その娘、サラ・ウィーズリー。   作:じーじ

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いつもながら亀投稿失礼します((((
少しずつ増えるお気に入りにニヤニヤしながら執筆してます笑

これからの展開に悩んでいる部分はまだ多少なりともありますが、これからもどうぞよろしくお願い致します。


第3話

「あと5分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いて行ってください」

 

 

あれからしばらく、それぞれに着替えたり駄弁ったりしているうちに列車は霧深い森の中を走り、窓の外はもう暗くなっていた。途中、どこか見覚えのある青い顔の男の子がノックもなしにコンパートメントを開いたが、それを注意しようと立ち上がったサラを見た途端男の子は顔を赤くして一目散に逃げていった。

 

 

 

アナウンスが流れた途端、ハリーもロンも、緊張が一気に押し寄せたのか顔が真っ青になった。

 

「大丈夫?顔色が良くないわ」

 

「だ、大丈夫だよ。ちょっと緊張してるだけ……」

 

ちょっとにしては青い気がしたが、本人がそういうのだからそうなのだろうと、サラは自分に言い聞かせるようにして席を立った。

 

彼は今から、慣れ親しんできたマグル界とは正反対な魔法界に飛び込むのだ。仕方がないと言えば仕方がない。

 

 

 

暗いプラットホームに降りるなり、夜の冷たさが肌を撫でる。ハリーとロンは、黒いローブが埋め尽くす中に、ちらりちらりと見える赤や黄、青、緑の色を青い顔のままぐるりと見渡した。このうちのどれかが、二人の寮となり第二の家になるのだ。次第に彼らの顔に赤みが戻ってきた。

 

サラは色の付いたローブ━━━上級生たちの流れに向かいながら、二人に手を振った。

 

「じゃあ、1年生は別行動だから、ここで一旦お別れね。また同じテーブルで会えるといいわね」

 

「うん、またね」

 

「バイバイ」

 

彼らに背を向けると、どこかから重い足音が聞こえ、懐かしい声を聞いた。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独りでに動いているように見える馬車に乗り込み、揺られること数分、狭い道が急に開け、大きな鏡のような黒い湖の畔に出た。

 

すっかり濃紺色に染まった空と大きな白い月が、黒く塗りつぶしたようなシルエットを浮かび上がらせて、城にはいくつか白い明かりが灯ってより一層際立って美しい。その下に張る湖にはいくつもの小舟が浮かび、その影を照らす小さなランタンが水面にゆらゆらと揺れていた。

 

サラを乗せた馬車を含む集団はそのまま湖畔に沿うように進んで城の門へと吸い込まれ、湖は見えなくなる。しばらくすれば例年通り玄関前で止まり、生徒たちは馬車から降りてぞろぞろと大広間へ向かった。

 

 

 

「おーい、サリー!!」

 

生徒の流れに身を任せ、広間へ向かう途中、ふと、後ろからフレッドの声が飛んできた。振り返れば、向かってくる人垣の向こうに赤い頭が2つ。

 

何か用があるのだろうか、と立ち止まるが人の波が押し寄せて満足に立ってもいられない。残念ながらこの人波では彼らと合流するのは困難だ。サラは人を避けながら廊下の端に寄って壁に張り付き、手を上げた。

 

何故なら背の高い他の兄弟やジニーならともかく、背の低いサラをこの人混みの中から見つけるなど、至難の業なのだ。

 

こうでもしないと見つけてもらえない。自分一人でできてしまうことの方が多い故に、そういうことが、サラにはもどかしくてならなかった。手を上げてやっと、皆の頭越しに見つけてもらうことになんとなく慣れているような、そうでもないような、そんな感覚を覚え自分の身長が更に嫌になった。

 

フレッドとジョージはすぐに人混みを掻き分け現れた。そして壁際でぶすくれるサラを見るなり、揃ってくすりと笑った。

 

「居た居た━━━どうしてそんなに不機嫌なんだい?」

 

ジョージがにやにやと言う。わかっているときの顔だ。

 

「………なんでもないわ」

 

「なんでもないわけないだろう?」

 

拗ねてフイ、と顔を背けるサラの正面に周りながら、今度はフレッドが言う。

 

「当ててみようか」

 

ジョージが引き継いだ。

 

こういう時、サラをからかう時の双子はロンをからかう時以上にすごく楽しそうだ。普段サラをからかう機会が極端に少ないせいか、本当に嬉しそうなのだ。

 

「んー、そうだな……あっ!」

 

わざとらしく顎を擦り、考える仕草をする。

 

「身長が伸びなくて見つけてもらえないから」

 

