仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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最終話:父よ、あなたはだれに今を託すのか(6)

「おらっ!」

 仮面ライダーマッハが旋回させるゼンリンシューターが虚空に轍を描き、下級や死神タイプのロイミュードたちをなぎ倒していく。

 

 ノンストップで前進していくマッハこと詩島剛を防ぎとめるべく、前に進み出たのは、テンガロンハットをかぶった二機のロイミュードだった。虫とも骸骨ともとれる容貌のそれらは、表情も鬨の声もなくそれぞれの銃で際限なく弾を吐き出した。それこそ、荒野のガンマンのように。

 

 剛の脳裏に、かつての友の死相が浮かび上がる。

 それを噛みしめるように、マスクの奥底でぐっと奥歯に力を込めた。かつては同型のロイミュードのコンビ相手に、シグナルバイクを変幻自在に駆使して撃破したが、かつての戦友は今はドライブピットごと地下深くである。

 

 ゆえに正攻法で、有り体に言えば無茶攻めで押し切るしかない。

 被弾を覚悟でマッハは距離を一気に詰める。肩口に弾丸が数発かすめ、重い衝撃が襲う。バランスを崩しながら、剛は駆動音を響かせて彼らの懐に滑り込んだ

 

〈ゼンリン!〉

 

 下から突き上げたシューターが、018のコピーを天高く吹き飛ばす。銃口を向けたガンマン・ロイミュードの後の先を突く形で、モードを切り替え、マッハのシグナルバイクを装填。ゼンリンシューターのトリガーを引く。

 

〈シューター! ヒッサツ! フルスロットル!!〉

 

 絞られたエネルギーの球体が、至近距離からロイミュードの胴体を穿つ。マッハドライバーのバックルを上下させた。

 

〈ヒッサツ! フルスロットル!〉

 

 マッハは高く飛び上がると、縦に自身を回転させる。そして鋭く光線のカーブを描きながら所在無く浮いていた残りのロイミュードを、我が身を持って貫いた。

 

 所詮はコピーである彼らは、コアのナンバーを吐き出すことなく消滅した。だが、彼らとの戦闘は、剛の心の古傷を疼かせるには十分だった。

 

「わざわざあんなもんを用意するなんて、いよいよ性根が腐ってんな、お前」

 

 着地した剛は、忍び寄ってきた金色の擬似ライダーに、マフラーを翻しながら振り向いた。

 

「別に意図して製造したわけじゃない。それだけお前が因果を持つお前だということだ」

 

 ゴルドドライブを真似たギルガメッシュは、そう言う割には、剛の宿縁の最たるその姿を、突き出すように前を出た。

 

 突き出したその両手に、金色混じりの砂嵐が生じてシンゴウアックスとゼンリンシューターとして形作られる。

 

 シューターは剛の右手に未だに健在だ。となれば、奴自身が盗んだマッハやチェイサーのデータから生まれた模造品だろう。

 

 一瞬の沈黙、寸時の膠着。

 次の瞬間、ふたりのライダーはゼンリンシューターを互いに向けて引き絞った。胸部に火の花が咲いた。

 軽く体勢を乱した両者が立ち直るのは、ほぼ同時だった。

 

 そこから見るに、量産型ゴルドドライブは、素のマッハのスペックと同程度の強度と攻撃力と機動性といったところか。

 

 射、打、斬。

 様々な形と色の攻めが尾を引いて剛とギルガメッシュの間を交錯し、互いの装甲を削り合う。

 

 幾度目かの衝突の後、同型の武器で競り合う最中、相対したゴルドドライブの面相を見た時、ふと剛の奥底から笑みが湧き上がった。それは目に見えるほどのものだったらしく、ギルガメッシュの動きに、かすかな怪訝があった。

 

「いや……『そいつ』は人一倍自尊心が強い野郎だからさ。もし今、ここにいたら……自分が他人をパクるのは良くても、自分の技術を盗られたなら、きっと怒り心頭だったろうな、って」

 

 そのことを想えば、暗い喜びがかすかに己の内部に灯る。

 だがそれに身を委ねてはいけない。そうなれば、自分はその男と同じところまで堕ちていくから。

 

「確かに、オレたち家族が背負ったもんは……それこそ英志とは比べもんにならないぐらい、重い罪かもしれない!」

 

 声を張って剛は宣言した。

 馬力において拮抗をさせながら、それぞれの空いた片手は別の動きを見せた。

 ギルガメッシュのシンゴウアックスが振り上げられる。剛の左手には、別のシグナルバイクが納まっていた。友が預けてくれた宝物、シグナルチェイサーが。

 

〈シグナルバイク! ライダー! チェイサー!〉

 

