「まったく、巣穴からぞろぞろと虫のように」
呆れと嘲りを含んだギルガメッシュの笑声が、戦場に雷鳴のように轟く。
「そうやってお前たちはまた先送りにする。いずれ来る破滅からも、人の悪性からも目を背けて」
幾重にも重なる、王たちの嘲笑。
彼らの、いや彼の言葉には、たとえ極論だったとしても、道理があるのかもしれない。だが、今こうして揃った仮面ライダーたちの姿を見ても、その黄金の英雄が唱えたような感想を、英志はどうしても持つことができなかった。
「それは違う」
と、胸を張って前に出て否定することができた。
「彼らは……僕たちは、人の善意を疑うから行動するんじゃない」
父泊進ノ介は、その職業柄、むしろ多くの人間の悪意に晒されてきたはずだ。ロイミュードが悪に奔ったそもそもの原因は、人の悪意にこそあると結論づけた。だがそれでも彼は、人の可能性を信じて戦い続け、その身をもって人間の価値を証明してきたはずだ。
ならば何故、立ち上がるのか。
今なら、はっきりとわかる。
「僕たちもまた、今を自分の意志で生きているからだ」
英志の得たその解に、ギルガメッシュは沈黙で対した。
「結果がどうとかじゃない。相手が信じられないかどうかじゃない。僕たち自身が今、彼らを守りたいから戦うんだ」
その英志に、春奈が続いて歩み寄った。
「――たしかに、お前から見れば短絡的に見えるかもしれない。結果からしたら間違いだった愚行もあったのかもしれない」
細められた彼女の眼が、その父親を捉えた。
「頭ではどうすることが正しいかわかっているのに、その理屈と行動とが、矛盾することだってあるよ」
みずからの胸を服の上からぐっと押さえ、アユムが低く呟いた。
しかし、
「だが、すべては今その時を生きた人間の善意や信念からの行動だった」
すべてのわだかまりを振り切って、照井春奈はまっすぐ先を見据えた。
「みんな、心に従っての決断だった。後悔はある。罪悪感も。それでも、その痛みがあるからこそ、また心に従って前を見据えて進んでいける」
天空寺アユムは、胸の前でぐっと拳を固めて、強く言い切った。
「今を生きる人々の明日のために、
泊英志は腕に巻いたネクタイを掴む。そこからあふれ出る想いのままに、自身の熱を言葉に替える。
「ギルガメッシュ。たしかにお前とは、背負った過去の重さは違うかもしれない。お前は、誰よりも未来を見通しているのかもしれない。けれどもお前には、『今』がない。だから、お前に世界は渡せない」
ここまで静観を保っていたギルガメッシュは、その気力を鼻で嗤って吹き飛ばした。
「笑わせるなよ、エイジ。お前はそうやって誰かの受け売りを、その時の都合にいいように使いまわしてるだけだろうが」
核心に近いところを、容赦なく痛打してくる。
しかし英志はもう揺るがない。
「それでも構わない」
と、言い切る。
「誰かの受け売りだったとしても、その人々から引き継いだ願いは、僕が感じた心は本物だ。だからその言葉を紡いでいく。いつの日か、その想いが誰かの心を救うように……それが、僕の
ドライブドライバーのアドバンスドイグニッションを回す。
〈ACCEL!〉
T3ガイアメモリのウィスパーを鳴らす。
ドライバーを炎とともに自分の胴へと転送させ、眼魂のボタンを、掌で押して起動させる。
シフトブレストにネクストスペシャルシフトカーを走らせる。
アクセルメモリを、T3アクセルドライバーのスロットへと挿し込む。
〈アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー……!〉
オレ眼魂をゴーストドライバーのカバーの中へと収めて、いく。
彼らと相対する少年は、ぐっと何かをこらえるように唇を噛みしめ、まぶしげに瞳を揺らしていた。
今にも泣きそうな表情のまま、だが獣の本性が彼の奥底から引き出されていく。
〈NEO〉
その迷いを無意味だと切って捨てるように、情の通わない音声が彼を胴回りで響く。
残された行程はただひとつ。
その言葉を、ただ口にするだけで良い。
「変身!」
〈DRIVE! TYPE NEXT!〉
「変・身!」
「変身ッ」
〈レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!〉
「ゥアマゾンッッッッ!!」
自分たちの姿を取り戻した若き仮面ライダーたちは、誰が示し合わせたわけでもなく、ほぼ同時に、一直線に駆け出し、力と意志とを激突させた。
怪人とライダーたちが彼らに続き、瞬く間に乱戦へと突入した。
天地が裂ける混沌の世界。
人と神、破壊、再生と守護、そして現在と未来の運命を定める大戦は、今ここで幕が上がった。
Final Drive……
「お父さんは無くしたわけじゃない! 他人に託した想いが、力が……つながっていく。いつか自分へ巡って、さらに世界は広がっていく。それこそがムゲンの魂だ!」
「俺たちはまだ何も終わっちゃいない……何も始めてさえ……いなかったんだァ!」
「ただあいつは、せめて最後の一瞬まで生きていていいと、その罪だけは、赦してやれたらと思った」
「決着の時だ人間……! 泊英志ッッ!」
「見せてやる! これが僕たちの……オーバードライブだ!」
「ずっと思ってた。あんたの手を、ちゃんとこうして握れたらって」
〈Start Your Engine!〉
最終話:父よ、あなたはだれに今を託すのか