ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

8 / 88
どうもです。
何故か人気がでたので続き書きます。
それにしても、最初の投稿で感想50件超えるとか一時的にも日間ランキング1位取るとか信じられないです。
とりあえず、出来るところまで頑張ってみようと思います。


第七話 ベル、【ステイタス】を教える

 

 

【Side アイズ】

 

 

 

昨日の宴会で、ベートさんが突然話題に上げた、私がミノタウロスから助けた少年。

正確には、助けたつもりだった………かな?

今思えば余計なことだった。

その宴会の中で、ベートさんはその子の事を笑い話にしていて、私はその子に対して申し訳なく思っていた。

すると偶然にも同じ店の中にその少年がいて、ベートさんに意趣返しをして、ベートさんが怒った。

咄嗟にフィンが止めようとしたけど、酔っていたベートさんはその少年に拳を振り下ろす。

でも、その瞬間信じられないものを見た。

成す術なく殴られると思っていた少年が一瞬にしてその場から消え、少し離れた場所に隣にいた店員さんを抱えて立っていたから。

私の目にも正確な動きは分からず、ブレた影が走ったとしか見えなかった。

すると、その少年はベートさんに対し喧嘩なら買うと言い出し、ベートさんと一緒に店の外へ出ていった。

彼の正確な実力は分からないけど、もし危なそうだったらベートさんを止めるつもりでいた。

だけど実際に目の前で繰り広げられた光景は全く逆の光景。

私と同じLv.5のベートさんが一方的にやられている。

唯の布切れが少年の言葉通り名剣を凌ぐ切れ味を誇り、人一人を軽々と振り回す。

そしてなによりとてつもない威力の拳と、それを一瞬で何十発と放つことのできるスピード。

ベートさんの負けは明らかだった。

例え私が戦ったとしても、結果は変わらないと思う。

けど、ベートさんは立ち上がった。

どれだけボロボロになっても、心は折れなかった。

その姿を見てあの子は素直にベートさんを『強い人』だと認めた。

同時にベートさんも、あの子を認めた。

私はそれを聞いて、この少年は本当に『強い』と思った。

あれだけ罵られた相手を素直に認め、その相手にも認められるなんて誰にでも出来ることじゃない。

最後の勝負は相手を見下したり罵り合うような雰囲気は一切無かった。

『対等』な相手に対しそれぞれの最高の一撃を繰り出す。

結果はベートさんの負けだったけど、気を失っていたその顔はどこか満足そうだった。

そして、驚くべきことはそれだけじゃなかった。

【ホーム】へ戻ったあと目を覚ましたベートさんは、突然ロキに【ステイタス】の更新を申し出た。

つい先日遠征から戻ってきたとき、その時に【ステイタス】の更新は行っている。

【ステイタス】はLvが上がるほど成長しにくくなる。

私達のようにLv.5まで上がっていると、ほんの数日では殆ど意味を成さない。

ロキはそれも踏まえ身体が回復してからにしろと言ったがベートさんは突然頭を下げ、「頼む」と驚くべき言葉を口にした。

あのベートさんが頭を下げてお願いするところなんて初めて見た。

ロキは、「そこまでいわれたら、しゃーないわ」と言って、【ステイタス】の更新を行った。

その結果は……………

 

 

 

ベート・ローガ

 

 

 

 

Lv.6

 

 

 

 

 

私はその結果に言葉を失った。

ベートさんもLv.5としては成長限界に近付いていたようで、最近の熟練度の伸びは私と同じように伸び悩んでいた。

私も今以上強くなるにはLvを上げるしかないと思ってたけど、その壁をベートさんはあっさりと乗り越えた。

その切っ掛けはおそらくあの少年。

ベル・クラネルと名乗ったあの少年との戦いがベートさんがランクアップした原因だと私は確信した。

私もあの少年と戦えばもっと強くなれるかもしれない。

 

「【ヘスティア・ファミリア】の………ベル・クラネル」

 

