ダンジョンで生きるのは間違っているだろうか 作:カクタス
気が付いたらどこかの洞窟の中だったという、突拍子もない事態に包まれながら俺の意識はスタートした。
「…ここ…どこだよ」
そうつぶやいて上半身を起こそうとして、背骨やら何やらが軋んで思わず眉を顰める。どうやら結構長い間ここに放られていたらしい。
とりあえず目が覚める前の記憶を探ってみるが、記憶の中には特におかしな記憶はなかった。普通に学校に行って、普通に家に帰って、普通に布団の中で眠る。日本人の学生のほとんどが繰り返しているルーチンワークだろう。
手も拘束されていないし、一つだけだが出口も普通にあるので閉じ込められているっていう訳でもない。そもそも誘拐犯っぽい人間…っていうか、人すらいないし、そもそも洞窟の中に一人放置されている時点で誘拐っていう線はない。
じゃあ、今の状況は何なんだ?って考えて、そこで俺はとある記憶を思い出した。
可愛い幼女神。急死。転生。特典…この辺の単語が頭の中をよぎる。
つまりこれって、ネットとかでよく見る神様転生ってやつか。思い出した記憶は酷く曖昧だが、いやに納得できてしまうし、恐らく俺の勘違いではないんだろう。
つまり俺は今転生してきたってことか。生まれたての小鹿みたいな感じで立ち上がろう。そして自分の身体を見下ろしてみる。
普通の男の身体だ。胸が出ていたり尻が出ていたり俺の俺がなくなっていたりはしていなかった。同じ性別で転生させてくれたらしい。
ちなみに名前は田中太郎。何?安直すぎるって?知るか。文句なら親に言ってくれ。俺は悪くねぇ。
「よっと」
立ち上がってあたりを見渡してみる。
洞窟だ。だが真っ黒ってわけじゃない。視界に困らない程度には光はあるらしいが、光源がどこだかは見渡した限りでは見つからない。
「…よし、とりあえず外に出てみるか」
ここでうだうだしていても仕方ない。俺はおもむろに歩き出した。
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洞窟から出た先は、中世ヨーロッパのような建物の立ち並ぶ街でした。
っていうか鎧を着た男とか獣耳生やした女の子とか、褐色肌してほぼ下着同然の服を着た痴女たちとかが、武器を担いで洞窟の中に降りて行っているんだが。パーカーとジーパンを着た俺が洞窟から出てきたらものすごく奇妙なモノを見る目で見られたので酷く居たたまれない。
すぐにその場から去って、下の広間まで降りてきた。
「はー…」
噴水の端に腰を落ち着かせて、俺はため息を吐き出した。洞窟からは1,2時間ほどで出ることができたが、運動が苦手の俺にとっては体力を使い果たすには十分すぎる距離だった。足が棒の様だ。きつい。
「…とりあえず俺も武器と防具手に入れたいな…」
目の前で横切っていく冒険者達(仮)を見て、ふとそう思う。だって異世界に来たからには剣とか魔法とか使ってみたいからじゃないか。ちなみに冒険者達(仮)の中には杖を装備したやつもいたので、恐らくは魔法も存在するんだろう。
っていうか、その前に冒険者(仮)にならないとダメなのか。というか風貌的に冒険者(仮)って呼んでるけど、冒険者でいいのかな?テンプレ通りに言えば間違いないと思うが。
「…あのー」
取り合えず情報収集をば。目の前を歩いていた大きなリュックサックを背負った女の子に話しかける。
「…えっと…」
指で自分の事をさして、首をかしげたので、首を縦に振って肯定。君の事だよ君。
「こんにちは。俺、旅の者で最近ここにやってきたばっかりなんだけど…君は冒険者であってますか?」
「…いいえ。私はサポーターです。冒険者様のサポートをさせていただいてます」
そういって、リュックサックの肩掛けをぎゅっと握る。
「今ちょっと時間いいですか?色々と聞きたい事があるんですけど…」
「悪いですけど、リリは今少し忙しいんです。申し訳ないのですが、他をあたっていただけますか?」
女の子…リリ、でいいのか?はすげなくそういって顔をそむけてしまう。
「あー…じゃあ、報酬出すからさ。ほら、これ」
「…これ、は…?」
俺は腕に着けていた2000円ほどのソーラーパネル付きの時計を無理やり小さな手に押し付ける。どうしてもここで話を聞きたいんだよ。
「…少しだけなら」
お、釣れた。
それからしばらくリリさん…リリルカ・アーデさんに質問を投げかけ続けた。話をまとめるとこうだ。
この街は迷宮都市オラリオ。世界で唯一ダンジョンのある都市で、冒険者たちはこのダンジョンを攻略する者たちの事を言うらしい。
冒険者たちは下界に降りてきた神々のファミリアとなって、【神の恩恵】というモンスターに対抗する力を授けて貰って、ダンジョンにもぐってモンスターを倒して魔石を集めてそれをお金にしているらしい。
つまり冒険者になるためには、ファミリアに入らなければいけない、というわけか。
ちなみにリリルカさんはソーマファミリアという場所に入っているらしい。ちなみにソーマが神の名前だ。
「…あなたは、冒険者になりたいのですか?」
「え?まあ、そのつもりですね」
「…そうですか」
リリルカさんの表情に影が差し込む。俺はそれを怪訝に思いながらも、まあ他人について深く詮索する気もないので軽く流してお礼を言って別れる。
「これはちゃんともらっていきますからね!それでは、さようなら!未来の冒険者様!」
冒険者になった暁にはこのリリルカ・アーデをよろしくお願いします!と笑顔で言われた。商売魂のたくましい女の子だ。
どうもカクタスです。
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