DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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お気に入りが100を越えた!?バカなっ・・・これは夢か?応援してくれてる方々がいることは知っていたつもりでしたが、改めて数字にしてみるとやはり感動的です。

そして『吹雪が一番だな』様、改めてご感想ありがとうございます!

これからも皆様からの作品に対する要望等あればメッセージを頂けるとありがたいです!



第27話:バカと魔獣と鬼の角

 

 

 

―――アーラム村外れにある森。夜の暗闇の中・・・俺はひたすら一直線に駆け抜けていた。

 

 

 

 

 

『ドォオオオオララララララララララララララララララララァァァアアアアーーーーーーッッッ!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!

 

「―――ハァ・・・ハァ・・・コイツら、いったい何匹いやがるんだ?倒しても倒しても・・・後からどんどん沸いてきやがる」

 

 

 

 

 

こうなってくるとこの魔獣共がエミリア陣営を崩壊させるために送り込まれた罠だという考えがいよいよ現実味を帯びてくる。

 

おまけに、足場の不安定な・・・というか足元すら見えない獣道を走っていると体力の消費が半端じゃない。それにここから戻ることを考えると帰り道を覚えるにも限界がある。

 

 

 

 

 

「―――これ以上奥まで行きすぎると帰れなくなる。コイツらに喰われることよりも二重遭難の危険性があるぜ」

 

 

 

 

 

あれだけ大見得を切って道に迷って森をさ迷った挙げ句間に合わなかったとか・・・カッコ悪いどころの騒ぎじゃあねえぞ。

 

 

 

 

 

「いったい、どこまで連れていかれたんだ・・・それとも本当に喰われちまったのかよっ。だとしたらペトラに顔向けできなくなるぜ――――んっ・・・ありゃあ」

 

 

 

 

 

森の中の倒れた木の陰に確かに子供の足が見えた。しかも、はいている靴から女の子のものだとわかる。俺は四周を警戒しながら倒れている女の子の安否を確認すべく静かに歩み寄った。

 

 

 

 

 

「・・・間違いねぇ。今日村で会った魔獣の子犬を抱き抱えていた子だ。何でこんなところに寝かされてたのかは知らねえが・・・この子も呪われている可能性が高いぜ」

 

「―――ぅ・・・ん」

 

「よしっ、まだ息はあるな。あとはこの森を脱出するだけだぜっ・・・急いでレムさんと合流しねえと」

 

 

 

アゥオーーーーーーン……ッッ ―――ザサザザ…ッ

 

 

 

「っ・・・なんだ?」

 

 

 

 

 

俺が女の子を抱き抱えてずらかろうとしたその瞬間だった。魔獣と思しき獣の遠吠えが聞こえて周囲に隠れ潜んでいた魔獣が距離をおくように引き下がっていく。

 

―――諦めたのか?・・・いや、そんなはずはねぇ。何か企んでやがるんだ。

 

確証はないが、やつらの動きを見て俺は瞬時にそれを悟った。犬畜生が『企んでいる』などというのは本来であれば考えにくい話だが・・・野生の獣を甘く見ちゃあ行けねえってことだぜ。

 

 

 

 

 

「だが、何匹束になってかかってきたところで近接無敵のクレイジーダイヤモンドに勝てるわけねえってことは・・・あいつらも身に染みてわかっているはずだけどよぉ~」

 

 

ガルルルルッッ ガァアウッッ!!

 

 

「いいぜっ、何度でもぶちのめしてや・・・――――――っっ!?・・・あ、足がっ」

 

 

ズブズブズブズブ……ッ

 

 

 

 

 

眼前にまた新たに三匹の魔獣が姿を現し、それをぶちのめすべく俺が構えをとった瞬間だった―――俺の足元が不自然に隆起し、俺の足を飲み込んで動きを封じた。

 

 

 

 

 

「バカなっ!さっきまで何ともなかったのに・・・俺の足元だけ底無し沼みてぇに絡み付いて・・・う、『動けない』っ!」

 

 

ガァアウッッ!! ヴガァアアアッッ!!!

 

 

「っ―――小賢しいぃいいあっっ!!」

 

『ドォオオオオオララララララララララララララララァァァアアアアーーーーーーッッッ!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!

 

 

 

 

 

俺が足を封じられて動けなくなった瞬間を狙って一斉に魔獣共が飛びかかってくるが、その程度では俺を仕留めることは出来ない。足を封じられたくらいでは、クレイジーダイヤモンドの拳は・・・――――っ!?

 

 

 

 

 

―――ガヴゥウウウウッッ!!

 

 

「な・・・な゛にぃいいっ!?」

 

 

 

 

 

俺が正面から襲いかかってきた魔獣を蹴散らしている隙に動きのとれない俺の背後から別の一体が俺の肩に噛みついてきた―――まさか、コイツら・・・『これ』を狙って。

 

 

 

 

 

「くっ・・・『クレイジーダイヤモンド』ォッ!!」

 

『―――ドオラアァアッッ!!』

 

 

ボグシャァアアアッッ!! ―――ギャフォオオンッ!!?

