ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第四十八話 リリ、求婚される

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

 

久々に普通にダンジョンの探索を終えた僕は、ギルド本部に顔を出していた。

今日の稼ぎは、人数の増加やリリの力が上がったことにより鞄が最大の大きさになった事で、僕とリリだけの頃よりも遥かに効率よくモンスターを狩れることになったお陰で、7桁を超えた。

とりあえずダフネさん達のレベルも考えて十六階層辺りで荒稼ぎしてたけど、借金を返すためには僕とリリだけでもっと深いところに潜った方が良いかもしれない。

ダフネさんやカサンドラさん、春姫さんの護衛はヴェルフの能力なら一人で対応できるだろう。

そう思いながら今日の結果をエイナさんに報告し、ホームに戻ろうとしていた所、

 

「ベル・クラネル」

 

「えっ?」

 

突然声をかけられた。

僕が振り向くと、

 

「フィン・ディムナさん?」

 

そこには【ロキ・ファミリア】の団長でありリリと同じ小人族(パルゥム)のフィン・ディムナさんがいた。

 

「いきなり呼び止めて済まない。ただ、敵対しようなんて間違っても思って無いから身構えなくていい」

 

その言葉は本当のようで、フィンさんの雰囲気や身のこなしから敵対意思は伺えない。

 

「………僕に何か?」

 

「なに、以前から君とは色々縁があったからね。一度話をしてみたいと思っていたのさ。けれど、今の君を僕が直接伺いに行くと下手に勘繰られる………悪いけどここで君が姿を現すのを待ち伏せていたんだ」

 

フィンさんが僕に興味を持つこと…………

思い当たることは師匠とか師匠とか師匠とか………

駄目だ、

師匠の事しか出てこない。

 

「実は派閥の団員達にもお忍びで来てね、頼み事もあるんだ。時間が空いているならゆっくりと話したいんだけど、どうかな?」

 

「別に構いませんが………」

 

僕はフィンさんの話を聞くことにした。

 

 

 

 

フィンさんに連れてこられた場所は、街の南西地区に存在する喫茶店、『ウィーシェ』という場所だった。

「エルフの魔導士の少女に教えてもらったんだ」って言ってたから、レフィーヤさんの事かな?

テーブル席に座った僕は、フィンさんと向き合う。

 

「一応、派閥の団長同士の密会ということになる。くれぐれも内密にしてもらえるかな?」

 

「はい」

 

店主以外誰も居ない店内で、最初にそう言うフィンさん。

 

「まずは戦争遊戯(ウォーゲーム)の勝利に祝辞を述べておこうかな? 僕も観戦させてもらったけど、あれは爽快だったね」

 

「はあ………」

 

「話は変わるけれども、最近何か、変わったことはあったかい?」

 

「えっ?」

 

「市壁の中は全く持って平和だけど、身の回りには注意しておいた方が良いかもしれない………近頃は物騒だからね」

 

カップに口付けながら語るフィンさんに、僕は違和感を覚えた。

 

「………もしかして、戦況は良くないんですか?」

 

僕がそう問いかけると、フィンさんは一度黙り込んでしまう。

そのあと、一度息を吐き、

 

「あまり話を広げたくはないんだけど、君も関わることになるだろうから教えても問題ないだろう。正直、今までのラキア侵攻とは訳が違う」

 

「……………」

 

「今までは上級冒険者でも十分に防ぐことは可能だった。だが、今回は第一級冒険者ですら苦戦する有様だ」

 

フィンさんは悔しさを滲ませながら視線を落とす。

 

「今はオラリオトップクラスの冒険者たちが何とか凌いでいるけど、このままいくと押し切られる可能性も出てくる。だから、そう遠くない内に君達【ヘスティア・ファミリア】にも召集が掛かるはずだ。君達は【ファミリア】の規模はともかく、戦闘能力だけで言えば僕達にも負けないだろうからね」

 

「その時には、協力は惜しみませんよ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「話というのはその事だったんですか?」

 

「いや、ここからが本題だ。まあ、これは僕の個人的な事なんだけどね………」

 

そう前置きすると、フィンさんは口を開く。

 

「君のサポーターの、あの栗色の髪の小人族(パルゥム)と会わせて欲しい」

 

「……………えっ?」

 

予想外の言葉に僕は思わず声を漏らした。

 

「いや、率直に言おう。同族である彼女に縁談を申し込みたい」

 

「え、縁談~~~~~~~~~~~~~~っ!!??」

 

更なる思いがけない言葉に僕は立ち上がりながら叫んだ。

え、縁談ってことは、つまりリリが求婚されているってことで………!

