ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
その日、オラリオに激震が走った。
比喩ではない。
現実に凄まじい揺れがオラリオを襲い、多くの建物が倒壊。
更にバベルの塔が崩れ落ちた。
それだけならば自然災害で説明が付いた。
だが、バベルが崩れ落ちた跡地から、巨大な、悪魔としか形容できない様な姿をした存在―――デビルガンダム―――がダンジョンより現れたのだ。
それと同時に一つ目の金属の鬼―――デスアーミー―――の大群が現れ、人々に向かって攻撃を開始する。
有力ファミリアの冒険者の内の大半はバベルの塔に神がいた為、バベルの崩壊と共に神が天界送還され、【ステイタス】が封印状態となってしまい、無力化。
その為、Lv.5以下の冒険者ではデスアーミーにすら対抗できない為、次々と敗北した。
そんな中、『豊穣の女主人』では、
「ニャ~~!? なんニャのニャ、こいつら~!」
ウエイトレスの一人であるアーニャが叫ぶ。
この『豊穣の女主人』にも二体ではあるがデスアーミーが攻め込んでいる。
リューやミアを始めとして、戦える者達は抗戦に出ているが、正直吹き飛ばすことは出来ても装甲を貫くことが出来ない為、苦戦は免れていない。
「リュー!」
店の奥に隠れているシルが声を上げる。
「シル! 出てきてはいけません!」
リューの言葉に身を屈める事しかできないシル。
「……………ベルさん」
シルが祈るようにベルの名を呟いた。
その瞬間だった。
「ッ………!?」
ドォンという破砕音と共に、シルが隠れていたカウンターの背後の壁が爆散し、そこから三体目のデスアーミーが姿を現したのだ。
「きゃぁっ!?」
シルは思わず後退るが、躓いて尻餅を着いてしまう。
「あ…………ああ…………」
恐怖で声を漏らすシル。
デスアーミーの一つ目が怪しく光り、ギョロギョロとあちこちを見渡したあと、足元にいるシルの姿を捉えた。
「シル!」
リューがシルの状況に気付き、駆け付けようとするがその前にデスアーミーが立ち塞がり、足止めされてしまう。
その間にもシルの前のデスアーミーが金棒を振り上げ、
「助けて! ベルさんっ!!」
シルが目を瞑りながら叫んだ。
「シル!」
リューが叫ぶが、その叫びもむなしく金棒が振り下ろされようと…………
「!?」
した瞬間、デスアーミーの動きが硬直した。
何故なら、
「シルさんには手出しさせない!」
デスアーミーの背後から、ベルが闘気を集中させた輝く右手でデスアーミーの後頭部を掴んでいたからだ。
ベルの声に気付き、シルは目を開く。
「ベルさん!」
シルが嬉しそうな声を上げる。
そして次の瞬間、
「アルゴノゥト…………フィンガーーーーーッ!!!」
そのままデスアーミーの頭部を吹き飛ばした。
デスアーミーの身体は力を失い、その場で崩れ落ちる。
すると、
「ベルさん!」
シルが堪らずベルに抱き着いた。
ベルはシルを優しく受け止めると、
「怪我はありませんか? シルさん」
そう声を掛けた。
シルは泣いて抱き着きながらもコクコクと頷く。
「よかった………」
ベルはホッと息を吐いた。
その時、
「コラ~~~~~!! 白髪頭! シルとイチャついてニャいで、こっちも助けるニャー!!」
外でアーニャが叫ぶ。
ベルはアハハと苦笑し、シルに離れるように促すと、シルは名残惜しそうにしながらも離れる。
ベルは即座に駆け出すと、
「皆さん! 離れてください!」
そう声を掛ける。
その言葉でウエイトレス達はその場を飛び退き、
「はぁああああああっ!!」
ベルは闘気剣を抜いて、袈裟、逆袈裟と順に剣を振った。
それぞれの一振りずつでデスアーミーが切り裂かれ、爆散する。
ベルはそれを確認すると刀身を消して柄を懐にしまい込んだ。
すると、
「流石です、ベル。私達があれ程苦戦した敵を一太刀とは」
リューが労いの言葉をかけてくる。
「いや、リュー達も無事でよかったよ」
ベルも笑みを浮かべてそれに答える。
「いや~、助かったニャー。流石白髪頭ニャ。シルとリューの旦那ニャだけはあるのニャ。嫁のピンチには駆け付けて当然ニャのニャ」
アーニャが茶化すようにそう言う。
ベルは一度苦笑するが気を取り直し、
「皆さん、ここは危険です。早く避難を………都市内部はもう安全とは言えないでしょうから、都市の外までは逃げてください」
ベルがそう言うと、
「あの、ベルさんはどうするんですか?」
シルがそう聞いてくる。
「僕はもう少し都市内部を回ってまだ避難していない人の援護に回ります。あの敵を相手にできるのは、僕達を含めてもごく僅かでしょうから…………」
