ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第四十七話 師匠、はっちゃける?

 

 

 

ある日、その知らせがオラリオに届いた。

ラキア王国軍、出兵。

ラキア王国とは、『軍神アレス』を頂点とする軍事国家だ。

兵士や軍人は全員が『恩恵』を授かった神の眷属。

通常の軍と比べれば、その戦闘力は驚異的だ。

そのラキア王国軍の向かう先は、言わずもがなオラリオであった。

その知らせを聞いたオラリオの人々の心の内は一つ。

 

『ああ、またか』

 

この一言に尽きた。

何故なら、迷宮都市の外にいる兵士のレベルなど殆どが1、もしくは2。

あとはLv.3が数人いるかどうかと言ったところだ。

いくら数を揃えようとも、『量』の差をひっくり返すほどの理不尽な『質』を持つ高レベル冒険者が揃っているオラリオが負ける道理が無いからだ。

故に、今日もオラリオの街はいつもの日常が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

だが、

 

「どーなっとんのや、これ?」

 

「ほんと、どうなってるのかしらね?」

 

ラキア王国軍の迎撃の為に駆り出された【ファミリア】の主神たちが集う本営で、ロキとフレイヤが首を傾げていた。

 

「Lv.4以下の子供達が軒並み倒されて、Lv.5ですら苦戦……………今までのアレスとはまるで別人や」

 

「そうね………今までのアレスは『猪突猛進』。多少の伏兵は使ってたけど、基本的に数にモノを言わせた力押し」

 

「それが不利と見せかけて後退、追撃してきた所を袋小路に誘い込んで袋叩きにするなんて、今までのアレスじゃ想像つかんわ!」

 

「有能な参謀でも雇ったのかしらね?」

 

「それでも、あっちの兵士の強さが説明付かんわ! あっちの兵士、最低でもLv.3は固いで!」

 

ロキが叫ぶ。

そう、今回の進軍は今までとは訳が違った。

まず一つに兵士の練度が今までとは比べ物にならないくらいに上がっていたこと。

個人のレベルはもちろんの事、一糸乱れぬ連携も今までの比で無い。

更にはフレイヤの言った、力押し一辺倒だったものが奇襲、奇策、搦め手といった戦略的な事も多用してきている。

結果、Lv.4未満の冒険者は尽く脱落し、Lv.5でも数人編成の小隊で動くことを義務付けられている。

Lv.6以上の第一級冒険者が戦場を駆けずり回り、何とか戦線を持たせている状況の為、いつもならだらけていても問題が無い本営も、いつ襲われるか分からない恐怖に空気がピリピリとしている。

 

「…………このままいくと、拙いかもしれんなぁ。いくらウチの子が強くても体力は無限やない。そのうち崩れかねんで」

 

「そうね」

 

「はぁ~~~……………気が進まんけど、最悪ベルに応援頼むかなぁ………ドチビの奴に借りを作るのは癪やけど…………」

 

ロキは大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

一方、そのため息の元凶となっているラキア王国軍本営では。

 

「戦いとは奇道なり。策なく己が勢いのまま戦うは、敗れる兆しなり。兵法に曰く、戦いとは正法と奇法の運用に過ぎず、水の流れのように極まりなく。戦いは猛進を戒めとする。我が戦力を計り、敵情を計る。それを考えることなく敵を侮っている者は、敵の手に落ちるであろう。今、オラリオは正にそれなり!」

 

盤上を見つめながらそう言うのは、ベルの師匠である東方不敗 マスターアジア。

 

「はっ! お見事です、老師!」

 

その横で跪きながら褒めたたえているのは、ラキア王国の王子であり【アレス・ファミリア】の副団長であるマリウス。

その眼は完全に東方不敗を尊敬し、称える眼だ。

因みに主神であるアレスはその辺に簀巻きにされて転がされていた。

何故この場に東方不敗がいるのかと言えば、東方不敗はオラリオを去った後、当てもなく旅をしていた。

その際に偶々寄ったラキア王国で軍の訓練を目撃したのだが、東方不敗から言わせればぬる過ぎるその訓練内容に思わず口………というか拳を出していまい、最終的に東方不敗VSラキア王国軍というとんでもない事態に発展した。

結果は言わずもがな東方不敗が無傷で全員叩きのめし、序にアレスもボコボコにしておいた。

そのまま東方不敗の気紛れで一時的なラキア軍の客将となり、短い期間だが兵の教育係として軽く訓練を施していた。

因みにその期間、ラキア軍の訓練場から悲鳴が絶えることは無かったという。

その訓練の甲斐あって兵たちはメキメキと頭角を現し、最低でもLv.3。

最大でLv.5というとんでもない軍隊となった。

更に東方不敗は隊長クラスの兵たちに己が兵法を叩き込み、連携の大切さや地理の把握などを徹底させた。

その結果、自称『闘争本能』、他称『猪突猛進』が、智勇併せ持つ最強の軍と化した。

 

 

 

 

 

 

 

【Side とある冒険者】

 

 

 

 

俺はそれなりに有名な【ファミリア】に所属する冒険者だ。

俺が所属する【ファミリア】もラキア軍の迎撃に参加している。

オラリオに来て早十年。

努力の甲斐あって今ではLv.4だ。

俺はここまでよく頑張ったと自分を褒めてやりたい。

年齢も二十代半ばを過ぎた。

そろそろ頃合いかと自分でも思う。

俺は今こそあの娘に自分の気持ちを伝えよう。

 