まだ日も昇らない早朝から私はギルドへ向かっていた。

理由はあの少年を探すため。

白い髪に赤い目という特徴的な外見を持つ彼は、今までに噂に上がったことはない。

即ち、ごく最近このオラリオへ来た可能性が高い。

その為、冒険者としてはまだ新人だろう。

恐らく、ギルドの受付嬢の誰かが彼のアドバイザーになっているはず。

一刻も早くその人に話を聞いて、彼に会いに行こうと思っていた。

でも、私がギルドへ向かっていた時、目の前の交差点を何かが通り過ぎた。

 

「ッ………今のは………!」

 

まだ暗く、ほんの一瞬の出来事だったので確証はない。

けど、一瞬だけ見えたその人影と思われるそれは、白い髪だったような気がした。

咄嗟に交差点に入り、影が向かったと思われる方向を見た。

既にその影は遥か遠くにいて、判別はできない。

でも、その影がまっすぐ向かった先にあるものは………

 

「…………市壁」

 

私の勘違いかもしれない。

このままギルドへ向かったほうが確実だろうということはわかっていた。

それでも、私は気になった。

私は、その影を追って市壁へ向かう。

市壁の内部から頂上へ繋がる道の扉には、開けられた形跡はない。

それでも、私は頂上への階段を上り始めた。

長い階段を上り、頂上へと向かう。

そして、頂上へと出る扉の前に立つ。

頂上へ出る扉を潜ると……………そこに彼はいた。

地平線から顔を出し始めた朝日に照らされた市壁の頂上で、拳を繰り出し、時には跳び、目にも止まらぬ速さで連続蹴りを放つ。

その光景に見入っていた私は、彼の動きが相対する相手をイメージした動きだということに気付いた。

そのまま眺めていると、自然に彼が相手をしているイメージの幻影がまるで見えているかのように分かり始めた。

彼が繰り出す拳の嵐を余裕で掻い潜り、隙あらば一瞬にして彼の懐に入り攻撃を加えようとする。

彼が飛び退けば、甘いとばかりに追撃する。

やがて、

 

「あ…………」

 

彼の渾身の一撃を紙一重で躱した幻影の一撃が、彼の急所に入った。

彼はその場で停止すると、

 

「ふう~………!」

 

大きく息を吐き、気付いたようにこちらを見た。

 

「えあっ!? ア、アイズ・ヴァレンシュタインさん………!?」

 

何故か顔を赤くし、慌てふためく彼に私は首を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

僕は何時ものように市壁の頂上で修行を行っていた。

 

「はぁあああああああっ!!」

 

師匠をイメージしたシャドウトレーニングで、空想の師匠相手に連撃を繰り出す。

しかし、いくら空想上とはいえ6年も教えを乞うてきた人。

その人の強さは身に染みてわかっている。

僕の連撃が一つたりとも掠らずによけられるイメージが浮かぶ。

 

「せぇえええええええええいっ!!」

 

続けて飛び上がり、蹴りの連打を浴びせるが、これもあっさりとよけられる。

 

「くっ! はっ! でやぁっ!!」

 

なんとか体勢を崩そうと、フェイントや囮の攻撃を織り交ぜ隙を窺う。

その時、廻し蹴りを避けた師匠のイメージが僅かにグラつく。

 

「今だ!」

 

僕は渾身の力を込めて殴りかかる。

僕は、行ける!と確信した。

でも、

 

「ッ………!」

 

師匠のイメージは紙一重でそれを避けると、ガラ空きとなってきた僕の鳩尾を打ち抜いた。

 

「………………」

 

僕は拳を振り抜いた体勢で停止する。

未だに空想の師匠ですら、勝てるイメージが浮かばない。

こんな事では、師匠を超えることなど夢のまた夢。

 

「……………ふぅ」

 

頭の中で今日の反省を終えると息を吐く。

そこですぐ近くに気配を感じる。

修行に夢中になり過ぎて気付かなかった。

僕がそちらを向くと、そこにいたのはなんと、

 

「えあっ!? ア、アイズ・ヴァレンシュタインさん………!?」

 

あのヴァレンシュタインさんだった。

僕は思わず変な声が出てしまい。

羞恥と気恥ずかしさで顔が熱くなった。

すると、

 

「おはよう………」

 

無表情でそう挨拶してきた。

 

「お、おはようございます………」

 

僕は困惑しつつも何とか挨拶を返す。

どうしてヴァレンシュタインさんがこんな所に!?

