DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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筆者の菜月昴に対する印象は『最高に弱くて諦めの悪い男』でしたが、対するこの小説の主人公は『この世のどんなことよりも優しい男』にしたい。

原作の菜月昴に恥じないオリ主を確立することが筆者の目標です。


第1話:出会いは泥棒の始まり

 

 

 

「所持金しめて3768円……わびしい。つーか、この世界だとどうせ円は使えないんだろうし。実質、俺は無一文なわけだ……グレートにヘビーな状況だぜ、チクショウ」

 

 

 

一先ず、適当に気の向くままに町を探索してみたはいいものの目立った成果はあげられなかったな。

 

わかったことといやぁ……

 

 

『この世界の文明は中世レベル』

 

『亜人や獣人が共存している』

 

『日本語でおk』

 

 

この三つだけ。他に得るものは特になかった。金も人脈もない男に集められる情報なんて所詮こんなものよ。

 

 

いや、おかしくねえか!

 

 

着の身着のまま異世界に放り出されてさ!与えられたものが何もないっていうの!

 

 

家族も無エ!戸籍も無エ!生まれてないからあるわけ無エ!

アニメも無エ!ゲームも無エ!インターネットはなにものだ!?

貯金も無エ!バイトも無エ!メイドカフェなどあるわけ無エ!

人権無エ!あるわけ無エ!こんな世界に居場所は無エ!

 

 

異世界来て初っぱな無エ無エ尽くしの穀潰しだ―――オラぁこんな世界イヤだ!

 

 

 

「いや、落ち着け。冷静になって考てみるんだぜ。まだあわてるような時間じゃない」

 

ガラガラガラガラガラガラッッ!!

 

「―――兄ちゃん、そんなところに立っていられたら邪魔だよっ!」

 

「あっ、ハイ。どうもすいません」

 

 

 

道を譲ると背後から馬車(?)がガラガラと通りすぎていく。馬車を引いていたのが馬じゃなくて見たこともねえドでかいトカゲだったのが気になった。

 

 

 

「爬虫類があんだけデカイと威圧感通り越してむしろ恐いな。流石、恐竜博物館とかで見た作り物の恐竜とはわけが違うぜ」

 

 

 

とにもかくにも先立つものが何もないこの現状だとジッと何かが起こるのを待つのは得策じゃないぜ。かったるくても行く当てがなくても今は無理矢理にでも行動を起こさなくちゃなんねえ!

 

 

 

「んだが!闇雲に動いても無駄な時間を浪費するだけだ。てーなると……先立つものが必要だ。人間の基本は衣食住だ。これは異世界に来ても変わらない。さしあたっては俺のねぐら……拠点が必要だ」

 

 

 

せめて日がくれる前に寝床は最低限確保しておかないとこんな中世にありがちは石畳の街じゃあ野宿もままならねえ。

 

俺は一先ず宿になりそうな空き家がねえかを探してみることにした。しかし、そこはある程度の文明を築いてるだけのことはあった。

 

結論から言おう―――『全くの無駄であった』と。

 

 

 

「住居確保……失敗っ。つーか!空き家が一件もないって徹底しすぎだろ。この町の治安はしっかり守られてるってことかよ。こうなってくるともうこの町の外に出るしかなくなるんだぜ」

 

 

 

だからといって町の外に出るのは今後のことを考えるとあまりしたくない。生活をするためには金を稼ぐ必要がある。金を稼ぐには働き口が必要。即ち町から離れるのは得策ではない。 

 

 

 

「《ぐぅ~~~~っ》……腹へったぁ。金もねえんじゃあ飯も食えねえ。このままだとマジで餓死しちまう。グレートだぜ」

 

 

 

ひとしきり歩き回って探索に飽き飽きしていた俺はそのまま適当な段差に腰かけて項垂れる。

 

世の中にはよくアニメやラノベの影響を受けて『二次元に逝きたい』だとか『転生したい』だとか『俺はいつか召喚されると信じている』とか抜かしているやつが多いが。いざ、自分が直面してみるとそれが如何に甘っちょろい考えかを思い知らされたぜ。

 