「「拗ねてるんだ?」」

 

二人はステレオ状態で、更にはまるで合わせ鏡でもしたかのようにサラを挟んで笑う。

 

「…いいじゃない、別に。ホントに伸びないんだもの」

 

サラは唇を尖らせ拗ねたようにムスっと眉間にシワを寄せた。

 

「ジニーも最近伸びて来てるからすぐ追い越されそうだし…こんな人混みでも手を上げないと見つけてももらえないし……」

 

「どこが嫌なんだい?」

 

フレッドが言った。

 

「だから背が低いのが━━━━」

 

「可愛いじゃないか」

 

サラを遮り、ジョージが言う。

 

「なんでもできちゃう完璧人間より、ちょっと背が低くてかぼちゃジュース嫌いな方が可愛げがあって俺たちは魅力的だと思うぜ」

 

フレッドがにやりと笑った。

 

「…天然女たらしね」

 

嫌味たらしく言えば、二人は満面の笑みを浮かべた。

 

「モテ男ってわけだ。嬉しいねぇ」

 

「褒め言葉をありがとう」

 

二人のポジティブシンキングにつられて、思わずくすりと笑う。

 

人波はもう粗方過ぎ去り、人はまばらになってきている。壁際から離れて改めて広間へと向かいながら、サラは微笑んだ。

 

「…ありがと、二人とも」

 

「「どーいたしまして」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━そういえば、二人はどうして私を探してたの?」

 

グリフィンドールのテーブルの前方の空いていた席に座り、サラは思い出したように尋ねた。まだ組分けの儀は始まらないようで、広間には生徒たちのざわめきが満ちている。

 

「ああ、ダンブルドアがさ、話があるから解散したあとここに残っていてくれって」

 

フレッドが答えた。

 

「そうだったの?わかったわ。ありがとう」

 

「「どーいたしまして」」

 

二人が声を揃えて言ったとき、広間の後方がざわめき始めた。振り返って見れば、真新しい黒のローブを身に纏った小さな集団を引き連れたマクゴナガルがどこか誇らしげに胸を張り、真ん中の通路をツカツカと進んでくる。後に続く新入生たちは早足気味だ。

 

「おっ!ロンとハリーだ」

 

黄土色の髪の男の子の後ろを、他と変わらず天井を見上げながら歩いてくる二人を見つけ、ジョージが嬉しそうに声を漏らした。それが聞こえたか、ロンがこちらを向きハリーの肩を叩いて、これもまた嬉しそうにサラたちに手を振った。

 

「あまり緊張してないみたいね」

 

良かったわ、とサラは手を振り返しながら言ったが、フレッドが首を振った。

 

「これからだぜ、これから」

 

サラやフレッド、ジョージは人前でもあまり緊張しない質だが、ロンは違う。今まで兄姉の後ろを歩いてきたせいで、前に立つことそのものに対する耐性がない。

 

案の定、大勢の人を前に振り返った途端、ほんのりと上気していたロンの顔は急速に青ざめた。

 

いつもの通りマクゴナガルは新入生を横一列に並ばせて上座の正面にスツールを置き、その上に組分け帽子を乗せた。すると唐突に帽子のシワが裂けたように動き出し歌い始めた。何人かの、帽子に近い位置にいた新入生は驚いて飛び上がっていた。

 

 

━━━私はきれいじゃないけれど

 

 人は見かけによらぬもの

 私を凌ぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 

 山高帽は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツ組み分け帽子

 私は彼らの上をいく

 

 君の頭に隠れたものを

 組み分け帽子はお見通し

 被れば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 グリフィンドールに行くならば

 勇気ある者が住まう寮

 勇猛果敢な騎士道で

 他とは違うグリフィンドール

 

 ハッフルパフに行くならば

 君は正しく忠実で

 忍耐強く真実で

 苦労を苦労と思わない

 

 古き賢きレイブンクロー

 君に意欲があるならば

 機知と学びの友人を

 ここで必ず得るだろう

 

 スリザリンはもしかして

 君はまことの友を得る

 どんな手段を使っても

 目的遂げる狡猾さ

 

 かぶってごらん!恐れずに! 

 興奮せずにお任せを! 