 

 

「~~~~っ・・・くそっ、今のでまた呪われちまったか―――いや、呪いをかけた相手を即ぶち殺したからギリセーフかな」

 

 

 

 

 

しかし、まさか獣ごときがこんなコンビネーションプレイを見せるとは。いや、『獣』だからこそハンティングにかけては一流だということか。

 

それにしたって仲間を捨てゴマにするこのやり方・・・どうも腑に落ちないぜ。

 

何より、俺の足を封じたこの地面の不自然な変形・・・これは間違いなく『魔法』だ。しかも、土系統の魔法。呪いが使えるから魔法を使えてもおかしくはないが。

 

 

 

 

 

「(さっきまでの俺の戦い方で接近戦しか出来ないことを見抜かれた。その上で遠距離から魔法で動きを封じるという最も効果的な戦法を割り出しやがった――――これが本当にただの獣のやることか?)」

 

『ドォオオラァアアッッ!!』

 

 

ドギャァアアアアッッ!! パラパラパラ…

 

 

「急いでここを出ねえと・・・俺の弱点は完全に読まれている」

 

 

 

 

 

一先ず、俺の足を拘束していた地面をクレイジーダイヤモンドで砕いて戒めは解けたが・・・。

 

『クレイジーダイヤモンド』は完全な近距離パワー型のスタンド。遠距離からの攻撃に対しては滅法弱い。おまけにこの暗闇で魔法を使う術者も見えないんじゃあ対処のしようがないっ。

 

 

 

 

 

オゥーーーーーン……ッッ

 

 

「(っ・・・また動きが変わった―――何か来るっ!)」

 

 

ギュオン……ッ

 

 

「―――っ!?」

 

 

ゴバァァアアアアアンッッ!!

 

 

「うぉおおおおおおおおああっ!?」

 

 

 

 

 

森の奥の方で何かが光ったのを視認した直後、俺の背後にあった岩が破裂し、飛散した岩の破片が散弾銃のように俺の背中や足に突き刺さった。クレイジーダイヤモンドでは細かな無数の破片はガードすることが出来なかった。

 

 

 

 

 

「~~~~ってぇぇ・・・攻撃は派手だが、ダメージはそこまでじゃない。それに一瞬だけど確かに見えた。あの光ったところに術者はいる」

 

 

 

 

 

距離を置いてはいやがるが、そこまで離れた場所じゃあない。50~60メートルといったところか。群れを指揮して安全に俺を観察し、必要に応じて魔法で攻撃できるのがそれくらいの距離なんだろう。

 

―――コイツはしたたかなヤロウだぜ。

 

 

 

 

 

「・・・次の魔法を打ってくる気配がない。やたらと魔法を打つと正確な位置を俺に見つけられ接近される危険性があることを知っているんだ―――俺の弱点を把握していても油断せずにあくまでもじっくり確実に俺を弱らせて仕留めるつもりだぜ」

 

 

 

 

 

とても食欲や本能で動く獣とは思えない。この世界の『魔獣』ってヤツはここまで頭がいいものなのか?あれだけの規模の群れを統率し、かつ魔法や呪いを使いこなせる『魔獣』の群れの『ボス』ならそれも考えられなくはねぇけどよ。

 

―――こいつは気合い入れてかからねーと『魔獣』にしてやられるぜ。

 

 

 

 

 

「こういう時、俺の出来る策と言えば一つしかないぜ。一旦退いて体勢を立て直し、対抗策を考える時間稼ぎをする。作戦名・・・」

 

 

グルルルルル……ッッ グラァアウッッ!! ガァアウッッ!!

 

 

「―――『逃げるは恥だが役に立つ』っ!!」

 

『ドォオオオラララララララララララララララララララララララァァァアアアアーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

 

 

 

つまるところただの強行突破である。多勢に無勢。しかも敵は俺が苦手とする遠距離攻撃の手段を持っている。ここでまともにやりあっていたらやられるのは時間の問題だぜ。

 

―――今は多少のリスクを承知でこの場を離れるのがベストだぜ。

 

俺は女の子を傷つけないようにしっかり抱き抱えて元来た道を逆走し始めた。

 

 

 

 

 

アゥオオーーーーーーン……ッッ

 

 

「―――とは言えよぉ~。さっきから謎の遠吠えで連携を取り合っていやがる。気味が悪いぜ」

 

 

ガァアウッッ!!

 

 

「レムさんは大丈夫なんかな~?あれだけ強けりゃあ襲われたとしてもそうそうやられはしねえと思うが」

 

 

グルルルルル…… グラァアウッッ!!

 

 

「コイツらの解呪がもし間に合わなかったら・・・また死んでやり直すはめになるのかよぉ~。流石の俺も激情態のレムさん相手にもう一回体を張るなんて真似はゴメンだぜ」

 

 

ガァアウッッ!! ガァアウッッ!! ゥガァアウッッ!!

 

 

「仕方がねえ・・・今はただ間に合うことを信じて村に向かうしかねえよな。でも、その前に・・・――――さっきから鬱陶しいんだよ、テメエらぁあっっ!!!」

 

 

『ドォォオオオオララララララララララララララララララァァァアアアアーーーーーーッッッ!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォオオッッッ!!!!