 本来は適合しないはずのそのシグナルバイクが、ドライバーにセットされる。剛の今までの戦闘データを基に、マッハの下半身をチェイサーとしてのそれにリデザインしていく。

 

 マッハ改めチェイサーマッハは、奇しくも再びゴルドドライブと対峙することになった。

 

 左手に転送したブレイクガンナーを腰に据えて、剛はそれを撃ち放った。

 斧刃がマッハに食い込むよりも先に、マズルから吐き出された光がギルガメッシュのボディを吹き飛ばす。

 

「けどもう逃げない。オレ自身の罪も、オレの家族の罪も、向き合って生きていく!」

 

 剛は吼えると同時にふたたびベルトのバイクを抜き取った。そこに、銀色に光る、クモを載せた車体が入り込む。

 

〈バイラルコア! チューン! チェイサーツーメ!〉

 

 シグナルバイクと同じく、オリジナルは未だ凍結されている。これは、ゲットネクスト用の試作品に過ぎない。それでも、かつて敵と見なした力を借りて、友の想いを貸してもらう。そんな心持ちで、剛はその右手に巨大な鉄爪を作り出した。

 

 質量を増したチェイサーマッハの一撃はギルガメッシュのシンゴウアックスを弾き飛ばし、リーチの優位を奪った。

 

〈TUNE……CHASER COBRA!〉

〈ヒッサツ!〉

 

 未だ手にしたブレイクガンナーにも、ゼンリンシューターにも、同じくチェイサー専用のバイラルコアが飛来し、セットされていく。

 

 これがマッハチェイサー流のトリプルチューンといったところか。

 鞭と弓が爪の組み合わさり、長短いずれにも対応した巨大な複合武器が出来上がった。

 

「だから、これが最初で最後の親孝行だ! アンタが残した未練は……オレが全部ブッ潰してやるッ……『父さん』ッ!」

 

 紫立つ光輝を帯びたエネルギーを、剛は後ろに跳躍しながら、ゼンリンシューターを引き金にして一気に解放した。

 

〈フルスロットル!〉

 

 一直線に伸びきった弾道は、ゴルドドライブのボディを穿ち抜いて爆散させた。

 

 頭上を、一台の車が飛翔していく。

 その姿を仰ぎ、剛は無言のエールとともに見送った。

 

 

 ネクストライドロンは、今にも破れ落ちそうな空の中を駆ける。

 基地から放たれる対空砲を、巧みにかわし、みずからハンドルを握る泊英志と、その彼に同乗する照井春奈を目的に届けようとする。

 

 だが最奥にある本拠に接近するごとに、砲撃はより苛烈さを増していく。

 

 拠点の屋上には、空に伸びる光の根元と、ギルガメッシュの姿が見えた。敵の弾幕も、自分たちの限界点に達した。

 英志はトライドロンから半ば振り落とされる形で飛び降りた。

 

 自由落下の速度を借りてブレイドガンナーを振り下ろす。だが大上段から繰り出した渾身の斬撃は、変身もしないないギルガメッシュに、たやすくいなされた。

 

 この程度で倒せるのなら、ここまで状況はこじれていない。

 英志はギルガメッシュの前に転がりながら足をつけた。

 

 春奈もまた、ギルガメッシュと、世界を改造せんとするその装置を英志と挟み込むように降り立って降り立った。

 

 装置の基幹としてして組み込まれているのは、ライドトレーサーと言ったか。あのオープンカーだった。

 

「ギルガメッシュ」

 万感の思いと覚悟を短い言葉に込めて、英志は呟いた。

 

「今更問答は不要だ。もう戯れもいらない。俺が勝つ。……変身」

〈ゼンカイガン!〉

 

 名を呼ばれたギルガメッシュがそう宣言する。腰に据えた眼魂ドライバーのボタンを押す。周囲に浮かび上がったパーカーゴーストたちが彼を包み、一体化して黄金のライダーへと変貌させる。

 

 その光の圧に、苦い敗戦と失敗の記憶が引き起こされる。思わず萎縮してしまいそうになる。

 だが、自分はもう、あの時の自分ではない。

 ドライブの力と名前にすがった頃の、エイジでは。

 

 それに今は、信頼してその命を預けられる仲間がいる。

 

「最後のひとっ走りに付き合ってくれる? 照井さん」

「私に質問するな」

 

 決戦を文字通りに目前にしつつ、いつもの口癖にも関わらず、その口調はどことなく柔らかな調子を持っている。だがそれゆえにこそ、無類の頼もしさを感じさせる。

 

 それぞれの武器を構えたダークドライブとT3アクセルは、因縁の相手に向かって、そして目の前の戦友を信じて踏み込んだ。

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