イオクはラスタルの乗るスキップジャック級が落ちていく姿を少し遠くから眺めていた。涙を流してその姿を悔しそうに見ていると、遠くから赤いガンダムフレームであるゼパルが姿を現した。
「き、貴様は!?」
「涙を流し………悔しさがその身を支配しているか……」
イオクに聞こえないように小さな声でつぶやくと確かな確信をもつ。イラクはイオクをそそのかして見せる。
「鉄華団が憎いか?ラスタルを殺した者が憎いか?部下を殺した者共が憎いか?」
イラクはイオクに尋ねるとイオクは涙を流し大きな声で叫ぶ。
「ああ!憎い!貴様にならあいつらを殺せることができるのか?」
「力を貸してやるだけだ……お前にしか目覚めさせる事のできない最強の力をな……」
「どこに?どこにあるんだ!?その力!」
イラクは計画通りとでも言わんばかりに悪い笑顔になる。
「ヴィーンゴールヴ最下層……君の血で開くようになっている。そこに行くにはパスワードがいるんだよ。パスワードは『火星の王』だ」
「それがあれば!」
「ああ勝てるさ」
イオクと共にイラクも移動していく。
「マクギリス!」
ガエリオが駆けるキマリスはドリルランスを突き刺そうとするが、アグニカはそれを剣で簡単に弾く。
「くっ!お前はカルタを殺し、アインを殺した世界で何を望む!お前を慕ってくれている者達を振り払ってなお、力を信じるのか!?」
「お前が戦えば戦うほど私の正しさの証明になる。それが分からんお前ではあるまい?」
キマリスのランスによる連続突きを難なく回避して見せるバエル、キマリスを殴り飛ばし態勢を整えて再び機体を走らせる。ランスを突き刺そうとするがバエルは二本の剣で受け止める。
「お前の目には俺は見えない、お前に俺の言葉は届かない!俺を見ろ!!アイン!俺の全てを使ってマクギリスの全てを奪ってくれ!」
「だから言っただろ?お前が力をふるい続ければふるうほど、私の正しさの証明になるとな。」
ガエリオはさらにスラスターの出力を強くする。前へ前へ突き進もうとするキマリスをバエルは蹴り飛ばす。
「違う!これはお前の信じる力とは違うものだ!アイン頼む!届けさせてくれ!一人ではないこの戦い!」
ランスをバエルに叩き込もうとするが、バエルはそれを右腕で弾き、キマリスの右腕を切り裂く。
「なぜ?なぜ届かない!?何をすればお前に届かせることができる!」
ドリルニーをたたき込もうとするがそれをバエルは足でドリルニーを破壊するが、キマリスは砕けたドリルニーを右腕で受け止めそれをコックピットに突き刺そうとするが、それをバエルは剣でドリルニーごと左腕を切り裂く。
「なぜ届かない!?」
ガエリオがさけぶ中、アグニカはふとラスタルの旗艦が落ちたことを確認した。
(そろそろイラクが動くとは思うが……いい加減こいつと戦うのも飽きたな……)
アグニカはキマリスの右足を引きちぎって見せる、続いて左足も引きちぎる。
「なぜ届かないのか?それが分からないのか?簡単だよ、ガエリオ・ボードウィン。お前は誰も見ていないからさ。お前は軽薄だ。それを綺麗だと思っているのだとするのならそれは間違いだ。お前はカルタの名を名乗ったが、カルタはお前を見てくれていたのかな?お前は背負うと言ったが、カルタがそれを望んでいるのかな?最後の最後までお前を見ず、マクギリス・ファリドを見ていた彼女はお前を想ってくれるかな?アインという男もそうだ、お前はアインの復讐の為に戦っていたが、本当はお前の復讐の為だったんじゃないのか?お前は自身の綺麗さを貫くあまり他人に押し付けることを背負うことだと勝手に勘違いしているんじゃないか?」
ガエリオはマクギリスに対して驚きしかなかった。そして逆に問う
「お前は誰だ?お前はマクギリスじゃないな……お前は誰だ!?」
アグニカは不敵に笑い答える。
「私の名前は……俺はアグニカ・カイエル。お前達が信じるギャラルホルンを作った人間だ」
アグニカのそんな言葉に驚きを隠せず、ただ怒鳴りつける。
「信じられるか!?お前があのアグニカだと?ならマクギリスはどうしているんだ!?あいつは!?」
「俺の心の奥で今でもお前たちに助けを求めているよ。そして、訴え掛けているお前が本当の意味で立ち上がることを」
「本当の意味?」
「言っているであろう?お前は本当の意味で立ち上がってはいない。自分が出した答えで立ち上がった時こそ人は本当の意味で戦うことができるのだ」
アグニカは不敵に微笑む中、ふと一つの方向を見つめた。そこには四機のモビルスーツが戦っていた。
「あれは……ゼパル!?」