 

「ひとまず落ち着いて欲しい。そして酔狂で事を言っているのでは無いと理解してほしい」

 

落ち着いて話すフィンさんの言葉に僕も冷静さを取り戻し、椅子に腰かけ直す。

僕は一度深呼吸し、フィンさんの目を見つめ返す。

その瞳の輝きに曇りは無い。

つまり、先ほどの言葉は本気だということだ。

 

「冗談で言っているのではないということは分かりました。ですが、率直に言えばそれはお断りさせていただきます」

 

「ほう………何故かな?」

 

「僕にはリリが必要です。僕自身の感情の話かもしれませんが、あなたがリリに縁談を申し込むと聞いた時、驚きと同時に、『嫌だ』という思いも感じました」

 

「なるほど……………では、僕と彼女の仲を取り持ってくれると言うのなら、同時に君とアイズの仲を僕が取り持ってあげよう…………と、言ったら?」

 

僕はそれを聞いた瞬間、頭に血が上るのを自覚した。

 

「…………もしその言葉が本気だと言うのなら、失望するにも程がありますよ?」

 

僕は本気でフィンさんを睨みつけながら言う。

彼が言っていることは、自分が欲しいものを手に入れるために、仲間を売るのと同義だ。

もし本気なら、僕は彼を絶対に許すことは出来ない。

 

「………………もちろん冗談に決まっている」

 

フィンさんは息を吐きながらそう言った。

 

「もし今の条件を受け入れるような人間なら、絶対にアイズを任せることは出来ないからね」

 

「ならいいんですけど…………」

 

僕は幾分か冷静になりつつフィンさんを見る。

 

「でも、話だけは聞いて欲しい。どうして僕が他派閥である同族にこんな申し出をしようとしているのかを………」

 

「………わかりました。聞くだけ聞きましょう」

 

「ありがとう…………君は『フィアナ』という女神を知っているかい?」

 

女神『フィアナ』…………小人族(パルゥム)の間で深く信仰されていた架空の女神。

『古代』の英雄達、精強かつ誇り高い小人族(パルゥム)の騎士団、それが擬神化したものだ。

だが、本物の神が降臨した『神時代』の到来により、『フィアナ』信仰は一気に廃れた。

下界に降りてきた神様達の中に、彼らの崇拝してきた女神の姿は無かったからだ。

それが止めになったかのように小人族(パルゥム)は加速度的に落ちぶれ、今日まで至っているらしい。

僕はフィンさんの言葉に頷く。

 

「今も落ちぶれている小人族(パルゥム)には光が必要だ。女神(フィアナ)信仰に代わる、新たな一族の希望が」

 

「それは………」

 

フィンさんの言おうとしていることが分かった。

 

「考えている通りだ。僕は一族の再興のためにオラリオに来た。名声を手に入れ、同族の旗頭になる為に」

 

なるほど、と僕は思った。

世界でも一番と言えるほど有名なオラリオ。

そこで名を上げることが出来れば、それは世界に名を轟かすに等しい。

名を上げたものと同じ種族にも、確かに希望がもたらされるだろう。

 

「だが………それだけでは駄目だ。一瞬の栄光では一族を奮い起たせるには至らない。希望の光は長くあり続け、小人族(パルゥム)を照らし続けなければならない。でなければ、小人族(パルゥム)の繁栄は叶わない。詰まるところ、次代に続く後継者が必要だ。そしてそれは、【勇者(ぼく)】の血を受け継いでいることが望ましい」

 

「……………!」

 

ここまで言われれば、僕でもわかる。

 

半亜人(ハーフ)では駄目だ。一族に誇りをもたらすためには、純粋な小人族(パルゥム)でなければならない」

 

「………そういう事………ですか………」

 

「ああ。あの娘をお嫁さんに貰って、僕の子を産んでもらいたい」

 

思わず叫びだしたくなる衝動に駆られたが、僕は拳を思い切り握ってそれを我慢する。

まだ、聞かなければいけないことがある。

 

「………他の【ファミリア】同士の結婚は、認められていないのでは?」

 

まずは基本的な問題を問う。

 

「ロキには許しを貰っている。いや、そういう手筈になっている。僕が彼女の眷属に加わる際に突きつけた条件は二つ。一族の再興の協力、そして邪魔立てしないことだ」

 

