エネルが女神様になったら   作:霧のまほろば

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お久しぶりでございます。
先月、海外でパソコンが大破し、心が折れました。この作品も10話程下書きとして保存してあったのですが、全て吹っ飛び、真っ白に燃え尽きました。
先週、帰国しパソコンを新調し、書き直しを始め、一話出来上がったので、投稿します。

此処までお待たせし、申し訳ありません。


第2話 龍の伝説

ーー龍。

青海の前半の海、後半の海ともに伝説、幻想の生き物として歌い継がれる生き物である。

前半の海ならば神として。

後半の海ならば伝説の大怪物として。

一世に七つ。一度生を受ければ千年の時を生き、親が死ぬ直前に子を産み、死んでいく。産まれた子は子供でありながら龍。親の縄張りを求めず、新たに自身の縄張りを求めて飛び立って行く。

そういったサイクルで一つの世に七つの数を堅持している。数千年も遥か太古の時から。

 

蛇のような体躯に、鰐の頭。頭頂には鹿のような特徴的な角。雲を、風を掴んで自由自在に空を翔けるその姿は威風堂々。龍たらんとする威光を振り注ぐ。

一度吼えれば百の艦隊をたやすく沈める大嵐を呼び、腕を薙げば大木を薙ぎ倒す暴風が吹き荒れ、息を吹きかければ街一つ潰す大竜巻を呼び起こし、尾を叩きつければ大津波を起こし大陸を海に沈める。

存在そのものが天災とまで言われる程の存在である。故に古の頃より人々は恐れ、神と崇め敬い、生贄を献上し。

龍の怒りを避けようと、自身が生き残るのに必死になって来た。

 

現に、ロビンの手にある本にはその龍に纏わる伝説がいくつも記されているのだ。其れが逸話であろうとも、その龍の桁違いの力を示す、伝説ーー否、神話。

 

ーー曰く、ポーネグリフに記されている三つの古代兵器は龍に対抗するために造られたものである。

ーー曰く、レッドラインは龍の怒りに触れ、海を割られ大地が隆起して出来たもの。

ーー曰く、空白の100年は世界を龍に支配されていた時期である。

ーー曰く、天竜人は龍に支配されていた時期に龍から解放する為に立ち上がった人々の末裔である。

 

ある人は耳を疑い、ある人は虚偽であると鼻で笑えそうな話であるだろう。

しかし、ここにいる者たち、直にあの雲から飛び立つ龍を見て、その存在を体で、肌で、魂で感じてしまえば笑い飛ばせない。

伝説を、神話をその身で実感した。アレには勝つ事など到底出来ようか。圧倒的な実力差を感じ取った麦わらの一味は一部を除いて戦意を叩き折られていた。

 

 

「………その話も、アレを見てしまえば、真実なんじゃねぇかって思わされるな………。アレが龍か……。ジジイに話に聞いていたが、ここまでとはよ……」

 

冷や汗で背中をぐっしょりと濡らし、火のついていない煙草を気づいていないのか、吹かし、ポツリと呟いたのはサンジ。

彼の養父、ゼフも嘗て“偉大なる航路”に入り、新世界にまで進出し、凄まじい威力の蹴りから【赫脚のゼフ】と呼ばれる海賊になった。

もしも、自身の為に片足を失っていなかったら、大海賊の一角に至っていたであろう、養父の言葉。

 

『ーー新世界には数多の化け物みてぇな大海賊がいるが、その他に龍と呼ばれる化物がいる。そいつらだけは絶対に何があっても怒らせちゃならねぇ。命がいくつあっても足りねぇ。俺が見た龍はまだ小せえ子供だったが、ほかの龍と縄張争いで島一つ沈めているんだ。あんな地獄、もう二度と味わいたくねぇ……』

 

と体を震わせながら紡いだ言葉。ゼフの青褪めた顔が頭にこびりつき、離れそうにも無かった出来事。ゼフに此処までの恐怖を与えた龍が近くにいる。それだけでサンジの心は折れかけていた。

 

 

ロビンも今までの旅の中で見てきたポーネグリフにも龍についての記載があったのを思い出し、顔を硬ばらせる。まさか、此処で出会う事になるとは予想もしなかったわ、と紡ぎ、その言葉を写した本を開く。

 

「ポーネグリフにも龍についての記載があったわ。確かーー」

 

