ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

63 / 88
第六十話 海王機龍! リヴァイアサン討伐作戦!!

 

 

岩のトンネルの中をベルとアイズが駆ける。

だが、

 

(もう少し…………もう少しで黒竜に…………!)

 

ベルは余裕があるが、アイズにとってはかなりのハイペースで走っている。

 

「……………………」

 

先行するアイズの後ろ姿を見て、ベルは僅かな不安を覚える。

 

「アイズさん、あまり気負わないでください…………」

 

聞こえたかどうかは分からないが、アイズはペースを緩める気配を見せない。

 

「アイズさん……………」

 

ベルは、アイズの背中を心配そうな表情で見つめた。

 

 

 

 

 

 

リリ達は、リヴァイアサンとベヒーモスを相手に二人一組で戦うことにした。

リヴァイアサンにはベートとシュバルツが。

ベヒーモスにはリリとヴェルフが相対することとなった。

 

「オオオオオオッ! ラァッ!!」

 

ベートがリヴァイアサンの背中を駆け上がり、頭部に向かって蹴りを放つ。

 

「ギァッ!?」

 

リヴァイアサンは怯み、大きくのけぞる。

 

「リヴァイアサン……………『三大冒険者依頼(クエスト)』の一角…………相手にとって不足はねえ!」

 

ベートは唇の端を吊り上げ、不敵に笑う。

と、その瞬間、ベートの背後の建物が吹き飛び、巨大な尾の先が襲い掛かってきた。

 

「なっ!?」

 

それはリヴァイアサンの尾の先であり、リヴァイアサンはその長い体を大きく回り込ませてベートの死角を突いたのだ。

 

「ちぃっ!」

 

ベートは回避が不可能と判断し、防御態勢を取り、

 

「はぁっ!」

 

瞬時に現れたシュバルツが尾の先を切り飛ばした。

 

「油断するな!」

 

「ちっ!」

 

シュバルツの言葉にベートは舌打ちする。

彼とて油断したことは分かっている。

今の舌打ちは自分に対しての物だった。

一方、尾を切り飛ばされたリヴァイアサンだが、先ほどアイズが切断した時と同じように尾の切断面から触手のような物が伸びて尾の形を形作り、あっという間に元通りになる。

 

「こいつがさっき言ってた『自己再生』って奴か………」

 

「そうだ。エネルギーがある限り幾らでも再生できる」

 

シュバルツの言葉にベートは改めて気を引き締めると、リヴァイアサンが突然頭を持ち上げ、蛇がとぐろを巻くように体を纏めて中央から頭部が出てくる形になる。

 

「何だ?」

 

「……………」

 

ベートは声を漏らし、シュバルツは静かに注意を払ってリヴァイアサンを観察する。

すると、リヴァイアサンは僅かに口を開き、

 

「「ッ!?」」

 

悪寒を感じた二人は瞬時にその場を飛び退いた。

その瞬間、空気を切り裂く音と共に、細い光線状の何かがリヴァイアサンの口から放たれ、互いに逆方向に飛び退いた二人の間を斜めに通過する。

その光線状の何かは数百メートル先まで届き、その通過点にあった建物は、その光線の軌跡に合わせて綺麗に切断されていた。

 

「な、何だ今のは!?」

 

ベートがその威力を見て声を漏らす。

現在のベートですら、今の攻撃をまともに受ければ命は無い。

いや、例えシュバルツであってもまともに受ければ無事では済まない。

 

「今のはレーザーか? だが、切断面に焼け焦げた跡は無い…………」

 

シュバルツは今の攻撃の正体を予測するが、レーザーは高熱で焼き切るものであり、切断面にはどうしても焦げ跡が付く筈だが、今の攻撃の切断面には焼き切った跡は見られない。

単純に鋭いもので切り裂いたかのように綺麗な切断面だ。

シュバルツが思案していると、リヴァイアサンは再び頭をもたげ、再び光線状の攻撃を放ってきた。

 

「くっ!」

 

ベートは大きく飛び退き、

 

「……………………」

 

シュバルツは先程の攻撃の状況から瞬時に攻撃範囲を割り出し、最低限の動きで攻撃範囲から逃れつつ、その攻撃をよく観察する。

その攻撃は地面にすら綺麗な切断跡を残し、木造の建物はもちろん、石造の建物や鉄製の建築物ですら綺麗に切断している。

そんなことが出来るものなど、シュバルツの知識の中でも限られる。

 

「………………ッ!」

 

そして、シュバルツはその攻撃の正体の最後のピースを見つける。

それは、切断面にある僅かに濡れた跡。

 

「やはりか……………!」

 

シュバルツは確信した。

 

「おい覆面ヤロー! どうかしたのか!?」

 

ベートが問いかける。

 

「ああ、奴の攻撃の正体が分かった」

 

「何だと!?」

 

「奴の攻撃の正体は『水』だ」

 

「は?」

 

ベートはシュバルツの言葉に素っ頓狂な声を漏らす。

 

「こんな威力の攻撃の正体が『水』だと!? 馬鹿言ってんじゃねえ!」

 

ベートは信じられないのか声を荒げるが、

 

「いや、『水』で間違いはない。『水』に超高圧の圧力を掛け、噴出させた『ウォーターカッター』だ。掛ける圧力によっては、ダイヤモンドですら切断する切れ味を誇る」

 

「ッ!?」

 

シュバルツの声色から嘘は言っていないと判断したのか、ベートは声を漏らす。

 

「だがよ、正体が『水』と分かったからってどうだってんだよ…………あんなもん一発受ければお終いだぜ」

 

「ふむ、ベート・ローガ。君はあの攻撃の威力にばかり目が行き過ぎているな」

 