サブレはふと視界の端を見つめるとそこにはゼパルと黒いレギンレイズが走り去っていくところを目撃してしまう。ビスケットも同じく視界にとらえた。
「あんなところで何をしているんだろ?」
「知るかよ……でも、多分恐ろしいことだ……」
サブレはアガレスを走らせそのままイラクを追う。そしてその姿を同じようにバルバトスも視界にとらえそのままアガレス同様にイラクを追おうとする。
「サブレ……あいつ」
「ああ、放っておけば何をしでかすか分からない」
「でもあの人と一緒にいたのは……」
機体を走らせるなか、イラクも同じように彼らが追跡していることに気が付いた。後ろを確認すると機体をアガレスとバルバトスに向けて走らせる。
「イオク・クジャン、君は先に行け。こいつらは私が抑えよう」
「す、すまない!」
イオクが先に進んで行くのを確認すると、ゼパルをバルバトスとアガレスに向けて走らせる。アガレスがゼパルに向けてレンチブレードで切りつけようとするが、ゼパルはそれを大剣で受け止める。
「三日月!行け!」
「分かった」
三日月がイオクを追おうとするが、バルバトスに攻撃を仕掛けてきたのはバエルだった。
「何を手間取っている?」
アグニカはガエリオを放っておき、バルバトスを攻撃し突き飛ばす。アグニカのそんな言葉にイラクは戦いながら答える。
「仕方がないだろう。お前を目覚めさせた事だけでも褒め称えて欲しいものだな……」
「ふん!ラファエルはどうしている?」
「あと少しだけ時間が欲しい」
「ふん……少しだけ遊んでやる」
イラクはレンチソードの攻撃を捌ききり、アガレスを切ろうと大剣を振りかざそうとするが、それをファンネルでゼパルへと攻撃するが、ゼパルは一瞬攻撃に気が付き大剣で捌く。
「ファンネルが通用しない!?」
ビスケットが驚きを隠せずにいると、サブレが落ち着いてゼパルの戦いを続ける。
「通用するとは思えないが……やはりと言うべきか」
アガレスはゼパルの攻撃を落ち着いて捌き、両者を一旦距離を置く。その間にバルバトスはバエルに対して何度となく攻撃を交える。
「あんた……誰?」
「すごいな、少しだけ交えただけでそれが分かってしまうとは……」
バエルは剣を連続で切りつけ続けると、バルバトスはメイスで攻撃を防ぐだけ精一杯だった。
「……強いな。あんた」
「……半分だけ目覚めているか。乗っ取ることを恐れているのか?」
「何の話?」
「……君には関係の無い話だよ」
「あっそ」
互いに武器をぶつけたまま会話をしていると、それをファンネルが妨害する。ゼパルはバエルに攻撃を仕掛けようとするファンネルを叩き落す。
「何をしている?お前はお前の戦いをちゃんとしないか?」
「わがままを言っていると愛想をつかしてしまうぞ」
アガレスはバルバトスに近寄る。
「大丈夫か?三日月」
「うん。こいつ、強いね」
二人が戦っている間にイオクがついに辿り着こうとしていた。
イオクはエレベーターのモニターにパスワードを打ち込む。
『火星の王』
そう打ち込むとエレベーター内の電灯が赤く光る。地下へ地下へとエレベーターが進んで行くと、ついにモニターは真っ赤に光ってしまうとついにエレベーターが最下層にたどりついた。イオクは一人長い通路を歩いていくと、通路はただひたすら長く終わりが無いように思えると、ついに終わりが見えた。
『認証装置に血を流してください』
装置に向けてイオクは自身の血を差し出す。すると、装置はドアのカギを開けていく。ゆっくりとドアが開いていくとその奥に鎮座する大きな物体にイオクは言葉を失った。
そこにあったのは大きなモビルスーツのようにも見えたからだ。
「こ、これは……?」
それはまるで天使のようにすら見える。
イオクの目の前にある大きな機械は背中に大きな天使の羽をもっており、その姿はモビルスーツのようにすら見えた。イオクが一歩前へ進んで行くと、両目が強く光った。
『ラファエル。最初の指示だ。目の前にいる人間を殺せ』
『了解シマシタ』
ラファエルの目はまっすぐとイオクへ向く、体中を拘束するようなコードを引きちぎるとラファエルは右腕を振り上げる。
「ど、どうして……私が!?」
イオクへ向けて叩きつけられると、周囲は大きな爆発音が響くと同時にイオクは死んでしまった。
バルバトスとアガレスはバエルとゼパルと戦っている場所は地球にもっとも近い場所で繰り広げていた。何度も何度も武器をぶつけては距離を取る。その姿をキマリスに乗って見ていたガエリオの目の前にジュリエッタが姿を現す。
「ガエリオ・ボードウィンですね。あなたを拘束するようにとあなたの御父上から指示がきております」
