ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
【Side ベル】
ヴェルフが関係した騒動から数日が経過した。
ヴェルフがヘファイストス様と付き合うことになったと聞いた時にはものすごく驚いた。
ヘファイストス様と仲が良い神様もとっても驚いていた様子だった。
あと、ラキア側に師匠が居るという情報をヴェルフが得たらしい。
何やってるんですか師匠…………
それはともかく今日もダンジョンで荒稼ぎを終え、数日の合計で借金を五千万ほど返せる金額を貯めることが出来た。
その事をエイナさんに言ったら呆れられたけど………
でも、その話の中で僕はエイナさんの様子がおかしいことに気付いた。
「エイナさん、何かあったんですか?」
「え?」
「いえ、エイナさんの様子がなんだか元気がなさそうに見えたので………」
「ッ……………」
エイナさんが俯く。
その様子から、何かあったのは明白だ。
「エイナさん、僕で良ければ相談に乗ります!」
「ベル君………でも………」
「エイナさんには、冒険者になったときからずっとお世話になっているんです。少し位お返しさせてください」
「ベル君………」
すると、エイナさんはおずおずと話し出した。
何でも、昨日ギルドの仕事が終わった後に帰宅する際、フードローブを纏った謎の人物に後をつけられたと言うのだ。
それは、まさしくストーカーという奴だ。
エイナさんはそれでどうしようと悩んでいた。
「エイナさん、僕がボディガードをします!」
気付けば僕はそう言っていた。
「えっ? で、でもベル君に迷惑じゃ………」
エイナさんはそう言って遠慮しようとするが、
「そんなことありません! エイナさんが困っているのなら、それを助けることが迷惑なわけありません!」
「で、でも………」
エイナさんは尚も渋ろうとする。
だから僕は、
「それともエイナさんは、僕がボディーガードでは頼りないですか?」
「もう! その言い方は卑怯だよ………! ベル君以上に頼りになる人なんて居ないよ…………」
エイナさんはそう言って折れてくれた。
「では、早速今日から」
「うん………それじゃ、よろしくお願いするね?」
「任せてください!」
こうして、エイナさんのボディーガードをすることが決まった。
その日の夕方、ギルドの仕事を終えたエイナさんと合流する。
「お待たせ、ベル君」
「いえ」
「それじゃあ、よろしくね?」
「はい!」
エイナさんと共に帰路に着く。
でも移動し始めてすぐ、
「……………早速つけられてますね」
「えっ!?」
後方に気配を感じる。
エイナさんは慌てようとしたけど、
「落ち着いてください。下手に反応すると犯人を刺激することになります。幸い敵意や憎悪といった良くない感情はまだ感じません。ただ本当に見ているだけ………見守っているだけと言っても良いかもしれませんね……………今はまだ……ですけど」
ストーカーの始まりは気になる異性に対する行き過ぎた感情から来るものが多いと聞いたことがある。
エイナさんが気付いたのも昨日が初めてだという話だし、ストーカーはまだ始めたばかりなのかもしれない。
「とりあえず、しばらく様子を見ましょう。もしかしたら、自分から過ちに気付いて止めないとも限りませんから」
「うん…………」
エイナさんは不安そうに頷く。
「安心してください。何があってもエイナさんは僕が守りますから!」
僕がそう言うと、エイナさんはいきなり顔を赤くし、
「き、期待してるね………ベル君!」
「任せてください!」
何故顔を赤くしたのかは分からないけど、エイナさんを安心させるために僕は自信を持って頷いた。
とりあえずその日は何事もなくエイナさんの自宅に着くことが出来た。
それから二日後。
相変わらずエイナさんを付け回す気配は消えておらず、むしろ増えていた。
エイナさんには言っていないが、エイナさんを直接見ている気配が二つ。
更にその二つの気配を尾行するように別の二つの気配があった。
後者の気配は普通の気配とは違うからおそらく神様だ。
……………何となくこのストーカー騒ぎの全貌が見えてきたような気がした。
一応今日も何事もなくエイナさんの自宅に着いた。
すると、
「ねえ、ベル君。上がってく?」
エイナさんがそんな事を言い出した。
「え?」
僕が軽く驚いていると、
「その、いつも付き合わせちゃってるし………お茶、ご馳走するよ?」
やや緊張しがちな態度でエイナさんはそう言う。
ここでエイナさんの厚意を無碍にするのも憚られた僕は、
「えっと…………じゃあ、少しだけ………」
エイナさんのお言葉に甘え、少しだけお邪魔することにした。
その際に二つの気配から凄まじい敵意が僕に対して飛んできたが………
そして翌日。
同じようにエイナさんと帰宅していると、凄まじい殺気交じりの敵意が僕の背中に突き刺さる。
その視線に思わずゲンナリしていると、
「ベル君? どうかしたの?」
エイナさんが僕の様子に気付いたのか尋ねてくる。
「いえ、尾行している人の視線が僕に対して厳しいものになっているので………」
僕はそう言いながらチラリと後方を伺う。
相変わらずフードローブで頭まですっぽりと覆い隠した二人の人物は下手な尾行を続けている。
あれでバレてないつもりなんだろうか?