なるほど、そっちの問題については予め対処済みと。

 

「勿論、今増えた【ファミリア】に愛着を持ってはいるし、守らなければならない場所だと思っているよ。それにロキが許していても、僕の独断で【ファミリア】には迷惑をかけられない。君のサポーター…………リリルカ・アーデ本人や神ヘスティアが断ればそれまでさ」

 

そう言いながらフィンさんは苦笑し、

 

「僕も結構歳も取っているしね。求婚の無理強いは出来ないよ」

 

その言葉を聞いて、ふと疑問に思う。

 

「失礼ですがおいくつですか?」

 

「もう四十は過ぎたかな?」

 

「四十…………」

 

予想以上の年齢に僕は軽く驚いた。

幼く見られがちな小人族(パルゥム)でも、そこまで行っているとは思って無かった。

 

「話が逸れてしまったけど………良ければ彼女と二人で話をさせてもらえないかな?」

 

その答えを言う前に、僕は一番大切な事を尋ねた。

 

「どうして………リリなんですか?」

 

僕の質問に一度目を瞑ったフィンさんは、瞼を開けてこちらを見てくる。

 

「最初に彼女に興味を持ったのは、二ヶ月ほど前の君が覆面の彼と戦っていた時………」

 

最初にシュバルツさんと戦っていた時のことか………

 

「君を救おうと、彼女は第一級冒険者の僕達に対し、臆することなく助けを求めてきた。自分の身を顧みずにね。まずその一欠片の『勇気』に感銘を受けた」

 

更にフィンさんは続けた。

 

「そしてこの前の戦争遊戯(ウォーゲーム)。何があったのかは分からないけど、彼女の『強さ』を目にした僕は、そこで決心したんだ。もちろん『強さ』とは身体的な事じゃない、心の強さの事だ。伴侶が欲しいとは言ったけど、小人族(パルゥム)ならだれでもいいという訳じゃない。今、一族に必要な物は『勇気』………伴侶たる存在にも、僕は失われてしまった小人族(パルゥム)の武器を求める」

 

「それは『資格』…………ということですか?」

 

「そうだね………そう言い換えても良いかもしれない」

 

その言葉を聞いて、僕は改めて思った。

 

「そうですか…………なら、僕は改めてこの話に反対させて貰います!」

 

「………理由を聞いても?」

 

「あなたの目標はとても崇高なものだと思います。ですが、『資格』如何こうで縁談を申し込む人に、リリを任せたくはありません」

 

「………僕はあの時から理屈を置いてきた。この身は、一族の再興の為だけに捧げる。さっきも言ったように、当の本人や神ヘスティアが拒絶すればこの話はそれまでだ。けれど、いい返事が貰えるのなら僕もいい加減ではなく、彼女に真摯に向き合うし、きちんとした関係を育みたい。必ず不幸にはしない、それだけは約束する」

 

「その考え方はある意味立派だと思います。でも、リリは一族再興の為の『道具』じゃない! 真摯に向き合うと言いましたが、それはあくまで再興の為という前置きが付く! 彼女を想っての事じゃない! 不幸にしない? それじゃ足りない! リリは今までずっと辛い目にあって来たんだ! 彼女を幸せに出来ると断言しない人にリリは任せられない!」

 

僕は自分の思いを吐き出す。

 

「それが彼女の想いには応えられなくても………僕の事を好きだと言ってくれたリリに対して僕が出来ることだ!」

 

「……………なるほど、君の思いは分かった。だけど、せめてここでの話を彼女に伝えてくれないか?」

 

「………まだ言いますか?」

 

「何度でも言うさ。それが僕が命に代えても果たしたい僕の望みだ」

 

フィンさんは、睨み付ける僕の視線を真っすぐに見返してくる。

 

「……………僕は武闘家です。貴方の望みが本気であるなら、それを拳に乗せて僕に向かってきてください。もし僕の心に届いた時には、リリに話だけは通しましょう」

 

「わかった」

 

フィンさんは躊躇せずに頷いた。

 

「表に出ましょう」

 

僕は立ち上がり外へ向かう。

フィンさんも後をついてきた。

店の外で僕達は向かい合う。

 

「制限時間は設けません。貴方の気の済むまでやってください」

 

僕はそう言う。

 

「そうか………感謝するよっ!」

 

フィンさんが答えると同時に殴りかかってきた。

僕は左手でそれを受け流す。

 