僕が驚いていると、

 

「………ベル………だったよね?」

 

「は、はいっ!? どうして僕の名前をっ!?」

 

「昨日、ベートさんに名乗っているのを聞いた」

 

そういえば昨日はヴァレンシュタインさんも一緒にいたっけ。

すると、ヴァレンシュタインさんが歩み寄ってくる。

 

「………ベルにお願いがある」

 

「は、はい! 僕に出来ることなら何でも!」

 

唐突にお願いと言われ、何も考えずに返事をしてしまう。

でも、可能な限り叶えてあげたいというのは本当だ。

するとヴァレンシュタインさんは僕に歩み寄りながら、腰に携えてあった剣を抜いた。

 

「私と戦って欲しい」

 

「…………へっ?」

 

予想外の言葉に素っ頓狂な声を漏らす僕に、ヴァレンシュタインさんは斬りかかってくる。

 

「ちょ………わっと………!」

 

その剣を後ろに飛び退いて避ける。

 

「ヴァレンシュタインさん? いきなり何を!?」

 

僕が問うと、ヴァレンシュタインさんは再び剣を構えながら、

 

「私は………強くなりたい…………」

 

静かに………それでいて強い意志を持ってヴァレンシュタインさんは呟いた。

 

「昨日、君と戦ったベートさんが………ランクアップを果たした…………私も君と戦えば………何か掴めるかもしれない………だから、私と戦って欲しい………」

 

そう言うと、再び僕に向かって斬りかかってきた。

 

「ッ…………!」

 

僕は汗を拭くために持っていたタオルをマスタークロスで強化。

更に捻って槍状にして、ヴァレンシュタインさんの剣を受け止めた。

 

「まだ………!」

 

ヴァレンシュタインさんは、鍔迫り合いはせずに刃を滑らせ、連続で斬りかかる。

ヴァレンシュタインさんの剣は確かに速く鋭い。

並の人間なら、即細切れにされていることだろう。

でも………

 

「はっ!」

 

僕はヴァレンシュタインさんの剣に合わせるように、槍を打ち付けた。

 

「ッ!?」

 

ヴァレンシュタインさんが弾かれ、大きく後退する。

僕はその隙を逃さす追撃する。

槍を振り回し、先ほどの攻防から判断したヴァレンシュタインさんがギリギリ対処できる速度で攻撃する。

 

「はっ! せいっ! でやぁっ!」

 

横薙ぎ、切り返しての逆の横薙ぎ、更に棒の逆側を使った切り上げ。

 

「くっ………」

 

ヴァレンシュタインさんはギリギリで防ぐ。

 

「………そこ!」

 

振り上げた後の隙を突いてヴァレンシュタインさんが突きを放つ。

狙いは良い。

でも、その程度のスピードじゃ到底捉えられない。

槍を即座に戻し、ヴァレンシュタインさんの剣の切っ先をよく見て…………

 

「ッ……………!?」

 

ヴァレンシュタインさんが目を見開いて驚愕した表情を見せた。

何故なら僕は、ヴァレンシュタインさんが突いた剣の切っ先に槍の切っ先を当て、受け止めていたからだ。

 

「………信じられない………!」

 

ヴァレンシュタインさんが驚愕している内に僕は剣を弾き、間合いを取る。

僕はそこで構えを解き、口を開いた。

 

「今の打ち合いで、気付いたことがあります………」

 

ヴァレンシュタインさんは怪訝そうな目を向けてくるが、構えは解かない。

 

「僕は武闘家です…………そして、武闘家の拳は、己を表現するものだと教わりました…………そして、剣士の剣もそれは同じだと思います………」

 

「…………………」

 

「ヴァレンシュタインさん………あなたの剣から感じたのは、強くなりたいという強い想い………いえ、焦燥感と言って良いでしょう………それを感じました………そしてその裏側にある、『何か』に対する激しい怒りと憎悪も…………違いますか?」

 

「ッ……………!」

 

ヴァレンシュタインさんは僅かに動揺を見せる。

それが僕の言った事が真実であると確信が持てた。

 