尾行するなら気配を消すのは当然で、殺気や敵意を出すのは論外だ。
こんなのを師匠に見せたら間違いなくぶっ飛ばされる。
とはいえ、間もなく僕もラキア迎撃に駆り出されるだろうし、このままの状態を続けて良いはずがない。
「……………………」
僕は少し考え、おびき出すことにした。
路地裏に続く道に差し掛かった時、
「エイナさん…………少し失礼します」
僕はエイナさんに一言断り、
「えっ………? きゃっ!?」
エイナさんの腕を掴んで路地裏に連れ込んだ。
流れ的にエイナさんを路地裏の壁に押さえつけることになり、
「ベッ、ベル君!? そ、そりゃあ私はいつでもベル君を受け入れる心の準備は出来てるけど………こんないきなり………は、初めてはせめてもう少し雰囲気を………」
エイナさんが妙な事を口走った。
なんか勘違いしているみたいだけど、尾行していた気配の内の一つが近付いてくる。
「お、お前! こんな場所にエイナさんを連れ込んで、いったい何をするつもりじゃぁーーーー!!」
そう怒鳴りながら駆け込んできたのは、戦槌を手に持ったドワーフの青年だった。
相当ご立腹なのか、顔を真っ赤にしている。
「えっ!? ドルムルさんっ!?」
エイナさんが叫んだ。
でも、ドワーフの青年はエイナさんに気付いてないのか戦槌を振り上げ、僕に殴りかかってきた。
「ベル君っ! あぶなっ…………!」
エイナさんが危ないと言い切る前に戦槌が振り下ろされる。
だが、
「う、嘘………」
エイナさんが呆然とした声を漏らす。
巨大な戦槌を、僕は左手一本で受け止めていたからだ。
「んなぁっ!?」
ドルムルと呼ばれたドワーフの青年が驚愕の声を上げる。
僕は戦槌を押し返すと、ドルムルさんは後退してたたらを踏んだ。
見た限り力に自慢があっただろう彼の驚きは一押しだろう。
すると、彼は背中にあったもう一つの巨槌を手に取った。
「これならどうだ!」
僕はその巨槌を注視する。
普通の武器とは違う独特の雰囲気があるあの武器は………
「『魔剣』っ!」
「くらえぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ドルムルさんは巨槌型の『魔剣』を大きく振り上げた。
その魔剣から稲妻が迸る。
恐らく雷系統の『魔剣』。
そう判断した僕はその『魔剣』が振り下ろされる前に踏み込み、
「そんなものをこんな狭いところで使ったら、エイナさんも巻き込んでしまいますよ!」
振り下ろされてきた巨槌の打撃部分に右の拳を叩き込んだ。
巨槌の頭部は砕け、雷の魔力は四散する。
更なる驚愕の表情を浮かべるドルムルさんに対し、僕は右の拳を繰り出した勢いを利用して体を回転させ、左の裏拳をドルムルさんの顎を掠めるように繰り出した。
「あがっ………?」
顎に衝撃を与えたことで脳が揺さぶられ、ドルムルさんは気絶してその場に倒れる。
僕は完全に気絶したことを確認すると、
「もう大丈夫です、エイナさん」
僕がそう言うとエイナさんは恐る恐る近付いてくる。
「ど、どうしてドルムルさんが………」
エイナさんは信じられないといった表情を浮かべている。
それとは別に、僕は視線をとある方向へ向けていた。
翌日。
今日はエイナさんは一人で帰っている。
ドルムルさんが捕まったことでストーカー騒ぎには一応解決したと思ったんだろう。
でも、尾行者は複数いたので僕は屋根の上を飛び移りながらエイナさんの後を追っていた。
尾行者のもう一人と、更にそれを尾行する神様二人を視界に納めながら。
その時、エイナさんが何かに気付いたように足を速めた。
どうやらまだ尾行されていることに気付いたらしい。
すると、エイナさんを追いかけるように尾行者も走りだした。
走る速さは尾行者の方が速い。
見る見るその距離を縮めていく。
もう追いつかれるという所で僕は屋根から飛び降り、二人の間に降り立った。
「そこまでです!」
エイナさんを庇うように尾行者に向かって立ちはだかる。
「ベッ、ベル君!?」