シュバルツは落ち着いた口調で語り掛ける。

 

「……………何?」

 

ベートは馬鹿にされたと思ったのか、少し声が低くなった。

 

「いくら威力が高いとはいえ、その攻撃は直線的だ。顔の向きと発射のタイミングさつかめれば、躱すのは容易い」

 

しかし、続けて言われたシュバルツの言葉にハッとなる。

 

「ちっ、俺としたことがあの威力にビビってたって事かよ!」

 

ベートは不満げにそう言った。

 

すると、三度リヴァイアサンは頭をもたげ、二人の方を向いた。

その瞬間ベートが駆けだす。

流石に三度目ともなればベートも発射のタイミングを掴み始めていた。

ベートはあえて懐に飛び込むことでウォーターカッターの射線軸上から逃れたのだ。

更に、

 

「オラァッ!!」

 

真下からリヴァイアサンの顎を蹴り上げる。

 

「ギャォオオオオオオオオオッ!?」

 

リヴァイアサンは苦しむように鳴き声を上げた。

だが、ダメージを与えた部分は瞬時に回復する。

 

「負ける気はしねえが………キリがねえな」

 

そうボヤくベート。

 

「ふむ…………やはり中枢を破壊せねば倒せんか」

 

シュバルツはそう判断する。

 

「中枢?」

 

「ああ。あれ程の巨体を動かすためのエネルギー源がどこかにあるはずだ。そして、DG細胞の力で機械化されたとはいえ、あれはモンスターを元に生み出されている。ならばその中枢は…………」

 

「…………ッ! 魔石か!」

 

「ああ、おそらく間違いないだろう。とはいえ、あれだけ長い体だ。魔石が胸にあるとはいえ、その正確な位置は把握できん」

 

「はっ! そんなもん、縦にぶち抜きゃ良いだけの話だろう?」

 

ベートはニヤリと笑う。

 

「だが、迂闊に飛び込めばウォーターカッターの餌食だぞ?」

 

「だとしても、てめえなら何とかできるだろ?」

 

ベートは不敵な笑みを浮かべ、シュバルツは目を伏せる。

 

「よかろう。最初の攻撃は私が受け持つ。見事決めて見せろ」

 

「言われるまでもねえ!」

 

ベートは自信を持って頷く。

 

「ならばゆくぞ!」

 

シュバルツは両手を前に突き出し、シュピーゲルブレードを前方に展開する。

同時にリヴァイアサンもウォーターカッターの発射体勢に入った。

シュバルツはブレードを展開したまま胸の前で腕を組むような体勢となり、ブレードが体の左右から出ている状態となる。

そして、その体勢のまま高速回転を始めた。

その回転は、ヘリコプターの回転翼のようにシュバルツの身体を浮き上がらせる。

そしてシュバルツは、その技の名を言い放った。

 

「シュトゥルムッ! ウントゥッ! ドランクゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

シュバルツは回転したままリヴァイアサンに向かって突進する。

 

「ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

同時にリヴァイアサンも渾身のウォーターカッターを放った。

シュバルツの回転する刃と、高圧縮された水の刃が激突する。

シュバルツの刃は、シュバルツが意見し、スィークが何度も改良を加えたもの。

武具の中ではかなり高いレベルに入るだろう。

しかし、それだけではリヴァイアサンのウォーターカッターの足元にも及ばない。

だが、シュバルツの気の力と最大限にまで高められた回転の力は、それを超えた。

黒い竜巻と化したシュバルツの刃は、高圧縮の水を四散させ、無力化していく。

まるで光線を黒い竜巻が切り裂いていくような光景だった。

 

「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

リヴァイアサンも必死に抵抗するが、やがて決着は訪れた。

黒い竜巻がリヴァイアサンの口元まで到達した瞬間、リヴァイアサンの頭の上半分が切断され、宙を舞った。

 

「ギッ!?」

 

それでもリヴァイアサン頭部は再生を始めようとする。

だが、それよりも早く、

 

「天に竹林! 地に少林寺! 目にもの見せるは最終秘伝!!」

 

気を蝶の羽のように纏った狼人(ベート)がその牙を向けていた。

 

「真! 流星胡蝶剣!!!」

 

その気を全身に纏い、切断面に向かって一気に飛翔した。

再生の為に伸びていた触手を吹き飛ばし、切断面からリヴァイアサンの体内へと突き進む。

その勢いは衰えることを知らず、体内を蹂躙していき、やがて尾の先を突き破ってベートが飛び出した。

ベートは勢いよく地面に着地する。

そして、

 

「手応え、あったぜ!」

 

リヴァイアサンの魔石を蹴り砕いた際にその手に掴んだ魔石の欠片を握り砕いた。

その瞬間、リヴァイアサンの生身部分が灰と化し、残った機械部分が力を失ってその巨体を地面へと横たえる。

 

「俺達の…………勝ちだ!」

 

ベートはそう言い放った。

 

 

 

 

 






第六十話です。
対リヴァイアサン編。
苦労した。
ぶっちゃけシュバルツ一人だけで瞬殺できるんじゃね?
って思ったから、悩みに悩んでシュバルツをアドバイスに回してベート君に頑張ってもらいました。
まあ、シュバルツもはっちゃけましたが…………
ちなみにタイトルの海王機龍は自分が適当に作ったデビルリヴァイアサンの称号みたいなもんです。
DG四天王のアレと一緒です。
まあ、次回はヴェルフとリリのターン。
それともベヒーモスの…………?
それでは次回にレディィィィィィィッ…………ゴーーーーーーーッ!!




後、時間が無いので今回の返信はお休みです。
度々すみません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。