ーーー天厄にして災害。何人たりとも龍の領域に踏み入る事は許されない。用心せよ、一度踏み入ればその身に災厄が降りかかるであろう。されど、救いを、一心に心から願う者には救いを与えるであろう。

違えることはならぬ。龍は災厄。

合間見れば、一切の望みを捨てよ。生きて還ろうなど愚の骨頂。龍の前にあらゆるものは無に還るであろうーーー

 

シン……と痛いほどの沈黙に包まれる。

ポーネグリフの歴史は、遥か太古ーー千年以上遡ることができる。

そして、ポーネグリフの技術は今の技術でさえ製造不可能とされる。文字の読み書き、彫刻の技術は今もワの国のとある一族に受け継がれているが、その他に知るものは居ないと言われ、古代文明の一端を現世にまで語り継ぐ碑石である。

島一つを消し飛ばすことのできる古代兵器を生み出した科学力を有する、古代文明ですら龍の存在を恐れていた。

それがロビンの中で、恐怖の元となっていた。

しかし、戦々恐々とした雰囲気を崩したのはエネルの言葉だった。

 

「ええと、あの龍は比較的おとなしい子ですよ。前に一回戦闘を交えた後にお話してみましたら、『殺生は好まないが、手合わせ程度にやり合うのならば問題無かろう。主とよくやり合うのも主が中々の強者であるからだ』……と申していましたし。恐らく、龍の間では戦うという事は、娯楽の一環なのでしょう。尤も手加減されていますが、私が本気で挑んで漸く引き分けに出来る、と行ったところでしょうか」

 

一度生を授かれば、千年近い時を生きる龍にとって、退屈は己を殺す。その退屈を紛らわすのが戦うという事だった。縄張り争いもその退屈を紛らわす一環なのだ。

 

「……娯楽で島一つ沈められたり、天災で壊滅させられるこっち側からすれば溜まったもんじゃないわよ!」

「ちょっと待たんか!エネル、いつの間にあの龍とやりあっておるんじゃ!?」

 

ため息混じりに頰に手を当てて放った火種が見事に引火して爆発したのが約二名。

航海士であるナミとエネルの養父であるガン・フォールだ。

 

「最近でいうならば、ええと……先月の末辺りでしたっけ」

「………ああ!道理でか!」

 

ガン・フォールの脳裏にある出来事が思い浮かんだ。

先月の月末に未曾有の大災害が勃発した。

神の島から程なく離れた雲海の上空で。

轟く雷鳴に不気味な唸りを立てて吹き荒れる嵐。時折閃光を放つ雷と白雲を巻き上げ、吹き散らす大竜巻。

龍の特徴的な胴体が渦を巻く大竜巻から見え隠れしていることから龍が暴れているだろうという事が分かる。しかし、何と戦っているのだろうか、と不安そうに話し合っていたのを思い出した。

その原因が真逆目の前で頰に手を当ててため息を吐きながら、木の根に腰掛けるエネルだとは想像もしなかった。

はっ!?いや、今思えば、半年に一回程で起こる大嵐。それも真逆……?

 

「あ、はい。私と龍の模擬戦……?ですね」

「なんちゅうことしとるんじゃい!?」

 

目が飛び出んばかりに驚愕するガン・フォール。養子に取り、神の座を譲ったエネルが真逆、怒らせたら空島など容易く滅びてしまうような龍と遣り合っていたなど思いもしなかった。

一気に老いたかのように暗い雰囲気を背負って落ち込む元神。

 

ーー儂、カボチャ畑にうつつを抜かし過ぎておった。天変地異の元凶の片割れが此処に居ったとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、だ。

話を戻すとして。

 

元々の話はどうやって黄金の鐘を取り戻すか、だが。黄金の鐘のある雲塊は龍が寝ぐらにしている、超危険地帯。アラバスタ王国で味わった激戦が生温い、いや濃厚バニラアイスにロイヤルハニーをぶっかけた激甘ソフトクリームアイス並みの地獄が待ち構えるであろう超危険地帯だ。

メタな話をするならば、始まりの村のステータスの勇者がラスボスである魔王と戦うと言えば分かるだろうか。又はグランドライン入りする前の実力のクルーで覇気全開の四皇に挑むとか。うん、絶望的すぎる。

