仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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最終話:父よ、あなたはだれに今を託すのか(4)

 スーツの裾をはためかせ、その身を回転させながら、仮面ライダーであり魔法使い(ウィザード)でもある操真(そうま)晴人(はると)は敵陣の合間をすり抜けていく。

 

 ウィザーソードガンから放たれる剣撃と銃撃が、その動きに合わせるように、グールたちの間をくぐり抜けて、翻弄していく。

 

 鮮やかな手際は軽業師のような、いやそれこそ魔術師のようだった。

 

 アストラルレザーの切先を翻し、肩越しに裏に回す。

 後ろを突くようにして襲ってきた牛の怪物……ミノタウロスのファントムの斧の一撃を、背面で受け止め、いなし、自分の正面へと引きずり出す。

 

「お前か」

 

 その姿を見た晴人は、やや複雑な感情を込めて呟いた。

 それにしても、絶望させた人の形骸をかぶってさらなる絶望を拡げるファントムを、希望も絶望も持たない機械が模倣するというのは、皮肉というか、なんというか。

 

 さらに言えば、このミノタウロスは晴人自身にとっても因縁の深い相手でもある。

 オリジナルとなった奴、それ自体には特別に抱く心はない。ひとりの父親の妄執から生じた産物のひとつだ。

 だがその悲劇の産物が、本来決して交わることのなかった自分と『彼女』とを引き合わせた。

 

 ひとつの時代の節目に、再会を果たしたその『縁』に、虚心でいろというのは無理な話だ。

 

 だが、ウィザードの剣筋にも、照準にも、乱れはなかった。

 追い立てるように乱舞し、やがて片方の角を一剣のもとに両断した。

 

〈フレイム! スラッシュストライク!〉

 

 指輪の魔力を汲み取らせた刀身に、炎がゆらめく。

 反撃の斧をコートにかすらせもせずに避けると、その回転の余力でもって、無防備になった敵の胴を斬り払った。

 

 流し込まれた魔力によって爆散する。そのゆらめく火煙によって生じた陰影から、暗い炎が人の形を取って現れた。

 

 自分の魔力に反応して魔法(じぶん)と同じ体系の怪人が集まっているというのなら、その特性を持つモノはただ一種。ヘルハウンドだ。

 

 影から伸びて実体化した掌から生じた火炎が、ウィザードへと迫る。

 晴人は横に身体を傾けながら回す。

 バックへと飛びながら宙を舞う。その滞空時間の中で、彼はベルトを上下にシェイクさせ、入れ替えた指輪を読み取らせた。

 

〈フレイム! ドラゴン! ボウ! ボウ! ボウボウボォー!〉

 

 その軌道の途上に現れた魔法陣に晴人は飛び込んだ。

 潜り抜けたウィザードのコートを、炎の龍が赤く染め上げる。

 

 その力のほとばしりは、敵の放つ業火さえも我が力へと換えて、取り込んでいく。

 着地と同時に、フレイムドラゴンのスタイルとなったウィザードはスペシャルリングをベルトのバックルへと押し当てた。

 

〈スペシャル! サイコー!〉

 

 胸のドラゴンのレリーフが、突き出して実体化する。その咢から放たれた炎のブレスは、放射され続けていた炎をも飲み込み、ヘルハウンドを跡形もなく焼き尽くした。

 

 その炎の奥で、四体の同型のライダーが迫っていた。

 かつてのビーストを模したものが、同じ顔を並べながら、別のリングをその指へとはめていく。

 

〈ゴーッ!ファッ!ファッ!ファッ!ファルコ!〉

〈ゴーッ!カカッ、カッカカッ、カメレオー! 〉

〈ゴーッ!ドッドッドッドッ、ドルフィー! 〉

〈ゴーッ!バッバ、ババババッファー! 〉

 

 それぞれ別の動物の力が、マントとなって彼ら、ギルガメッシュの両肩に宿っていく。

 あるいは飛行し、あるいは透過し、あるいは潜行し、あるいは突撃する。

 

 上下問わぬ、硬軟、柔剛を織り交ぜぬ反攻は、ここまで優勢に運んでいたウィザードを攻勢を食い止め、翻弄し、そして逆に後退させた。

 

 四方から迫った獣の爪に対し、晴人は支えるように剣で抗した。

 

「魔法だろうと何だろうと、力と物量がすべてを制する。その道理が覆ることは決してない」

 

 ギルガメッシュたちは、脅すような物言いとともにさらに圧を加える。

 晴人はウィザーソードガンを片手で持ち替えながら、晴人は軽やかに笑った。

 

「どうかな」

 

 一度下げた片手を、再び掲げてみせる。

 

〈ドラゴタイム! セットアップ!〉

 その手首にはめられた時計型のデバイスを、ウィザードは起動させた。

 

「そんなつまらない『当たり前』をひっくり返すのが、魔法使いだろ」

 

 そう言い切ったウィザードは、素早く飛び退いた。

 地表を液状化させながら、ドルフィマントを身に着けたギルガメッシュが彼を追った。

 

〈ウォータードラゴン!〉

 その目前に青いコートをまとったウィザードの分身が現れた。

 その裾の下から生えた尾からほとばしる冷気は、水となった大地もろともギルガメッシュを凍り付かせた。

 

〈ハリケーンドラゴン!〉

 両翼の力を頼りに空を切り、緑のウィザードは風を巻き上げながら『ファルコン』を宙で翻弄する。

 

〈ランドドラゴン!〉

 粉塵とともに地面から現れた黄色いウィザードは、正面から迫る『バッファロー』の突進を、自身の爪と怪力でもって食い止めた。

 

〈ファイナルタイム! オールドラゴンッ!〉

 胸の竜で『カメレオン』の潜伏する空間をもろともに焼きながら、晴人の本体は時計の針を巻き戻す。

 

 そして魔法陣を背に浮かび上がった彼の分身が、ふたたび彼と融合していく。

 フレイムドラゴンを素体に、それぞれとパーツが組み合わさっていく。

 

 そして一度高らかに舞い上がった彼は、四色の魔法陣をその足下に発生させた。

 それぞれの魔力が結合し合い、ひとつの巨大な陣を形成していく。

 

 宙に固めた風の塊を蹴り、魔法使いは螺旋を描く。

 巨大な陣の中央を突破し、それを推進力に魔力は膨れ上がる。

 色を加えて、速度を増し、虹の紡錘、あるいは竜そのものと化したウィザードは、その軌道上にあった四体のギルガメッシュを一気に粉砕した。

 

 

 

「――仁藤」

 着地した晴人は、を模倣された友の名を、重い調子で呼んだ。

 

「仇はとったぞ」

 感慨を込めて呟く。

 仮面ライダービースト。ギルガメッシュにその力と姿、そして宿したファントムを模倣された無二の戦友だった。

 その彼は、今……

 

 

 

「死んでねぇよ!」

 ふつうに、晴人の後ろに立っていた。

「あ、聞いてた?」

 ビーストの姿になっていった彼にダイスサーベルで小突かれながら、冗談めかしく晴人は言った。

 

「皆まで言うな。ほら、次行くぞ!」

「おう!」

 

 彼らは慣れた調子で互いに呼吸を合わせて並び立った。現代に生きる魔法使いたちは、それぞれに剣を携え、絶望を希望に変えるべく次なる戦いに身を投じた。




前年と同様、中途半端なところまで書き終えて年越しとなります。
思えば去年は『エイジ』がスネて事故って崖から転落したところだったので、あんまり進んだ実感がないですね。

何はともあれ、年号が変わる前には書き終えたいところです。
それでは、本年はありがとうございました。
来年もよろしくお願いします!
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