仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第二話:Gは止まらない/黄金狂時代(4)

 『黄金仮面』との最初の邂逅から、一週間が経過したころだった。

 エイジの通う城南大学久瑠間キャンパスでは、ある講演会がおこなわれていた。

 

 単位とも関係がないうえに講座名からしても『現在の若者の取り巻く問題と憂慮すべき社会問題』などという、その字面を追っただけでも眠くなるようなものだが、エイジはあえてそこに応募していた。

 

 というのも、そのあからさまにつまらない講演会をもうけた人物こそが問題だったからだ。

 郷原(ごうはら)源太(げんた)

 汚職、収賄など何かと黒い疑惑の絶えない国会議員だった。その疑いが向けられるたびに秘書や同僚が逮捕されているが、本人の手に手錠(ワッパ)が下りたことは一度もなく、老獪に切り抜けている。

 

 そして今、『黄金仮面』に狙われている人物。

 というのも、彼が関連している施設がこの三日間に立て続けに襲撃のターゲットにされており、あげくの果てに本人宛に襲撃予告状が届いたとニュースで取り上げられていた。

 

「……となると、やっぱりあのウワサはマジだったってことだよな」

「いい気味だ」

 

 という声も、参加しようとホールに集まった学生たちの間でささやかれている。

 彼らの大半は、講座そのものではなく『黄金仮面』にお目にかかれるかもしれない、という興味本位から来ているのだろう。

 

(まぁ、ヤツを捕まえるために参加してる僕も、ひとのことは言えないけどさ)

 

 今回の演説も、つい先日の贈収賄疑惑と、『黄金仮面』の襲撃騒動による悪評を払しょくするために設けられた対策、というのが一般的な見解だった。

 

(ただ、なんかこの状態、しっくりこないんだよなぁ……)

 

 議員や『黄金仮面』への好悪ではない。もっと全体的な違和感が、エイジの周辺をつつんでいると感じた。

 ただそれが一体何によるものなのかは、エイジ自身、具体的には説明できないでいた。

 

(父さんなら、『モヤモヤする』とか『どんより』なんて言葉を使うだろうけど)

 

 

「くどい! 警察にもインターポールにも、護衛なんぞ頼んではおらん!」

 

 怒号が聞こえたのは、そんな時だった。

 件の郷原議員が、正面玄関から堂々と、ホール入りを果たしたのだった。

 

 ただしその周囲には警官と、それとはまた別のグループが彼の肥満体を取り巻いていた。

 警察側には、現八郎や進ノ介といった顔見知りはいなかったが、それ以外の取り巻きの中に、見た横顔を発見した。

 先日の死体発見現場で、現八郎とやり合っていたインターポールの女性だ。

 

「私は潔白だ! 例のマスクマンは悪人ばかりを狙うのだろうに、なぜ私が襲われることがある!?」

「しかし、予告状が送られてきたのは事実です」

 

 と食い下がろうする彼女をにらみつけツバを飛ばして怒鳴りつけた。

 

「むしろ君たちがそうやって張りつくと、かえって痛くない腹を探られることにもなるだろうが! さぁ、とっとと帰れ! ここは神聖な学堂だぞ、飼い犬が入っていい場所ではない!」

 

 と言って、自身は控室にさっさと

 護衛など不要、といったわりに、子飼いのSPはしっかりと伴って。

 

 女性は露骨に舌打ちした。

 きびすを返したところで、それとなく様子をうかがっていたエイジの視線がかち合った。

 

「……君は」

 

 と訝しむ彼女に会釈し、足早に離れようとする。

 ところが、彼女は

 

「泊英志くん、だな?」

 

 とフルネームで彼の名を呼んだ。

 反射的に足を止めてしまったエイジとの距離を詰めながら、女捜査官は手のひらサイズの端末をいじりながら近寄ってきた。

 

 

「二〇一六年に父、泊進ノ介と母霧子の長男として生まれる。今はここの学生。三か月ほど前、自動車運転免許を取得か」

「……すごいですね。インターポールって、犯罪歴のない相手の個人情報まで簡単に検索かけられるんですか?」

「私に質問するな」

 

 つめたい形相でそう言われてしまえば、「アッハイ」としか返せなくなる。

 そのくせ自分は、

 

「君に確認しておきたいことがあった」

 

 と詰め寄ってきた。

 

「君が免許を取得した日、その久瑠間ドライビングスクールでボヤ騒ぎがあった。だが実際には教習所内の施設に被害はなく、鳴らされたサイレンは誤報もしくはイタズラとして処理された……君もそれを聞いていたか?」

「……いえ」

「そうか。だが妙な話だ。君がその直前にロビーにいたことは、大勢の目撃情報がとれている。そして周辺にいた全員が、サイレンの音を聞いている。なのに君は、それを聞いていないと? そう言えば目撃者が言うには君は走ってどこかへ向かっていたらしいが?」

 

 彼女の詰問は、父の『取り調べ』よりも辛辣で、悪辣だった。

 まず言い逃れができないほどの言質をとってから、矛盾点を突きつけてくる。

 さすがは世界の警察といったところか。

 

(このひと、何を知ってる? 何を探ってる?)

 

 一施設の誤報を鳴らした犯人を、わざわざインターポールの捜査官が捜索しているはずもない。

 となれば、

 

「たしか君のお父上は仮面ライダーだったな?」

「そう、ですけど」

「実はここ最近、黒いライダーが目撃され、『黄金仮面』もどうやら変身するガジェットを有しているらしい」

「あぁ。ネットとかで有名ですよね」

「君が免許をとった後に、二種類のライダーが現れた……これは偶然か?」

 

 彼女の目的は、そこへの追及ということになる。

 

「……あの、もう行っていいですか? 講演がはじまっちゃうので。それじゃ、福井さん」

 

 と、エイジはそれ以上突っ込まれるのを恐れてお茶に濁してその場を去ろうとした。

 

 その背に向けて、

 

照井(てるい)

 

 声が、冷たくぶつけられた。

 なんのことかと振り返ったエイジに、短く切った言葉で、女捜査官は答えた。

 

 

 

「照井春奈(はるな)。それが私の名前だ」

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