「ハッ!」

 

フィンさんは身体を捻り、回し蹴りを放つ。

右側頭部を狙われたその蹴りを僕は右腕で防いだ。

 

「この程度では僕には届きませんよ」

 

「ああ………分かっているさ!」

 

フィンさんは体勢を整え、再び僕に向かってきた。

 

 

 

 

 

時間が経ち、既に日が沈みかける頃、

 

「はぁ………はぁ………」

 

フィンさんは肩で息をしながら呼吸を整えている。

 

「まだやりますか?」

 

僕は問いかける。

フィンさんと違って、僕はまだまだ余裕だ。

 

「勿論だ………君に認められるまで止める気はないよ。時間制限は無いんだろう?」

 

疲弊しても僕を真っすぐに見据えてくるその眼に曇りは無い。

僕は一度息を吐く。

次の瞬間、フィンさんは真っすぐに僕に向かってきた。

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

狙いは顔面。

こんな攻撃は普通なら簡単に躱せる。

だけど、

 

「…………どうして避けなかったんだい?」

 

僕はあえてその拳を受けた。

結果は大したダメージじゃないけど、フィンさんの覚悟は十分に伝わった。

 

「根負けって奴ですかね? 少なくとも、リリと直接話すだけの資格はあると判断しただけです」

 

「そうか、感謝するよ」

 

「確かに話だけはしますが、僕自身反対だということは伝えますし、リリがあなたと会うかどうかも分かりません」

 

「いや、十分さ。もし会ってくれると言うのなら、明日、この場所へ来て欲しい。そこで僕は一日待っている」

 

フィンさんはそう言いながらメモを差し出してきた。

僕はそれを受け取り、踵を返す。

そのまま僕はホームへと向かった。

 

 

 

 

【Side リリルカ】

 

 

夕食後、

 

「リリ、ちょっといいかな?」

 

「はい、何でしょうか? ベル様」

 

私はベル様に呼び止められ、

 

「ちょっと話があるんだけど…………」

 

 

 

 

「私に縁談………ですか?」

 

「うん。あ、最初に言っとくけど僕自身はこの話には反対だから。リリには何処にも行ってほしくないし」

 

この話を私に持ち掛けてきた時はちょっとショックでしたが、ベル様自身はこの話には反対のようで安心しました。

まあ、「何処にも行ってほしくない」というありきたりな言葉で幸せを感じてしまっている私は既に手遅れなのですが………

でも、すこしベル様を困らせてみたくなってくる。

 

「反対なのなら、私にこの話を通す必要は無かったのでは?」

 

「え、え~っと………確かに反対なんだけど、フィンさんも縁談自体には真剣で誠意を持って話を持ち掛けてきているから、僕だけの一方的な意見で断るのも違うと思って………」

 

「フフッ……ベル様らしい理由ですね。分かりました、縁談を受けるなどという選択はしませんが、このまま無視するのもベル様の評判に影響しかねませんので、誠意に応えるという意味で直接会って直々に断りましょう」

 

「うん。お願いね、リリ」

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私は指定された店の前に来ていました。

そこは『小人の隠れ家亭』という小さな酒場だった。

小人族(パルゥム)以外入店お断り』という看板がある事から、小人族(パルゥム)専用の酒場みたいです。

 

「こんなお店がオラリオにあったんですね………」

 

私は木扉を開けて店内へ入る。

私が待ち人を探していると、一人の店員が近付いてきた。

 

「いらっしゃい。一人ならカウンターに………って」

 

すると、突然その店員は私を指差し、

 

「リ、リリルカ・アーデ!? 【ヘスティア・ファミリア】!?」

 

「どなたですか? いきなり人を指さすなんて失礼な店員ですね」

 

「なっ!? 忘れたとは言わせないぞ! オイラ達【アポロン・ファミリア】を最底辺まで落ちぶれさしたのはお前達じゃないか!」

 

「【アポロン・ファミリア】? ああ、今思い出しました。ベル様にピザを顔面にぶつけられてた方ですね?」

 

「そうだ! お前たちの所為で【アポロン・ファミリア】は有力な冒険者を殆ど失ってしまって、碌なホームも無く、その日の金銭を稼ぐためにこうやってバイトをする始末だ!」

 

