「さぁ、お前たちの」
〈いや、『お前』の罪を数えろ!〉
仮面ライダーダブル。
二人で一人の仮面ライダーは、理知的に口元に尖った指先を添わせてから、押し寄せる敵の集団を掲げた指先で糾弾する。
正確には、それら無数の機影の裏側にある、たった一個の野望へ向けて。
だが、その跳躍は、その猛攻は、インテリジェンスとは遠い獣の動きだ。
〈ARMFANG!〉
右腕が強化デバイスと化したファングメモリの一角をプッシュする。腕から伸びた『牙』が、マスカレイドを模した敵を刈り取っていく。
そんな彼らの前に、巨漢が立ちはだかった。
マグマドーパント。その全身からほとばしる炎熱が、周囲の空気を歪めながらゆらめく。
雄叫びとともにそれがたぎり、火山岩のごとき球体が発射された。
着弾とともに、火柱をあげるそれらを、ダブルはかわしていく。
地を駆り、宙を駈け、上下左右あますとこなく駆使して火球を避けながらそしてマグマの頭上に到る。
雄叫びとともに自身の機体をもってそれを迎撃する。ファングジョーカーの動きが、その中空でようやく留まった。
だが、彼らはそのままペースを奪わせる気は毛頭ない。
〈おおおおぉ!〉
左が雄叫びをあげる。
彼の扱うサイドは、本来出力としてはファングメモリよりはるかに劣るジョーカーメモリ。
しかしそのメモリとユーザーの相性の良さ。そして持ち主の意思に呼応して能力を無尽蔵に引き上げるというその特性は、加齢による劣化の気配を見せはしない。むしろ、ファングの敏捷性さえも逆に引きずるような力強さで、黒いハーフボディは一層鋭くその身を研ぎ澄ます。
目の前を遮る焼ける剛腕を斬り除いた彼らは、そのままマグマの身体を天から両断した。
「はァッ!」
地にその足をつけるや、腕の刃を下から振り上げた。
同じ身体から発せられた二色の気合いは、そのまま衝撃波となって白く輝きながら地面を駆け巡り、前方の道を切り拓く。
生じたその間隙に、新世代のライダーたちが足を踏み入れた。
その途上に、マグマを上回る巨大な異物が割り込んだ。
ティーレックス・ドーパントだ。
本来は頭部だけが肉食恐竜の造形で肥大化した形態なのだが、かつてと同じように、この疑似テーマパークの廃材を取り込んでティラノザウルスそのものへと進化していた。
敵味方を問わないその暴れぶりは、英志と春奈を立往生させ、そして彼らとともに変身したもうひとりを引き離した。
そんな彼らの頭上を、ダブルは飛んだ。
〈FANG! MAXIMUM DRIVE!〉
空中でレバーを三連打。その脚部に、マキシマムセイバーが展開する。
「ファングストライザー!」
呼吸を合わせるべく必殺技の名を叫ぶ。
刹那、恐竜のヴィジョンが右脚を包んで牙を剥く。ティーレックスもまた、大きく旋回するダブルの接近を察知してアギトを開けて待ち構えた。
そして古代の記憶から引き出された力は、互いに噛み合った。
純粋な力の衝突は、ダブルの方へと軍配が上がった。
本体たるティーレックスの頭部は鼻先から破壊され、支えを失った身体は、元のガレキに戻って散乱した。
「翔太郎さん!」
着陸したダブルに駆け寄る英志たちの背を衝かんと、マスカレイドたちが殺到する。
だが、その背を一台のバイクが彼らを轢き飛ばした。
そのバイクは、仮面ライダーアクセルはドリフトしながら人の形へと戻り、抜いたエンジンブレードで後続を薙ぎ払い、娘たちの背後を護った。
〈時間がねぇ! お前たちが行けッ!〉
その光景を見届け、翔太朗は鋭く吼え、ショルダーセイバーを半身で構えた。
「ここは俺たちが食い止める」
敵の銃撃や剣撃をその言葉通りに妨げながら、アクセルは横顔を向けた。
「べつに気にしてませんけど、腰のほうは大丈夫なんですか?」
後継機の中にあってその娘は、減らず口を叩く。
対する答えはその場にいた全員の予想通り
「俺に質問するな」
というものだった。
「――まぁ、そうでしょうね。貴方はそうやっていつも、必要最低限ことも言いやしない」
不満めいた愚痴をこぼす春奈に対し、敵を撃退した照井竜は、少しばかりの沈黙の後、言葉を発した。
