ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第五十五話 ダンジョンの異変

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

 

ラキアの進軍が収束してから約一ヶ月。

僕と神様、リリ、ヴェルフは緊急の要件ということでフィンさんを通じてロキ様から面会の要請を受けていた。

絶対に漏らす訳にはいかないらしく、面会はギルド本部の一室で行われることになっている。

因みに神様は、

 

「まったく………何でボクがロキと面会なんかしなきゃいけないのさ!?」

 

そう言ってかなり不機嫌そうだった。

でも、話を持ってきたフィンさんの様子からただ事では無いと感じた僕は、神様を宥めながらその要請を受けた。

指定された日時にギルド本部へ行くと、奥の部屋へと通される。

そこには、ロキ様とフィンさん、ベートさん、そしてアイズさんがいた。

僕はアイズさんがいたことで一瞬身体が強張るがアイズさんは少し寂しそうに眼を伏せた。

僕は怪訝に思ったけど、フィンさんに席に着くように促され、少し後ろ髪引かれる思いで席に着いた。

 

「さて、まずはご足労願って申し訳ない」

 

フィンさんが話し出す。

 

「ふん、一体ボク達に何の用があるって言うんだい?」

 

神様は不機嫌そうに腕を組みながら、ふんぞり返りつつ尋ねる。

 

「やかましいわドチビ! ウチだって本当はお前なんぞに頼りたくは無いわ!」

 

「だったら頼らなければいいじゃないか!!」

 

いきなりロキ様とケンカ腰になる神様。

 

「まあまあ神様。まずは最後まで話を聞きましょう」

 

僕は神様を宥める。

神様は渋々と身を引く。

 

「すみません、続きをお願いします」

 

僕がそう言うとフィンさんが口を開く。

 

「…………話というのは最近ダンジョンで起こっている異変についてだ」

 

「異変?」

 

僕は首を傾げる。

フィンさんは頷き、

 

「ああ。最近、ダンジョンで行方不明者が多発している」

 

フィンさんがそう言うと、

 

「お言葉ですがそれが異変と言えるほどの事なのでしょうか? ダンジョンで冒険者が行方不明になる事など日常茶飯事なのでは?」

 

リリがそう答える。

すると、

 

「そう思うのも無理は無いが、今回の異変はそんなレベルではない。何故なら、ある一定の階層以下に進んだほぼ全ての冒険者が行方知れずになっているのだから」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

その言葉に僕達は驚愕する。

 

「そして、その一定の階層………僕達は便宜上デッドラインと呼んでいるが、そのデッドラインは徐々に上の階層に上ってきているようなんだ」

 

「なんですって!?」

 

僕は思わず叫ぶ。

 

「二週間前は深層域だったものが、一週間前には下層域にまで達している。冒険者達にもそれとなく情報は流しているが、未だハッキリとした証拠が無い上に生存者もほぼいないことから眉唾と思われ、有効な抑止力にはなっていない。冒険者達が異変に気付くのには、もう少し時間がかかるだろう」

 

「…………少し気になったんだが、何故君達はその曖昧な情報をそこまで詳しく調べられたんだい? 生存者がいないと言う事は、その情報は一体どこから?」

 

神様がそう尋ねた。

すると、フィンさんは顔を伏せる。

 

「ヘスティア様、フィン・ディムナは、生存者は“ほぼ”居ないと言っていた。つまり、生存者はわずかですが居ると言う事です」

 

ヴェルフがそう補足する。

 

「そして、その情報を【ロキ・ファミリア】が持っていると言う事は…………」

 

「そっちの思っとる通りや。先日、ウチの子供達の内、深層域に入れない二軍の子らだけで、遠征を行ったんや………予定は三十階層で、一軍が居らんくてもそれなりに人数も居ったし、特に問題ない筈やった…………そうやったはずなのに………」

 

ロキ様は悔しそうに唇を震わせながら俯く。

 

「まさか………全滅したのかい?」

 

神様が目を見開きながら驚愕の表情を浮かべている。

 