 

 

ギャフォオオンッ!! グヒュィイイイインッッ!? ギャフュゥウウンッ!!?

 

 

 

 

 

四方八方から向かってくる魔獣共をあしらいつつ俺は近くの茂みに隠れようとした“その時”だった。

 

―――また、魔獣を統率する群れのボスから新たな攻撃が始まった。

 

 

 

 

 

ギュオンッ! ―――ドッッッバァァアアアアンッッ!!!

 

 

「ぐうヴァアああっ!!?」

 

 

 

 

 

俺が走っていた足元の地面が地雷のように爆ぜて俺は地面に転がる。また、あの魔法攻撃が再開されやがった。

 

いや、それだけじゃない。

 

 

 

 

 

「グレートっ・・・どうやら知らず知らずの内に敵のいいように誘導されちまっていたみたいだなっ」

 

 

グルルルルル…… ガァアウッッ!! グルァアアアアッッ!! ガフゥウウウウッッ!!

 

 

 

 

 

今俺が立っている場所は森の中でも木々が生い茂っていない拓けた平地。そのエリアを囲むように周囲の茂みには魔獣の包囲網が完成している。そして、隠れる遮蔽物がないこの場所は遠距離から俺を観察して魔法を打ち込むのにもうってつけだ。

 

―――茂みに隠れようとすれば魔獣に襲われ、魔法で石礫を飛ばされ狙い撃ち。正面の道を突破しようとしてもさっきみたく地面を地雷のように爆破され動きを止められてしまう。

 

 

 

 

 

「グレート・・・何がなんでも逃がさないつもりかよ」

 

 

アゥオーーーーーーン……ッッ!! ザザザザッッ

 

 

「・・・来るかっ!?」

 

 

ギュオン……ッ  ―――ゴッッバァァアアアアアンッッ!! ドッッッバァアアアアアンッッ!!! ドッッッパァァアアアアアアアンンッッ!!!

 

 

「ぐぁあああああっ!?」

 

 

 

 

 

俺の周囲の地面が爆ぜて細かな石礫が散弾銃のように俺の体に突き刺さる。皮膚にめり込み、微かだが俺の骨にも破片がいくつか突き刺さった。俺は胸に抱き抱えた少女を傷つけないよう覆い被さり自分の身を盾にするので精一杯だ。

 

その怯んだ隙を狙って茂みに潜んでいた魔獣共が再び襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

ガァアウッッ!! ガルルルルッッ!!!

 

 

「ぐっっ・・・―――ぅおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

『ドォオラララララララララララララララララララララララァァァアアアアーーーーーーッッッ!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

飛び掛かってきた魔獣は問題ない。クレイジーダイヤモンドの拳でいくらでも蹴散らせる。しかし、このままダメージが積み重なっていけばそれもジリ貧だ。敵は俺が対処できない魔法攻撃でじわじわ痛め付けて弱ったところを仕留めるつもりだ。

 

―――この群れを統率している魔獣のボスを倒す以外にこの状況を脱する手はない。だけど、どこから攻撃してきてるのかがわからねぇ。

 

 

 

 

 

「・・・さっき魔法を発動していたときに・・・微かだが魔法の光が見えた。その魔法を打つ瞬間を狙うしかない。『コイツ』で狙い撃つ」

 

 

 

 

 

俺はポケットの中に忍ばせておいた『弾頭』を取り出した。屋敷を出る直前にくすねておいたロズワール邸の屋敷の大工仕事で使っていた『釘』だ―――コイツを即席の『弾丸』にしてヤツを狙い撃つ。

 

 

 

 

 

『ドォオラァアアッッ!!』

 

ドコォオオオオオッッ!! スゥウウウウ……ガチィイイイッッ!!

 

「―――砕いた石を『なおして』・・・釘をコーティングする」

 

 

 

 

 

俺の『錬金術(?)』の精度は、外見ばかりの粗悪品にしかならないことはとっくに検証済みだ。だから、単純に石をなおすだけじゃあライフル弾は作れないが・・・『骨子』となる『釘』に石をコーティングして形を整えるくらいならどうにかなる。

 

―――ヤツが魔法を打つ瞬間を見つけて、そこをこの弾丸で狙い撃つ。

 

 

 

 

 

「―――つっても・・・練習なしの一発勝負。果たして上手く行くかどうか。この即席の弾丸の命中精度が如何程のものかって話だぜ」

 

 

 

 

 

形を整えはしたものの材料は『石』と『釘』だけだ。狙撃用にミリ単位で設計され、研磨された通常の弾丸と比べたら話にならない。コイツで狙撃するなんて普通に考えたら悪い冗談だぜ。

 

 

 

 

 

ギュオンッ!  ―――ドッッバァアアアアアンッッ!!!

 

 

 

「ぐおおっ・・・けど、やるしかねぇ!この粗悪品の『弾丸』をヤツの眉間にぶちこんでやるぜ」

 

 

 

 

 

今のでおおよその位置はわかった。だが、ヤツは魔法を打った直後に場所を移動している。一ヶ所にじっとしている訳じゃあねえのか・・・なら、今度はこちらから居場所を燻り出してやるぜ。

 

―――『魔法』を使えるのは何もそっちだけじゃあねえってことだ。

 

 

 

 

ガルルルルッッ!!! グラァアウッッ!!

