ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第五十九話 集結!シャッフル同盟

 

 

アイズが独断先行したことは、すぐにベル達の耳にも入った。

 

「どうしてアイズ様はたった一人で向かわれてしまったんでしょう?」

 

リリが疑問を口にする。

 

「うん…………僕も詳しい事は知らないけど、どうやらアイズさんには黒竜に対して何か因縁があるみたいなんだ」

 

ベルは、以前のエダス村の出来事を思い出しながらそういう。

 

「とにかく、いくら何でも一人であの大群に突っ込むなんて無茶だぜ。早いとこ何とかしねえと」

 

ヴェルフがそう言うと、

 

「ふむ、ならばここは、少数精鋭による一点突破しかあるまい」

 

いつからいたのかシュバルツが後ろに立っていた。

しかし、最早慣れたものなのか、特にベル達は驚かない。

 

「一点突破………と言いますと?」

 

リリが聞くと、

 

「複数のデスアーミーを相手にできるのは、お前達シャッフルの紋章を受け継いだ者達と、私ぐらいだ。デスアーミー単体を相手にするにも冒険者ならば最低でもLv.5が数人必要だ。ならば、我々が一丸となってデスアーミーの大群を突破し、あの巨大モンスター3匹と、デビルガンダムを倒す! デスアーミーは、デビルガンダムさえ倒せば行動を停止する」

 

「なるほど、そいつは分かりやすくていい」

 

シュバルツの傍らにベートが現れてそう言う。

 

「既に神ロキからは了承を得ている。これから私達はアイズ・ヴァレンシュタインを追い、合流。その後、三つのグループに分かれてそれぞれの巨大モンスターを討伐。そのままデビルガンダムに対し、攻撃を仕掛ける」

 

「分かりました!」

 

ベルが返事をすると、

 

「ならば行くぞ!」

 

シュバルツを先頭に、全員が駆けだす。

その最中、

 

「今の内に、デビルガンダムに関して警戒すべき点を教えておく」

 

「警戒すべき点ですか?」

 

「ああ。単純に言えば、あのデビルガンダムは三つの特殊能力を備えている」

 

「特殊能力が………三つ………」

 

「それは、『自己再生』、『自己増殖』、『自己進化』の三つだ」

 

「なんか、聞くだけでとんでもねえ能力の気がするんだが………」

 

「自己再生はその名の通り、ダメージを受けても即座に回復するというものだ。対抗策としては、再生が行われる以上の速さで破壊する。もしくは頭部を狙う事だ」

 

「頭部?」

 

「ああ、いくら再生するとはいえ、その中枢は頭部にある。頭部さえ破壊してしまえばデビルガンダムの機能は著しく低下する」

 

「なるほど」

 

「二つ目の能力の自己増殖は、エネルギー源と時間さえあれば、いくらでも増えていけるというものだ」

 

「それは………どういう?」

 

「見ろ」

 

シュバルツの言葉に視線を上げると、デビルガンダムの一部からガンダムヘッドが生み出されたところを目撃する。

 

「あれは…………」

 

「ガンダムヘッドはデビルガンダムの一部。あのように際限なく増えていく」

 

「では、このまま増え続ければ…………」

 

「この国や大陸どころか、この世界全てを埋め尽くすだろう………」

 

その言葉にベル達は戦慄を覚える。

 

「そして最後の一つ、自己進化」

 

シュバルツは一度言葉を区切ると、

 

「デビルガンダムは周囲の環境、状況、戦闘により、自身を進化、適応させ、更に強大な存在へ成長していく能力を持つ」

 

「せ、成長…………」

 

「とはいえ、今のデビルガンダムにはまともな生体ユニットが居ないようだ。故に、急激な進化はほぼ無いと言ってもいいだろう」

 

「生体………ユニット?」

 

「ああ。デビルガンダムが力を発揮するためには、生体エネルギーの源である生体ユニット…………人間が必要なのだ」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

「昨夜の内に偵察に行ったのだが、今の生体ユニットにされた者は、既に生体エネルギーを吸い尽くされ、ゾンビ兵と化していた。おそらく、デビルガンダムの復活に大量の生体エネルギーを吸われたのだろう」

 

「い、いつの間に………」

 

「これほどまでに無茶な強行軍を提案したのもそれが理由だ。デビルガンダムが万全の能力を発揮できない今しか、我々に勝機は無い!」

 

「……………………理由はわかりました。ですが、少し腑に落ちない点があります」

 

リリがそう口にする。

 

「リリ?」

 

ベルが首を傾げる。

 

