ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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ROUND【2】 平行世界

 

 

 

 

突然現れたもう一人のベル達。

その事に驚愕して大騒ぎした後何とか落ち着いた一同は、大きなテーブルの前で向かい合っていた。

 

「え~っと………君達が何者かは分からないけど、とりあえず自己紹介から始めようか…………ボクはヘスティア。【ヘスティア・ファミリア】の主神で、ここはホームの『竃火の館』さ」

 

ヘスティアが最初に自己紹介をする。

 

「えっと………僕はベル・クラネルです。一応この【ファミリア】の団長で、Lv.4の冒険者です。あと、二つ名は【白兎の脚(ラビット・フット)】です」

 

「リリルカ・アーデです。Lv.1のサポーターで、二つ名はありません」

 

「ヴェルフ・クロッゾ。Lv.2で鍛冶師だ。二つ名は【不冷(イグニス)】っつーもんを先日頂いた」

 

「ヤマト・命です。ヴェルフ殿と同じくLv.2の冒険者です。二つ名は【絶✝影】。本来は【タケミカヅチ・ファミリア】の所属ですが、縁あってこの【ヘスティア・ファミリア】に出向中の身です」

 

「サ、サンジョウノ・春姫と申します。まだまだ未熟な身ではありますが、アーデ様と同じくサポーターを務めさせていただいております」

 

ベル、リリ、ヴェルフ、命、春姫の順で自己紹介を行う。

 

「これでこちらの紹介は全員だよ」

 

ヘスティアがそう言うと、

 

「これで? ダフネ君やカサンドラ君は居ないのかい?」

 

もう一人のヘスティアが首を傾げる。

 

「え? ああ………君の言っている二人が元【アポロン・ファミリア】の二人なら、ミアハの所にいるけど………」

 

「なるほど…………ボク達とは色々と食い違いがあるみたいだね………」

 

もう一人のヘスティアは納得したようにうんうんと頷く。

すると、そのヘスティアは自分のベル達の方を向くと、

 

「皆、ここが如何いう場所か何となくわかったよ」

 

「ホントですか……!?」

 

あちら側のベルが声を上げる。

 

「ああ。おそらくだけど、この世界は『平行世界』って奴だと思う」

 

「平行………?」

 

「世界………?」

 

リリと春姫が声を漏らす。

 

「何ですかそれ?」

 

ヴェルフが尋ねると、

 

「まあ簡単に言えば世界は一つじゃなくてその時の状況、判断によって無限に枝分かれしていくモノなんだ。僕達が居た世界もその一つ。本来ならその世界は交わることはない筈なんだけど………」

 

そう言いながらもう一人のヘスティアはこちらの世界の面々を見る。

 

「どういう訳か、ボク達は世界の壁を越えてこちらの世界に来てしまったようだね」

 

「…………まあ、あまり良くわかりませんでしたが、結局のところ、元の場所には戻れるんでしょうか?」

 

リリが尋ねると、

 

「それはまだ分からないなぁ………一先ずボク達がこちらの世界に来てしまった原因を突き止めないと…………」

 

「そうですか………」

 

「まあ、この世界とボク達の一番の相違はベル君だろうね」

 

彼方の世界のヘスティアがこちらの世界のベルを見ながら呟いた。

 

「えっ? ぼ、僕ですか?」

 

「ああ。君がLv.4っていう所が一番の違いだね」

 

あちらのヘスティアがそう言うと、

 

「ふふん! そうだろう? なんて言ったって、“ボクの”ベル君はオラリオに来てたった数ヶ月でLv.4まで辿り着いた逸材なんだからね!」

 

こちら側のヘスティアが得意げに胸を張って自慢げに語る。

すると、

 

「えっ?」

 

あちら側のヘスティアが不思議そうな声を漏らした。

 

「えっ?」

 

その反応にこちら側のヘスティアも声を漏らす。

 

「「……………………」」

 

暫く二人のヘスティアが見つめ合っていると、

 

「………ああ、そうか…………そうだったね」

 

あちら側のヘスティアが何かに気付いたように頷いた。

 

「ど、どうしたんだい…………?」

 

その反応に困惑した表情を見せるこちら側のヘスティア。

 