 

 

 

 

再び攻撃体勢に入った魔獣が俺に向かって猛突進してくる。だが、俺は今回あえてクレイジーダイヤモンドを出さず、避けることもせずに魔獣が俺の眼前に迫るまで引き付ける。

 

―――俺の鼻先にヤツらの牙が届くのではないかというくらいの超至近距離・・・そここそが狙い時だっ!

 

 

 

 

 

「―――『太ぃい・陽ぉお・拳んん』ーーーーーっっ!!」

 

 

バギュゥヴッッ ビガァァアアアアアアアーーーーーーーーッッッ!!!!

 

 

―――……ッッ!? ギャフォオオンッ!! グヒュィイイイインッッ!? ギャフュゥウウンッ!!?

 

 

 

 

真っ暗闇の森の中だというのに真っ昼間の太陽を直視したかのような激しい閃光が放たれ、魔獣共は悶絶して苦しみのたうち回る。

 

夜の暗闇に完全に目が慣れきっていた状態でこの光を直視したのだ。下手したら失明しかねないくらいのショックだったろう。普通なら視力が回復するまである程度時間がかかる。

 

 

―――しかし、俺はその“瞬間”を見逃さなかった。

 

 

 

 

 

『――――――ヴヴヴッ……ガァヴッ』

 

 

 

 

 

俺の太陽拳を受けてなお60メートル先からこちらを観察している一匹の魔獣《子犬》とハッキリ目が合った。

 

 

 

 

 

『――――――……がルルッ!?』

 

 

 

 

「―――やはり、見たな・・・『お前』は必ずこっちを見ると思ったよ。他の個体は目眩ましを受けて苦しんでいても・・・群れのボスであり、司令塔であるお前は絶対に獲物《俺》から目を離さないと踏んでいたよ」

 

 

 

 

 

俺のクレイジーダイヤモンドの目は既に『ボス』を捉えている。対するヤツの目はさっき俺が魔法で放った光が網膜に焼き付いているのか俺の姿を捉えておらず動揺して体をこっちへ向けている―――勝敗が決した瞬間ってヤツだぜ。

 

 

 

 

 

「―――“FATALITY”《死亡》ッ!」

 

 

 

 

ドギュゥウウウウウーーーーーーーーンッッ!!!

 

 

 

 

『―――ゲッ……ギャアアーーースッ!?』

 

 

 

 

ドブゥウゥウウウ……ッッ!!

 

 

 

 

 

手応え合った。俺の釘で作った弾丸は僅かに左方向にそれたものの見事『ボス』の頭に当たったのが確認できた。そのまま倒れてしまったんでどこに当たったのかはよく見えなかったが・・・初めてにしては上出来すぎる一発だったぜ。

 

 

 

 

 

「やれやれだぜ・・・早くここを脱出しねえと―――」

 

 

ぐらぁああ……っ!

 

 

「―――ぐっ!?・・・魔法を使った反動が」

 

 

グラァアウッッ!! ガァアウッッ!!

 

 

「くっ・・・クレイジーダイヤモ・・・っ!(――――体が動かないっ。魔法で精神力を消費したせいでクレイジーダイヤモンドが間に合わないっ)」

 

 

 

ジャララララッッ ―――ドグチャァアアアアアッッ!!

 

 

 

「ドぅえっ!?」

 

 

 

 

 

俺が何とか決死の思いで防御体制をとろうとしたその次の瞬間、襲いかかってきた魔獣の体がトマトのように弾けとんだ。

 

この鎖の重々しい音といい・・・良い子は真似して欲しくない武器とこのスプラッタな殺り方―――確認するまでもなく一人しかいねえよな。

 

 

 

 

 

ジャララララ……ッッ

 

「―――アキラくん、魔法の才能がないのにあまり無茶をしないでくださいっ。ゲートに後遺症が残っても知りませんよ」

 

 

「レムさんっ!・・・あっ、いや、どうしてここに!?」

 

 

「子供達を無事村に戻したので手助けに来ました。ずいぶん手酷くやられたようですね」

 

 

「どうやら魔法とはとことん相性が悪いらしくてよぉ~・・・思ったより手こずっちまったぜ。でも、この子には傷一つないぜ―――っ・・・おっととと・・・」

 

 

「さっき使った魔法の影響で体がうまく動かせないようですね―――ここからはレムが引き受けます」

 

 

 

ガァアウッッ!! グラァアウッッ!! グルルルルッッ!!

 

 

 

「―――シッ!」

 

 

ジャララララッッ ―――ドグチャァアアアアアッッ!! ドゴシャァアアアアアッッ!!