「ジュリエッタ……なのか?君が……捕まえるというのか?」
ガエリオは精神的に追い詰められていた。マクギリスだと思っていた男の言葉はガエリオの精神を揺さぶった。そして、とどめとばかりにジュリエッタが姿を現した。
「俺は……何の為に……」
「何を言っているんですか?ヴィダール?」
「俺は……俺は………教えてくれマクギリス」
ジュリエッタは追い詰められたガエリオを捕まえるとそのまま帰投していく。
その間ぶつかり合っていたバエルとゼパルは一旦距離を取り、ラファエルの復活を感じ取れた。
「イラク、引くぞ」
逃げようとするゼパルとバエルを追いかけようとしてバルバトスがメイスを振りかざすがそれを石動が身を挺して妨害する。
「お逃げ下さい……あなたは……」
アグニカは石動が自身の正体に気が付いていたことに今気が付く。
「お前……俺の正体に気が付いていたな。なぜ助けた?」
石動は血を吐きつつ、バルバトスのメイスをつかんで離さない。
「あなたの理想が我々の力……です。あなたの世界を見て……」
「もういい」
バエルはバルバトスを攻撃し、石動を引き離す。
「来い、石動!お前にも見せてやろう……俺の世界をな」
アグニカは石動の機体を連れて離脱してしまう。バルバトスとアガレスが追おうとすると、イラクは意味深な言葉を残す。
「いいのかな?このままイオク・クジャンを放っておいて」
逃げようとする両機を三日月が追いかけようとするが、それをビスケットが制止する。
「待って三日月!先にイオク・クジャンを追いかけよう」
追いかけようとする三日月はそんなビスケットの言葉に黙って従う。しかし、そんな三日月は逆に問う。
「追うのはいいけど……どうやって追うの?多分地球でしょ?」
ビスケットが悩んでいると、サブレがアイデアを提供する。サブレは近くに浮かんでいるギャラルホルンのモビルスーツを指さす。
「あれを使おう。誰かさんが昔やったことだし……できるでしょ?」
三日月は「なるほど」と理解し、ビスケットは嫌そうな表情になり「ま、まさか……」と言っている間にアガレスとバルバトスはモビルスーツを盾にして降下し始める。
「ぎゃあああーーー!!」
「兄さんうるさい」
ビスケットは悲鳴をあげ、サブレと三日月はうるさそうな表情になる。両機はそのまま大気圏を突破しギャラルホルン本部が見えてくると突然ギャラルホルン本部から飛び出したビームがバルバトスとアガレスの態勢を崩す。
「何?何なんだ……いったい」
「分からない。でも……ビーム攻撃を仕掛けてくるのはモビルアーマーぐらいしか……」
攻撃がやって来た方を見ると、そこにはラファエルがはっきりと目撃できた。その瞬間に三日月の意識が途切れる。
「三日月!?返事をして!三日月!」
サブレは機体をバルバトスの方へ動かし、バルバトスの右腕をつかんで引っ張ろうとするが、今度は実弾攻撃がアガレスの左腕とバルバトスの右足を吹き飛ばす。
「しまった……これじゃ反撃ができない」
「サブレ、この速度で地面に叩きつけられたら!」
アガレスはバルバトスを引っ張りながら落下軌道を海の方へとずらした。大きな音を立てて海に落ちたアガレスとバルバトスを確認するためにラファエルは地上に姿を現した。そして、形態を変化させていくと、その姿を人型から鳥型に変形させる。翼に内蔵されたレールガンを何発も海に落ちたアガレスとバルバトスに向けて発射する。ラファエルは落ちた両機が上がってこないことを確認すると、口を大きく開きビームをギャラルホルンの住宅街や施設へ向けて放射する。首を体を回しながら攻撃し、人という人を皆殺しにした。モビルアーマーは結果に満足したのか大きな翼を広げその場から離脱していく。
意識を失った三日月は暗い場所で意識を取り戻す。ゆっくりと目を開くと目の前に一人の男が経っていた。三日月に似ているその男はゆっくりと口を開く。
「目を覚ましたか?」
「あんた……誰?」
三日月は動かない体を起こして座り込むと、男は少しだけ微笑む。
「俺の名前は『満月・オーガス』だったかな?俺はバルバトスの前任者だよ」
三日月はバルバトスの前任者と出会い彼がこれから語る物語に耳を傾ける。
次回に続いて今回の次回予告はイラク・イシューです。
イラク・イシュー「昔お前の言う世界を信じてここまでやって来た。アグニカ・カイエルは俺にとっての太陽だ。お前の進む道が俺の道だ!次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ『違えた道の先』」