「いや、何でもないんだ…………良かったねもう一人のボク。ベル君がLv.4で…………」

 

あちら側のヘスティアが何やら慈しむ様な表情でこちら側のヘスティアの肩に手を置きながら見つめた。

 

「な、何だい………? その、まるで何も知らない子供を微笑ましく見守るようなその目は…………?」

 

「いや、ボクは何も知らなくていいんだ…………『知らぬが“仏”』って奴だよ…………」

 

「いや、意味わかんないよ! それに(ボク)に対して仏ってどういうことだよ!?」

 

ギャーギャー喚くこちら側のヘスティアに対し、何かを悟った様に微笑むあちら側のヘスティア。

すると、

 

―――ドンドンドン!

 

と、ホームの玄関の扉を叩く音が響いた。

 

―――ドンドンドン!

 

再び扉が叩かれる。

かなり強い力が込められていると思われるノックは、何処か必死な思いを感じさせた。

 

「あれ? 来客の予定は無かった筈だけどなぁ………」

 

こちら側のヘスティアが呟く。

 

「あ、僕が出ます」

 

こちら側のベルがそう言って席を立ち、玄関へ向かっていく。

 

―――ドンドンドン!

 

再び叩かれるノックに対して、こちらのベルは小走りで玄関に駆け寄り、

 

「はい、今開けます」

 

そう呼びかけながら玄関の鍵を開け、扉を開いた。

そこには、

 

「ベルさん…………」

 

「カサンドラさん…………?」

 

腰まで届く長い髪をストレートに伸ばしたどこか儚げな雰囲気を持つ少女、カサンドラが居た。

そのカサンドラは、涙を潤ませた瞳で縋るような表情をベルに向けている。

なぜそのような表情を向けられるのか見当の付かなかったベルは、ひとまず質問した。

 

「あの…………カサンドラさん…………? こんな時間に何の御用ですか?」

 

辺りは既に暗くなり始め、この時間にカサンドラが尋ねてくる意図が分からなかったので、そのような質問をした。

その瞬間、

 

「ッ……………!?」

 

カサンドラは僅かに息を漏らしながら口元に手を当て、目を見開いて絶望的な表情を浮かべた。

 

「えっ? カサンドラさん…………?」

 

いきなりそのような表情を浮かべられて、ベルは困惑する。

すると、

 

「…………ベルさんも…………違うんですね………………」

 

今にも泣きそうな声色でそう絞り出すカサンドラ。

 

「ごめんなさい…………!」

 

カサンドラはそう言って踵を返して走り去ろうとする。

 

「カサンドラさん!?」

 

ベルは叫ぶ。

だが、カサンドラは止まらない。

その時だった。

 

「お待ちください! カサンドラ様!!」

 

ベルの横にいつの間にかリリが居て、カサンドラを大声で呼び止めた。

余りにも意外な大声だったのか、ベルも驚いて仰け反り、カサンドラはビクッと身体を震わせて足を止めた。

ゆっくりと振り返る。

 

「リリさん………」

 

カサンドラがリリの姿を見て呟く。

すると、リリがカサンドラに向けて呼びかけた。

 

「カサンドラ様! あなたは…………!」

 

リリはそこで一呼吸置き、

 

「………あなたは『ベル様ハーレム』No.04のカサンドラ様ですか!?」

 

そう叫んだ。

その瞬間、

 

―――ドンガラガッシャン!!

 

と、こちらの世界の面々が派手にズッコケた。

一方、カサンドラは驚愕で目を見開く。

 

「リリさん………何ですか………?」

 

涙を我慢できずにカサンドラが問う。

 

「はい、私は紛れもなくベル様ハーレムNo.01のリリですよ」

 

そう迷いなく答えるリリ。

 

「リリさん!」

 

カサンドラは我慢できずにリリに駆け寄ってその手を握った。

 

「良かった………私一人じゃなかったんですね………?」

 

カサンドラは明らかにホッとした表情で安堵の息を吐く。

 

「はい、それに………」

 

リリがそう言いながら後ろを見るように促した。

そこには、

 

「カサンドラさん………」

 

あちらの世界のベルが心配そうな表情でカサンドラを見つめていた。

 

「ッ! ベルさんっ!!」

 