「………怒りや憎しみ…………強い感情の爆発は確かに力になります………それは否定しません…………でも、それじゃダメなんです」

 

その言葉を切っ掛けにヴァレンシュタインさんが斬りかかってくる。

まるで今の言葉を否定するように。

僕は槍を軽くひと振りする。

 

「あっ!」

 

たったそれだけで、容易くヴァレンシュタインさんの剣はその手から弾かれた。

弾かれた剣が甲高い音を立ててヴァレンシュタインさんの後方に転がる。

僕は彼女の喉元に槍を突きつけながら、

 

「怒りや憎しみで手に入れた力は…………無駄に体力を消耗させ、何よりその心に大きな隙を生み出します。 その隙を突かれれば、今の通り大した力が無くとも、あっさりと敗れ去ります。 そして、その力に頼っていれば、その力が敗れ去ったとき、成す術がなくなり、一気に絶望に飲まれてしまうんです」

 

「…………なら…………どうすればいいの………?」

 

ヴァレンシュタインさんはどこか縋がるような表情をしながら問い掛ける。

僕は一瞬考えるが、すぐに答えた。

 

「………明鏡止水」

 

「明鏡………止水…………?」

 

「……………曇りのない鏡の如く、静かに湛えた水の如き心…………今のあなたが強くなるには、それが必要です」

 

「………………」

 

「…………とりあえず、僕は毎朝この時間にここにいます。 答えが出たら、また来てください…………」

 

僕はそう言うと市壁の上から飛び降り、ギルドへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side エイナ】

 

 

 

 

私がいつも通りギルドに出勤し、受付窓口の準備を始めたとき、

 

「ねえエイナ。 昨日の噂話って知ってる?」

 

同僚のミィシャがそんな事を言いながら話しかけてきた。

 

「噂?」

 

思い当たることのない私は聞き返す。

 

「そうそう。 信じられないんだけど、あの【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者のベート・ローガさんが昨日の夜、路上で喧嘩して負けたんですって」

 

「えっ!?」

 

ミィシャの言った言葉が信じられなくて、私は思わず聞き返す。

【ロキ・ファミリア】のベート・ローガといえば、Lv.5のオラリオきっての実力者。

彼が負けたとなればよほどの事だ。

 

「しかも紙一重とか互角の勝負とかじゃなくて、完膚なきまでに一方的な展開だったらしいよ」

 

その言葉に絶句する。

ベート・ローガは数少ないLv.5の中でも名の知れた実力者だ。

Lv.6が相手でも、そこまで一方的な展開にはならない。

となると、相手はオラリオでも唯一のLv.7【猛者】オッタルぐらいしか思いつかない。

でも………

 

「それと、更に信じられないことにローガ氏を倒した相手が、見た目が新人冒険者にしか見えないヒューマンの少年だったそうよ」

 

私は更に言葉を失った。

その話が本当ならオラリオに2人目のLv.7が出現したってことに………

 

「その現場を目撃した冒険者によると、そのヒューマンの少年は白い髪に赤い目をした兎をイメージさせる外見だったらしいよ」

 

その言葉を聞いて、今までとは違う意味で言葉を失った。

私、その人物にものすっっっっっっごく覚えがあるんですけど!

すると、

 

「エイナさん! おはようございます!」

 

噂をすれば何とやら、件の人物が姿を現した。

 

「おはよう、ベル君」

 

私は笑顔で挨拶するけど、口元がヒクついているのを自覚する。

 

「ベル君、すこーーーーーーーし“お話”しようか………!」

 

 

 

 

 

 

【Sideベル】

 

 

 

僕がいつも通りギルドに行ってエイナさんに挨拶すると、エイナさんはヒクついた笑顔で挨拶を返し、

 

「ベル君、すこーーーーーーーし“お話”しようか………!」

 

有無を言わせぬ迫力で別室に連れて行かれた。

別室の椅子に座り、エイナさんと向かい合う。

 

「そ、それでエイナさん…………お話とは………?」

 

明らかに機嫌が悪そうなエイナさんに対し、僕はビクビクしながら尋ねる。

エイナさんは笑顔だが、目が笑っていない。

 

「ベル君、私ね…………ついさっき面白い噂を聞いたんだ♪」

 

何だろう?

