ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
―――『豊穣の女主人』。
その店内のある一角が異様な空気に堤前包まれていた。
「「「「「「「「「「…………………………………」」」」」」」」」」
「あ、あはは…………………」
「ベル…………♪」
ベル(不敗)は苦笑し、その腕には笑みを浮かべたアイズ(不敗)が抱き着いている。
そして、そんなベル(不敗)を射殺さんばかりに睨み付ける2人の女神。
片やこの世界のヘスティア。
そしてもう1人は同じくこの世界のロキ。
ロキはアイズ(不敗)とベート(不敗)が平行世界から来た存在だろうとを辺りを付けた後、とりあえず親睦を深めるために『豊穣の女主人』に来た際、ベル(不敗)達と鉢合わせ、ベル(不敗)を見た瞬間アイズ(不敗)が飛び出して抱き着いたため、ベル(不敗)を尋問するためにこうやって席を共にしているのだ。
因みに【ロキ・ファミリア】のメンバーとして他にはベート(不敗)はもちろんの事、フィン、リヴェリア、ガレス、ベート、ティオナ、ティオネ、レフィーヤといった主なメンバーも揃っている。
尚、こちらの世界のベートはロキと同じようにベル(不敗)を射殺さんばかりに睨み付けている。
「で? どーいう事か説明してもらおうか!」
ドンと机を拳で叩きながらヘスティアが問いかける。
「そや! なんでそっちのアイズたんがドチビんトコのベルに抱き着いて、しかもこんなこっちのアイズたんでは見たこと無い様な幸せそうな笑みをうかべとるんやぁぁぁぁぁぁっ!!」
うがーっと叫ばんばかりにロキも問いかける。
「そうさ! さっきそっちのリリ君も言ってたじゃないか! ヴァレン某はベル君のハーレムには入っていないって!」
そんなヒートアップするヘスティアとロキを他所に、リリ(不敗)はどこ吹く風と言ったように茶をすする。
すると、
「ええ、確かにアイズ様はベル様ハーレムには入っていませんよ」
淡々とそう言う。
「じゃあこれはどういう事なんだい!?」
感情のままにバンと机を両手で叩いてリリ(不敗)に問いかけた。
リリ(不敗)はやれやれと言った表情で、
「簡単な話です。アイズ様はベル様の『正妻』なので」
何でもないようにそう言った。
だが、
「「「「「「「「「「正妻ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!?????」」」」」」」」」」
こっちの世界の面々には途轍もない爆弾が投下されたのと同義だった。
ベル(不敗)は苦笑し、アイズ(不敗)は正妻という言葉に照れたのか頬を赤く染める。
「ど、どーいうこっちゃ!?」
「どーもこーもそのまんまの意味です。ベル様がアイズ様に告白して、アイズ様もそれに応えたというだけの話です」
ロキの驚愕の言葉にリリ(不敗)は淡々と答える。
「なんやとーーーーっ!!」
ロキはベル(不敗)に詰め寄る。
すると、
「ロキ、邪魔しないで…………!」
「ぐぇっ!?」
アイズ(不敗)が不機嫌そうな表情を浮かべ、ロキの顔を押しのけた。
その様子を【ロキ・ファミリア】の面々は驚いた表情で見ていた。
「向こうのアイズって、あんなにコロコロ表情変えるんだ…………」
ティオナが呟く。
ティオナの言う通り、アイズ(不敗)は幸せそうな笑みを浮かべたり、照れたり、不機嫌になったりと、こちらのアイズでは乏しい感情をはっきりと露にしていることに驚いていたのだ。
「…………………………」
そんなアイズ(不敗)を何とも言えない表情で見つめるアイズ。
因みにベルは理解が追い付かず呆然としていた。
すると、
「もう一つ気になることがあるのですが…………」
リューが控えめに発言する。
多くの視線がリューに集中すると、
「そちらのクラネルさんは、何故先程の冒険者のスキルの影響を受けなかったのですか?」
リューはその疑問を口にした。