カサンドラが弾かれたように飛び出し、そのままベルに抱き着いた。

 

「ベルさん! ベルさん! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

そのまま大声で泣き出す。

ベルもカサンドラをしっかりと抱きしめた。

 

「ふえぇぇぇぇぇん! 目の前が光ったと思ったら何故かミアハ様の所にいるし、ダフネちゃんはいないし………ううん、ダフネちゃんは居たけど私が知ってるダフネちゃんじゃなかったし………何故か私がもう一人いるし………わぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

子供の様に泣き喚くカサンドラ。

多くの仲間が一緒に転移したベルとは違い、たった一人だけのカサンドラはさぞ寂しかったことだろう。

 

「大丈夫です。もう大丈夫です、カサンドラさん…………僕達はここにいます………」

 

ベルはそう言いながらカサンドラをしっかりと抱きしめ、子供をあやす様にその頭を優しく撫でる。

暫くそうしていると、カサンドラは落ち着いてきたのか…………

 

「ゴ、ゴメンなさいベルさん………は、恥ずかしい…………!」

 

我に返って顔を赤くしながらベルから離れる。

すると、

 

「カサンドラさん………」

 

「は、はい?」

 

ベルに呼びかけられ、カサンドラはベルの方を向くと、

 

「無事で………良かったです………」

 

優しい微笑みを浮かべてベルはそう言った。

 

「はうっ……………!?」

 

その微笑みに、カサンドラは心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受ける。

徐々に顔が真っ赤になっていき、

 

「…………………きゅう………」

 

遂には耐えきれずに意識を手放した。

 

「わわっ! カサンドラさん!?」

 

突然気絶して倒れようとするカサンドラをベルは支える。

それを見ていたリリが、

 

「流石ベル様。一瞬にして好感度爆上げですね」

 

そう感想を漏らした。

 

「何言ってんの!? リリ!?」

 

思わず突っ込むベル。

すると、

 

「「「「「「ポカーーーーーーン………………」」」」」」

 

こちらの世界の面々が一連の流れを見て呆気に取られていた。

 

「ど、どうしたの…………?」

 

ベルが声を掛けると、

 

「って、そっちのベル君は大勢の見ている前で何をやっているんだ!?」

 

こちら側のヘスティアが叫んだ。

 

「はいっ!?」

 

「人前で女の子を抱きしめて頭を撫でるなんて、何て羨ま………じゃなくてけしからんことを!!」

 

やや本音が漏れるこちらのヘスティア。

 

「えっ? いや、その…………」

 

言いどもるあちらのベルだったが、

 

「別にこの程度はこちらのベル様であればいつもの事です」

 

「まあ、そうだな………」

 

全く動じる事無くそう言い切ったのはあちらのリリとヴェルフ。

 

「な、何を言ってるんだそっちのリリ君は!?」

 

こちらのヘスティアが狼狽えるが、

 

「今言った通り、この程度で目くじら立てていては、ベル様と一緒に居られないという事です」

 

嘘偽りなく平然と言い切るリリ。

 

「そ、そちらのリリはベル様の事を何とも思っていないんですか!?」

 

こちらのリリがもう一人のリリに問いかける。

 

「まさか。私はベル様の事をお慕いしていますよ。もうベル様無しでは生きていられないほどに………こちら側の私はどうかは知りませんが、私はベル様のお傍に居られるならどのような形でも構いません。側室でも愛妾でも愛人でもメイドでも…………いっその事性奴隷でも構わないと思っています」

 

「「「「「「ブーーーーーーーッ!!!」」」」」」

 

一斉に噴き出すこちらの面々。

 

「リリ!! だから何言ってるのさ!? しかも前よりも酷くなってるよ!?」

 

「私は本気ですよ?」

 

「もっと悪いよ!」

 

「でしたらハーレムとして認めてください」

 

「うぐっ………」

 

何も恥じらうことなくそうハッキリと言い切るリリの姿に、再び呆気にとられるこちらの面々。

 

「お、おいリリ助………向こうのお前ってスゲーのな?」

 

「リ、リリに聞かないでください!」

 

違う世界と言えど、自分と同じ姿をした彼女の姿にリリは顔を真っ赤にする。

 

