仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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間章:暗斗! 仮面ライダーは何度死ぬ??

 遠くない未来、二〇三四年夏。どこかの国……

 極東部に位置するある岩山で、二人の異形の戦士たちが戦っていた。

 

 異形にして、二人の姿は同じ形状だった。

 同じ(マスク)で顔を隠し、同じ黄金の眼球のバックルを胴に巻く。

 そんな彼らがお互いに拳を振るい、蹴撃を打ち合う。

 決着がつかないままに、お互いに雷雲たちこめる断崖を駆け抜けていった。

 

 ただそれでも、両者の間には決定的な相違点もあった。

 ひとつには、色。

 黒を基調としつつも、バリエーション豊かで、カラフルな顔の刻印が彼にはあった。もうひとつの彼は対照的に、金色をベースに同一の獅子の刻印が、要所で牙を剥いている。

 

 ひとつには、力と、技。

 金色の戦士には、他を圧する絶対的な力があった。それをもって、老練な戦闘技術でもって致命傷をいなしつづける『黒』を、呼吸を整える間もなく強引に押していった。

 

 やがて、『黒』の鉄壁の守備にも、蓄積した疲労によって乱れが生じていた。

 彼の肉体がもう十年若ければ、あるいは猛攻をいなし続けて、逆に相手の疲れと焦りを誘い、隙を作れたのかもしれない。

 だが、すでに全盛を過ぎた彼の肉体は、技量だけではスペック差をカバーしきれなかった。

 

 それでも、彼は自分が衰えたことを恥じてはいない。悔いもない。

 一度ならず何度とも死んだ彼にとっては、そうした衰えもまた、生きている証だった。

 

 金色の覇王の、強弓のようなストレートパンチが、そんな『黒』の胸に叩き込まれた。

「ぐあっ!」

 肉体的な限界を感じ取ったドライバーから、変身解除の光が広がり、痛みと衝撃で地を転がる男の全身を包んだ。

 着物や作務衣のような、特徴的な衣服が野草の切れ端や土で汚れ、一体化していた十五個の眼魂が方々に散乱した。

 

「まだ、だ……!」

 

 ドライバーを腰から外した彼は、代わりに∞の装飾が頭についた、白銀の眼魂を取り出した。

 だが彼が恐れていたとおり、力を取り戻し切れていない彼がボタンを押したところで、反応らしい反応はない。ただ、淡く光を放つだけだった。

 

「不完全とはいえ、起動されればそれの相手はさすがに手間だな」

 

 その両者の間に、一本の手が伸びた。

 空中に浮き上がって飛び回る眼魂のひとつをつかみ取ると、もがいて逃れようとする水色のそれを、ツタンカーメンの眼魂をきつく握りかためる。

 悲鳴にも似た軋みが、∞の眼魂を下に置くよう指図するもう片方の手が、男の手を止めさせた。

 

 いつの間にか彼らの周囲には、眼魂を手にした者をふくめ、合わせて八人の同じ顔の美少年が取り巻いている。

 それらをにらみながら、男は歯を噛みしめた。

 

「英雄の魂を、なんだと思ってるんだ……!」

 

 義憤にうめく男に、彼らを束ねる金色の怪人は、腕を鋭く伸ばし、彼の喉輪を締め上げた。

 

「お前こそ、俺たち英雄をなんだと心得る? 対等の友達気取りとは身の程を知れ」

 

 怒りと絶対的な矜持をはらんだ声を発する怪人の傍らで、水色の眼魂をつかんだ少年は、その手に電流のようなものをほとばしらせた。

 

 今まで暴れていた眼魂は抵抗をやめ、少年は手首に装着した腕輪のデバイス……メガウルオウダーに金色の眼魂をセットした。獅子のパーカーをかぶった怪人へと変身し、不敵に笑う。

 召喚した大斧の、刃の付け根にあるユニットに、手にしたツタンカーメン眼魂をはめ込み、柄のトリガーを引いた。

 

〈DAIKAIGAN! OMEGACRASH!〉

 

 天へとくり出した斧の一斬が、虚空に三角形の亀裂を作り出す。その中に広がるのは、星の瞬きさえもない、暗黒の亜空間。

 その中に、魔人は男の生身を放り投げた。

 

「お前は、何度も生き返ってるらしいな。……だったら、生きてるか死んでるか分からない状態に置かれれば、どうなる?」

 

 無明の闇が、男と逃げ惑う眼魂のいくつかを吸い上げていく。

 悲痛な絶叫が、山を揺るがす。

 だが、それは一瞬だった。

 その声ごと空間の口は遮断され、声はパタリと途絶える。

 辺りにはすぐに静寂が戻った。

 

 後に残されたのは、九人の男たちの、勝利の哄笑だけだった。

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