不可思議現象研究所。
そのうさんくさいネーミングにふさわしく、この住職ひとりだけがそう名乗っているだけらしい。
そんな民間組織も、かつては多くの仲間とともに、
この組織の中核にいた人物が、先代の住職である通称『おっちゃん』。
その彼によって仮面ライダーゴーストとしての力を与えられたのが、さらにその先代住職の息子であるゴーストハンター、
彼は、思想犯罪者集団ネオシェードの検挙、バタフライエフェクト事件。そしてエイジが生まれる直前に起こった
「かく言う拙僧も、情報収集に荒事にと、多方面で尽力いたしましてな」
御成はそう得意げにうそぶいたが、まぁこれは聞き流して良いはずだ。
都内で起こった大事件を片付けた彼らはそれぞれの道に進み、事実上ここに不可思議現象研究所は解散となった。
当時住職代理だった御成は研究所の継続を主張していたようだが、誰一人として乗っては来ず、それどころか人望はジャベルに奪われ住職の座はおっちゃんにかっさらわれと、散々なあつかいだったらしい。
それでもタケルだけはさすがに不憫に思ったらしく、学生生活のかたわら、彼をサポートし続けてくれたらしい。
そのおっちゃんが、去年の初頭に行方不明となり、その後遺体として見つかった。
彼の死因を探っていたタケルもまた、その年の夏に姿を消した。
「我々の仲間も捜してくれているのですが、杳として行方は知れず……そこで刑事殿にも、ご協力を仰いでいる次第でして。エイジ殿は、そのお父上のお手伝いでここに?」
「あ、いや僕は父とは関係なく」
「彼のことはどうでも良いでしょう」
答弁しようとしていたエイジの言葉をさえぎって、春奈が進み出た。先ほどのホログラムを映し出し、
「それよりも先ほどの話と、この男がどう関係あるのか。それをお聞かせ願いませんか」
と尋ねた。
「そうでしたな、ポール殿」
「インターポールです。国際警察機構の」
「……中学校の英語の教科書に出てきそうな名前だな」
春奈は口元に手をやりむせ込んだ。
ややオーバーなほどにむずかしい顔をして、御成は首をひねった。
「この御仁、姓名までは名乗られませんでしたな。おっちゃん殿、いえ先代がじきじきにお会いになられ、それからすぐに彼をともなって、行き先も告げずにどこかへと。まぁ先代は元々そういうところがおありの方でしたから、その時には気にも留めませなんだが……まさか、あれが今生の別れとなろうとは」
やや悔恨を口の端に浮かべ、
「せめて場所さえ聞いておれば……」
と締めくくった。
エイジと春奈は、おたがいに軽い落胆の表情を見せ合った。
前後の事情は判明したが、けっきょくこのイダルマという男が何者かまでは分からずじまいだ。
春奈がさっさと席を立とうとした刹那、
「イダルマですか」
背後から、しぶい男の声が降ってきた。
突然会話に割り込んできたあげくに、おどろいて顧みると、門の前であった作務衣の男が、むっつりとした顔のままホログラムを見て答えた。
思わぬ伏兵の出現に、あの春奈でさえ固まっていた。
「知って、るんですか?」
その場にいた全員が硬直するなか、まっさきに呪縛のような混乱から逃れて聞いたのがエイジだった。
男は、重々しくうなずいた。
それに憤慨したのが、御成だった。
「また貴殿は涼しい顔でおいしいところを持っていくゥゥ……! っというか拙僧、それは初耳ですぞっ!」
十本の指すべてをわななかせて歯噛みして、喉と唇を震わせる住職に、男はただボソリと一言
「誰も、聞かなかったので」
とのみ答えただけだった。