「あ、あそこまでハッキリと言い切るなんて………あちらのアーデ様………尊敬します」

 

何やらこちらの春姫はあちらのリリの事を尊敬の眼差しで見ている。

すると、

 

「って言うか、さっきからベル君ハーレムとか何言ってるのさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

こちらのヘスティアが吠えた。

 

「『ベル様ハーレム』はその名の通りベル様をお慕いする同志が集まって結成したベル様のハーレムです」

 

そんなこちらのヘスティアに対しても、冷静に言葉を返すリリ。

その言葉に顔を真っ赤にするこちらの世界のベルと苦笑するあちらのベル。

 

「先程も言いましたが、私が結成当時からいるベル様ハーレムNo.01です。そしてそこで気絶しているカサンドラ様がNo.04です」

 

カサンドラに代わってリリがそう言う。

 

「わ、わたくしもNo.05に名を連ねさせていただいております」

 

あちらの春姫も、やや遠慮がちに発言する。

すると、あちらのヘスティアがそっぽを向き、

 

「ボクがNo.07だ」

 

少し拗ねた様子でそう言った。

それを信じられない表情でこちらのヘスティアが見る。

 

「そ、そっちのボクは何を言っているんだ? ハーレムなんて如何わしいモノを認めたのかい!?」

 

「仕方ないだろう! そうでもしなきゃボクがベル君と結ばれる方法が無かったんだから! あんなことが無ければ……………!」

 

あちらのヘスティアは苦虫を噛みつぶしたような表情で悔しそうに呟く。

 

「あんなこと………?」

 

こちらのヘスティアが呟くと、

 

―――グウゥゥゥゥ

 

と誰かの腹の虫が鳴った。

その場の全員がこちらのヘスティアを見る。

ヘスティアは顔を真っ赤にし、

 

「し、仕方ないだろう!? もう夕食の時間なんだ!」

 

そう叫んで誤魔化そうとする。

そこで命がハッと気付いたように発言した。

 

「あ、あのう………一つ問題が………」

 

「何だい命君」

 

「夕食の材料ですが…………全員分はありません………」

 

食事担当の命がそう言った。

 

「ど、どういう事だい!?」

 

そう問いかけると、

 

「いえ、自分達だけの分なら今日の夕食までは大丈夫だったんです………しかし………」

 

「ああ、ボク達が増えたから材料が足らなくなったってことか」

 

あちらのヘスティアがそう言う。

 

「申し訳ありません。買い出しは明日行うつもりだったので………」

 

「いや、君の所為じゃないよ」

 

「それはともかく、流石に君達を食事抜きにするのは忍びないなぁ…………なら、ここは一つ外食に行こうか!」

 

こちらのヘスティアがそう言う。

 

「しかし、借金がある身であまり無駄遣いはしたくないのですが…………」

 

こちらのリリが心配そうに言った。

すると、

 

「なら、明日はボク達のベル君にダンジョンに潜って貰って稼いでもらったらどうかな? それで貸し借りなしだ」

 

あちらのヘスティアがそう提案する。

 

「僕達なら問題ありません」

 

あちらのベルが頷き、

 

「それならば………」

 

リリも実質的に損害が無いならと、その案を受け入れた。

その後の話し合いの結果、行き先は『豊穣の女主人』に決まった。

 

 

 

 

 






どうも、エキシビジョンマッチ第二話です。
今回はカサンドラとリリのターンですかね?
次回はもちろんウエイトレス二人のターンです。
少しづつ盛り上がってきたと思います。
おそらく次回にはちょっとしたオリモブが出てきてバトルを入れると思います。
にしても、気紛れ更新とか言っときながら結局週一で更新したし………
因みに新作の方も鋭意製作中…………
というかバリバリ筆が進んでます。
いつもなら平日にはあんまり筆が進まないはずなのですが、今週はバリバリ進んで既に五話分以上の話が完成しております。
もうちょっとでゲイムギョウ界編が終わってIS編に入れるので、おそらく次の日曜までには投稿出来るだろうと思います。
というか、平日のどこかで投稿するかも?
お楽しみにしている人はお楽しみに。
後今週も感想の返信もお休みします。
それでは次回にレディィィィィィィッ………ゴーーーーーーッ!!!

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