ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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ROUND【10】 師弟

 

 

 

 

 

「神様―! ただいま帰りました!」

 

ベルがホームの玄関を潜りながらそう声を掛ける。

 

「ああ、お帰りベルく…………って、うええええええええええええっ!?」

 

ヘスティアがベルを労おうと声を掛けながらベルの方に振り向いた瞬間、驚愕の声を上げた。

何故ならば、こちらのヘスティアには見覚えの無い初老の男性、東方不敗の存在。

いや、それだけならば驚きはしなかっただろう。

だが、その東方不敗に引きずられているボロ雑巾のようにボコボコにされたナニカ。

 

「どうかしたのかい…………? っておや? 師匠君じゃないか! 君もこちらの世界に来ていたのか!」

 

こちらのヘスティアの声を聞いて何事かと顔を見せたヘスティア(不敗)。

 

「ふむ、ベルの主神殿か。久しいな」

 

「まあそれほどでもないけどね……………ところで、君が引きずっている“ソレ”は何だい?」

 

「コレか? コレはワシらがこのような目に遭う事になった元凶よ」

 

東方不敗がそう言いながら引きずっていたソレを目の前に突き出す。

ボコボコになって顔の原型も留めていないソレは、

 

「ん~~~~~~………………? って、ヘルメスじゃないか!!」

 

僅かな面影と服装からその正体に辿り着くヘスティア(不敗)。

 

「ヘルメスだって!? 何だってそんな…………!」

 

ヘルメスが何故ボロ雑巾のようになっているのかと驚愕するヘスティア。

 

「先程も言ったがこやつがワシらがこのような目に遭う事になった原因だからだ」

 

きっぱりと言い切る東方不敗。

 

「原因? どういう事だい?」

 

ヘスティア(不敗)がそう聞くと、

 

「あ、神様。実は…………」

 

ベル(不敗)はヘルメスが面白半分にアスフィが偶然に作ったマジックアイテムを起動させ、結果的にベル(不敗)達がこちらの世界に来ることになった切っ掛けを作った事を話した。

 

「はぁ~~…………ヘルメス………君はどこの世界でも問題を起こしたがるようだな」

 

ヘスティア(不敗)が呆れた様に溜息を吐きながらそう零した。

すると、

 

「いてて……………ヘスティア、彼は一体何者なんだい? 『神威』すら効かなかったんだが………」

 

「彼はボクらの世界のベル君の師匠だよ。『武闘家』という全ての常識を『拳』だけで殴り倒す理不尽な存在さ」

 

「なんだいそれは……………?」

 

「ぶっちゃけボクも良く分かってないよ。そういう存在だと割り切ってる」

 

「はあ?」

 

「まあ、こちらの世界とボクらの世界の一番の違いは師匠君の存在だろうね。彼が居なければベル君が世界の法則を無視する存在にはならなかった筈だし、ヴェルフ君やリリ君達がベル君に影響されて人としての道を踏み外すことは無かった筈だから」

 

「ヘスティア様、まるで私達が外道に堕ちたような言い方は止めてください」

 

ヘスティア(不敗)の言葉にリリ(不敗)が思わず突っ込んだ。

 

「まあ、並の人間という意味で踏み外してるのは確かだろうけどな」

 

ヴェルフ(不敗)は軽く笑う。

 

「と、とりあえずどうしますか神様? アスフィさんの話では1週間ぐらいすれば自動的に元の世界に返されるという話ですが…………」

 

ベル(不敗)が話を変えようとそう言うと、

 

「そうだね…………この世界にとってボク達は異分子だ。余り余計な事はせず大人しくしてるのが正解なんだろうけど……………」

 

「今更だと思いますがね………」

 

こちらの世界のリリが呆れる様に言った。

 

「ダンジョンを散歩気分で下層まで到達し、階層主を片手間で瞬殺して、挙句の果てに第一級冒険者ですら避ける『闘技場(コロシアム)』を完全攻略してしまったんですよ。これだけやって大人しくするなんてどの口が言いますか」

 

「あ、あはは…………」

 

ベル(不敗)が苦笑しながら頬を掻く。

 

「まあ、騒ぎだけは起こさないようにしようか…………」

 

ヘスティア(不敗)はやれやれと首を振りながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

翌日。

ヘスティア・ファミリアの朝はけたたましい打撃音で始まった。

 

「な、何だいこの音は!?」

 

その音に思わず飛び起きるヘスティア。

 

「う~ん………どうしたんだい?」

 