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!━━━━━━

 

 

歌が終わった。途端に広間は割れんばかりの拍手に包まれ、帽子はそれに応えるように4つのテーブルそれぞれにお辞儀をしてから、また元のようにくたびれた帽子に戻った。一瞬、新入生の列にホッとしたようなざわめきが広がるが、それもすぐに静まっていく。

 

マクゴナガルが巻紙を手に、一歩前へ踏み出した。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組み分けを受けてください」

 

新入生たちの顔がサッと青ざめる。

 

「アボット、ハンナ!」

 

組分けが始まった。金髪のおさげが可愛らしい女の子が転がるように列から飛び出すのをぼんやりと眺めながら、サラは4年前の同じ日に思いを馳せていた。

 

 

 

4年前の今日この時、同じように組分けの儀は行われていた。ウィーズリーであるサラは一番最後だった。全校生徒の前に立たされ、ただただ時間が経つのを待ち、やっと名前が呼ばれたかと思えば、埃臭い組分け帽子で目元まですっぽり覆われてそのままスツールの上にはりつけにされる。

 

だが、サラにとって組分けはどうでもいいことだった。大広間に入る前に待機していた部屋でマクゴナガルに呼び出され、手紙を渡されたのだ。

 

内容は、「どの寮を勧められようとも、グリフィンドールを選んで欲しい。もしそうしてくれたなら、どんなことでも、わしが叶えられることなら何でも3つ、願いを叶えてあげよう」とのことだった。幼いながらに自身の生い立ちや周囲の状況をよく理解していたサラは迷いなく頷いた。だが何故か、サラの組分けはことさら時間が掛かった。

 

組分け帽子曰く「どこの寮でも上手く行くだろう」。

 

だったらサラの望むグリフィンドールに組分ければいいものを、帽子は執拗に「どの寮でも構わないが、特にスリザリンに入れば、間違いなく君は偉大になれる」と宣った。後でわかったことなのだが、何者か(・・・)が帽子に錯乱の呪文を掛けてサラをスリザリンに入れたがったそうだ(ダンブルドア曰く「その者はキツく叱っておいたので大丈夫じゃ」)。

 

結局サラの粘り勝ちでグリフィンドールに組分けられたものの、5分以上経っても組分けられなかった新入生に、当時の上級生たちはかなりざわついていた。

 

今年の新入生にはサラのような『超組分け困難者』はいないようだが、それなりに時間の掛かる子はちらほら見られた。

 

気付けば組分けは進み、いつの間にか『P』の行まで来ていた。

 

「ポッター、ハリー!」

 

今の今まで静まり返っていた大広間に低いざわめきが広がっていく。サラは生唾を呑み込んだ。

 

他の力が加わっていたとはいえ、サラは帽子からスリザリンを勧められた。もしハリーもそうだったらどうだろう。ハリーはちゃんと意思を持って、自らの寮を選択できるだろうか?

 

列から進み出たハリーは固い表情のままスツールに腰掛け、マクゴナガルがその頭に組分け帽子を落とし込んだ。

 

広間は、しん、と水を打ったように静まり返る。

 

誰もが帽子の叫びを待った。だがいつまで経っても、どの寮名も叫ばれない。心臓がうるさいほどに早鐘を打っていた。

 

「…長いな、組分け困難者かな?」

 

フレッドが呟いた。

 

「たぶん…そうね」

 

そうは言いながらも、サラにとって、これ以上彼が目立ってしまうのはあまり歓迎できることではない。彼はこれから、否が応でも目立つのだ。不憫でならなかった。

 

口の中が苦くなるような感覚に襲われ思わず眉間にシワを寄せた。

 

耳の鳴るような静寂の中、まだ組分け帽子はハリーを解放しない。刻々と時間は過ぎていく。我慢できなくなってきた生徒たちはひそひそと囁き合い、次第にそれはざわめきに変わっていく。しかしそれもすぐに尻すぼみに消え、皆固唾を呑んでハリーを見守った。

 

どこが”英雄”を取るのか。”英雄”はどれを取るのか。

 

帽子が動いた。息を吸うように、口のような裂け目が開く。皆が耳を澄まし目を見張った。

 

「グリフィンドォオオオオル!!!」

 

赤のテーブルが爆発した。

 

そう形容してもいいほどの大歓声。拍手。まるで何かに勝利したかのような大騒ぎ。サラの隣でフレッドとジョージが狂ったように歓声を上げていた。

 

「ポッターを取った!ポッターを取った!!」

 

当の本人は帽子をマクゴナガルに返し、大歓声と落胆の声の中、歓喜するグリフィンドールのテーブルに満面の笑みを湛え歩いてきた。そして空いていたサラの前の席に座ると、清々しい笑みで手を差し出した。

 

「改めてよろしくね」

 

 

 

 

 




サラをスリザリンに入れたがった『何者か』。十中八九、あの人でしょうね笑

『3つの願い』については今後言及していくつもりです。
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