と作る?」
クーデリアは一瞬驚くが、落ち着きチャンスとばかりに条件を提示する。
「なら……三日月はお父さんになるということですよ?約束できますか?」
「………俺……どうすればいいんだろ?」
「三日月の夢は私が預かっています。ですので一緒にかなえましょう?今度は私があなたを支えます。それが家族でしょ?」
「……じゃあよろしく」
新しい家族が生まれようとしていた。
翌日三日月はビスケットにお願いして、自分の畑に連れてきてもらっていた。
「どうしたの?いきなり畑に連れて行ってほしいって」
「ねえ……ビスケット……お父さんってどんな感じ?」
三日月の突然の質問に目を白黒させると、優しく微笑み隣に座る。
「……俺も考えてるんだ。どういうのがお父さん何だろうって」
笑うビスケットを見て三日月もなんとなく気が付いた。二人は畑をジッと見つめると、それぞれの家族のカタチを思い浮かべる。そして、サブレもまた一人悩んでいた。
「どうして俺は彼女を庇ったのだろう?」
それが恋だとはまだ気が付かないまま。
どうだってでしょうか。原作を見ていたころ。アトラを見て「何を言ってるんだこの子は?」と思ったものですが。こうしてみていると、こっちのアトラの方が数割増しでやばかった。並行してマハラジャがついに姿を現しましたね。それ以上に衝撃が多かった回だと思います。
次回は『助言』です。次回も楽しみに!