仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第二話:Gは止まらない/黄金狂時代(2)

 次の日には、『黄金仮面』の事件はすでに報道されていた。

 昨日の晩に襲った店も、実は裏で海外の窃盗グループとつながりがあったようだった。その証拠とされるデータや金品受け取りの動画が、そこかしこにアップロードされていた。

 

 報道機関のコメンテーターやキャスターたちは、彼を愉快犯と非難しつつも、「被害者にも責任があるのではないか」と被害者の側にも辛口だった。

 一方でSNSなどでは、彼のふるまいを公然と称賛し、

 

「『黄金仮面』は、この腐った世界に風穴を作る、新時代のヒーローだ!」

 

 などと、快哉の声をあげる者さえいた。

 

 では、仮面ライダーダークドライブ、泊英志にとってはどうなのか?

 

 

 

「まっ…………たく面白くない」

 

 

 

 と、大学の講義を終えたエイジは、タブレットでそのニュースに触れたとき。そうつぶやいた。

 何しろ思わせぶりな態度で引っかきまわしてくれた相手が、世間ではもう片方のニューヒーローよりも知名度と人気を上げている。楽しかろうはずがなかった。

 

「ダークドライブのほうがよっぽどヒーローしてるっての」

 そう愚痴をこぼしながら、彼は徒歩で駅まで向かっていた。

 さすがにネクストライドロンで通学するわけにもいかず、かといって車を購入する金銭的余裕もない。

 

「……りんなさん、バイト代出してくれないかなぁ……くれないよねぇ」

 とぼやきつつ、下校の途につく。

 

 その道中、まだ自然の残る県境の河川敷に、異様なまでの人だかりができていた。

 人垣の間から垣間見えるのは、敷かれたブルーシートや黄色いテープ。そこに何かしらの事件性を感じたエイジは、歩道から下りてその群れのなかに混じった。

 

「なにかあったんですか?」

 

 うまいこと最前列に潜り込んで誰にともなく尋ねると、

 

 

「あぁ、なんか死体が出たらしい」

 

 と、そのうちの誰かが軽い感じで答えた。

 群衆のなかには、写真を撮って自分のネットコミュニティにリアルタイムでアップしている人間もいた。心底どうかしているとは思ったが、それだけ、人は変化や刺激を求めているのだろう。

 

「おっ、なんだ。エイジじゃねぇか」

 

 現場の検分を終えたらしい刑事のひとりが、エイジに声をかけた。

 そろそろ白髪の混ざり始めた、見るからに昔気質の頑固おやじ。無骨な顔つきは、よく見知っている。

 

「現さん」

 

 と、彼も父たちにならって愛称で呼んで、頭を下げた。

 追田現八郎(げんぱちろう)

 父進ノ介と同じく刑事。捜査一課の課長で、特状課の元関係者でもあり……何より信じられないことにりんなの夫でもある。

 美女と野獣とはまさにこのことか。あの才媛が一体この男のどこに惚れたのかは知らないが、婚約時は悶着があったらしいものの、今でも夫婦仲は良好だった。

 

「なんか、死体出たって聞いたけど」

「あ、あぁ~。まぁ、そうなんだがよ」

 

 短く刈り上げた頭の後ろをバリバリを指でかき鳴らし、巌のような顔をさらに険しくさせている。

 だが、その口調はいまいち煮え切らない。

 

「捜査一課が出張ってるってことは、ひょっとして殺人?」

「デカの仕事に、ガキが口はさむなっ!」

 

 と、うかつなことを尋ねると、頭の上に鉄拳が飛んでくる。

 

「いって!」とその理不尽さを責めるも、当の本人は聞き分けのない子どもに大人としてケジメを果たしたとでも思っているのだろう。悪びれる様子もない。

 これだから、このオールドタイプの刑事は苦手なのだ。

 自分の我やポリシーは押し通すくせに、こちらに対する理解や尊重はぜったいにしない。おまけにすぐに拳やボディランゲージで訴えてくる。

 それこそ子どもの時分には、めいっぱい泣かされたものだ。

 

 ただ、この時のゲンコツや怒号には、反省の色こそないものの、ごまかしのようなものを感じさせた。

 やがて、自分の感情を隠すことに我慢できなくなったのだろう。バツが悪そうに、口をもごもごと動かした。

 

「つか、わかんねぇ」

「わかんねぇ……って、どういうこと? 現さんなら、身元や死因ぐらい見れば」

「だから、こっちが現場入りする前に、持ってかれちまったんだよ! あの嬢ちゃんに!」

 

 と、太い指が現場の方向を突き出した。

 まるでその訴えを遮るかのように、黄色いテープで封鎖されていく。

 

 さらにその前に、すらりとした影が立ちはだかった。

 

 二十そこそこ、さほどエイジとも年頃の変わらない女性だった。

 ワインレッドのロングジャケット。濃紺のブラウス。スリムタイプのパンツに、華奢なシルエットがよく似合う。胸や腰のベルトの金具は炎やハートがあしらわれていて、同じブランドで統一されていた。

 顔つきはやや濃いめだが、凛とした表情とマッチしていて、十分に美人と言えた。

 

 さすがの鬼刑事も、女性相手には恫喝や暴力は向けられないのだろう。

 言いたいことを必死にこらえる感じが、逆に妙に情けなかった。

 

「なぁ、……えーとセンターボーイの」

「インターポールです」

「福井さん、だったか?」

「照井です」

 

 わざとやってるんじゃないか、と疑いたくなるほどの記憶違いを、女性は抑揚なくひとつずつ訂正していく。

 それから人生で一度も笑ったことがないような仏頂面で、淡々と説明した。

 

「この男の遺体は、インターポールで引き取らせてもらう。一年前から我々がずっと目をつけていた人物なので。警視庁へはいずれこちらより説明を。それまでは、介入はどうか無用に願います」

 

 と、本当に最低限だけの情報を与えるだけ与えて、答えは待たずにきびすを返す。

 その一瞬、刺すような視線がエイジを捉えた。彼自身には、そんな風に感じた。

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