「驚かしてすみません。尾行者に複数の気配があったので…………僕がいなくなれば行動を起こすんじゃないかと思って僕も監視させてもらいました」
尾行者のフードローブの人物に注意を向けながらエイナさんに説明する。
尾行者は突然僕が現れたことで狼狽えている様だ。
すると、
「どりゃぁああああああああああっ!!」
脇道から昨日捕まえたはずのドルムルさんが飛び出してきて、フードローブの人物に殴りかかった。
フードローブの人物は慌てて避ける。
「無事かぁ、エイナちゃん!?」
「ドルムルさんまで………!? どうしてここにっ、いえどうやってギルドから!?」
「壁を壊して抜け出して来ただ!」
その言葉を聞いて、エイナさんはくらっと額に手を当てながらふらつく。
僕もなんだかなー、と思っているとドルムルさんはフードローブの人物を睨みつけた。
「お前かぁ! エイナちゃんを追い回していた変態はっ!」
その言葉に、えっ?とエイナさんは目を見張った。
いや、それはあなたもでしょ、と僕は内心突っ込む。
すると、フードローブの人物は頭を覆っていたフードに手を掛け、
「へ、変態などと下劣な呼称を抜かすな、ドワーフめ!?」
「ル、ルヴィスさん!?」
エイナさんが再び叫ぶ。
フードの下から出てきたのは金髪のエルフの青年だった。
「変態は変態でねえか、この陰険なエルフめ! この状況をどう説明するつもりだ!」
「ぐっ………わ、私はただエイナさんに、お、想いを打ち明けようと………」
ルヴィスと呼ばれたエルフの青年が顔を赤くしながらエイナさんを見やるが、すぐに首を振り、
「と、とにかくっ、これまでのような回りくどいことは、やはり性に合わぬと思っただけだ! 勘違い甚だしいぞ!!」
「あぁ! いったい何が勘違いだってんだ!?」
状況は一触即発。
ドルムルさんは拳を構え、ルヴィスさんも短剣を持って迎え撃とうとしている。
このままでは拙いと思った僕は二人の間に割って入った。
ドルムルさんの拳を左手で受け止め、ルヴィスさんの短剣を右手の人差し指と中指で挟んで止める。
「二人とも、少し落ち着いてください」
僕は冷静な口調で二人に言って聞かせる。
二人は掴まれた拳と短剣を振りほどこうとしているが、僕はまだ離さない。
「ちょっと気になったんですけど、二人はエイナさんを影から見守るように誰かから指示された、もしくは勧められたのではありませんか? 主にそれぞれの主神様辺りに………」
「「「えっ?」」」
動きを止め、エイナさんも含めた三人が声を漏らす。
「ど、どうして知ってるだ?」
「何故その事を!?」
ドルムルさんとルヴィスさんが同時にそう言った後、二人は顔を見合わせる。
「先日、ギルドのロビーに足を運んだ時………エイナさんが何者かに追い回されたという話を聞いて、何とかしなくてはと思い、我が【ファミリア】の主神に相談を持ち掛けて………」
「男だったら影から見守るべきだと言われただ………それからその男が着ているようなローブが最近の『とれんど』だと訳の分からないことを言われて………」
僕はそこまで聞いて二人の拳と短剣を離した。
「ベ、ベル君? いったいどういう事?」
エイナさんがそう聞いてくる。
「つまりこの二人はそれぞれの神様に唆されて、エイナさんを見守るという口実でエイナさんの後をつけていたと言う事です。本人たちにストーカーという自覚は無かったんですね。結論から言うと、エイナさんもこの二人も神様の暇つぶしに巻き込まれたと言う事です」
そこまで言って僕は振り返り、建物の屋根の上を見上げる。
「そこにいますね、神様達」
僕がそう言うとゲラゲラと笑い声が聞こえてきた。
やはり、と僕は思った。
この二人の神様達は、ドルムルさんとルヴィスさんの気持ちを利用して、自爆させるつもりで二人の相談に対し出鱈目な事を言っていたのだ。
結構な頻度で多発する『神の悪戯』だ。
「あーあ、どっちもエイナちゃんに紅葉つけられて、こっぴどく振られるとおもったんだけどなぁー」
「はい、賭けは俺の勝ちー」
月夜を背にしてゲラゲラと笑う二人の神。
その眷属であるドルムルさんとルヴィスさんの顔は真っ赤になって歯を食いしばっている。