「シュバルツ様は、何故それほどまでにあの敵に詳しいのですか? 以前遭遇したことがあるにしても、明らかに情報量が多すぎるように思えます」

 

リリがそう言うと、シュバルツは若干俯く。

 

「それは…………」

 

シュバルツは一旦区切ると、

 

「あのデビルガンダムを生み出したのは、私の父であり、私も父の研究の助手をしていたからだ」

 

衝撃の一言を口にした。

 

「「「「!?」」」」

 

「言い訳に聞こえるかもしれんが、私の父はあのようなデビルガンダムを生み出すつもりは無かった…………父の作ったデビルガンダム…………いや、アルティメットガンダムに組み込まれた三大理論、『自己再生』『自己増殖』『自己進化』…………それらは全て自然復活の為に研究してきたものだ」

 

「自然復活?」

 

「私の故郷………地球では、度重なる戦争や自然破壊によって荒れ果て、人が………いや、生き物が住める環境ではなくなってきていた………君達には想像がつかないかもしれないが、空の彼方に人工的に大陸を作り、そこに移り住む者もいた…………私の父もそこに住む者の一人ではあったが、荒廃していく大地に嘆き、それをどうにかする為にアルティメットガンダムを作り上げた」

 

「それがどうしてあんなデビルガンダムに………」

 

ベルが呟く。

 

「アルティメットガンダムの力を狙い、軍の人間が私達に兵を送り込んできたのだ。そして私はアルティメットガンダムに乗り込み、地球へと逃れた。だが、地球へと落下したショックでアルティメットガンダムのプログラムが狂ってしまい、自然再生の為の三大理論を飛躍させ、一つの答えを導き出した」

 

「自然再生の………答え…………?」

 

「そう、それこそが『人類抹殺』」

 

「「「「!?」」」」

 

再び驚愕する一同。

 

「自然を破壊してきたのは人類。故に人類を抹殺すれば、自然はおのずと蘇る…………そう言う事らしい」

 

「何だよそりゃ………」

 

「理解は出来なくもないですが、納得だけは絶対にできませんね」

 

ヴェルフとリリがそう言う。

 

「そうして父の作ったアルティメットガンダムは、あの悪魔のようなデビルガンダムに変貌してしまったのだ」

 

「そういう訳だったんですね…………」

 

ベルが呟いた時、オラリオの方で爆発音が響いた。

 

「ッ!? アイズさん!?」

 

「ちっ! もうおっぱじめやがったか!」

 

ベルとベートがそう言う。

 

「急ぐぞ!」

 

シュバルツの言葉に全員が頷いた。

 

 

 

 

 

オラリオでは、既にアイズが戦闘を始めていた。

 

「邪魔っ………!」

 

闘気を込めた剣でデスアーミーを切り裂く。

対してデスアーミーはアイズに向かってビームを放つ。

 

「ッ!」

アイズは横に飛び退きビームを躱す。

 

「はぁああああああっ!!」

 

そのまま剣を横に薙ぎ払って、闘気の刃を飛ばして複数のデスアーミーを一気に切断した。

だが、

 

「ッ…………!」

 

それ以上のデスアーミーの大群がアイズに迫ってくる。

更に、

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

大地を揺らすほどの足音を響かせながらベヒーモスが現れ、

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

空を泳ぐ様にリヴァイアサンが迫る。

 

「………………………ッ!」

 

しかし、アイズの視線は黒竜だけに注がれていた。

巨大な二体を無視し、アイズは黒竜に向けて駆け出す。

だが、

 

「ッ!?」

 

リヴァイアサンの巨大な咢が横から迫ってきたため、アイズは跳躍して避ける。

リヴァイアサンの長大な身体がアイズの下方を通過するが、尾の先が空中にいるアイズに迫った。

 

「このっ!!」

 

アイズは剣を薙ぎ払い、その尾を切断する。

 

「ギャオオオッ!?」

 

リヴァイアサンは苦しそうな声を上げるが、

 

「えっ?」

 

切断面から触手のような物が延び、尾の形を形作ったかと思うと、一瞬で元通りになった。

その事実にアイズが驚愕し、動きが止まった瞬間、

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

ベヒーモスの太い尾が薙ぎ払われ、

 

「ぐぅっ!!」

 

アイズは咄嗟に防御するが、その威力に耐えきれずに吹き飛ばされる。

そのまま建物の瓦礫に叩きつけられた。

 

「かはっ!?」

 

一瞬意識が吹き飛びかけるが、気合で繋ぎ止めるアイズ。

だが、そのダメージは少なくなかった。

意識が朦朧とし、体が思うように動かない。

そんなアイズに向かって、デスアーミーの大群が次々と銃口を向ける。

 