もし、取り戻すならば、龍と本気の戦闘ーー殺し合いになるのは見えているだろう。

この中の誰かが二度とこの地を踏めなくなるかもーー否、全滅しても可笑しくない。

ゴクリ、と生唾を飲み込む音がヤケに波紋をうつ。

 

「あ、ちょっと席を外しますね」

「え、ちょっ!?エネル!?」

 

突如立ち上がり、雷の太鼓の輪を出現させ、バリッと音を立てて雷と化したエネルの姿が消え去る。

そして、同時に空を咆哮が轟き渡り、神の島に住む鳥が鳴きながら四方に飛び去り、獣が怯えて森の奥深くに逃げる。

ザァッと上空が暗くなると、龍の巨体が太陽の日を覆う。一瞬で影も雲に隠れるが、龍の存在感は紛れもなくそこにあった。

龍が戻ってきたのだ。ピリッとした緊張感が辺りを支配し、誰かがゴクリ、と唾を飲み込む音が風の音にも消されず響く。

そんな緊張感をぶち壊したのは再びバリッと音を立てて現れたエネルだ。

 

「ふぅ、一応お話してきたところです。『黄金の鐘を取り戻したい?寧ろ邪魔だったから別に構わない。ーーただし、手合わせを頼む』だそうですよ」

 

龍と戦いという、事実上の処刑宣告にムンクの叫び張りの表情を浮かべたのはウソップ、ナミ、チョッパーの三人。ルフィ、ゾロは好戦的に笑い、肩をグルグルと回したり、骨をならしたりしている。サンジもそんな二人に呆れたような表情を浮かべつつも、腹ごしらえの料理を作る為にメリー号に引っ込む。

ワイパーやカマキリらシャンディアの戦士のなかでも手練れの者たちも手に持つ槍や銃火器の点検を始める。

が、そんな男どもに待ったを掛けたのはラキだ。首を傾げ、怪訝な表情を浮かべて。

 

「ねぇ?エネル。さっき、龍は黄金で巣を作る習慣があるって言わなかったかい?それだと、黄金の鐘が邪魔ってどういう事だい?」

「ええ、それがですね。龍は黄金を溶かして形を自由自在に作り直して巣を作る習慣があるのですが、何故か黄金の鐘だけは溶かせなかったのだそうで、放置したままの状態なのだそうです」

 

黄金の鐘。一説によると、1000年以上前に栄えた、ある王国で作られ滅びた際に末裔の者たちによって持ち出され、此処まで運ばれたという。製造方法から何の目的で造られたのかすら全てが謎に包まれ、代々伝承してきたシャンディアの民ですら詳細は知らない。

故に、龍でも手出しできない理由もそこに秘められているのかもしれない。

 

「そうかい……。ま、今は龍との戦闘に気を置かなきゃね。………カマキリ、死ぬんじゃ無いよ」

「……ああ。どんなに無様でも生き延びてみせるさ」

「私が絶対に死なせません。それが神の役目なのですから」

 

強い意志を感じさせる瞳で頷くエネルに、ニッと笑ってみせるラキ。

手合わせ、と言ってもそもそも種族としての基礎が桁違いに強大な龍が相手なのだ。エネルは雷の身であり、優れた覇気使いであるから龍とも渡り合えるが、カマキリたちは何の能力も持たない生身の人間なのだ。覇気の扱いだって少し出来る程度。万が一に死を見ることにもなるかもしれないからこその不安だ。

 

「ワイパー!本当に行くの!?相手は龍なんだよ!?」

「アイサ……。黄金の鐘は俺たち、シャンディアの最後の悲願だ。何としてでもなしとげなきゃならねぇんだ。分かるな?」

「でもっ!死んちゃうかもしれないんだよ!?」

 

涙を浮かべる少女ーーアイサに薄く微笑むワイパー。

 

「ああ、そうかもな………。エネルのおかげでシャンドラの都は俺たちの元に帰ってきた。それは感謝している。だが、黄金の鐘も先祖の悲願なんだ。親父やお袋、ジジイやオババよりも昔から命懸けだったんだ。だから、俺たちも命を懸けにゃならねぇ。それに、エネルに頼みっぱなしじゃ、あいつも安心して彼奴らと一緒に行けねぇだろ?」

「………!」

 

ハッとするアイサ。

龍のインパクトで忘れてしまっていたが、私たちは麦わらの一味に何を頼んでいたか?

