その娘、サラ・ウィーズリー。   作:じーじ

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途中、だらだらと長ったらしい文章があります。
読む必要は皆無な文章です。


追記━━少し加筆修正しました。


第2話

お菓子1つについても律儀に説明しているロンの声を聞きながら、サラはぼんやりと窓の外を眺めていた。紅色の列車は、今は荒涼とした風景の中を走っている。もう整然とした畑ものどかな牧場も見えず、暗い森や曲がりくねった道、暗緑色の丘が車窓を流れていく。

 

ふと、コンパートメントのドアがノックされ、サラは顔を上げた。扉のところに立っているのは泣きべそをかいた丸顔の男の子だ。

 

「ごめんね、僕のヒキガエルを見なかった?」

 

どうやら今年も早々にペット探しの生徒が出たようだ。流石に入学前の行きの列車で、というのは初めてだが。

 

サラは首を横に振った。ハリーとロンも同じように首を横に振る。

 

「見ていないわ。一緒に探しましょうか?」

 

サラが提案すると男の子は服の袖で乱暴に涙を拭い、首を横に振った。

 

「だ、大丈夫、きっとすぐ、出てくるから……いつも逃げてばっかりなんだ」

 

慣れてるよ、と言うものの、あまりそういう風には見えなかった。

 

「ごめんね、ありがとう」

 

男の子はしょぼくれたまま、そう言って出て行った。

 

「どうしてそんなこと気にするんだろう?僕がヒキガエルなんて持ってたら、すぐにでもなくしちゃいたいけど……でも、スキャバーズを持ってきたから僕も他人の事は言えないね」

 

言って、ロンは膝の上で百味ビーンズを貪っているネズミを見た。

 

「ご飯じゃないときは本当に動かないんだ。死んでてもわからないよ」

 

まさか、とハリーは言うがサラは苦笑するしかなかった。

 

まさにその通りなのだ、このネズミは。朝夕のご飯の時以外は殆ど寝て過ごし、それ以外に起きるといえばトイレか、サラが研究用に毛を少々頂戴する時くらいだ。

 

「私も何度か生死を疑ったことがあるけど、生きてるわよ、ちゃんと」

 

ハリーが笑った途端、またコンパートメントの扉が開かれた。今度は真新しい、まだ真っ黒のローブを身に纏ったふわふわした栗色の癖毛が印象的な女の子だ。

 

「ネビルの蛙を見なかった?いなくなっちゃったの」

 

ハリーとロンは顔を見合わせ、首を横に振った。

 

「見ていないわ。さっき、男の子にもそう言ったわよ」

 

そう言うが早いか、その子はサラと目が合うなり息を呑み目を見開いた。

 

「ま、まさか………」

 

女の子のような反応には慣れているサラは苦笑した。サラと初めて会う人は大抵こういう反応をするのだ。

 

「サラ…さん?」

 

「『さん』なんて止して、私はそんなに偉くもないわ」

 

「そんな!私、マグル生まれで自分が魔法使いだって知るまで貴女のことを全然知らなくて……ついこの間知ったばかりなんですけど、その、ファンで………」

 

少し鼻にかけたような声でロンが「へえ」と言ったので、ハーマイオニーはサラの正面に座っている彼をギロリと睨み付けた。

 

「貴女の魔法薬や呪文は全て調べました。本当に素晴らしいものばかりで…特に〈完全脱狼薬〉の思考の転換は本当に画期的だと思います。他にも〈増強薬(エネヘィツ)〉や〈反射増幅せよ(ミラージュ)〉も置いてはおけないですし……」

 

よく調べたもので、〈増強薬(エネヘィツ)〉はともかくも、〈反射増幅せよ(ミラージュ)〉はサラの創作した呪文の中でもマイナーだ。それを特別取り上げているものは発表した時の記事くらいだろう。

 

更には、その話し方から〈完全脱狼薬〉の原理は理解、もしくは暗記していることが易く知ることができた。マグル生まれというハンデを持ちながら、まだ入学もしていないというのにこんなにも深い知識の鱗片を持ち、それだけの意欲があるのなら、3、4年にもなればもっと深い話ができるようになりそうだ。

 

そもそも疑問を持つということは、興味を示し、理解しようとした結果だ。こう言っては何だが、興味のない、頭の良くない人間は理解しようともしないせいで疑問を持つことすらない。

 

嬉しくなり、サラは微笑んだ。

 

サラの周りの人間はほとんど誰も、サラの話についていけない。最悪サラに興味は示せど、その内容には少しも興味を示さない。ついていける、もしくはそれなりに理解できるのは僅かに、ホグワーツの教授か魔法省の数人程度。サラにとって、突っ込んだことを気楽に話せる人は皆無だった。

 

「ありがとう。よく調べたのね。魔法薬の原理は理解できた?」

 

「はい!…と言いたいところですけど、〈完全脱狼薬〉の基本的概念の『本来の姿を持続させる』という部分と〈ポリジュース薬〉の材料が上手く結びつかなくて。その人の『人間』の時の体の一部を加えずに、どう『人間体』を持続させているのかがわからないんです」

 