「“ほぼ”全滅や…………命からがら逃げ果せてきたのがたった一人だけやった」

 

ロキ様は俯いたままそう答える。

 

「……………………」

 

流石に神様も沈痛な表情を浮かべる。

神様はロキ様と仲は悪くても、その【ファミリア】の人達の実力は認めていたし、それを纏めるロキ様の事も、嫌々ながらも認めていた。

 

「そして、その生き残った団員の情報から、今回の異変が発覚したんだ」

 

フィンさんが俯いてしまったロキ様に代わって説明を続ける。

 

「その団員の情報から、金属で出来た一つ目の鬼の大群に襲われたと言う事が分かった」

 

「金属で出来た、一つ目の鬼………?」

 

「そう、大きさは人よりも一回り大きいぐらいだが、体中が金属で出来ていて、頭の半分ほどもある大きな一つ目をしていたらしい。手には金属で出来た棍棒を持っていて、百や二百は下らない数が居たそうだ」

 

「それでも、そう簡単に全滅するなんて事………!」

 

リリがそう言うが、

 

「それにも理由がある。まず一つは、その鬼には、攻撃が全く通用しなかったそうだ」

 

「攻撃が?」

 

「もちろん無敵とか、攻撃がすり抜けたとかではない。単純に相手の身体が硬く、防御を突破できなかったんだ」

 

「………………」

 

「二つ目は、相手の武器だ」

 

「武器………確か金属の棍棒を持ってたって話だったよな?」

 

「ああ………その棍棒自体も鬼そのもののように硬く生半可な防具では全く役に立たなかったらしい。その上、その棍棒は射撃武器にもなるようなんだ」

 

「射撃武器に?」

 

「その金属の棍棒の先には丸い窪みがあって、そこから光が発射されるんだ。その光はかなりの貫通力があるらしく、当たれば全ての防具が貫かれ、やられたらしい」

 

「………………」

 

僕は思わず何も言えなくなってしまう。

すると、

 

「それにしても、これだけの情報を纏めるには時間が必要です。それはどうやって?」

 

リリが尋ねると、

 

「ああ。僕達がこの事をギルドに持ってきた時、個人的に異変に気付いて調べていたギルド職員がいたんだ」

 

フィンさんがそう言うと、部屋の奥から一人の職員が姿を見せた。

それは、

 

「エイナさん!?」

 

僕は驚いて声を上げる。

 

「そうか、彼女は君の担当アドバイザーだったね。彼女のお陰で情報整理が捗り、これだけ早く君達に知らせることが出来たんだ」

 

「ですが、ギルド職員のエイナ様が異変に気付いたのなら、ギルド全体に伝わっていても良いのでは?」

 

リリがそう聞くと、エイナさんは首を振った。

 

「私も同僚に相談してみたんですけど、どうせ気の所為だって………冒険者がダンジョンで行方不明になるのは日常茶飯事だから気にし過ぎだって…………」

 

どうやらエイナさんの言う事は信じてもらえなかったようだ。

 

「僕達としては、手遅れになる前に何とかしたいと考えている。このペースだと、あと一ヶ月もしない内にダンジョン全てに異変が蔓延することになる…………その異変がダンジョン内だけで収まればまだマシだが…………」

 

「その金属の鬼が地上に進出してきたら、オラリオが…………いえ、世界の危機という事ですね?」

 

僕の言葉にフィンさんは頷く。

 

「その通りだ」

 

「それで、僕達にはいったい何を?」

 

僕は本題を尋ねる。

 

「ああ、単刀直入に言おう。ダンジョンの異変を調べるために、君達の力を借りたい」

 

フィンさんはハッキリとそう言った。

 

「彼女の調べでは、Lv.5の冒険者も行方不明リストに入っている。故に、生半可な戦力は連れて行ったとしても足手纏いだろう。僕は、少数精鋭による偵察部隊を考えている。そこで白羽の矢が立ったのが君達ということだ。【ロキ・ファミリア】からは、僕とアイズ、ベートを出す」

 

「それはまた豪華なメンバーですね」

 

リリがそう漏らす。

 