ーーエネルを連れ出してほしい。過去に犯した罪に縛り付けられ、若くして神という一種の生贄になってしまった女性を解き放って欲しいという願いをしたではないか。

 

神の座はスカイピア、空島の王と言える立場であり、民衆の憧れと尊敬を集める立場だが、エネルにとって、それは反対の面を持っている。

エネルはビルカという国で生まれ、幼い頃に食べた悪魔の実の力の暴走で国を滅ぼしたという余りにも大きな十字架がある。彼女にとって神の座というのは罪として、贖罪しなければならないという呪縛の象徴として自分を縛り付けていた。

エネルは死ぬ時まで神の座で人々の為に尽くすのが贖罪だと思っているが、ガン・フォールを始め、スカイピア、シャンディアの民達は悪魔の実の暴走なのだからエネルに非は無いだろう、亡くなったビルカの人々も自分たちの死にいつ迄も縛られて欲しくは無いだろうと思っているが、中々口に出せる様な問題では無い。そこにやって来たのが麦わらの一味だ。彼らの暖かい人柄、自由奔放な雰囲気に触れ、この一味ならばエネルを託せる、と決断したのだ。

 

「そっか、そうだよね。……あたい、皆を信じて待ってる!」

「えらい!よく言ったね、アイサ!」

 

撫でぐり撫でぐりと乱暴にだが、暖かい撫で方だった。ラキも不安なのだろう、想い人であるカマキリが死地に赴くのだ。不安に思わない人間などいないだろう。そんな時のアイサの言葉だ。

自分がカマキリを信じなくてどうする。こんな男でもやる時はしっかりやる男だ。気持ちよく見送ってやるのが女の役目だと言わんばかりの思いを込めた撫で方だ。

アイサも乱暴な撫で方に抵抗するも、満更でも無さそうに頬を緩ませていた。

 

「エネル様ーッ!」

「どうしましたか?」

「ハァ……ハァ……、はぁ、やっと出来ましたよ、試作第8号!」

 

広がる森の奥、スカイピアの方から荷車を引いた男たちが息も切れ切れに走ってくる。

その顔は疲労困憊で有りながらも達成感、満足感、興奮を纏めたような輝いた顔だった。

その口から出た言葉は何よりの朗報。

 

「えっ!?本当ですか!?」

「はい!今回は自信作です!いや、最高傑作と言っても良いくらいですよ!」

「……!ワイパーさん、皆さん、試してみてください!」

 

おう、と荷車に置かれていた五つのスケート靴のようなスキー板のような靴と、筒のようなものが二つ付いた腰当てを手に取り、足に装着していく。

装着していくワイパーたちに説明する為に運んで来た男のリーダーが説明を始める。

 

「第7号までは風貝を2個踵部分だけに装着して色々な装備や調整を行いましたが、この試作第8号は風貝を噴射貝に変更し、踵に1個、靴底に2→個。そして、此方の腰当てには噴射貝一個と風貝2個の風向きを一定に整えた装置を両脇に2個ずつ装着したものです。流石に絶滅種の噴射貝のため五セットしか作れず、扱い難いものとなりましたが、元より身体能力が極めて高いシャンディアの戦士の方々ならば使いこなせると思います」

「だ、大胆な変更ですね……」

「ワイパー達、大丈夫なのかねぇ……?」

 

何処かのロボットに使われていそうな数の噴射貝と風貝。

噴射貝は只でさえ一個でも凄まじい風力を誇る貝だ。空島の大型船も一個だけでも快速船を称できる。そんな噴射貝をこれでもかとばかりに一人の人間の装備に取り付けているのだ。

胸を張る男の反面、体が持つだろうか、と不安になる一同だった。戦士達本人も頬を引攣らせ、訪れるかもしれない死を覚悟したそうな。




七つの龍。
デルトラクエストの七色の竜を参考にしました。色も七色のつもりです。
空島の龍は黄金の龍をイメージしてください。


いつの間にか龍とやり合っていたエネル。
神の座に就いて直ぐに龍の襲来があり、それを食い止めた事からなし崩し的に模擬戦を定期おきに行う事に。
現在、空島で手加減した龍と真っ向勝負できるのはエネルのみ。


試作第8号。
君もこれを履けば空を飛べる!(超人向けの商品です)『一般人が使えば体がバラバラになります』
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