仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第二話:Gは止まらない/黄金狂時代(9)

 パトカーが、解放された校門から敷地内へとなだれ込んでいく。

 それと入れ違いになる形で、ダークドライブは空から離脱した。

 

 ネットワークの発達と整備によって、通報や応援要請からの警官の対応は格段に迅速になったといえるだろう。

 だがそれでも、ダークドライブも、ギルガメッシュもそこにはすでにいない。

 

 空飛ぶ猛獣の相手がつとまるのは、同じく飛行できるネクストライドロンでしかない。

 ともすれば自意識過剰ともとれる確信を、ダークドライブ、泊英志は抱いていた。

 

 とは言え、今はあの巨体は影も形も消えてしまっている。

 逆にこうして追跡しているトライドロンこそ、人々の目に触れやすいだろう。

 

 彼はそれ以上ギルガメッシュを追うことをあきらめて、車から飛び降りた。

 用事を終えたネクストライドロンは、そのまま虚空に生じた時空のトンネルをくぐっていった。

 

 学校から数キロはなれた先の湾岸部の埠頭へと着地したエイジは、モニター越しに人気のないことを慎重に確認し、それから変身を解いた。

 もしこのコア集積装置に本物のクリムの意志が宿っていれば『Nice Drive!』などと……は言わないだろう。自分でもわかっているぐらい、あまりスマートとは呼べない顛末だ。

 

「……いよいよ、状況がわかんなくなってきたな」

 

 眼魂がらみの事件かと思えば、ギルガメッシュらはセルメダルや様々なドライバーを手にして現れ、そして真実を伝えないままに煙に巻いて去っていく。そのくり返しだった。しかも九人同じ顔の相手がいる。

 

 彼らがロイミュードのボディを使っている以上、本体の人格や容姿をコピーできるのは当たり前だろう。

 だが少年たちは、自分たちは「意思も記憶もまったく同じ」と言った。

 

「それにあのボディも相当特殊なタイプだ。……りんなさんに戦闘データを解析してもらって」

 

 ひとりごとを口にして頭を整理するエイジは、潮騒のなかに奇妙な駆動音が混じっているのを感じ、

 やがてそれは波の音よりも大きくなっていって、一台のバイクが、目の前を遮った。

 

 ただそのバイクには、ライダーがいなかった。

 

 外見も、並のバイクのものとは一線を画して違っている。

 銀と濃い緑を基調としたデザインのそれは、まるで人とバイクとが融合したかのような、尋常でない造形をしていた。

 赤いヘッドライトが、まるで威嚇する野獣の眼光のようでもあった。

 

(まさか、人がバイクに変形しているんじゃ)

 

 とさえ想像する彼の背後で、

 

「そうか、やはり君か」

 

 と声がかかった。

 聞き覚えのある、まるで氷柱を突き立てるような鋭さと冷たさを帯びた女の声。

 

「照井、さん」

 

 ベルトとブレスをしたままの言い逃れのできない姿で、エイジは女の名を呼び、恐る恐る首を後ろへ傾けた。

 

「自動制御と追尾機能が君だけのものとでも思ったか?」

 

 そううそぶく氷の女(アイスガール)、照井春奈は、ギルガメッシュに向けていたあの銃を構えていた。そうやって変身や逃走をけん制したまま、空いた片手で小型端末を操作した。

 

 電子音とともに、エイジの前方のバイクが、光とともに消滅する。

 自分のダークドライブの操作と酷似していた。

 加えて彼女が言った「君だけのもの」というキーワード。

 

 父譲りの明敏さを持つがゆえに、それらの情報がエイジの中でつながった。

 正体の露見以上に最悪の事態が待っていることに、気づいてしまった。

 

「そう、最新の仮面ライダーは、ふたりじゃない。私は……」

 

 逃げるのも忘れ、完全にエイジは背後へと身体を向けた。

 照井春奈は端末を上着のポケットに納めた。代わりに裏側から取り出したのは、純正化されたガイアメモリ。

 ダークグリーンと銀のツートーンの外装に、赤い端子。表示されているのは、バイクのメーターを模したAの頭文字(イニシャル)

 

 その下にあるボタンを鳴らせば、

 

〈ACCEL!〉

 

 と電子声が埠頭に反響し、くびれのわかるほっそりとした腰に、バイクのスピードメーターのようなバックルが輝きとともに出現した。

 アナログなタコメーターのような円形のものに、デジタル表示形式のメーターを模したものが融合している。

 その中間にあるスロットに、ガイアメモリを挿入した。

 

「変……身ッ」

 

 低くつぶやいた彼女の声に、タコメーターの針が反応した。

 一気にその振れ幅を増し、虚空にメモリのイニシャルと同じヴィジョンが浮かび上がる。

 

 白い光が彼女を包み込む。それを突き抜け現れたのは、

『仮面ライダー』あるいは『鋼鉄の英雄(メタルヒーロー)』と、呼ぶしかない代物だった。

 

 バイクやメモリと同じく、銀を基調にした全身に、ダークグリーンの装甲が要所を護る。

 剣先のように鋭く伸びた一本角を、二本に分かれた付け根が支えている。あたかも兜の前立てか、でなければ「A」の文字だ。

 その下で、ルビーをはめ込んだような真紅の両目が燦然と閃いている。

 

 

 

「仮面ライダー……T3(タイプスリー)アクセル!」

 

 

 

 さながら断罪者の告発のような重みを言葉に乗せて、照井春奈は戦士としての名乗りをあげた。




Next Drive……

「絶対に変身はさせない」

「仮面ライダーは、素人が道楽気分で名乗っていい名前じゃない」

「すべては、あの雪の日からはじまった」

「あの怪物を、ワシらが蘇らせてしまったのじゃ」

「だが気を付けることだ。秘密っていうのは、それが大きいほどに、隠せば隠すほどに、『まさか』という最悪のタイミングでバレるからな」

「いきさつとか理由なんて関係ない! 今この瞬間にエンジンに火がついたら、全力でアクセルを踏む! それが仮面ライダーだっ!」


第三話:疾走の絆
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