「正直、僕が一番の足手纏いになりそうな気がするが、他の【ファミリア】の団長を行かせて僕が行かないという訳にはいかないからね」

 

フィンさんはそう言って苦笑する。

 

「そんな………僕は団長としてまだまだ未熟ですから、フィンさんが居てくれると、とても助かります」

 

僕はそう言う。

 

「そう言ってくれるとありがたいよ。戦闘力という意味においては、僕は君達の足元にも及ばないからね」

 

「…………戦闘力………」

 

僕は戦闘力と聞いて、ある人物を思い浮かべた。

 

「フィンさん、異変の調査にもう一人増やせませんか?」

 

「もう一人? それは構わないが、最低でもLv.7以上は無いと………」

 

「大丈夫です………その人は僕より強いですから」

 

「君より強い?」

 

「はい、その人は【ミアハ・ファミリア】のシュバルツ………いえ、キョウジ・カッシュさんです」

 

「キョウジ…………ッ!」

 

フィンさんは一瞬考えてハッとなる。

 

「あの覆面の冒険者か!」

 

「そうです。キョウジさんは戦闘力を含め、色々な面で頼りになります。ぜひ連れていくべきかと」

 

「なるほど、僕も彼の戦闘を見たのは君と戦っていた一度きりだが、確かに君と互角以上に戦っていた。連れて行けば、確かに頼りになる」

 

フィンさんも頷く。

因みに僕より強い人と言えば、師匠も居るが、今は残念ながらラキア軍にいて、再度しごき直しているらしい。

一段落したらオラリオに来るそうだが、もう少しかかるだろう。

 

「よし、彼にも協力を要請しよう。伝えるのは………」

 

「それはボクに任せてくれ」

 

神様がそう言った。

 

「ミアハはボクの神友だ。ボクから頼もう」

 

「お願いできますか、神ヘスティア?」

 

「引き受けよう」

 

神様は頷く。

フィンさんはそれを確認すると再び僕達に向き直り、

 

「事は緊急を要すると思っている。できれば明日の朝には出発したい。構わないかな?」

 

そう聞かれ、僕はリリとヴェルフに目配せする。

二人は無言で頷いた。

僕も頷きで返すと、

 

「構いません」

 

その事を了承した。

 

「ならば、明日の朝七時にバベルの前に集合。集まり次第、直ちに出発する!」

 

「わかりました」

 

フィンさんの言葉に、僕は頷いた。

 

 

 

 

その場が解散となり、僕は部屋から出ようとした時、

 

「ベル君」

 

エイナさんに呼び止められた。

 

「何ですか? エイナさん」

 

僕が聞き返すと、

 

「あの………その…………ベル君なら大丈夫だと思うけど………気を付けてね…………」

 

エイナさんは心配そうな表情を浮かべてそう言う。

 

「僕なら大丈夫です!」

 

僕はエイナさんの心配を吹き飛ばすようなつもりで、僕はハッキリとそう言う。

でも、

 

「うん………それは分かってるんだけど…………でも………今回は何か不吉な予感がして…………」

 

それでもエイナさんの表情は曇ったままだ。

だから僕は、

 

「それなら約束しましょう!」

 

「や、約束………?」

 

「はい、僕は必ずエイナさんの前に無事に戻ってきます!」

 

「………………うん! 約束だよ、ベル君!」

 

その言葉でエイナさんに笑顔が戻る。

 

「はい、約束です!」

 

僕はそう言ってギルドを後にした。

なお、神様がミアハ様とキョウジさんに確認を取った所、快く引き受けてもらえた。

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

時間通りにバベルの前に集まった僕達は一度バベルを見上げ、

 

「行こう!!」

 

異変を調べるために、ダンジョンへと踏み入った。

 

 

 

 







五十五話です。
ちょいと短いですね。
やはりオリジナルを考えるのは難しい。
さて、今回の話の中に出てきた敵…………
Gガン知ってる人なら直ぐに分かりますよね?
そうです、奴らです。
次回は奴らとの戦いが始まります。
それでは次回にレディー………ゴー!!





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