「ルヴィスー、お父さんギャンブルで一発当たってなー。何か美味いもんごちそうしてあげるぞー」
「ドルムルー、お金すっちゃったからちょっと貸してくんなーい? お願―い」
その言葉に二人の怒りは頂点に達したらしい。
「「死ねぇえええええええええええええええええええっ!!!」」
ルヴィスさんは弓を取り出し矢を射り、ドルムルさんはその辺に転がっている石を投げつける。
だが、矢と石が届く前に神々は飛び退き、高笑いを響かせながら月夜の奥に姿を消していった。
これ以上の攻撃は無駄だと判断したのか二人は攻撃を止める。
でも、僕はあの神々をこのまま見逃すつもりは無かった。
建物の傍にあった薪を一本拝借すると、
「自分の眷属で遊ぶならともかく、関係の無いエイナさんを巻き込んで怖がらせたまま見逃すつもりは無いので………」
僕はその薪を持って振りかぶり、
「…………ふっ!」
神々が消えた方向に向かって薪をぶん投げた。
薪はクルクルと回転しながら夜空に消え…………
「んげっ!?」
「んごっ!?」
連続で悲鳴が聞こえた。
少しは溜飲が下がったかな?
一方、肩で息をしながら頭を垂れているドルムルさんとルヴィスさんにエイナさんが近付き、
「………あの」
沈痛そうに声を掛けようとした。
すると、二人はやけくそとばかりにがばっと顔を上げ、
「ええいっ、このまま終われるか!? エイナさんっ、私は貴方が好きです! 伴侶の契りを交わしてほしい!!」
「オ、オラもエイナちゃんを愛してるだ! お嫁さんになってくれ!!」
「え………えええぇっ!?」
思わぬ二人の告白にエイナさんは声を上げた。
かくいう僕も驚いた。
「エイナちゃんをお前なんかに任せられるか! 森の奥に引っ込んでろ!」
「抜かせ、そもそもドワーフの貴様では彼女と子を成すことなどできんだろう!」
「ぬあーーーっ!? お前、エイナちゃんに何する気じゃぁああああ!?」
「ば、馬鹿者、下世話な考えを巡らすな!? 私はあくまで種族としての観点をだな……」
二人は互いに言い争う。
と思うと、二人同時にエイナさんの方に振り向き、
「答えを聞かせてください、エイナさん!」
「覚悟はできてるだ!」
真剣な二人の表情に、エイナさんは珍しくオロオロと取り乱している。
すると、泣き出しそうな表情でエイナさんは縋るように僕を見つめてきた。
助けて欲しいという気持ちがビンビンと伝わってくる。
だけど、この真剣な二人を諦めさせるような理由なんて…………
と、その時一つの案が思い浮かんだ。
ただ、この方法は何故か凄く気が進まない。
ますます泥沼にはまりそうな気がして………
だが、二人に迫られるエイナさんが本気で泣きそうな顔をしている。
………ええい、ままよ!
僕は成るように成れと不安を振り切って行動に出た。
二人に迫られるエイナさんを庇うように僕は二人の前に割り込む。
「………す、すみませんが…………エ、エイナさんはお二人の気持ちに応えることは出来ません………!」
エイナさんの顔は後ろにいて見えないが驚いたのが気配で分かった。
「いきなり横からしゃしゃり出てきて何言ってるだ!?」
「私はエイナさんに答えを求めているんだ! 関係の無い者は下がって貰いたい!」
二人はそう言ってくる。
僕は少しの沈黙の後、覚悟を持って口を開いた。
「………………か、関係なくありませんっ…………! な、何故なら彼女は…………」
僕はそこで言葉を区切ると、息を大きく吸い込み、
「…………彼女は僕と付き合っているからです!!」
エイナさんの肩を抱き寄せながら、僕はそう言い放った。
「ッ………!?」
エイナさんの体が強張る。
エイナさんが僕の事を好きだと言う事は知っているけど、いくら振りだとしても………
いや、逆に振りだからこそエイナさんに対して残酷な事をしているんだと感じる。
だけど、これで二人はエイナさんの事を諦め………
「「………嘘つけっ!!!」」
「ええっ!?」
何故か二人同時に否定された。
「知ってるだぞ! お前、【
ぐふっ!?