「……俺は仮面ライダーだ。これからもこれからも、どんなことがあってもそのことを止める気はない。それでも、ただひとつ、これだけは誓っているということがある」
「……それは?」
「俺は死なない。必ず生きて、お前や
マスク越しの父娘の表情は、ただ推測するほかない。
ただ、春奈のほうは複雑そうに、
「父さん」
とちいさく呟いだだけだった。
それだけで通じ合うものがあったらしく、得も言われぬ空気が、和やかに流れた。
〈だァーッ! 不器用にもほどがあんだろこの親子ッ!?〉
たまらず声をあげたのは、翔太郎だった。
「不器用で、半熟で強情で、けど、それでこそ照井竜やアキちゃんの、そしてぼくらの、風都の娘だ」
どこか楽しげに、フィリップは声を弾ませた。
〈にしたって、もうちょっと昔の可愛げを取り戻せってんだ……!〉
その苛立ちを迫る敵にぶつけながら、半ば捨て鉢に吐き捨てた。
〈さっさと行けッ! で、ちゃんとカタァつけて来い!〉
「言われなくてもそうしますよ!」
「それじゃあ、あらためてお願いします!」
それぞれの反応もまちまちに、ルーキーたちは先へと進む。
「大人しく風都に引きこもっていれば、せめて街の滅びぐらいは防げたかもしれないものを」
小さくなっていく後輩たちの姿に覆いかぶさるように、ギルガメッシュのコピー体が立ちふさがった。
呆れとも嘲弄ともとれる口ぶりの彼のベルトは自分たちと同じもの。鎧うパーツはかつての宿敵に酷似し、手にした杖はメタルシャフトをより悪趣味に装飾したかのようだった。
照井はどうなっているか。今彼はまた別の敵と相対している。実質、自分たちと同じ力を持つ敵との一騎打ちだった。
「探偵事務所出張サービスさ。お代はてめぇにツケといてやるよ、
「抜かせ!」
悪意に対して皮肉を返し、ケツァルコアトルスとユートピアの特徴を持つギルガメッシュは、杖を構えて飛びかかった。
だが次の瞬間、重装甲車が悪路と敵陣を踏破し、彼を横合いから吹き飛ばした。
自分たちのマシン、リボルギャリーは、開いたハッチの中に自分の主人たちを取り込んだ。
その内部で眠る、ソファにくくりつけられた左翔太郎の抜け殻。その前で、フィリップはあらためて相棒へと確認をとった。
「一応聞いておくけど、腰のほうはもう大丈夫なんだよね?」
〈あぁ、こんぐらい、どうってこたぁねぇ!〉
ならばもはや、ふたりの間で何かを語らうことはない。互いを信じ、その心と、そして身体をひとつにするだけだ。
〈CYCLONE!〉
〈JOKER!〉
〈EXTREME!〉
ふたたび開いたハッチから、虹を描いてダブルは飛び立った。
緑と黒の両サイドを、プリズムの輝きが繋ぎ止めた姿で。何物にも貫けぬ盾と、すべてを貫く剣を携えて。
それこそがサイクロンジョーカーエクストリーム。
文字通りの一心同体となった、極限のダブルだ。
〈NAZCA……MAXIMUM DRIVE!〉
自身のマキシマムスロットにガイアメモリを装填したギルガメッシュの肩に、幻想の両翼が展開する。
幾何学的な模様を描くそれをもって飛翔し、王は両脚を突き出してダブルを打ち落とさんとした。
〈HEAT! MAXIMUM DRIVE!〉
〈LUNA! MAXIMUM DRIVE!〉
〈CYCLONE! MAXIMUM DRIVE!〉
〈JOKER! MAXIMUM DRIVE!〉
対するダブルの手によって、ビッカーにセットされた四種のメモリの力が、その半身、プリズムソードの刀身に転送され、集約する。
「ビッカーチャージブレイクッ!」
交錯は、眼にも留まらぬ速さで行われた。
ギルガメッシュのライダーキックを正確に読み切ったダブルが回避し、その胴を虹色の極彩色の剣閃が払った。
その切り口で赤熱が膨張する。やがて行き場を失った莫大な地球のエネルギーは、ギルガメッシュの模造品を内部から打ち砕いた。
爆風を背に受けて着地した風都のライダーたちは、彼の娘たちの負担を少しでも減らすべく次なる敵と対峙した。