時間はすぐに去っていくものだ。一学期も終わり、今は夏休みだ。学生にとって休みとは天国。そう言っても過言では無いだろう。だが、遥にとってはそうでもなかった。
「あのー冬香さん、トイレに行きたいのですが……」
「分かった」
遥は立ち上がり、トイレに行こうとする。後ろを振り返ると冬香も付いて来ていた。
「えーっと、冬香さんもトイレ?」
「そんな訳無いでしょ?脱走しないか見張っているのよ」
ゴゴゴゴという効果音が付きそうな身構えで冬香は言った。
すると、遥は冷や汗をだらだらに流しながら席に戻った。
「トイレはいいの?」
「お、思い違いだったよ!さ、始めよっか!」
それから一時間後……。遥はまだ悩んでいた。
「銅の化学式?っていうか化学式って何!?」
「この前教えたじゃん!はぁ、一からまた説明しないといけないのか……」
冬香は呆れ気味で言った。実を言うと遥の学力は本当に危ない。もしかしたら留年という可能性もあるのだ。そして来年には受験を控えている。三年生で二年生の範囲が分からないのは本当に危ないと冬香は思い、夏休みに部活以外の時間のほとんどに勉強の時間を入れたのだ。約一ヶ月で一年から二年の範囲の応用まで。二学期からは余った時間に三年生の基礎を教えていこうと冬香は計画していた。
運動はクラスでも群を抜くのだが、勉強はからっきしだった。それに比べ、冬香は勉強は完璧。運動は人並みより少しできるといった具合だった。
「っていう事。こういうのは雑学でも結びつけたら面白いよ」
「そうなのか……」
雑学以前に基礎ができていないのだ。冬香は頭こそは良いが、教えるのは下手くそのようだった。
数時間、このような具合で進んでいき辺りはもう真っ暗だった。
「ただいまー」
「おかえり」
出かけていた三日月が帰ってきたようだ。
「今日、神社で祭りがやっているんだって。二人で行ってきたら?」
「いいの?」
「うん。楽しんできなよ。お金は渡すからさ」
三日月が財布から札を取り出すと、遥がスッと取った。さっきの疲れはどこにいったのやらと冬香は思った。
「行こうぜ!」
「うん!」
神社に付くと、焼きそば、わたあめ、他にも金魚すくいなどの遊びを含めたいろんな屋台が並んでいた。
年に一度の祭りだ。人も多かった。
「最初は何を食べようかなー」
「たこ焼きは!」
「良いね!」
二人はたこ焼きの屋台の前に行った。たこ焼きも祭りのメジャーだ。多くの人が並んでいた。
「行列だね……」
「腹減ったからな。もっと空いている所に行こう」
遥はそう言い、他の屋台を回った。たこせんと書かれた屋台を見つけ、丁度空いていた為たこせんを食べる事に。それからも他の所へ行き、二人の両手には食べ物ばかりになっていた。
「わたあめ!」
「チョコバナナ!」
遥はわたあめ、冬香はチョコバナナといい、それぞれが欲しい物を買ってからまた会おうと言って別れた。
それから数分、ずっと食べる、歩く、食べるの繰り返しをしていた。遥は食い意地が凄いが、冬香は大食いのイメージが無いが、彼女もかなり食い意地が凄かったりする。
「そう言えば、沢田君と山本君、獄寺君がチョコバナナの屋台をやっていたよ」
「ん?ああ、沢田ね。あいつ、本当に強いのかな?」
遥は前にツナが不良に絡まれていた所を助けた事があったのだ。あの時見た限りではそうは思っていなかった遥だった。
「でもさ、あの顔……どこかで見た事がある気がするんだよね」
「どこで?」
「それが分かったら苦労はしないよ。どこだったかな……?」
冬香が頭を抱え込みながら悩むと、それを見た遥も思い当たる節を探すが見当たらなかった。ただそれを忘れているだけという事もあるのだが。
「まぁ、それは置いといて、射的対決でもしない?」
「それいいね!負けた方はたこせんをおごりで!」
「またたこせん?」
「美味しかったよ?」
二人の会話は人ごみの中に消えっていった。