ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
こちらの世界の【ロキ・ファミリア】と出会い、アイズ(不敗)とベート(不敗)と再会したベル(不敗)達。
一悶着があり、それが一段落したところで現れたのはヘスティアの神友でもあるヘファイストスだった。
しかし、彼女は“2人” いた。
それがベル(不敗)達と同じ状況であると物語っている。
「「ヘファイストス!?」」
「「ヘファイストス様!?」」
ヘスティアとヘスティア(不敗)、ヴェルフとヴェルフ(不敗)が声を上げた。
「あなた達も二人いるって事は…………どうやら同じ状況みたいね」
ヘファイストスの片方がそう言う。
もう一人のヘファイストスが顎に指を当て、天井を仰ぎながら何やら思案していると、
「それじゃあ、彼を知ってる方はどっちかしら?」
そう言いながら自分の後方を見るように指した彼女の手の先には、二十代後半の男性と、赤髪の女性が二人立っていた。
「キョウジさん!? それに、スィークさんも…………!」
ベル(不敗)が声を上げた。
「…………誰だい? あの子たちは?」
ヘスティアは首を傾ける。
「男性の方はボク達の世界のミアハの所に居るキョウジ君。二人居る赤髪の方はヘファイストスの所に居る鍛冶師のスィーク君だ。そっちのボクの反応を見るに、二人の事は知らなかったみたいだね」
ヘスティア(不敗)がそう言うと、
「まあ、俺は元同僚って事で、スィークの顔見知り程度はあるがな…………少なくとも【ヘスティア・ファミリア】には関わってねえな」
ヴェルフが付け足すようにそう言った。
「そう、ならこっちのあなた達が私と同じ世界のヴェルフ達って事でいいのかしら?」
先程反応したベル(不敗)と同じ方に座っている一同を見渡す。
「そうだね。こっちの世界のボク達はキョウジ君を知らないみたいだ。間違いないと思うよ」
ヘスティア(不敗)が頷く。
更に、
「私は元々この世界から外れた存在だ。平行世界とは言え、私が存在するこの世界はほぼ唯一と言っていいだろう」
キョウジがそう付け足す。
「で? 皆で話し合っている様だけど、私達も混ざっていいかしら?」
ヘファイストス(不敗)が尋ねた。
「ああ、もちろんだよ」
ヘスティア(不敗)が快く了承する。
すると、こちらの世界のヘファイストスとスィークは、こちらの世界のベル達の隅の方に座る。
しかし、キョウジとスィーク(不敗)はベル(不敗)達の隅の方に座ったが、ヘファイストス(不敗)はヴェルフ(不敗)の隣へ行き、
「あら、ありがとう」
ヴェルフ(不敗)の隣にいたカサンドラがスペースを開けるように詰めると自然な動作でそこへ座った。
「む?」
その行動にヘスティアが疑問を覚える。
ベル(不敗)達の席も隅の方は空いているのに、なぜ態々ヴェルフの隣を選んだのか?
すると、その様子に気付いたのか、ヘファイストス(不敗)は口を開く。
「………どうかした?」
ヘスティアに向かってそう尋ねると、
「いや、何でヘファイストスはわざわざヴェルフ君の隣に座ったのかと思ってね」
ヘスティアが思った疑問を口にすると、
「あら、自分の恋人の隣に座る事がそんなに不思議かしら?」
ヘファイストス(不敗)はヴェルフの腕に自分の腕を絡ませながら何でもないようにそう言った。
ヴェルフ(不敗)は恥ずかしかったのか顔を赤くしながら明後日の方向を向いている。
その瞬間、ガタガタガタッと席が崩れる音が聞こえた。
見れば、こちらの世界の面々が椅子からズレ落ちたり、思わず立ち上がって後退ったり、目を見開いて固まっていたりしていた。
特にこちらのヴェルフとヘファイストスは驚きのあまり無反応である。
すると、
「君達は一体ボク達を何度驚かせれば気が済むんだぁぁぁぁぁぁっ!!??」
余りの衝撃にヘスティアが吠えた。
すると、
「お、おいそっちの俺…………まさか俺にも恋人がいるとか言わねえよな…………!?」
こちらの世界のスィークが恐る恐るスィーク(不敗)に問いかけた。
「………………婚約者ならいるぜ」