「私は見たぞ! 【豊穣の女主人】で、そこのウェイトレス二人とサポーターを自分のハーレムだと公衆の面前で宣言したところを!」
がはぁっ!?
何気に本当の事だから反論できない。
そ、それでも何とかエイナさんを助けないと。
「そ、それは……………か、彼女も僕のハーレムの一員だからです!」
苦し紛れにそう言った。
「「そんな苦し紛れの嘘が通じるかっ!!」」
再び二人同時に否定される。
このままじゃ言い負かされると思ったとき、
「嘘ではありませんよ」
その場に澄んだ声が響いた。
聞き覚えのある声に、僕はえっ?と思いながらそちらを向く。
するとそこには、
「リュー!? シルさんも!?」
ウェイトレス姿のリューとシルさんがいた。
二人は僕達の方に歩み寄ってくる。
「な、何でここに?」
僕が尋ねると、
「追加の買い出しの帰りです。お気になさらず」
「そこでハーレム云々の声が聞こえたので気になって来てみたんですよ」
リューとシルさんはそう言う。
「ど、どういうことだ!?」
ドルムルさんが叫ぶ。
「リューの言った通りですよ。彼女もベルさんのハーレムの一員です。正確に言えば、ハーレムになる“予定”の一人ですね」
シルさんがそう言う。
って、何言ってるんですかシルさん!?
ああっ、すぐ横からエイナさんの不機嫌なオーラが………
「き、貴様、エルフの癖にそのような女誑しと伴侶の契りと交わすというのか!?」
ルヴィスさんがリューに対し指を指して叫ぶ。
「はい、その通りです。ベルは女性関係を差し引いても余りある魅力を持っているので」
リューは表情を変えずに淡々とそう言う。
ルヴィスさんは勢いよくエイナさんの方を向くと、
「エイナさん! このような男は貴方に相応しくない! どうか考え直して私と共に………!」
「エイナちゃん! こんな女誑しよりもオラの方が間違いなく幸せに出来るだ! オラと来てくれ!」
二人は再びエイナさんに迫る。
僕はエイナさんの顔を恐る恐る見る。
エイナさんはおそらく怒りと羞恥で顔を真っ赤にしていた。
これは軽蔑されたかな………?
そう思っていると、シルさんが近付いてきて、
「別にあの二人の想いに応えたってかまいませんよ。私達は別に無理強いするつもりは無いので……………まあ、その程度でベルさんへの気持ちが変わるようなら元々ベルさんのハーレムになる資格も無かったと言う事ですね」
そう言いながらエイナさんいる方とは反対側の腕に抱き着いてきた。
まるで勝ち誇った眼をエイナさんに向けながら。
更にはいつの間にか背中にリューがぴったりと張り付いている。
これまた嘲笑を浮かべながら。
その瞬間、エイナさんの顔が更に赤くなり、遂に爆発した。
「甘く見ないでください!! ベル君がアイズ・ヴァレンシュタインが好きだろうと、ハーレムを作ろうと、私はベル君が好きなんです!! この気持ちは誰にも負けません!!!」
そう言い放ったエイナさんの本気の言葉に、僕は恥ずかしくなって俯き、ドルムルさんとルヴィスさんは雷に撃たれたかのような衝撃で固まっている。
その後、二人は揃ってフラフラと歩き出すと夜道に消えていった。
すると、
「フフフ、一応合格にしといてあげます。では改めて、歓迎しますよ、エイナさん」
シルさんはそう言ってエイナさんて手を差し出す。
エイナさんはそれを見ると、
「一応受け入れますけど、隙あらば私はいつでもベル君の一番を狙いますから」
笑みを浮かべでその握手に応じる。
「それでこそです」
シルさんも笑みを浮かべる。
でも、二人の間で火花が散っていたのは、気の所為だと思い込むことした。
【Side Out】
ベル達がいる場所から少し離れた屋根の上。
「計画通り……………!」
栗色の髪の
第五十話です。
エイナさんハーレム入りな回でした。
それ以外に言う事は…………
リリがますます黒くなったってことですかね。
それでは次回…………の前に番外編②にレディー………ゴー!!