 

 

「おおおおっ、レムサンカッケー!!―――けど、容赦ねえーっ!つーか、えげつねえーっ!!モー●ルコンバットみたいになってるっ!!」

 

 

 

 

 

ピンチに駆けつけてきたヒロイン補正もあってか魔獣をモーニングスターで蹴散らす姿はあまりにも頼もしく輝いて見える―――ただ、彼女が武器を振るう度に魔獣共が『汚い花火』になっていくのを見ると背筋が凍るぜ。

 

 

 

 

 

「・・・女の子にその言葉はどうかと思います―――喧嘩なら後でいくらでも買いますよ、アキラくん」

 

 

「これを見せられた後じゃあその気も失せるぜっ。本当に『あの時』筋肉式洗脳術を成功させた自分をつくづく称賛するぜ―――とはいえ、それでもこの数は辛いな」

 

 

「ええ。多勢に無勢、数で押されればジリ貧です。アキラくんの方はどうですか?」

 

 

「俺もさっきの魔法で戦う力がほとんど残ってねえッス・・・こうなったら策は一つしかねえよな。つーわけで、レムさん―――オナシャスッ!」

 

 

「―――フッ!」

 

 

ジャララララッッ ―――ズゴシャァァアアアアアアアアアッッ!!

 

 

「―――逃ィげるんだよォォオーーーーーッッ!!」

 

 

 

 

 

レムさんがモーニングスターを叩きつけて巻き上げた土煙に紛れて俺達は怯んでる魔獣の間をすり抜けて村へと向かう。俺も魔法を使ってしまったせいでクレイジーダイヤモンドの本来のパワーが発揮できない。ここはレムさんに頼るしかねえぜっ。

 

 

 

 

 

「ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・帰り道がわかんねぇっ!レムさん、どっちだ!?」

 

 

「―――正面を真っ直ぐです。結界を抜ければ勝負がつきます。それまで、方向を見失わないでください!」

 

 

「ハアッ・・・ハアッ・・・チクショウ・・・目が霞んできてっ・・・『正面』すらおぼつかねえぜ」

 

 

 

 

 

何度練習しても『太陽拳』一発で体力を一気に消費しちまうのは知っていたが、まさか実戦で使うとここまで消耗しちまうとは。

 

俺はぐらつく足元を気力で押さえつけてひたすらに夜の山道を走り続けた。いつ気絶するかわからない限界スレスレの状態で走るのは相当辛かったが・・・俺の執念が実ったみてぇだ。

 

 

 

 

 

「―――見えたっ、村だ!レムさん、村の明かりが・・・レムさん?」

 

 

ポタ…… ポタ、ポタポタ……

 

 

「っ・・・フゥー・・・フゥー・・・フゥー!」

 

 

「レムさんっ!?」

 

 

 

 

 

俺が振り返って確認したときレムさんは既に壮絶な有り様だった。メイド服は魔獣に噛まれ引っ掛かれズタボロ。頭から返り血を浴びて鮮やかな青髪は赤く染まっており、負傷した腕から流れる彼女自身の血と入り交じっている。

 

よもや俺の逃げ道を確保するためにレムさんにこれほどの重傷を負わせてしまうとは―――っ。

 

俺はそれを見た瞬間、居ても立ってもいられず来た道を引き返した。

 

 

 

 

 

「待ってろ、レムさん!今、なおしてやっからな!」

 

 

「―――近寄らないでっ!!」

 

 

 

 

 

俺が彼女に駆け寄って傷を直そうとした瞬間、彼女の口からこちらを強く拒否する言葉が飛び出し、俺は不覚にも足を止めてしまった。

 

 

 

 

 

「・・・な、なんだと?」

 

 

「走ってください!・・・レムが・・・レムがまだ『レム』でいられる内に!」

 

 

「何言ってんスかっ!俺の能力ならすぐになおせる!あんたが俺のこと嫌いでも構わねえから・・・傷ぐらい治させろっつってんだよっ!!」

 

 

「っ―――違うんです!・・・そうじゃ・・・そうじゃなくて。魔女の匂いが・・・アキラくんの匂いが近くにあると・・・っ」

 

 

「俺の匂い?・・・いったい、何の話をして・・・―――《ぞわっ!》―――うっ!?」

 

 

 

 

 

レムさんは何かに苦しんでいるようだった。怪我とかそういうのではなく・・・まるで自分の中にある『何か』を押さえつけてるかのような。

 

―――その直後だった。背後から圧倒的なプレッシャーを感じたのは。

 

 

 

 

 

『――――――ヴヴヴ・・・ッッ』

 

 

 

 

「グレート・・・“あいつ”、まだ・・・まだ死んでなかったって言うのかよ!?」

 

 

 

 

 

俺が狙撃で仕留めたと思っていたあの魔獣《子犬》が仲間を引き連れて坂の上に立っていた。遠目からでもわかる凄まじい殺気と怒気を放って唸っている。

 

俺が狙撃して撃った弾丸は僅かに眉間を逸れてヤツの『右目』に深々と突き刺さっていた。片目を潰しただけで致命傷には至らなかったようだ。

 

 

 

 

 

「上等だっ。だったら何発でも撃ち込んでやるぜ―――この距離ならバリアは張れないなっ!」

 

 

 

 

『―――ヴヴヴヴヴ……ッッ!!』

 

 

 

 

ギュオンッ! ――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ

 

 

 

 

「っ・・・あの有り様で、今度は何をするつもりだ!?」

 

 

 

 

 

右目が潰れたばかりで距離感など測れるはずもない。さっきのような遠距離から魔法攻撃なんか当てられるはずがない。じゃあ、この地鳴りはいったい・・・――――――いや、違うっ!