スィーク(不敗)はあっけらかんと答えた。
その言葉に、スィークは顎が外れんばかりにあんぐりを口を開ける。
「どどっ、何処のドイツだそれは!? 俺みたいなガサツな女に惚れる男がいるのかよ!?」
スィークはうまく回らない口を動かしながらスィーク(不敗)に問いかける。
それに対してスィーク(不敗)は、
「ここのコイツだけど?」
隣のキョウジを指しながらそう言った。
「…………………………」
思わず固まるスィーク。
そんな彼女の様子を見て、
「ふむ…………こちらのスィークの時にも思ったが、やはり君は自分の魅力を過小評価し過ぎだな。人の好みはあるかもしれないが、君は十分に魅力的な女性だと言っておこう」
キョウジがそう言った。
その瞬間、ボッと火が燃え上がるように顔を真っ赤にさせるスィーク。
「なっ!? 何言ってんだお前…………!? お、俺が魅力的とか、馬鹿じゃねえの!?」
彼女がそう叫ぶと、
「…………フッ」
キョウジが口元に笑みを浮かべる。
「何笑ってんだよ!?」
「いや、すまない。やはり同一人物だと思ってな…………同じことをこちらのスィークに言われた時を思い出してしまった」
キョウジは謝りながらそう言う。
「む……………」
スィークは若干しかめっ面になる。
スィークとしては、違う世界とは言え、自分に婚約者がいるなど信じられたものでは無い。
「まあ、それはともかく、ちゃんとこの先の事を話し合いましょう?」
ヘファイストス(不敗)が場を仕切り直すためにそう言った。
それぞれがどうやってこの世界に来たかを話し合っていると、
「…………どうやらボク達に共通しているのは、目の前が光に包まれたと思ったら次の瞬間にはこの世界の自分達の所に居たってことくらいだ。キョウジ君は分からないけど………」
「それ以前に、こうなった原因が分からないわよね…………元の世界に戻るためにも、原因を探さなくちゃ…………」
ヘスティア(不敗)とヘファイストス(不敗)がそう言う。
すると、
「私の推測だが……………原因はおそらくこの世界にあると私は思っている」
キョウジの言葉に、全員の視線が集中する。
「理由として、転移の瞬間に別々の場所にいた私達が同じ世界にいるからだ。元の世界に原因があったとすれば、同じ場所にいた者達はともかく、別々の場所にいた者全員が同じ世界に転移されるなど考えにくい。だとすれば、この世界に原因があり、何らかの因果を持つ我々がこの世界に引っ張られてきたと仮定した方がまだ筋は通る」
その言葉を聞いてそれぞれが納得したような声を漏らす。
「なるほど…………ならボク達の行動指針としては、この世界で転移の原因となるようなものの情報収集だね」
「あと忘れてはならないモノは、何をするにしても先立つ者は必要です」
ヘスティア(不敗)の言葉にリリ(不敗)が付け足す。
「とはいえ、私達が一度ダンジョンに潜れば、贅沢をしなければ暫く暮らせると思いますが…………」
「後は寝床だな。流石にいつ帰れるかも分からねえのに野宿は勘弁だ」
ヴェルフ(不敗)もそう言う。
「だったらボク達のホームに止まればいいよ。流石にタダとは言えないけど、お金を払ってくれるなら大歓迎さ!」
こちらのヘスティアがそう言った。
「そ、そうですね! 違う世界の僕達の話も聞きたいですし!」
「お、おう! 興味あるしな!」
ベルとヴェルフが賛同する。
因みに二人の内心はどうやってアイズ(不敗)やヘファイストス(不敗)を恋人にしたのかで頭が一杯である。
「ただし!!」
ヘスティアが強く強調して言葉を続ける。
「ヴァレン某! 君は駄目だ!!」
アイズ(不敗)をクワッと睨みながらそう叫んだ。
「えっ…………?」
アイズ(不敗)は何故と首を傾げる。
「そっちのベル君はどうか知らないが、こっちのベル君はまだ純粋なんだ! 君が居たら汚されるかもしれないだろう!?」
ヘスティアは隣にいるベルを抱きしめながらそう叫ぶ。
「…………………………?」
アイズ(不敗)は意味が分からずに首を傾げている。
すると、