確かにとこちらの世界の面々は頷く。
その殆どが気になっていたらしい。
その問いに答えたのはヘスティア(不敗)だった。
「別に影響を受けなかったわけじゃない。影響を受けても問題なかっただけさ」
「それは…………どういう……………?」
意味を理解できなかったリューは言葉を漏らす。
それを聞くとヘスティア(不敗)は続ける。
「言い方は悪いかもしれないが、オラリオの冒険者の強さは【恩恵】あってこその強さ…………つまり、借り物の力に過ぎないんだ。先程の冒険者の【スキル】は【恩恵】を無効化するから、冒険者は無力と化す」
「そんなのトーゼンやないか! それとそっちのベルに何の関係があるんや!?」
ロキがそう叫ぶと、
「ボクのベル君の強さは【恩恵】あっての強さじゃない。元々ベル君が持ってる『素』の力だ。だから【恩恵】が無効化されたところで何の問題も無い」
「……………………はぁ?」
ロキが、何言ってんだコイツ?みたいな顔をしている。
「ボケたんかそっちのドチビは? 【恩恵】無くしてどうやってあそこまで強くなれるんや?」
ロキの言葉に、ヘスティア(不敗)は深く溜息を吐いた。
「はぁ~~~~~~~~~~~……………………」
「何やその馬鹿にしたような深いため息は!?」
「いや、馬鹿にしたわけじゃない。こっちの世界には『武闘家』という理不尽な存在が居ないことを再確認して改めて羨ましく思っただけだよ……………」
ヘスティア(不敗)はロキを慈しむ様な眼で見つめる。
「な、何やその眼は………!? キモイで! それに、“武道家”の何処が理不尽な存在なんや?」
再びのロキの言葉に、
「『武“道”家』じゃなくて『武“闘”家』、だよ。どんなに分厚く、高い困難の壁も『拳』一つで粉砕していく非常識な存在さ」
訂正しつつそう言うヘスティア(不敗)。
「あの、神様? その言い方だと、僕が普通じゃないみたいな言い方なんですけど…………」
「君が普通だったら、オラリオの冒険者は全員駆け出し未満だよ」
にべもなくそう言うヘスティア(不敗)。
思わず項垂れるベル(不敗)。
「さっきから聞いとれば好き勝手に言いよるな…………まるでウチの子らでも相手にならんみたいな言い方やないか…………!」
静かに怒りを募らせるロキ。
「うーん……………ぶっちゃけその通りだから否定できないなぁ…………」
ロキの言葉を結果的に肯定するヘスティア(不敗)。
それにはロキも我慢できなかった。
「言ってくれるやないかドチビ! なんならこの場で証明してくれてもいいんやで!?」
「止めといた方が良いと思うけどな…………ボク達はあくまでこの世界の外から来た存在だ。こちらの世界の常識は通用しないと思っておいた方がいいよ」
ヒートアップするロキとは対照的に、ヘスティア(不敗)は冷静に対処する。
「ムッカ――――ッ!! そこまで馬鹿にされたらもう我慢できへん! 勝負やドチビ!!」
「…………………とりあえず暴れるのは迷惑だから腕相撲辺りで」
「上等や! すぐに吠え面かかしたる!!」
「じゃあ、こっちからはベル君で。自信が無いならリリ君でも構わないけど?」
「ムキーーーーーーッ!? 何処まで馬鹿にしたら気が済むんや!! そんならこっちからも二人出したるわ!!」
ヘスティア(不敗)の余裕過ぎる態度に頭に完全に血が上るロキ。
「一人目はガレスや! 自慢のパワー見せたれや!! もう一人は…………!」
「俺にやらせろ、ロキ…………!」
ベートがそう言った。
「あんな奴をアイズが選んだだぁ!? んなわけあるはずねえだろ! 化けの皮を剥がしてやる!」
ベル(不敗)を睨みつけながら闘志をむき出しにするベート。
「よっしゃ! やる気十分やな! やったれベート!!」
ロキも勢いのままベートに許可を出す。
その時、
「止めとけ」
静かに、だがその場によく響く声でそう言ったのはベート(不敗)だった。
「お前らじゃ絶対に勝てねえ…………」