「そうですか…………それではベルさん。お気をつけて」
「はい!」
ベルはそう返事をすると駆け出していく。
その背中をシルとリューが見つめる。
「ベルさん…………どうか無事で…………」
「ベルなら大丈夫です…………きっと」
シルが祈るように呟き、リューが信頼の言葉を零した。
ベルはオラリオ中を駆け回りながら、逃げ遅れた人々を助け出していた。
しかし、次から次へと湧き出てくるデスアーミー達。
いや、正確には捕まった人々が次々とゾンビ兵へと変えられ、デスアーミーにされているのだろう。
犠牲者が増えれば増えるほど、敵も増えていく。
対してベル達は、デスアーミーに対抗できる者達はごく僅か。
徐々に抑えきれなくなってきていた。
それでもベル達は必死に戦い続け、大半の人達をオラリオから避難させることができた。
それでも逃げ遅れて犠牲になった者達は少なくは無いが…………
避難した者達はオラリオを見渡せる離れた丘の上で、一時的な宿営地を作り、そこでオラリオの様子を伺いながら不安な夜を過ごしていた。
その丘から見るオラリオは、凄惨な光景となっていた。
オラリオの中心であるバベルの塔は崩れ落ち、それに代わるように巨大なデビルガンダムが佇んでいる。
街のあちこちからはガンダムヘッドが監視塔のように聳え立ち、侵入者を見逃さないと言わんばかりに動き続けている。
そしてデビルガンダムを中心に隊列を組み、オラリオの三分の一ほどを埋め尽くすほどのデスアーミーの大群。
一先ず急激な進軍は収まったようで、一転して不気味なほどにデビルガンダムは沈黙を保っている。
ただ、ベル達にとってそれは、嵐の前の静けさに思えてならなかった。
それが間違いでないという出来事が翌日の朝に起こった。
突如として宿営地を影が覆う。
宿営地にいた全員が空を見上げた。
そこには、黒い鱗に覆われた巨大な竜。
片目に傷があり、隻眼であるその竜は、
「隻眼の…………黒竜…………!」
誰かが呟いた。
その黒竜は大きく羽音を響かせるとオラリオに…………
いや、デビルガンダムの方に飛んでいく。
とはいえ、デビルガンダムに戦いを挑むような雰囲気ではなく、まるでデビルガンダムに従うようにデビルガンダムの前で滞空している。
すると、デビルガンダムの各所から緑色の機械の触手が伸びて黒竜の各所に巻き付いた。
そして、触手が巻き付いた場所を中心に、銀色の鱗状の物質―――DG細胞―――に覆われていく。
その光景を呆然と見ている宿営地の避難民達。
更に、デビルガンダムの身体にも変化が起こった。
デビルガンダムの巨大な身体の後方の一部が突如として盛り上がり、そこから機械化された巨大な蛇のような姿をした存在が生まれ、更に体の中心の側面から両肩に大きな角を持つ巨大な獣の姿をした機械の獣が生み出された。
「あ、あれってまさか、ベヒーモスとリヴァイアサンか!? んな馬鹿な! あれは15年前に倒されたはずや!!」
ロキがその姿を見て驚くが、
「おそらくDG細胞の力により生み出されたコピーだろう。だが、コピーとはいえ侮るわけにはいかん。DG細胞によって作られたのなら、その強さはオリジナルを超えているやもしれん」
シュバルツがそう説明する。
「そ、そんな…………嘘やろ………黒竜だけでも大概やっちゅうのに…………」
ロキが呆然と呟く中、一人飛び出した人物が居た。
「あっ! アイズッ!?」
飛び出したのはアイズだった。
アイズは周りの声が聞こえていないのか、一目散に黒竜に向けて駆け出していく。
「黒竜……………やっと見つけた…………やっと…………!」
アイズはそう口にする。
その目には、もはや黒竜しか映ってはいない。
その黒竜は未だにDG細胞を植え付けられている最中。
それぞれの想いが交錯する中、デビルガンダムとの戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
第五十八話です。
…………が、余りにも短く説明回となってしまった。
まあ、次の話への繋ぎの回です。
黒竜が出てくるどころか、ベヒーモスとリヴァイアサンまでDG細胞で復活!
とりあえずこいつらがデビルガンダム四天王のような立ち位置です。
外見のイメージとしては、ファイナルファンタジーのベヒーモスとリヴァイアサン。
黒竜は…………バハムート?
でも銀色になってしまったらFF7の零式になってしまう…………
ともかく次回にレディー………ゴー!!
時間が無くなってしまったので、今日の返信はお休みします。
申し訳ない。