「そんなのあたりまえや! 例えドチビが許してもウチが許さんわ! アイズたんはウチで面倒見るで…………! あとベートも」
「…………………………チッ」
序に付け足されたベート(不敗)は、ややイラついた表情を見せた。
その後はいつものごとくヘスティアとロキの口喧嘩が始まり、その勢いのままケンカ別れのような形となった。
【ロキ・ファミリア】のホームである『黄昏の館』に戻ってきた【ロキ・ファミリア】一行とアイズ(不敗)とベート(不敗)。
その大半は明日に備えて休もうと思っていたのだが、
「……………少しいい?」
アイズがアイズ(不敗)に話しかけた。
「…………何?」
こちらの
「私と手合わせして欲しい」
アイズはアイズ(不敗)を真っすぐに見てそう言う。
「………………いいよ」
その視線を少しの間受け止めていたアイズ(不敗)は沈黙の後に了承する。
「なら、訓練場で……………」
アイズはそう言うと訓練場に向かって歩いていき、アイズ(不敗)もそれに続いた。
二人が訓練場で向かい合っていると、やはりと言うべきかその周りには【ロキ・ファミリア】のほぼ全員が集まって観戦していた。
「アイズたんとアイズたんの戦いや! これは見ものやで!」
ロキが興奮したようにそう言う。
「どっちのアイズも頑張れー!」
ティオナは両方のアイズを応援する。
「おらアイズ! 負けんじゃねえぞ!」
ベートはこちらのアイズを応援する様だ。
多くの観衆が見守る中、アイズは愛剣であるデスペレートを抜いて構える。
しかし、
「……………………?」
相手であるアイズ(不敗)は腰に挿している刀を抜かず、キョロキョロと周りを見回し始めた。
すると、目的のモノを見つけたのか、その場所へ向って歩いていく。
アイズ(不敗)が向かった先は、訓練用の武器が置かれている場所。
当然ながら毎日訓練で酷使されているその武器は実戦で使えるような物は無く、その殆どがボロボロである。
アイズ(不敗)は、その中から一本の長剣を手に取った。
その長剣も例に漏れずボロボロであり、錆が浮いていたり、所々刃毀れもある。
しかし、アイズ(不敗)はその剣を持って元の位置に戻り、アイズと相対する。
そしてアイズ(不敗)はその剣を構えた。
「いつでもいいよ…………」
アイズ(不敗)はそう言う。
すると、
「って、もう一人のアイズたん!? そんなボロボロの剣でやるっちゅうんか!? いくらなんでもそりゃ無茶やで!」
ロキが声を上げる。
「ううん……………今の
アイズ(不敗)は淡々と答えた。
「チッ! おいアイズ! その舐めた態度を改めさせてやれ!!」
ベートが不機嫌そうに声を荒げる。
アイズも多少頭に来たのか僅かだが顔を顰めていた。
「なら………行く…………!」
アイズが剣を構えなおすと、一気に突っ込んだ。
Lv.6の【ステイタス】による急加速は普通の人間なら消えたように見える程。
アイズは次の瞬間にはアイズ(不敗)を剣の間合いに納めていた。
アイズは勢いをつけ剣を振り抜く。
ボロボロの剣なら容易く断ち切る斬撃だ。
だが、ガキィッという音と共に、その斬撃は容易く止められた。
「ッ!?」
反応されたことはともかく、あのボロボロの剣で自分の一撃が止められたことにアイズは驚愕した。
だが、アイズはすぐに気を取り直して次の攻撃に移る。
袈裟斬り、横薙ぎ、切り上げ。
次々と繰り出す連続攻撃。
しかし、その全てにアイズ(不敗)は反応し、全てを容易く受けきって見せる。
すると、今度はアイズ(不敗)が剣を軽く振りかぶり、あまり力を入れていない様な動作で剣が振られた。
アイズはそれを弾こうと剣をぶつけた瞬間、
「…………ッ!?」
両手持ちでかなり強く放った剣戟がアイズ(不敗)が片手で軽く振った一撃に弾き返され、アイズは大きく後退した。
「くぅ…………!?」
ビリビリと手に残る痺れにアイズは声を漏らした。
「何? 今の剣の威力は…………?」
アイズは体勢を立て直しながら剣を構える。
アイズは再び真っすぐ突っ込む。
ように見せかけて、アイズ(不敗)の間合いに入る寸前にアイズ(不敗)の後ろに回り込んだ。