エイナさんの顔は笑顔で、声も音符がつくほど軽やかそうなのに、何故か冷や汗が止まらない。

 

「う、噂ですか………?」

 

「うん♪ その噂の内容がね、【ロキ・ファミリア】のベート・ローガ氏が新人にしか見えないヒューマンの少年と喧嘩して負けたっていうものなんだ♪」

 

「ギクッ!」

 

「それでそのヒューマンの少年の容姿が、白い髪に赤い目の兎をイメージさせる見た目だったんですって♪」

 

「ギクギクッ!」

 

エイナさんは僕の肩にポンッと手を置き、

 

「さあ、どういう事か説明してくれないかなぁ………!?」

 

こめかみに怒りの筋を浮かび上がらせ、ヒクついた笑顔で迫ってきた。

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

僕は情けなく声を上げた。

でも、エイナさんは容赦してくれない。

 

「ベル君。 君、冒険者登録したの半月前だよね?」

 

「は、はい…………」

 

「その時にLv.1って報告したよね?」

 

「は、はいぃ………」

 

「じゃあどうしてLv.1の君がLv.5のローガ氏を圧倒できるのか教えて欲しいなぁ………!?」

 

「ひえぇぇぇぇぇっ!」

 

エイナさんは僕が怯えるほどの威圧感を持って僕に迫っていたけど、突然その威圧感を消し、身なりを正した。

 

「ベル君」

 

「は、はい」

 

今までとは違う澄んだ声。

 

「このままだと君、Lvの虚偽報告で迷宮の探索を禁止することになるよ?」

 

「ッ………!」

 

「ベル君…………私の事………信じられない?」

 

エイナさんは寂しそうな表情を見せる。

 

「……………ッ!」

 

そんなエイナさんの顔を見て僕は決心した。

 

「エイナさん。 エイナさんは【神聖文字(ヒエログリフ)】は読めますか?」

 

「えっ? う、うん………簡単な物なら………」

 

僕は頷き、

 

「これからエイナさんに、僕の【ステイタス】を見せます」

 

「ええっ!? ベ、ベル君………私そんなつもりで言ったわけじゃ…………」

 

「いえ、どの道エイナさんには近々僕の【ステイタス】をバラそうと思ってたんです。 安心してください。 神様には話をしてありますし、神様からは僕がエイナさんを信じられるなら話しても良いと言われました。 それに、スキル欄にはプロテクトが掛けてあるそうなので大丈夫です。 僕の異常性を理解するには、Lvとアビリティ欄だけで十分だそうです」

 

「ベル君…………」

 

エイナさんはほのかに嬉しそうな表情を浮かべると顔を引き締め、

 

「今から見るものは誰にも話さないと約束する。 もしベル君の【ステイタス】が明るみになるようなことがあれば、私は相応の責任を負うから。 君に絶対服従を誓うよ」

 

真剣な表情でそう宣言した。

 

「い、いや、服従って…………そこまで深刻にならなくても………」

 

僕はそう言うが、エイナさんは首を横に振り、

 

「ううん。 冒険者にとって【ステイタス】は一番バラしちゃいけないもの………それを見せてくれるっていうのなら、私も相応の覚悟を負わないとフェアじゃない」

 

「エイナさん………」

 

エイナさんの真摯な姿に、再度この人は信頼できると確信した。

 

「では、これから【ステイタス】を見せます」

 

「うん」

 

エイナさんは真剣な表情で頷いた。

 

「あ、言っても無理かもしれませんが、僕の【ステイタス】はかなり特殊なので覚悟してください」

 

「えっ? う、うん………!」

 

エイナさんは心の準備は出来たと言わんばかりに表情を引き締める。

でも、僕の【ステイタス】は違う方向にぶっ飛んでるから多分無理だろうな。

そう思いながら僕は服を脱ぎ始めた。

すると、

 

「うぇええええええええええええっ!?」

 

