仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第八話:スタートミッション2035(10)

「まったく、巣穴からぞろぞろと虫のように」

 

 呆れと嘲りを含んだギルガメッシュの笑声が、戦場に雷鳴のように轟く。

 

「そうやってお前たちはまた先送りにする。いずれ来る破滅からも、人の悪性からも目を背けて」

 

 幾重にも重なる、王たちの嘲笑。

 彼らの、いや彼の言葉には、たとえ極論だったとしても、道理があるのかもしれない。だが、今こうして揃った仮面ライダーたちの姿を見ても、その黄金の英雄が唱えたような感想を、英志はどうしても持つことができなかった。

 

「それは違う」

 と、胸を張って前に出て否定することができた。

 

「彼らは……僕たちは、人の善意を疑うから行動するんじゃない」

 

 父泊進ノ介は、その職業柄、むしろ多くの人間の悪意に晒されてきたはずだ。ロイミュードが悪に奔ったそもそもの原因は、人の悪意にこそあると結論づけた。だがそれでも彼は、人の可能性を信じて戦い続け、その身をもって人間の価値を証明してきたはずだ。

 

 ならば何故、立ち上がるのか。

 今なら、はっきりとわかる。

 

 

「僕たちもまた、今を自分の意志で生きているからだ」

 

 

 英志の得たその解に、ギルガメッシュは沈黙で対した。

 

「結果がどうとかじゃない。相手が信じられないかどうかじゃない。僕たち自身が今、彼らを守りたいから戦うんだ」

 

 その英志に、春奈が続いて歩み寄った。

 

「――たしかに、お前から見れば短絡的に見えるかもしれない。結果からしたら間違いだった愚行もあったのかもしれない」

 細められた彼女の眼が、その父親を捉えた。

 

「頭ではどうすることが正しいかわかっているのに、その理屈と行動とが、矛盾することだってあるよ」

 みずからの胸を服の上からぐっと押さえ、アユムが低く呟いた。

 

 しかし、

 

 

「だが、すべては今その時を生きた人間の善意や信念からの行動だった」

 すべてのわだかまりを振り切って、照井春奈はまっすぐ先を見据えた。

 

「みんな、心に従っての決断だった。後悔はある。罪悪感も。それでも、その痛みがあるからこそ、また心に従って前を見据えて進んでいける」

 天空寺アユムは、胸の前でぐっと拳を固めて、強く言い切った。

 

「今を生きる人々の明日のために、驚きが待ってる未来(サプライズフューチャー)のために、今この瞬間の正義と信念で、僕らは戦う」

 泊英志は腕に巻いたネクタイを掴む。そこからあふれ出る想いのままに、自身の熱を言葉に替える。

 

 

「ギルガメッシュ。たしかにお前とは、背負った過去の重さは違うかもしれない。お前は、誰よりも未来を見通しているのかもしれない。けれどもお前には、『今』がない。だから、お前に世界は渡せない」

 

 

 ここまで静観を保っていたギルガメッシュは、その気力を鼻で嗤って吹き飛ばした。

 

「笑わせるなよ、エイジ。お前はそうやって誰かの受け売りを、その時の都合にいいように使いまわしてるだけだろうが」

 

 核心に近いところを、容赦なく痛打してくる。

 しかし英志はもう揺るがない。

「それでも構わない」

 と、言い切る。

 

「誰かの受け売りだったとしても、その人々から引き継いだ願いは、僕が感じた心は本物だ。だからその言葉を紡いでいく。いつの日か、その想いが誰かの心を救うように……それが、僕の使命(ミッション)だッ!」

 

 ドライブドライバーのアドバンスドイグニッションを回す。

 

〈ACCEL!〉

 T3ガイアメモリのウィスパーを鳴らす。

 

 ドライバーを炎とともに自分の胴へと転送させ、眼魂のボタンを、掌で押して起動させる。

 

 シフトブレストにネクストスペシャルシフトカーを走らせる。

 

 アクセルメモリを、T3アクセルドライバーのスロットへと挿し込む。

 

〈アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー……!〉

 オレ眼魂をゴーストドライバーのカバーの中へと収めて、いく。

 

 彼らと相対する少年は、ぐっと何かをこらえるように唇を噛みしめ、まぶしげに瞳を揺らしていた。

 今にも泣きそうな表情のまま、だが獣の本性が彼の奥底から引き出されていく。

〈NEO〉

 その迷いを無意味だと切って捨てるように、情の通わない音声が彼を胴回りで響く。

 

 残された行程はただひとつ。

 その言葉を、ただ口にするだけで良い。

 

「変身!」

〈DRIVE! TYPE NEXT!〉

 

「変・身!」

 

「変身ッ」

〈レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!〉

 

「ゥアマゾンッッッッ!!」

 

 自分たちの姿を取り戻した若き仮面ライダーたちは、誰が示し合わせたわけでもなく、ほぼ同時に、一直線に駆け出し、力と意志とを激突させた。

 怪人とライダーたちが彼らに続き、瞬く間に乱戦へと突入した。

 

 天地が裂ける混沌の世界。

 人と神、破壊、再生と守護、そして現在と未来の運命を定める大戦は、今ここで幕が上がった。




Final Drive……

「お父さんは無くしたわけじゃない! 他人に託した想いが、力が……つながっていく。いつか自分へ巡って、さらに世界は広がっていく。それこそがムゲンの魂だ!」

「俺たちはまだ何も終わっちゃいない……何も始めてさえ……いなかったんだァ!」

「ただあいつは、せめて最後の一瞬まで生きていていいと、その罪だけは、赦してやれたらと思った」

「決着の時だ人間……! 泊英志ッッ!」
「見せてやる! これが僕たちの……オーバードライブだ!」


「ずっと思ってた。あんたの手を、ちゃんとこうして握れたらって」


〈Start Your Engine!〉

最終話:父よ、あなたはだれに今を託すのか
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