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!

 

 

「あいつ、こんなことまで出来んのかよ・・・――――レムさん、逃げろぉっ!『土石流』だっ!!」

 

 

―――ゴバァアアアアアッッッッ!!!!

 

 

 

 

 

地面が風船のように膨らんだかと思った次の瞬間、まるで決壊したダムのように土砂が雪崩となって襲ってきた。当然、俺も避けようとした――――だが、気づくのが僅かに遅かった。

 

 

 

 

 

ブシュウウ……ッッ ガクッ!

 

 

「ぐっ!?・・・ぐぉおおっ」

 

 

 

 

 

石礫による負傷、土石流による地面の揺れ・・・そして何よりも魔法により体力を消耗したせいで足がもつれてその場で膝をついてしまった。この期に及んでそれはあまりにも致命的な失態であった。

 

 

―――ダメだっ・・・足に力が入らないっ・・・避けらんねえ!

 

 

せめて胸の中にいるこの子だけでも守ろうと抱き締めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

ぐいっ ―――ブンッッ!!

 

 

 

「っ・・・レムさ―――」

 

 

 

「――――――。」

 

 

 

 

 

俺の首根っこを掴んでレムさんが思いっきり俺を遠くへとぶん投げてくれた。土石流の影響を受けない場所まで。しかし、その代わりレムさんは――――

 

 

 

 

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!

 

 

「――――――……っっ………ッ!!」

 

 

 

「レムさぁああーーーーーんっ!?」

 

 

 

 

 

土石流をまともに喰らったレムさんの体が木の葉のように宙に弾き飛ばされた。レムさんは痛みに悲鳴をあげることも受け身をとることすら出来ずに無情にも地面に落とされた。

 

 

 

 

 

「―――ぐっ・・・くそぉぉおおおおおおおおっっ!!動け・・・動けよぉ!!」

 

 

 

 

 

俺も辛うじて土石流の影響を受けずに済んだもののそれでもレムさんに投げられ樹に叩きつけられた時のダメージがでかかった。疲労困憊であった俺の体はそのダメージをきっかけに蓄積した疲労が吹き出してしまい思うように動かない。

 

 

 

 

 

「まだだっ!・・・まだ間に合うっ。へこたれてる場合じゃあねえ!レムさ・・・――――――え?」

 

 

 

ジャララララ……ッッ

 

 

 

「――――――……っ」

 

 

 

 

 

それこそが『異変』の始まりだった。明らかに重傷だったはずのレムさんが何事もなく立ち上がったのだ。両腕をだらんと下ろしたまま空を仰ぎ見て・・・痛がる様子も危機感も見せずに静かに空を見上げていた。

 

 

 

 

 

バヂ…ッ バヂバヂヂヂヂ……ッッ

 

 

「―――あハ、アハハは・・・アハハはハ、アハハハハハ♪」

 

 

 

「・・・『鬼のツノ』っ?」

 

 

 

 

 

レムさんの額に微かに稲妻が迸り、レムさんの長い前髪を掻き分けて額に白いツノが現れた。俺はそれを見た瞬間、反射的に『鬼のツノ』と形容した。何故、そう思ったのかは自分でもよくわからない。

 

―――だが、ツノを光らせ、爛々と輝く目で恍惚とした狂喜の笑みを浮かべるレムさんの姿は、まるで・・・。

 

 

 

 

 

「アは、アハハハハハ、アハはハハハ、アハハハハハハハハハハハ――――――♪」

 

 

ジャララララ……ッ

 

 

 

 

 

レムさんの笑いが止まった。“それ”が始まりの合図であった。レムさんはまるでツノに導かれるように踊り始めた。

 

 

 

 

 

ザクジュゥウウウウッッ!! グジャァアアアアッッ!! ドチャァアアアアアッッ!!!

 

 

 

「魔獣ぅぅううっ!!!魔獣ぅっ!魔獣ぅっ!魔獣ぅううっ!!―――魔女ぉおおおっ!!」

 

 

 

グジャァアアアアッッ!! ドゴシャァアアアアアッッ!! メヂャァアアアアアアッッ!!!

 

 

 

「魔獣ぅうっ!魔獣ぅっ!魔獣ぅうっ!魔獣ぅうううっ!!―――魔女ぉおおおっ!!」

 

 

 

ズボォオオオオオッッ!! ドグシャァアアアアアッッ!!! ボギャァアアアアアァァッッ!!!

 

 

 

「魔獣ぅぅううっ!!!魔獣ぅううっ!魔獣ぅうっ!魔獣ぅうううっ!!―――魔女ぉおおおおおっ!!」

 

 

 

 

 

覚醒したレムさんの戦闘力は圧倒的だった。飛び掛かってくる魔獣共をまるで虫けらのように殴り、潰し、突き刺し、捻り殺していく。『魔獣』と『魔女』への呪詛を叫びながら。

 

あのツノがレムさんに得たいの知れないパワーを与えて一種のドーピング状態にしているんだ。それだけじゃない。ありとあらゆる感情が戦闘への狂喜に変わってレムさんを制御の利かないバーサーカーに・・・――――いや、『鬼』へと変貌させているんだ。

 

 

 

 

 

ズグシャァアアアアアアッッ!! ブッシャァアアアアアッッ!! ドギャァアアアアアッッ!!!