まだ【ステイタス】を確認していないのに、突然エイナさんが叫んだ。

僕がエイナさんを見ると、エイナさんはさっきの覚悟ができた表情はどこへ行ったのか、驚愕の表情をしながら僕を指差していた。

 

「べ、ベル君…………そ、その体………」

 

あ、そういえばエイナさんって僕の体見るの初めてだっけ。

 

「あはは! 僕って着痩せするタイプなんですよ」

 

「いや、着痩せとかそういう問題じゃ………えええっ!?」

 

でも、エイナさんが叫びたくなる気持ちも解る。

服を着ていると、14歳にしても小柄でヒョロヒョロなモヤシっ子に見える僕が、服を脱いだらムキムキの細マッチョな身体をしているのだ。

一般人なら普通に驚くだろう。

 

「これでも、師匠の下で6年間修行を続けた武闘家です。 このぐらいは当然ですよ」

 

「ぶ、武道家ぁ!?」

 

神様も似たような反応してたなあ。

慌てふためくエイナさんを見て、思わず笑ってしまう。

 

「それよりエイナさん。 【ステイタス】の確認を」

 

「はっ! う、うん………! そうだったね!」

 

エイナさんは気を取り直し、僕の背中に回る。

すると、何を思ったのかエイナさんが僕の背中に手を触れた。

 

「わっ!? エ、エイナさん!?」

 

突然のエイナさんの行動に僕は驚いた。

 

「あっ! ご、ごめんベル君! ちょっと気になっちゃって………それにしても、すごい筋肉だね………本当に鉄みたい」

 

どうやら僕の筋肉が気になったようだ。

もしかしてエイナさんって筋肉フェチとか?

いや、それは無いか。

一瞬思い浮かんだアホな考えを振り払う。

多分、想像と全く違う僕の身体が気になって触ってみたってところだろう。

気を取り直して、エイナさんが今度こそ【ステイタス】を確認する。

 

「……………………」

 

エイナさんが無言になる。

気配から、何度も何度も読み返している様子が解る。

そして、

 

「な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

驚愕の大絶叫がその口から放たれた。

僕は、あははと苦笑する。

 

「ア、アビリティの【武闘家】はともかくとして、Lvが東方不敗!? しかもアビリティ数値がおかしい………っていうか、そもそも数値じゃないし!」

 

いつもの凛とした表情はどこへ行ったのやら、エイナさんは狼狽えまくっている。

 

「べ、ベル君! これって一体どういうことなの!?」

 

エイナさんは僕に詰め寄る。

 

「正直、僕にも神様にも詳しいことはわかりません。 分かっている事は、東方不敗というのが僕の師匠の名で、僕が会得した武術の流派の名前でもあります。 アビリティ欄の言葉も、流派東方不敗の謳い文句といいますか………まあ、そんなようなものです」

 

「……………信じられない事ばかりだけど、確かにこれじゃそのままギルドに報告はできないよね………この目で見た私も未だに信じられないし………」

 

「あはは………」

 

思わず苦笑する。

 

「でも………ありがとうベル君」

 

「エイナさん?」

 

いきなりお礼を言われた僕は首を傾げる。

 

「私を信じて、【ステイタス】を見せてくれて」

 

「い、いえ! エイナさんにはいつもお世話になってますし!」

 

エイナさんは微笑を浮かべる。

僕はそれを見て、思わず顔が熱くなった。

すると、エイナさんはふと思いついたように、

 

「ベル君」

 

「はい?」

 

「明日、予定空いてるかな?」

 

「…………へっ?」

 

エイナさんの口から出てきた予想外の言葉に、僕は素っ頓狂な声を漏らした。

 

 

 

 

 




はい、何故かベート君がフライングでレベルアップ。
アイズもベル君に勝負挑んでます。
因みに作者は原作は本編のみでソード・オラトリアは読んでないです。
色々とおかしい所が出てくるかと思いますが東方不敗の気合と根性で吹っ飛ばしてください。
因みに次回は、これまたフライングでベル君とエイナのデートです。
一応、後後のネタでやっておきたいことがあったので。


因みに更新スピードですが、自分はあまり執筆スピードは速くない上、仕事もありますので週一がせいぜいだと思ってください。
では、次も頑張ります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。