ツナの炎によって骸のどす黒いオーラが浄化された。
戦いが終わると、ツナの額の炎は消えた。
「マフィアが骸さんに近付くんじゃねぇびょん!」
柿本と城島は立てないのか、体を引きづりながら骸の下へ行こうとする。彼らにとって骸はただのボスなどではないのだ。
「お前達はエストラーネオファミリーの生き残りか」
「少し違う……俺達は、そのファミリーのモルモットにされたんだ」
簡単に分けるとマフィアには二つの者が存在する。一つはファミリーと自分の持つシマに住む人々を大切にし、守るマフィア。キャバッローネがいい例だろう。
もう一つは、エストラ―ネオファミリーのような実体実験や腎臓売買などをする非道なマフィアだ。現状では後者の方がまだ多い。
「骸さんはあの地獄から俺達を救い出して、居場所を作ってくれたんだ!それをおめーらに壊されてたまっかよ!」
「でも、俺だって仲間を傷つけられて黙っていられない。そこが、俺の居場所だから」
彼らだって必死に生きてきた。彼らなりに大切なものがある。だが、それはツナにとっても同じ事だ。同じものを壊していいはずがない。
医療班が到着したと思ったその時、骸達の首に首輪が巻きついた。先に着いたのは医療班では無く、マフィア界の掟の番人、
「沢田、あいつらに関わるのは止めておけ。それが
首輪に付けた鎖を引き、骸達を連れて行った。
復讐者が消えた後、医療班が到着し、負傷者を運んだ。
ツナも初めての超死ぬ気化した所為で体を酷使し、体の負担が今になって帰ってきた。あまりの痛さでツナは気絶した。
「六道骸か……三日月なら知ってそうだな」
遥はぼそっと呟くと、歩き出した。
骸との戦いが終わってから五日後、遥はイタリアに来ていた。
「久しぶり、母さん」
遥と獄寺の母、ラヴィーナは十一年前に病気の発作で亡くなった。獄寺の誕生日の五日後の事だった。
車の運転中に発作が起こり、崖から転落。遥とラヴィーナを乗せた車は地面に叩きつけられ、遥も重症だった。そんな遥を救ったのが三日月だった。死者はどんな事をしても生き返らない。三日月はラヴィーナの亡骸を弔い、当時、遥が住んでいた家の近くの教会に墓を建てたのだ。この墓の場所を知っているのは遥と三日月だけだ。
「弟にあったよ。十一年ぶりだから相手の方は覚えちゃいないけど。次に来る時は姉弟で来るよ」
菊の花を墓の前に置き、その場から立ち去った。
母の墓を後にした遥はある場所に来ていた。それはボンゴレの本拠地である城だった。監視の目を掻い潜り、人目が付かない城の裏手の壁を叩いた。すると、ボタンが現れ、そのボタンを押した。物音を立てずに、近くの花壇に下へと続く階段が現れた。階段を下りると辺りは真っ暗だった。
「確か、ここら辺にボタンがあったはず」
暗闇の中、壁に手を当て、ボタンを探す。すぐにボタンは見つかり、押した。すると、入口が閉じ、暗闇の地下に明かりが灯った。
道なりに進んでいくと、階段が見えた。その階段を上がり、壁に設置されたボタンを押した。物音を立て、壁は動き出した。遥が出て来た場所はある部屋だった。部屋に出ると壁では無く、本棚が動き出し、道を閉じた。
「そこが開いたと思ったら君か」
「はい、久しぶりです。ボンゴレ九代目」
遥が通って来た道は避難用に作られたボスしか知らない抜け道だったのだ。だが、天下のボンゴレに喧嘩を吹っかけようとする馬鹿はいない。その抜け道も名だけのものになっていた。
「表からは行ってきなさいとあれほど私は言ったよ?」
「いやぁ、それじゃあドッキリになりませんし、私の存在は貴方しか知りませんよ」
遥はいたずらっぽく笑いながら言った。それに九代目ははぁとため息を吐いた。
「どうだい、綱吉君は?」
「そうですね、六道骸一味を投獄した、超直感にも目覚めた、一石二鳥で良かったと思いますよ」
遥はソファーに座り、机に置かれていたクッキーを一つ食べた。
「そんな話をするために読んだ訳じゃあないですよね?」
「ああ、不味い状況じゃ。ザンザスが眠りから覚めた」
遥の手が止まった。
ザンザスは九代目の一人息子だ。今はボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーのボスをやっている。だが、八年前に起こしたクーデターで九代目に氷漬けにされたのだ。そのクーデターの真相を知るのはボンゴレ上層部の者だけだ。
「あの氷を溶かす事ができるのは死ぬ気の炎だけ。一体誰が……」
九代目がザンザスを凍らせた氷はただの氷では無い。歴代のボンゴレボスにしかできなかった奥義、零地点突破と呼ばれるものだ。その氷は高熱の炎でも溶かす事ができない。溶かす事ができるのは対を成す死ぬ気の炎だけなのだ。
「現時点では分からない。だが、ザンザスが綱吉君に手を出さないとは限らない」
「こことは縁がない国で過ごしてきた彼らには荷が重そうですね」
「手は打ってある。家光に連絡はしてある」
「あのリングが動くのか……」
あのリングと言うのはボンゴレの至宝と呼ばれる物だ。そのリングの為にどれだけの血が流れたかことだろう。
リングは代々ボスになる者に授けられていく物だ。そして、リング自身がボスに相応しいかを見極めるのだ。
「大丈夫じゃ、彼ならきっと」
「……私はこれで失礼させていただきます」
遥は立ち上がり、来た抜け道から帰ろうと本棚に手をかける。
全てで四段ある本棚の一番上の棚に入ってある一番右端の本を三段目の左から二番目の本と入れ替えると本棚が動き出した。
「……弟の事、ありがとうございました」
遥は九代目にそう言うと、階段を下りて行った。