 

 

「アハハハハハッ♪アハハハハハハハハッ♪アアーハハハハハハハハハハハハッッ♪」

 

 

 

 

「グレート・・・『最高にハイ!』ってヤツだな。ロズワールならともかく・・・レムさんのこんな姿は見たくなかった、ぜ」

 

 

 

 

 

だが、お陰で体力が少しは回復できた・・・何とか立ち上がって行動できるくらいには。『レムさんが楽しそうで何よりです』って言いてぇところだが、これ以上ここで時間を浪費すればこのお下げの子の命に関わる。

 

何よりも・・・レムさんに生えているあの『鬼のツノ』。あれだけの凄まじいパワーを与える『鬼のツノ』が何の代償も反動もなしに行使できるものとは思えない。

 

 

 

 

 

「早いところ止めねえと・・・ここで長居してても状況は悪くなる一方だぜっ」

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハッ♪アハハハハハハハハハハハハッッ♪」

 

 

 

 

「―――ヤベエ・・・怖ぇ。超怖ぇえ」

 

 

 

 

 

レムさんの怒り狂う姿は二回ほど見たことあるが、ここまで恍惚とした楽しそうに笑い狂うレムさんを見るのは初めてだぜ。とても話が通じる状態じゃないが、何とかして正気に戻さねえとならねえ。

 

 

 

 

 

「レムさ・・・――――くっ!?」

 

 

 

 

『――――――ヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・ッッ!!』

 

 

 

 

「またアイツかよ。まだ何か仕掛けてくるつもりか」

 

 

 

 

 

どうやらあの魔獣《子犬》は完全に俺を標的にしているらしい。獲物ではなくあくまでも殺すべき敵として認識しているのだ―――片目を潰された恨みは水に流してくれそうにねえな。まあ、俺も許すつもりはないけどよっ。

 

 

―――しかし、さっきはコイツが『俺には遠距離攻撃がない』と油断していたところを上手く突くことが出来たけどよぉ~。コイツはもう俺の遠距離攻撃を知っていやがる。

 

 

 

 

 

「(・・・厄介なのはそこだぜ。のん気こいてたさっきまでとは狂暴度が何十倍も違いまっせー。遠距離攻撃があるのを知っててなお近づいてきたことがかえって不気味だ)」

 

 

 

ギュオンッ! ―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ

 

 

 

「(ヤバイッ・・・こっちの考えが纏まらねえ内に仕掛けてきやがった!体力もまだ回復してねえしクレイジーダイヤモンドも十分に使えるかどうか・・・)」

 

 

 

ゴバァァアアアアアンッッ!!

 

 

 

「また散弾銃《それ》かよっ!」

 

『ドォオラララララララララァァアアーーーーーーーーッッ!!!』

 

 

ドパパパパパパパパァァアアー―――ーーーンッ!!

 

 

 

 

 

また土砂崩れを引き起こすのかと思ったが、隆起した岩から無数の石槍を射出してきた。しかし、さっきまでとは違い石礫ではなく石槍であるため一つ一つが大きく容易に防ぐことができた。

 

 

 

 

 

「っ・・・そんな攻撃、俺には通用しな―――」

 

 

 

 

ズグシュゥウウウッッ!! ―――バタ……ッッ!

 

 

 

 

「・・・えっ!?」

 

 

 

 

「―――っ・・・あ、カッ」

 

 

 

 

「レムさんっ!?」

 

 

 

 

 

違う!今の攻撃の狙いは俺じゃなくて・・・背後にいたレムさんだ。レムさんを流れ弾で攻撃して負傷させることが狙いだった。

 

レムさんも目の前の魔獣を殲滅することに夢中になりすぎて背後から飛んでくる流れ弾に気づかなかった―――狂化していない“いつものレムさん”ならあんな攻撃当たらなかったのにっ!

 

 

 

 

 

ギュオンッ! ―――ゴバァアアアアアアアアンッッ!!!

 

 

「っ・・・くっそ!」

 

『ドォオラララララララララァァアアーーーーーーーーッッ!!!』

 

ドパパパパパパパパパパァァアアーーーーンッ!!!

 

「―――コイツらと遊んでる暇はないってのに・・・っ!」

 

 

 

 

 

レムさんは見たところ背中に三発ほど苦無のように鋭い石槍が突き刺さっている状態だ。元々の重傷も相まって動けないのか地面に俯せに倒れたままだ―――おかげで暴走を止めてくれたってのが何とも皮肉な『怪我の功名』だぜ。

 

俺が胸に抱き抱えているこのお下げの子と・・・レムさんを連れてこの場を離れるには――――何を置いてもまずレムさんを治して復活させなくてはならない。

 

だが、この魔獣共がそうさせてくれそうにないんだぜ。

 

 

 

 

 

―――グルルルルルッッ!!! グラァアアアアウッッ!!

 

 

 

 

「レムさんっ!・・・こぉんのクソカス共がァーーーっっ!!」

 

 

ガァアアアウッッ!! グルルルァァアアアッッ!!

