仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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間章:金・王・入・都(1)

 夜の闇を突っ切るように、一台のジープが大通りを抜けていく。

 運転態度や速度は交通法規こそ守っているが、ナンバープレートは偽造のデタラメ。内蔵している機能も、実際のところには非合法的な改造がほどこされていた。

 だが、それをとがめる者はいない。

 街の監視カメラはナンバープレートや車自体が登録してあるIDによって即座に感知はできるがこの街では、その車両に関する事件が起こってはいなかったので、その用をなさなかった。

 

 やがてジープは大きくハンドルを切って角を曲がり、より闇の濃い路地へと、工場跡地へと侵入していった。

 

 その荷台には、濃紺の幌がかけられていて、あらゆる光を拒み、闇に溶け込んでいた。

 だれに知られることもなく、闇夜と一体化しようとしていたその車を、頭から照らす存在があった。

 それは、巨大な球だった。

 太陽か月のようにまばゆく周囲を照らしながらも、放つ光輝は青そのもの。

 フロントガラスに投影されたモニターでそれを目視しながら、ドライバーは車を加速させた。

 

 時に直線的に、時に屈折しながらジープにせまり、追い越し、そして進路をふさぐように、地面に落下した。

 すい星のように、あるいは隕石(メテオ)のように。

 

 接地した瞬間、光球は爆ぜた。だがその中から人型の異形が膝を屈した体勢で現れ、ゆらりと立ち上がった。

 黒いボディスーツに星のようなきらめきが浮き彫りになり、流星を模した青いアーマーがさらにその上から彩る。

〈答えてもらおう、その積み荷はなんだ? この街で、なにをしようとしている?〉

 ハウリングをきかせた低い声でつぶやく彼の前で、車は逃走をあきらめて止まった。

 

「プラネタリウムのデリバリーを頼んだおぼえはないんだがな」

 

 その姿を揶揄するような物言いとともに、ドライバーは運転席から通りへと降り立った。

 金髪、碧眼、白皙の美少年。彼……ギルガメッシュの異様な立ち姿にも、その怪人はひるむ様子を見せなかった。

 

「なんだ、お前?」

 

 薄笑いを浮かべ、首を不自然に傾けながら、金髪の王は詰問する。

 対して装甲をまとった男は名乗った。

 

〈仮面ライダー…メテオ。お前の運命(さだめ)は、俺が決める〉

 

 あぁ、とギルガメッシュは嘲笑まじりに相槌を打った。

 

「インターポールの飼い犬か。こんなところまでご苦労なことだ」

 

 その彼の手には、クリアパーツで構成されたドライバーと果実を模したガジェットが握られていた。

 

〈デーツエナジー!〉

 

 手の中でそのロックが解かれると、頭上でジッパーが開いて、異次元へのパスがつながる。

 ベルトにその道具……ロックシードをセットし、現れた蜂蜜色のアーマーを頭からかぶる。ギルガメッシュの全身を包んだ赤褐色のスーツの上から、アーマーが展開する。

 

〈ソーダ! デーツエナジーアームズ!〉

 

 軍楽にも似た民族的な独特の音楽が鳴り響き、その異形の戦士の登場を祝福するかのようだった。

 その音調に見合った、ペルシャ軍の将軍を思わせる外套と装甲の混在した姿。

 群生する果実にも似た飾り紐と宝玉が、首や腰回りに取り付けられている。

 

 展開が完全に終わるとともに、短弓がその手に出現する。上下の弭から鋭い刃が生えたそれの弦を、ギルガメッシュはためらいなく引いて矢を射放った。

 

 わずかに曲線をえがいて飛んでくる矢を、仮面ライダーメテオは裏拳で弾いた。

 そのまま両腕を広げ、構えをとる。

 ホォォォア……という怪鳥音を喉から絞り出し、地を蹴る。

 

 一気に距離を詰めてインファイトに持ち込む。

 だが、ギルガメッシュによる反撃によって、決め手には欠け、拮抗した格闘戦の応酬がつづく。

 

〈OK! MARS! READY!〉

 

 打ち合う拳、そこに取り付けられた装置をメテオは操作する。

 その手をおおきく火渦巻く球体を包み込み、繰り出されたパンチは強烈な一撃となってギルガメッシュのアームズに叩き込まれた。

 