「ぐっ……………!」

 

アイズはデスアーミーを睨み付けるが、その銃口が光を帯びていき、今にも発射されるかというとき、

 

「ッ!?」

 

突然アイズの右手の甲が疼き、シャッフルの紋章が浮かび上がった。

 

「何…………!?」

 

アイズは思わず紋章を見る。

すると地鳴りと共にアイズの周辺の地面が次々と隆起していき、アイズを護る壁となった。

デスアーミーから放たれたビームはその壁に阻まれ、アイズまで届かない。

 

「これは……………?」

 

アイズは声を漏らし、視線を地面の亀裂に沿って辿っていく。

するとそこには、地面に拳を打ち込んだ状態でアイズを見るリリの姿が。

更に薔薇のような魔力の塊が辺りに飛散し、次々とデスアーミーを撃ち抜いていく。

 

「アイズさん!」

 

「一人で勝手に突っ走りやがって!」

 

ベルとベートがアイズの前に降り立つ。

 

「ベル! ベートさん!」

 

更に、

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

次々とデスアーミーを切り裂いていくシュバルツの姿が。

 

「皆…………」

 

「アイズさん、バラバラに戦っていても勝ち目はありません! ここは力を合わせましょう!」

 

「ベル………! でも…………!」

 

アイズは何か言いたげだったが、

 

「アイズ様が黒竜と何か因縁があるのはお聞きしました。 なのでアイズ様にはベル様と一緒に黒竜の討伐をお願いします!」

 

「えっ………?」

 

リリの言葉にアイズが声を漏らす。

 

「無理に引き留めてもどうせ勝手に突っ走るでしょうから、それなら最初からベル様と一緒に行動されていた方が心配も少なくて済みます!」

 

リリはベート、ヴェルフ、シュバルツに向き直り、

 

「残りのメンバーはここでベヒーモスとリヴァイアサンを討ちます! 引くにしろ進むにしろ、この二体は後々を考えてもここで倒しておくべきです!」

 

「文句はねえ」

 

「ちっ、仕方ねえ」

 

「心得た」

 

リリの言葉に三人はそれぞれ了承する。

リリはベルを見ると、ベルは頷く。

 

「では、これより突破口を開きます。ベル様、ベート様、力をお貸しください!」

 

「あれだね?」

 

「はい」

 

「ふん!」

 

ベルは頷き、ベートは不機嫌そうながら了承の意を示す。

リリは真正面に黒竜を見据え、リリの両側にベルとベートが並ぶ。

 

「いきます!」

 

リリが掛け声をかけ、三人が同時に腕を振りかぶり、

 

「トリプル………!」

 

「「「………ガイアクラッシャー!!!」」」

 

同時に地面に拳を打ち込んだ。

すると、今まで以上の地面の隆起が起き、まるでトンネルを作るように岩が次々と隆起していく。

それがデビルガンダム付近まで達した。

 

「………この岩のトンネルを進めば、黒竜の近くまで行けるはずです」

 

「リリルカ………さん?」

 

アイズがリリの名を呼ぶ。

 

「さあ、お早く。迷っている暇はありません! この場は私達にお任せを!」

 

リリがそう言い、

 

「行きましょう、アイズさん」

 

「ベル………!?」

 

「リリ達なら大丈夫です。信じましょう」

 

アイズは黒竜を見た後、後ろにいるベヒーモスとリヴァイアサンを見る。

 

「…………………ありがとう」

 

少し迷ったようだが、アイズは前を向いた。

 

「私は………行きます…………!」

 

アイズが駆け出し、ベルもその後に続く。

 

「やっと行きやがったか…………」

 

ベートが呟く。

 

「意外にも反対しませんでしたね?」

 

リリがベートに言う。

 

「ケッ! あいつが誰を見ているかなんて一目瞭然だろうが!」

 

ベートはやけくそ気味にそう言う。

 

「それはそれで大人というべきでしょうか………」

 

「くだらねえこと言ってねえで、こっちもさっさと始めるぞ!」

 

ベートはそう言って目の前で威嚇するベヒーモスとリヴァイアサンを見上げる。

 

「そうですね……………それではっ!」

 

「「「「ダンジョンファイト! レディィィィィィィッ………! ゴーーーーーーーッ!!!」」」」

 

巨大な敵へと立ち向かった。

 

 

 

 




今年最後の更新です。
相変わらず短い!
次からようやくバトルパートに入ります。
それぞれの闘いは一体どうなるのか!? それでは次回にレディィィィィィィッ!ゴーーーーーーーッ!



それでは皆さんよいお年を。

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