アイズの眼には、アイズ(不敗)は変わらず前を見続けていて自分を見失ったように見えていた。
アイズはその背に向かって剣を振る。
その瞬間もアイズ(不敗)は自分を見ておらず、確実に入ったと思っていた。
「そんな……………」
だが、再びガキィィィンという甲高い音と共に、その一撃は止められた。
しかし、それでいてもアイズ(不敗)の視線は前を向いたままだった。
アイズ(不敗)はアイズを見る事無くその一撃を受け止めたのだ。
アイズは驚愕しながらも距離を取り、油断なくアイズ(不敗)を見据える。
すると、
「………………あなたの剣には、余裕が無さすぎるね」
アイズ(不敗)が呟く。
「えっ…………?」
アイズが声を漏らした。
「今ならあの時ベルが言ってたことが良く分かる……………今のままじゃ、あなたは黒竜に勝てない」
「ッ!?」
アイズ(不敗)の言葉に、アイズが目を見開く。
「このままダンジョンに潜り続けても同じ。きっと志半ばであなたは倒れる」
淡々と言うアイズ(不敗)の言葉にアイズは目を見開く。
「取り消して………!」
アイズは珍しく感情を露にして叫んだ。
「取り消さない。それが事実。私は黒竜と戦ったから良く分かる」
「ッ…………あなたは黒竜を倒したの………!?」
「ベルと一緒に…………だけど」
アイズ(不敗)の言葉にアイズは驚愕の表情を浮かべる。
「だから言う。今のあなたじゃ黒竜に傷一つ付けることは出来ない」
その言葉が切っ掛けになったのか、アイズはギリッと歯を食いしばり、剣を強く握りしめる。
「【
詠唱を行い、アイズは風をその身に纏う。
剣を弓矢を引き絞るように振りかぶり、風の勢いが増す。
「リル…………」
必殺技を放つ体勢に入るアイズ。
それに対しアイズ(不敗)はゆっくりとした動作で剣を前に突き出し、
「…………ラファーガ!!」
その瞬間全身に風を纏ったアイズが突進してきた。
そして次の瞬間、
「「「「「「「「「「ッ………………!?」」」」」」」」」」
観衆のほぼ全員が絶句していた。
何故ならば、
「……………………」
「………………嘘」
黙ったままのアイズ(不敗)と、驚愕の声を漏らすアイズ。
何故ならば、アイズ(不敗)はアイズが突き出した渾身の一撃を剣の切っ先で受け止めていたからだ。
アイズ(不敗)軽く押し出してアイズを押し返すと、
「………………ベルみたいにうまく出来るか分からないけど…………」
アイズ(不敗)は目を瞑ると黄金の闘気を身に纏う。
剣を頭上に掲げるように振りかぶると、その剣にも黄金の闘気が纏われ、眩い輝きを放つ。
「あ…………あ……………」
アイズは圧倒的な力の前に呆然と立ち竦むことしか出来ない。
そして次の瞬間、
「はぁあああああああああああああああっ!!」
その剣が振り下ろされた。
だが、
「やり過ぎだバカ野郎…………!」
その剣が振り下ろされる寸前に瞬時にその間に割って入ったベート(不敗)がその剣を蹴りで受け止めていた。
その際に衝撃が辺りに広がり、観衆たちを転倒させた。
「……………ごめんなさい。やり過ぎた…………」
アイズ(不敗)は佇まいを直してアイズに頭を下げる。
その様子を遠巻きに見ていた幹部陣。
「まさかこれほどとはな…………」
リヴェリアが呟く。
「それに気付いたか? 向こうのアイズは開始地点から一歩も動いていない」
フィンがそう言う。
「ああ、全く自信を無くすよ」
リヴェリアは呆れるようにそう言った。
因みにロキは固まっており、この日は再起動することは無かった。
外伝五話です。
とりあえずヘファイストス&キョウジ、序にスィークがやってきました。
スィークはオリキャラですけど原作世界にもいるって事で…………
因みにキョウジさんはスィークと一緒に居ました。
という事は荒野にほっぽり出されたお方は……………
あとはアイズ同士の闘いです。
これはやっておきたかったのでここで入れました。
まあ、不敗側の圧勝ですけど…………
さて次回はダンジョンに潜る予定。
なので一人取り残されてた彼女が出てきます。
それでは次回にレディィィィィィィッ…………ゴーーーーッ!!