「当時構成員がベル様一人だけだった【ヘスティア・ファミリア】に戦争遊戯(ウォーゲーム)を吹っ掛けてきたのはそちらではありませんか。私達は正々堂々正面からぶつかって打ち破っただけなのですが? 特に搦め手も何も使ってませんよ? むしろ【ソーマ・ファミリア】も一緒に参加させたので、言い訳は何もできないはずでは?」

 

「う、煩い!」

 

「…………待ち人がいるはずなので、行かせてもらいます」

 

「勝手にしろ!」

 

私は話を切り上げて店内へと足を進める。

すると、

 

「………やあ、来てくれたんだね」

 

変装用なのかは分かりませんが、メガネをかけているフィン・ディムナ様が声をかけてきました。

 

「まさか本当に足を運んでくれるとは思わなかったよ。しかも本人自ら」

 

「半信半疑なら、最初から声を掛けなければいいではないですか」

 

「………座ったらどうだい?」

 

「では、失礼して」

 

私はテーブルに着く。

 

「こうして二人で面と向き合うのは初めてだし、まずは自己紹介をしておこうか? フィン・ディムナだ。今日は来てくれてありがとう」

 

「リリルカ・アーデです」

 

律儀に名乗って来たので名乗り返す。

そして一息つくと、

 

「さて、来てくれたということは、いい返事を聞けるという事かな?」

 

「その返事をする前に、私を選んだ理由を聞かせてください」

 

「おや、ベル・クラネルから聞いていないかな?」

 

「あなたは人伝に女性を口説くのですか?」

 

「………それは確かに。なら………」

 

フィン様は話始める。

それはベル様から聞いた話とほぼ一緒でしたが、確かにこの方の本気さが伝わってきます。

 

「………という訳だ。僕は一族の再興を何としても成し遂げたい。これから生まれてくる新しい同胞たちの為にも。その為に………後継者はやはり必要になる」

 

全てを聞き終え、その使命に対する姿勢は素晴らしいものだと分かる。

だけど、

 

「…………確かに貴方は素晴らしい人だと思います。貴方の伴侶になる人は最悪でも不幸になることは無いのでしょう…………ですが、お断りさせていただきます」

 

「………理由を聞いても良いかな?」

 

「単純な話です。私はベル様をお慕いしています。この気持ちは、未来永劫変わることは無いでしょう」

 

「彼の心が、アイズに向いているとしても?」

 

「そんな事は承知の上です。確かにベル様の一番になることはほぼ不可能でしょう。それなら、二番三番を狙えばいいだけの話です!」

 

思わず言葉に力が籠る。

 

「おやおや」

 

「私はベル様の一番になりたいわけではありません。私は、どのような形であれベル様のお傍に居たいだけなのです」

 

「フフフッ…………どうやら僕は君を見くびっていたようだ。君は、僕が思っている以上に強かだったようだね?」

 

「誉め言葉として受け取っておきましょう」

 

「やれやれ、これでまた振り出しか」

 

「いい方を見つけたら、私からも紹介しましょうか?」

 

「お願いするよ。どうも僕はこういう事には縁が無い………というより、苦手らしい」

 

フィン様は苦笑する。

話が終わった私は席を立ち、店を出ます。

するとそこには、

 

「やあ、リリ」

 

「ベル様………」

 

ベル様が待ち構えていました。

ベル様は私に手を差し出し、

 

「帰ろう、リリ」

 

その言葉だけで、私は胸がいっぱいになりました。

 

「はいっ!」

 

私はベル様の手を取り、歩き始めます。

ホームに向かって歩き始めてしばらくした時、

 

「そう言えばリリ」

 

「はい、何でしょうかベル様?」

 

「フィンさんってあれでも四十越えらしいんだけど、リリっていくつなの?」

 

そう言えばベル様にも言っていませんでしたね。

 

「はい、私は十五歳ですよ」

 

「まさかの年上っ!?」

 

盛大に驚くベル様がおかしくて私はつい笑ってしまいました。

 

 

 

 

 

 






第四十八話の完成。
リリの縁談の話でしたが、ベル君は原作程優柔不断では無いので割とスムーズに。
リリの強かさが今回も滲み出ていましたね。
さて、次回はヴェルフの番か………
どうするか。
それでは次回にレディー………ゴー!!


あと、序に東方不敗が乗る白馬が出てきた場合のステイタス。




Lv.風雲再起



力  :来たか風雲再起!

耐久 :我が足となって戦えい!

器用 :人の恋路を邪魔する奴ぁ!

俊敏 :馬に蹴られて

魔力 :地獄へ落ちろ

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