 即時の判断か、それともそうするように誘っていたのか。のけぞりながらギルガメッシュは、その衝撃を利用して後へと退く。間合いを作る。

 矢の威力を十分に活かせる距離になったとき、彼は胴のロックシードをその弓……創世弓ソニックアローへと付け替えた。

 

〈ロック……オン! デーツエナジー!〉

 

 放たれた一矢。その尾羽にくくりつけられた無数の球体が、地面に、空中に拡散する。

 その着地点から、無数の火花が舞い散り、やがてそれは総合的にはげしい業火となって、メテオの姿を完全に包み込んだ。

 

〈うあぁぁ!?〉

 

 という断末魔を聞きながら、ギルガメッシュは恍惚の笑いをとどろかせる。

 ……だが直後、頭上から降って来た光弾が、頭から打ちつけ、その嘲笑をさえぎった。

 

 ジャケットに身を包んだ女性が、ビルの非常階段から銃口を彼へと突きつけている。

 ()()ギルガメッシュには直接の面識はないが、共有している記憶を通じて、ショートカットの彼女の素性と名前は知っている。

 照井春奈。

 女捜査官は銃口でけん制したまま、三色のガイアメモリを懐から取り出した。

 

 睨み上げるギルガメッシュの横で、燃え盛る爆炎が内側から膨れ出た旋風に吹き飛ばされた。

〈メテオストーム!〉

 水車のように旋回する長いロッドが、舞い散る火花を一気に散らす。

 

 中から現れたメテオの姿は、素地が鮮やかな青に、肩のパーツが黄色に変化していた。

〈遅いぞ春奈!〉

 真紅の両目がバイザー越しに、登場した『部下』を見上げて毒づく。

 

「文句はメモリの調整に手間取った整備班に言ってください。……変、身」

 

 ガイアウィスパーを鳴らすと同時に手すりに足をかけて虚空へと身を投げ出した。

 その肢体にベルトと、T3アクセルの装甲が転送される。

 体勢を空中で制御しながら、銃撃と、同じく転送されてきたUFOガジェットとが、ギルガメッシュの動きを封じる。

 

「あいつがどう動いても、俺は右から、お前は左から! とにかく、挟み撃ちだ。わかるな?」

「規定のフォーメーションぐらい、いちいち確認とらなくたって分かりますよ。ロボットやゾンビじゃあるまいし」

 

 着地した春奈と合流したメテオの指示に、春奈は抑揚なく憎まれ口で答えた。

 鳥の翼のようにおおきく左右に分かれたふたりのライダーは、黄金と赤褐色の魔人へとせまる。

 

 走りながらT3アクセルは連射する。火力は不足しがちだったが、弓矢をつがえる速度よりも断然速い。

 満足にリロードもできないギルガメッシュの右脇から、メテオのシャフトが突き出される。

 翻したエッジでギルガメッシュはそれを受け止めると、逆に弓を叩きつけた。

 

 転がるメテオの前で、ギルガメッシュはドライバーの抽出装置を左右に動かした。

 

〈デーツエナジースカッシュ!〉

 

 その両刃に無数の球が不気味に増殖し、ギルガメッシュがクルリとその身を旋回させると榴弾のようにふたたび周囲へ拡散される。

 エネルギーの暴風暴火が、一帯を包む。

 

 だが、それが広がる刹那、

〈JEWEL! MAXIMUMDRIVE!〉

 という声が聞こえ、硬質にして極彩色の輝きがその火の拡がりを防ぎとめていた。

 光は、春奈の突き出した掌から生じていた。

 その装甲の後ろから飛び出したメテオは、今度こそみずからの得物を叩き込むべく振り下ろす。

 

 自身の肉体へと渾身の一打が届くよりも早く、ギルガメッシュの手がそれを握りしめて止めた。

 

 だが、メテオはそれ以上は退かなかった。

 競り合いながら押し負けず、かと言って距離をとらせず、絶妙な力加減で競りながら、ドライバーに入っていたスイッチをシャフトへと移し替える。枝のような細長い器具をそこから引き抜いた。

 

〈LIMIT BREAK!〉

〈メテオストームパニッシャァーッ!〉

 

 エレキギターのようなシークエンス音、野太い男の音声、甲高い裂帛の気合い。

 それらとともに至近から射出されたコマのような物体が、王の防壁をすり抜ける。

 ゼロ距離でギルガメッシュのアームズを駆け巡り、縦横無尽に斬り刻む。

 

 みずからが引き起こしたものと同レベルの爆発とともに、ギルガメッシュは破壊された。

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