「俺、この戦いが終わったらあの娘に告白するんだ!」

 

その思いがあれば俺は頑張れる。

目の前から軍馬に乗ったラキアの兵士たちが突撃してくる。

 

「うぉりゃぁあああああああああっ!!」

 

俺は手に持った槍を振り回した。

殺すなと言われているのでそれなりに手加減して。

それでも敵兵たちは軍馬ごと宙を舞った。

 

「うわぁああああああああっ!?」

 

吹き飛ばされた兵士たちが悲鳴を上げる。

 

「だめだ! 敵わない! 逃げろぉぉぉっ!」

 

兵士達が向きをくるりと変えてきた道を引き返す。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁっ!!」

 

俺は後を追って駆け出した。

その時俺は何も気付いていなかった。

後退のやり方が余りにも鮮やか過ぎることに。

通常、敗走する兵が逃げる場合、必ずと言っていいほど混乱が生じ、事故が多発して死人が出ることも珍しくない。

だというのに、俺の目の前にいる兵たちは一糸乱れぬ動きでくるりと180度向きを変え、混乱を全く起こすことなく流れるような動きで引き揚げていく。

そんな単純な事にも、この時の俺は全く気が付いていなかった。

 

「逃げろぉぉぉぉ!」

 

「もっと速く走れぇぇぇぇぇぇっ!」

 

兵たちは軍馬に鞭打ち荒野を疾走する。

俺もそれを追いかけ、全力で走った。

兵たちは森の中に逃げ込み、俺もすぐに後を追う。

俺はそこで、初めて違和感を感じた。

何故Lv.4の俺が軍馬に追い付けない?

今の俺ならば確実に馬が走るよりも速く走れるはずなのに…………と。

嫌な予感がした俺は走ることを止め、周りを伺った。

気付けば森のかなり奥深くまで入り込んでしまっている。

 

「…………………………」

 

俺の冒険者の勘が言っている。

このままでは拙いと。

 

「まさか…………誘い込まれた?」

 

俺がそう呟いた瞬間、木々の間から鎖が飛び出してきた。

 

「くっ!?」

 

俺は右腕を絡めとられる。

更に反対側と後方からも鎖が伸びてきて、それぞれ左腕と胴体に絡みついた。

 

「ぐぅぅ!?」

 

し、しまった!

そのとき、周りの茂みから幾人もの兵たちが姿を現す。

こ、このままでは…………

俺は何とか脱出しようするが、鎖のそれぞれの持ち主はLv.3ほどの力を持っているのか、振りほどけない。

その間にも、剣を携えた兵士たちが近付いてくる。

……………俺、この戦いが終わったら、あの娘に………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

再びラキア本営に一部隊の勝利が報告される。

沸き上がる将達。

 

「フッ、これぞ東方不敗八卦の陣! 一度嵌れば抜け出せぬ! 覚悟せよ!」

 

そう言い放つ東方不敗。

 

「流石は老師です!」

 

東方不敗を称える将軍の一人。

 

「ですが、老師の采配もさることながら、まさか、“軍馬に『恩恵』を与える”などとは」

 

そう言った将軍は正に妙手だと言わんばかりに笑う。

そう、東方不敗の発案により、ラキア軍は軍馬に『恩恵』を与えるという前代未聞のトンデモ案を実行した。

流石にそれはアレスも渋ったが、東方不敗の誠心誠意籠った説得()により、実行に移されることとなった。

そしてそれは成功し、おそらく歴史上初めてであろう『恩恵』持ちの軍馬が誕生することとなった。

東方不敗の訓練により、軍馬も全てがLv.3以上となっており、元々走ることに特化した馬の脚力はLv.5の冒険者のスピードに匹敵するほどとなった。

 

「騎兵にとって馬は己が足と同じこと。体を鍛えて足を鍛えぬなど、馬鹿のすることぞ!」

 

「いや全く!」

 

ここまでオラリオ相手に有利に進めたことは無かったためか、将軍たちは非常に機嫌が良かった。

東方不敗はオラリオの方角を見ると、

 

「さあベルよ、お前はどうする?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

「ハックション!」

 

いきなり鼻がムズムズしだして、僕は盛大にクシャミをした。

 

「ベル様? 風邪ですか?」

 

僕のクシャミにリリが心配そうな表情を向ける。

 

「いや、そんな事ないと思うけど………誰かが噂してるのかな?」

 

街を歩いていると、時々市壁の向こうから鬨の声が聞こえてくる。

 

「なんか、今回はやたらとラキア軍の声が聞こえてくるな」

 

「噂ですけど、今回は何故か苦戦しているという情報もあります」

 

「マジか!?」

 

「ですから噂です。ですが、もし本当なら私達にも召集がかかるかもしれません」

 

「そういえばカサンドラさんも、高い塔の上に立つ神様達に兵士たちが迫る夢を見たって言ってたっけ」

 

「いや、それは唯の夢だろ?」

 

そんな事を話し合いながら街の中を進んでいくと、

 

「タケミカヅチ様の……………天然ジゴロォォォォォォッ!!!」

 

「ブボァァァッ!?」

 

【タケミカヅチ・ファミリア】の命さんがタケミカヅチ様の顔面にケーキを炸裂させていた。

 

 







四十七話の完成。
師匠再び。
ラキア軍がパワーアップ。
どうなるオラリオ?
乞うご期待!
それでは次回にレディー………ゴー!!

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