だから、ネット界には『神様転生』なんて都合のいい言葉があるんだな。神様の恩恵に預かれば衣食住には不便しねえもんな。

 

 

 

「そもそもぉ~何で俺はこんなことになっちまったんだっけ?何か原因がわかれば対処のしようもあるんだが」

 

 

 

記憶を掘り返してみても心当たりはない。目の前に謎のゲートが現れたとか、どこか曰く付きのある場所で落っこちたとか、はたまた子供が交通事故にあうのを庇って死んだとか………そんな主人公補正見たこともやったこともない。

 

いや、心当たりどころか……―――――

 

 

 

「っ………思い、出せない?」

 

 

 

俺が今までどこで何をしていたのかがもやがかってて思い出せないっ。これも異世界に召喚された影響なのか?

 

 

 

「―――けど、『神様転生』でねえことだけは確かだよなぁ。17歳の俺が高校の学ラン着てここに立っているんだからよぉ」

 

 

 

神様転生は赤ん坊から生まれ変わってやり直してくるモンだと相場は決まってるしよぉ。結局、そこのところは謎のまんまってことだなぁ。

 

 

 

「この手のラノベや漫画だと主人公がチート持ちで俺TUEEだったり、可愛いヒロインに召喚されて世話を焼いてくれたりっていうのがお決まりなんだけどな。せめて何かイベントでも起こってくれないと……―――」

 

 

何すんだよ、はなせよ……テメエら―――ッッ!!

 

 

「―――って思ってたんだけど。どうやら、もう始まっていたっぽい!《ダッ!》」

 

 

 

路地裏の方から不自然に聞こえた少女のものらしき叫びを聴いて、俺は一目散に声のする方へ駆け出した。

 

誓って言っておくが、この時の俺には『女の子のピンチだ』とか『異世界で初の主人公イベント』とかそんな浮かれた気持ちは一切なかった。

 

俺は二次元妄想が好きな口だが。反面、俺は現実ってやつをよく知ってる。こういうときに絡まれている女は美少女であり攻略対象でありヒロインであるというのがエロゲの相場だ。

 

 

そう!俺は先程改めて再認識させられたのだ。

 

 

俺TUEEだったり最強主人公だとか……ご都合主義だとかチート能力とかいったモノは……俺の厨二病が勝手に創り出した『幻想』だッ!可愛いヒロインもオタクのただの『妄想』ッ!現実は……―――ッ!!

幻想を見せられて気づかないうちに追い詰められている………この『胃袋の中』みたいな状況なんだッ!

 

 

故に俺は『現実』で生き残るために……“今”!“この時”だけは!幻想を捨てたのだ!

 

 

まず、この路地裏で絡まれているオナゴを助ける。この行動によりこのオナゴに恩を売る。

 

次に、俺が帰る家も金もないことをアピールする。これにより恩人である俺の逼迫した状況を理解させる。

 

そして最後に、俺のこれまでの不幸な経緯(誇張有)を伝えるのだ。こうすることによってそのオナゴは恩人である俺を自分の家に居候させてくれるに違いない。

 

 

―――完璧な作戦だっっ!!

 

 

故に俺はこの路地裏で絡まれている女を助ける!例えそれがどんなにアレな女であってもだっっ!!その行動に一切の迷いはねえっ!!

 

 

 

ザザァーーーッッ

 

「そこまでだっ!お前ら、何してやがるっ!?」

 

 

「え!?」

「っ……誰だ、テメエっ!?」

 

 

 

現場に駆けつけた俺が見たのはあまりにも代わり映えのないアニメやラノベでよく見る光景だった。

 

『人通りの少ない路地裏でチンピラに絡まれている少女』

 

ここまでは俺の計画通りだ。だが、いくつか想定外なこともあった。まず、チンピラに絡まれていたのは俺の予想に反してなかなかの美少女であったことだ。

 

セミロングの金髪で勝ち気な雰囲気のつりあがった目。やんちゃな雰囲気を醸し出す八重歯。体躯は小柄で服装も破れや解れの目立つアクティブな服装。

 

総評としては『反抗期真っ盛りでスラム街で逞しく生きる勝ち気な女の子』だ。

 