 

 

「邪魔だぁああーーーっっ!!」

 

『ドォオララララララァァアアーーーーーーーーッッ!!!!』

 

ドゴゴゴゴゴゴォォオオオオオーーーーーーッッッ!!!

 

 

 

 

 

クレイジーダイヤモンドのスピードもパワーを落ちてきた。魔法を使ったことによる精神力の消費が思っていた以上にでかすぎた。

 

早くしねえとレムさんがやられるっ!あのままだと魔獣に喰われるっ!

 

俺は魔獣共よりもほんのわずかに早く無防備に倒れるレムさんに駆け寄ることができた。だが、まだ敵の猛攻は終わっていなかった。

 

 

 

 

 

ギュオンッ! ―――ゴバァアアアアアッッ!!!

 

 

「―――っ!?」

 

 

 

 

 

俺があと少しでレムさんに手が届く距離にあるというのに背後から再び石槍が迫ってきた―――その瞬間、脳内に選択肢が浮かび上がる。

 

 

①『横に転がってかわす』―――かわせばレムさんに当たる。

 

②『クレイジーダイヤモンドで石槍を防ぐ』―――その間にレムさんが魔獣に喰われる。

 

③『クレイジーダイヤモンドでレムさんを襲おうとしている魔獣をぶっとばす』―――あれだけの数の石槍から胸に抱えているこのお下げの子を守りきれない。

 

 

ならば、俺のとるべき手段は―――④『クレイジーダイヤモンドで石槍を防ぎつつ“俺”が魔獣からレムさんを守る』っ!

 

 

 

 

 

「―――『クレイジーダイヤモンド』ぉおおっ!!!」

 

『ドォオラララララララララァァアアーーーーーーーーッッ!!!』

 

ドババババババババババババババァァアアーーーーンッ!!!

 

 

 

 

 

クレイジーダイヤモンドで飛んできた石槍を弾き飛ばした―――だが、問題はここからだぜぇ~・・・別方向から同時に飛んできた魔獣は『俺の体』で防ぐしかないっ。

 

俺はレムさんとお下げの子を庇うように自分の体を盾にして覆いかぶさった。

 

 

 

 

 

ガブゥウウウッッ!! ガヴゥウゥウウウッッ!! ガジィイイイイイイッッ!!

 

 

「うあああっ!?ぐあぁぁあああああああ・・・っっ!!?~~~~ぐっ!・・・このスキにレムさんを・・・『なおす』」

 

 

ズギュゥウウウウウンッッ!!

 

 

 

 

 

魔獣共は俺の体に好き放題かじりつく。俺はクレイジーダイヤモンドで魔獣を蹴散らすよりも先にレムさんの怪我をなおすことを優先した。

 

そのわずかなスキを突いて、魔獣の中の一体が俺の首筋に噛みつき・・・

 

 

 

 

ブヂィイイイイッッ ―――ブッシャァアアア……ッッ!!

 

 

 

 

―――勢いよく首の肉を噛みちぎった。

 

 

き・・・・切れた。俺の体の中で何かが切れた・・・決定的な何かが・・・・

 

 

抵抗する力を失った俺は一転して魔獣共の餌となった。魔獣共はこぞって俺の肉を奪い合い。腕や足を噛みつき引っ張り合う。力の入らない俺はまるで人形のように振り回されただただかじられる激痛に耐える他なかった。

 

喉笛を噛みちぎられ呼吸すらできなくなった俺は、クレイジーダイヤモンドを召喚する力も・・・もう残されてはいなかった。

 

 

 

―――グレート・・・このままくたばるのかよ、俺は。けど・・・レムさんの怪我は完全に治した。レムさんならあの子を連れて無事に村まで辿り着けるはずだぜ。ヒロインのために命を捨てるなんて、俺のキャラじゃあねえが・・・前回よりはましな結末かもな。

 

 

 

 

 

「――――――アキラくんっ!?」

 

 

 

 

 

死を覚悟した直後、聞こえてきたレムさんの悲痛な叫びと共に俺の体を蝕んでいた痛みが消えた。どうやら復活したレムさんが俺の体にかじりついていた魔獣を追い払ってくれたらしい。

 

 

―――これでもう大丈夫だ。今度こそ守り抜くことができたラムもレムさんも。これで少しは許してもらえるかな・・・俺が未来に残してきた『もう一人』のラムとレムさんに。

 

 

 

 

 

「―――死なないでっ・・・死なないでっ!・・・死なないでっ!」

 

 

 

 

 

悲嘆に暮れる声で必死に呼び掛けてくれるレムさんが、何つーか・・・不謹慎だけど―――『すごく可愛い』なんて思ってしまった俺はオメデタイ男か?

 

 

 

 

 

 




書き上がったものを見て思ってしまうのですが・・・果たして、こんなシリアスで良かったのでしょうか?

個人的にはシリアスな展開よりも二次創作よろしく軽く読み流せる程度で書いていきたかったのですが、リゼロSSでそれをやるのは難しいかもですね。

そして、戦闘シーンはやっぱり難しいなと筆者の実力不足を痛感しましたっ!
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