目を擦りながら欠伸をするヘスティア(不敗)。

 

「わ、分からないけど、凄い音が…………」

 

「ん~~~?」

 

ヘスティアの言葉にヘスティア(不敗)が耳を澄ますと庭から打撃音が鳴り響いている。

だが、

 

「あ~~…………ベル君と師匠君が朝の鍛練を行ってる音だね………気にしなくていいよ………」

 

ヘスティア(不敗)はそう言うとまるで意に介していないように布団をかぶり直す。

 

「え? ちょっともう1人のボク? 気にならないのかい!?」

 

「ベル君と師匠君が揃うと毎日のようにやってるよ…………気にしないことが一番だ」

 

そう言ってまどろみに身を任せるヘスティア(不敗)。

そのまま二度寝に入ったのを確認すると、ヘスティアは仕方なく起き出し、庭へ様子を見に行く。

すると、同じように打撃音で目が覚めたのかこちらの世界のファミリアの面々と玄関前で出くわした。

 

「あ、神様。おはようございます」

 

「おはようベル君。それに皆も………皆も気になって起きてきたのかい?」

 

「気になるというか…………煩くて起きてしまいました」

 

少し眠そうに言ったのは春姫。

打撃音は今も鳴り響いている。

 

「向こうの世界の人達は気にせず眠ってましたけど………」

 

リリがそう言うと、

 

「何でも向こうのベル君とその師匠君が鍛練を行っているって話だったけど………」

 

ヘスティアがそう呟きながら玄関の扉を開けると、

 

「はぁあああああああああああああああああああああっ!!!」

 

「とぉりゃぁああああああああああああああああああっ!!!」

 

空中で無数の拳を繰り出し合っているベル(不敗)と東方不敗の姿があった。

一度の交錯で数十発の拳の応酬が繰り広げられ、それが何度も繰り返されている。

その光景を見て絶句する一同。

 

「こ、こいつはまた予想以上だな………」

 

ヴェルフが呆然と2人を見上げる。

 

「はわわ………手が幾つもあるように見えます………!」

 

春姫は拳のラッシュをそう例える。

すると幾度目かの交錯の後、互いがある程度の距離を開けて対峙した。

その一瞬後、

 

「ベルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

「師ぃ匠ぉおおおおおおおおおっ!!!」

 

東方不敗が右手に黒い闘気を。

ベルは右手に白い闘気を纏わせ、互いに飛び出しその右手を繰り出し合った。

2人の中央でぶつかり、互いの右手を掴みあう状態となる。

 

「うひゃぁあああああああっ!?」

 

「うわぁああああああああっ!?」

 

「うぉおおおおおおおおっ!?」

 

「「「きゃぁああああああああああっ!?」」」

 

その際に生じた衝撃波にこちらの【ヘスティア・ファミリア】の面々は悲鳴を上げた。

だが、それで終わりではない。

 

「ダァァァァァァクネェス………………!」

 

「アルゴノゥトォ………………!」

 

互いにそれぞれの必殺の言霊を唱え、

 

「「……………フィンガァァァァァァァァァァッ!!!」」

 

爆発的な衝撃が広がった。

それは先程までの比ではなく、その衝撃で砂煙が巻き起こり、2人の足元の地面が陥没する。

更にはホームの窓のいくつかにはひびが入っていた。

そしてそれを見ていた面々は漏れなく床にひっくり返っていた。

 

「ベルよ、朝の食事の前の“運動”はこれぐらいにしておこうか?」

 

「はい! 師匠!」

 

そして、その紡がれた言葉に一同は絶句するのだった。

 

 

 

 

そのまま何とも言えない朝食が終わった頃。

不意に玄関の扉がノックされた。

 

「あ、僕が出ます」

 

丁度玄関の近くに居たベル(不敗)が扉を開けると、

 

「ベル……………」

 

そこには、白いワンピースを着た、いつもと違う雰囲気を持つアイズ(不敗)の姿があった。

 

「ア、アイズ……………?」

 

思いがけない来客にベル(不敗)が思わず固まっていると、

 

「…………デートしよ」

 

頬を染めて、照れ臭そうにアイズ(不敗)がそう言った。

 

 

 

 

 





はい、外伝10話です。
かなり久しぶりの割にはめっちゃ短いです。
実は昨日が普通に仕事で執筆時間今日1日で、今日も少し用事があったのでかなり時間が削られました。
繋ぎ回なので中途半端ですが、とりあえず次回がアイズとのデートになります。
お楽しみに。

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