 

 

「だ、だれ!?……いや、この際、誰でもいい!ちょっとあんた、わたしを助けろよっ!」

 

 

 

もう一つ計算外だったのは……――――――

 

 

 

「ああん!?」

「んンだ、テメエ……やんのか、オラぁあ!?」

「俺達に何か用かよ!アアンッ!?」

 

 

「ううわっ、ヤッベ……こりゃあ勝てんわ。ごめんなさいっ!」

 

 

 

ガラの悪いチンピラが三人もいたことだ。俺はすかさず回れ右をして元いた場所へ引き返していく。

 

俺の計画は始まる前から終わっていた。

 

 

 

「ちょっとぉ!?オイコラ、そこのヤツ!!何迷いなく見捨ててんだ!……この状況、一目見て困ってることがわかるだろっ!!」

 

 

「いいか、少女よ………これは『試練』だ。過去に打ち勝てという『試練』と俺は受けとった。人の成長とは……未熟な過去に打ち勝つことだとな。わかるか、少女よっ!これは――――お前に与えられた試練なのだ」

 

 

「カッコつけてるけど、結局、あたしを見捨てる気満々じゃねえかっ!!」

 

 

「ええっ……だって、お前所詮赤の他人だし。お前を助けても俺が望む展開になりそうもないしよぉ」

 

 

 

少女の着古したボロボロの服装はどう見ても金を持ってそうには見えない。助けたところで俺の望む『恩返し』を期待するのは非常に難しいと瞬時に判断したのだ。

 

見たところ少女はリーダー格の男に胸ぐらを捕まれているせいで宙吊りにされ逃げられないといった様子だ。

 

他の二人は一般人に毛の生えた程度だろうが。あのリーダー格の男だけは喧嘩慣れしているのだろう。服の上からでもわかるガタイの良さと腕の太さからもその風格を感じ取れる。

 

 

―――ってぇことは、あのリーダー格の男さえ何とかすれば逃げることは十分に可能だろう。

 

 

 

「じゃあ、あえて聞くが。何でそんな状況になったんだ?お前、何かコイツらの恨みを買うようなことをしたとか。まさか、それで困って俺に助けを求めたんじゃあねぇよなぁ~~?」

 

 

「違うね!あたしがここを通ろうとしたらいきなりこいつらが勝手にあたしに絡んできたんだっ!!」

 

「ハァンッ!?ふざけんな、クソガキ!テメエが兄貴にぶつかっておきながら詫びの一つもいれねえのが悪いんだろうがっ!」

 

「ちゃんと謝ったじゃん!『ごめん』って」

 

「ざけんなっ!そんなんで収まるわきゃあねえだろうがっ!」

 

 

「―――そうだ!お前が悪いのだ、少女《JOJO》!お前の責任だ。これは少女《JOJO》……お前のせいだ。おまえがやったのだっ!!」

 

 

「どさくさに紛れて関係ないヤツがムリヤリあたしを悪者にするなっ!!おまえ、さっきから適当なことばかり言って逃げるつもりだろッ!勇ましく助けに来といて状況が不利とわかると手のひらをかえしやがって……男のくせに恥ずかしくないのかよっ!?」

 

 

「―――黙れっ!私は常に強い者の味方だっ」

 

 

「~~~~~~っっ!!だぁああっ、腹立つぅうう!コイツ、メチャクチャ腹立つぅ!!」

 

 

 

『楽に生きるための努力は惜しまない』というのが俺のモットーだ。その為ならば口先ではなんとでも言う。長いものにはいくらでも巻かれる。

 

 

 

「テメエ、せっかく来たんなら、せめて何かの役にはたてよっ!」

 

 

「俺、基本的に荒事はごめんなんだよ。俺に何かを期待されても出てくるのは小粋でウィットに富んだネットジョークだけだぜ。HAHAッ!」

 

 

「決めた………あたし、この危機を脱したらまずお前をぶんなぐる。絶対ぶっとばす!」

 

 

「それができないからお前はそこに捕まっているのではないのかい?」

 

 

 

さて、見知らぬ少女をからかうのも飽きてきた。そろそろ放置されていたチンピラ三人衆もイラつき始めていることだしよぉ―――頃合いだぜぇ。

 