続けてそう言うベート(不敗)。
ベート(不敗)はエールを煽って黙り込む。
「うるせえ! そっちの俺がそんな腰抜けだとは思わなかったぜ!」
そう言って話を聞こうともしないベート。
「…………チッ」
ベート(不敗)は舌打ちをしただけでそれ以上は何も言わなかった。
何故か本人達の同意も得ぬまま腕相撲の勝負をすることになったベル(不敗)とリリ(不敗)は渋々用意された席に着いた。
ベル(不敗)の前にはベート。
リリ(不敗)の前にはガレスが座る。
ヒューマンのベル(不敗)と獣人であるベートの体格差はそれほどでもないが、
背の高さで言えば、ガレスが頭一つ分高い程度だが、腕の太さはリリ(不敗)の三回りから四回りほども太い。
正直、普通に見ればとてもではないが腕相撲などする体格差ではない。
まあ、【恩恵】があるので一概には言い切れないが…………
それでも右手を組み合い、準備をする四人。
「よっしゃーーーー!! ベート! ガレス! 吠え面掻かせたれーーーーーっ!!」
テンションの高さのままにそう叫びながら応援するロキ。
その周りには、騒ぎを聞きつけた野次馬たちが集まっている。
当然賭け事も行われており、当然だがベート、ガレスが数倍有利だ。
因みに審判はフィンが行うことになった。
「それでは四人とも、準備は良いかい?」
フィンの声にそれぞれが頷く。
「では用意………………!」
フィンの言葉で場が静まり返り、緊張感が増す。
そして、
「始め!!」
スタートの合図が掛かり、それぞれが力を込めた。
一気に場が盛り上がろうと野次馬たちが声を上げる。
その瞬間、
「ぬおっ!?」
突如としてガレスが宙を舞った。
次の瞬間、バキャッという音と共にガレスの腕が机に叩きつけられ、机が真っ二つになる。
声を上げようとした野次馬たちが一気に静まり返った。
「あっ、すみません。力入れ過ぎました」
あっけらかんとそう言い放つリリ(不敗)。
何が起きたかといえば、始めの合図が出た瞬間、リリ(不敗)はかなりの力を込めてガレスに対抗しようとしていた。
だが、リリ(不敗)は力の入れ具合を間違え、ガレスが全く抵抗できないほどの力で圧倒した。
その際、ガレスも抵抗はしようとしていたため、自分が入れた力に踏ん張りがきかず、肘を軸に勢いのまま引っ繰り返されたのだ。
更にリリ(不敗)が手を叩きつける勢いもすさまじかったので、机が耐え切れず真っ二つに折れてしまったのだ。
その光景を見て呆気にとられるこちらの世界の両【ファミリア】の面々。
一方、ベル(不敗)とベートの勝負はスタート時点から動いていなかった。
それを見てロキは気を取り直して声を上げる。
「よっしゃ、ベート気張れ! いけるで!!」
そう応援するが、ベートは必死そうな表情で腕に力を加えているが、ベル(不敗)は涼しい顔でその場を微動だにしていなかった。
「ぐ………ぐぐ……………!」
すると、徐々にベル(不敗)がベートの腕を倒していく。
「ぐう………! このヤロ…………!」
ベートは歯を食いしばってベル(不敗)の力に対抗しようとしているが、その勢いは止まらない。
やがて、ベートの腕が完全に倒され、ベートの敗北が決定した。
「う、うそやろ……………」
呆然と呟くロキ。
「これで分かっただろロキ。『武闘家』という存在がどれだけ理不尽か」
ヘスティア(不敗)は諭すようにそう言う。
「一体………何をどうすればそんな理不尽な存在になれるんや…………?」
ロキは心の奥底からの本音でそう聞いた。
と、その時、
「あら? 見知った顔がいるわね」
聞き覚えのある声に振り向けば、そこには赤髪に右目に眼帯を付けた“2人”の女神がそこにいた。
あとがき
遅れてすいません。
中々筆が進まなかったです。
ちょいと強引で短いですが完成させました。
今回のお話は武闘家とは理不尽な存在なり。
という事です。
さて、最後に出てきた鍛冶神様。
次回はどうなる?