「ああ、鋭いわね。魔法省も同じことを尋ねたわ」

 

そう言うと、ハーマイオニーは嬉しそうに頬を赤らめた。

 

「ありがとうございます」

 

彼女の初々しさに微笑み、サラは続けた。

 

「大切なのは『本来の姿』ということよ。〈ポリジュース薬〉は言わば『偽りの姿をつくる薬』なの。だから〈完全脱狼薬〉にそれは必要ない。でも『本来の姿』に変身するための媒体は必要になる。そこで従来の……〈不完全脱狼薬〉とでも言いましょうか━━━それに使われていたウルフスベーン…もとい、トリカブトを代用する材料の中にリコリスを加えたの。リコリスには、『真偽を惑わせる』というあまり知られていない魔法的効果があるのよ。それは〈ポリジュース薬〉の偽りでもあるし、トリカブトの偽りでもある。この2つの偽りを偽りとして薬自体に認識させないためにリコリスを使ったの」

 

ゆっくりと、ハーマイオニーが飲み下し易いように並べながら話し、間を置いた。彼女は必死にサラの話す内容を噛み砕き飲み込んでいく。脳味噌から猛回転する音が聞こえそうなほどだ。

 

しばらくして、彼女が頷くとサラはまた話を再開した。

 

「………つまり、『本来の姿』とは〈ポリジュース薬〉のつくる姿とは真逆の存在で、本来なら相容れないはずのもの同士。でも〈ポリジュース薬〉はこの薬の基本的概念━━つまり『本来の姿を持続させる』には必要不可欠。それでいてこれに必要不可欠な『体の一部』は最大の偽りであって、『真』を必要とする〈完全脱狼薬〉には不必要な存在なの。………理解できたかしら?」

 

サラが首を傾げれば、ハーマイオニーはゆっくりと頷き、難しい顔をした。その目は、サラによく似た知識に飢えた目だ。

 

「…では、もし体の一部を加えるとどうなるのでしょう?」

 

彼女の問いに、サラは笑みを深めた。

 

「その場合は絶対的な矛盾が生じてしまう。それが解消できないものならば、魔法薬が薬としての機能を失って薬自体の消失、もしくは強制的な水への還元が起こるの」

 

「絶対的な矛盾には耐えられないんですね。……ありがとうございます、勉強になりました!」

 

そう言って頭を下げる彼女と、終始笑顔でいたサラを、ロンとハリーはとんでもないものでも見るような目で見守っていた。

 

「こちらこそ、久しぶりに楽しいお喋りができたわ。ありがとう。また是非、お話ししましょうね」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

何の為に来たのかと聞きたくなるほど満足気に去って行くハーマイオニーの背を見送りながら、ロンが口を開いた。

 

「お喋り?あれがお喋りって言えるのかい?」

 

「何一つ理解できる単語がなかったね」

 

ハリーが言った。

 

廊下からは、ハーマイオニーがネビルに謝る声が聞こえた。

 

 

 

 

 




今回は短めで切りました。次くらいで入学式です。

↓登場した創作呪文等の説明になります。読む必要はないと思いますが一応置いておきます。


━━━創作魔法薬及び呪文━━━

〈完全脱狼薬〉

完成は不可能とされていた脱狼薬の改良版。理性を失うことなく完全な『人間』として満月の期間を過ごすことができる。また、苦味の主な成分であり、砂糖と反応して効能を相殺していたウルフスベーン(トリカブト)をニガヨモギと満月草の根、アスデフォルの球根の粉末、リコリスの球根で代用することで砂糖との反応を解消した。その代わり、多少値が張る。

原材料は従来の脱狼薬(ウルフスベーンの代わりにニガヨモギと満月草、アスデフォル、リコリスを用いる)に加え、クサカゲロウ、ヒル、ニワヤナギ、二角獣の角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切り、月長石の粉末である。

基本的な概念は『人狼であることを解消する』ではなく『本来の姿を持続させる』であり、薬の原料もそれに準じたものになっている。

効果は長く、満月の前日の夜に服用すれば4日後の朝まで持続するため、それまでにもう一度服用すれば計二回の服用で満月を乗り切ることができる。


〈エネヘィツ 増強薬〉

一時的に魔法力や身体能力を増強する。持続時間は個人差はあるものの、約2時間程度。

スクイブが魔法を使えないのは『魔力が無いから』ではなく『魔力が極端に少なく、それを上手く引き出し使うことができないから』という考え方から、彼らの魔力を一時的に増強し、使い方を学ぶ事ができればスクイブであることを多少は解消できないかと開発された。

現在、魔法省から不特定多数のスクイブに薬を提供し、実験を行っている。ホグワーツでは、フィルチが対象としてサラから直に薬の服用と指導を受けている。


〈ミラージュ 反射増幅せよ〉

半透明の半球型ドームを築き、内壁で呪文を反射、増幅させる。ドームを築いた後に内部に向けて発した呪文はドームを透過するが、内部から外へ発した呪文は跳ね返される。また、物理攻撃及び通り抜けも不可能。〈フィニート・インカンターテム 呪文よ終われ〉で解除可能。2次的増幅呪文として考案された。

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