 

 

「ヲイ、さっきから俺たちのこと無視してんじゃねえよ」

「俺達に逆らっても無駄だとわかっているならとっとと失せやがれ」

「これ以上、俺達の前で耳障りなこと抜かすとテメエもただじゃすまねえぞ」

 

 

「いんや、別に俺は逆らおうだなんて思っちゃいませんよ。俺がここに来て出来ることなんてたかが知れてるんでねぇ」

 

 

「そうか。なら、とっとと失せろっ」

 

 

 

さっきの俺と少女の意味不明な会話で完全に油断しきっているチンピラ三人。俺は警戒心を完全にといた三人にさりげなく歩み寄っていく。

 

行動を悟られてはならない。慌てず、慎重に、自然体で……―――まるで『行きつけのコンビニで定位置に置かれた缶コーヒーをとりに行く』くらい自然な足取りで。

 

 

射程距離まで―――3メートル。

 

 

 

「俺はどうしてもあんたらに一言言いたいことがありましてね。それでこうしてわざわざ駆けつけた訳なんです」

 

 

射程距離まで―――2メートル。

 

 

「……言いたいことだと?」 

 

 

射程距離まで―――1メートル。

 

 

「そう。どうしても一言だけ言いたいんですよ」

 

 

 

―――ゼロ。射程距離に入った。

 

 

さて、この異世界の時代背景を振り返ってみよう。今、この時代は中世だ。しかも若干ファンタジーが混じった異世界ファンタジー。

 

俺には、こいつらみたいな時代や文化圏が全く違う相手には恐ろしく効果覿面な専用の必殺技がある。馬鹿馬鹿しく見えるが、それは人間の本能に訴える技だ。

 

その必殺技とは……――――――

 

 

 

「《バッ!》―――『見ろっ!なんだ、アレっ!?』」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「せいっ!《どげしっ!》」

 

「ごぉほっ!?」

「うわわわっ」

 

 

 

俺があさっての方向に指した指を目でおって無防備になったところに蹴りを入れて少女を救出することに成功。

 

何てことはない。必殺技とはただの『よそ見』である。映画バッ●トゥザフューチャーで主人公マー●ィがやってた奇襲攻撃であり、子供が仲のいい友達をからかうときに使うアレである。

 

案の定、この世界の人間にはこんな使い古された戦法でも効果覿面であったようだぜ。

 

 

さて、見知らぬ少女をお姫様だっこしてリーダー格の男の男から引き離すことには成功したが、問題はこの次の行動だ。

 

 

 

「~~~~っっ、テンメェ……よくも俺に蹴りいれてくれやがったな」

「なめた真似してくれやがったな。ガキィイっ!!」

「ただですむと思うなよ。腕の1本や2本じゃあすまねえぞ。コルァアアアッ!!」

 

 

「―――っ、どうすんだよ!?あいつらむちゃんこ怒ってるぞ!何か、他に作戦はあるのかよ!?」

 

「ああ。あるぜ!策はある!」

 

「ええ! あるのか!?」

 

 

 

さっきまでの応酬で感じていた怒りも忘れて少女は俺の胸の中で目を見開く。

 

 

 

「ああ!たったひとつだけ残った策があるぜ」

 

「ひとつしかないのかよっ!?」

 

「とっておきのヤツがな!あの足をみろ!やつは俺に足を蹴られたせいでまだ完全に回復しきれてねえ!そこがつけめだ!」

 

「そ……それで、具体的にはどうすんだよ?」

 

「こっちも足を使うんだ」

 

「足ぃ!?足でなにするってんだよ!?」

 

 

 

決まっている。この怖いお兄さんに囲まれた絶体絶命な状況でやるべき戦法なんて一つしかないんだぜぇ。

 

 

 

「―――逃ィげるんだよォォォオーーーーーっっ!!」

 

「だぁあああーーーっ、やっぱダメだ、こいつーーーーーっ!!!!」

 

 

「「「待ちやがれ、こるぁあああっっ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 




さて、この主人公は何回この下りをやるはめになるのやら。
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